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第121話 四十二式小銃と一式機関銃


1910年春


千葉県習志野演習場において、新型の小銃と機関銃の試験が始まっていた。そこには陸軍兵器開発部を統括する、有坂成章少将と階級があがった副官の真田大佐と部下の南沢岩吉技術大尉が様子を見ていた。


南沢技術大尉

「やっと満足のいく半自動の小銃ができましたよ、まったく政府もいくら日英同盟が更新して欧州への軍の派遣が想定されるからと言って、英国の銃弾や砲弾が使える小銃や砲の開発を言ってくるなんて、めちゃくちゃですよ」


真田大佐

「政府の言う事は一理あるよ、日本から補給の軍事物資を送るにしても、船で一ヵ月もかかるんだから、銃や砲があっても弾がなくちゃ役にたたないだろう」


有坂少将

「フフフフ、そうだな、肩を並べて戦うイギリス兵から、すぐに弾を借りられて共同して戦うわけだからな、まして場所は欧州だ我々は新参ものだから相手にこちらが合わせてやらねばならない、まあ~、こちらも英国に砲弾や銃弾の供給が可能になるからお互い様だ」


”1902年(明治35年)に交した日英同盟は5年間有効だった、その時の軍事関係は「同盟国が二ヶ国以上の国と戦争状態になった場合に参戦する義務が生じる」という事で日本とロシアとの戦争では英国は参戦しなかった。


それが日露戦争が開戦し、戦況が日本軍の優勢となったことや日本海軍とロシアバルチック艦隊との対決であった、日本海海戦の結果が英国内で報じられたことや、英国の観戦武官が日本陸軍の兵士が規律正しい態度やサムライのような心の強さを持っていると報告したことにより、頼りになる東洋の友人として対等の扱いになっていた。それで、あたらしくなった軍事同盟で「同盟国が1国以上の国と戦争状態になった場合に参戦する義務が生じる」と言う条項になった。


その為、犬猿の仲であったドイツとの戦争が予想され、東洋の英国の利権を脅かす、中国北部の山東半島南海岸にある青島のドイツ帝国海軍の強力な巡洋艦を主力とするドイツ東洋艦隊に対して、日本の力を借りようと条項を変えたのである。これにより、未来を知っている結城と西園寺先生は最悪の戦場となる欧州での第一次世界大戦に、日本軍を送り欧州の各国に対して貢献をして戦後の世界における、日本の立場や発言力を高めようとしていた。


その為に欧州ですぐに手に入る同盟国の英国の銃弾と砲弾の仕様に合わせようとしていた。ミリタリの血が騒いでいる、結城は米国で1936年に開発されるセミオートのM1ガーランドの資料を用意して開発を依頼したのである。”


数人の兵士が的に向けて装填してあった8発の銃弾を、ボルトアクションなしで撃ち終わると最終弾発射後には排莢と同時にクリップも排出されるが、その排出の際にクリップにより「ピーン」という甲高い金属音が発生した。


この小銃のおおきな特徴の一つが、このエンブロック・クリップ装弾方式である。これは、8発の小銃弾薬を挿弾子クリップに填めておき、銃のボルトを引き開けて上部からクリップごと差し込み装弾する方法である。


8発全弾撃ち終わると、最終弾の排莢と同時にクリップも排出され、ボルトが後退位置で止まってホールドオープン状態となる、着脱式弾倉では空になった弾倉を外す操作を要するのに対して、このシステムはその必要が無く、即座に8発の小銃弾薬を挿弾子クリップの装填操作に移行できることになる。再装填に掛かる時間そのものは着脱式弾倉よりシンプルで素早いシステムでもあった。


その脇では固定された銃座から「ダダダダダダダッダ~」と気持ちよく銃弾を吐き出している機関銃があった。これをみた有坂少将「あの、きゃしゃな機関銃はなんだ!、水冷ではないのか、」と叫んだ。


真田大佐

「あれも政府が用意した資料で作った機関銃です、重量が12kgですので肩から吊りバンドで引っ掛けどこにでも運べる機動性ができました。ロシアのマキシム機関銃は4~50kgあって固定した機関銃座でしたが、これが量産されれば小隊ごとに配給できて機動性もあり、どこでも銃弾の雨を降らせることができますよ。」


”これも結城が1934年に制式化され製造されたドイツ国の機関銃であるラインメタル/マウザー・ヴェルケMG34機関銃の資料を、用意して開発された機関銃だった、部品の多くが職人による精密な削り出し加工に頼る設計で、空冷用の銃身ジャケットですら、単なる孔の空いた鉄パイプではなく前後で肉厚が変化した作りであった。


過熱した銃身は磨耗を防ぐために250発ごとに交換する必要があり、機関銃チームは常に予備の銃身を持ち歩いていた。銃身の交換作業は、アスベスト製耐熱グローブを着用の上、固定を解いた尾筒部を回転させて銃身の軸線から外し、銃身を後ろへ引き抜くことで簡単に行うことができた。


発射速度800-900発/分、ベルト給弾とドラムマガジン給弾の両方に対応していてベルトは連結式(非分離式)メタルリンクで、50発ベルトを内蔵するドラムマガジンや250発/300発収納の金属製弾薬箱から給弾された。世界初の本格的汎用機関銃として日本軍のセスナ型戦闘機や車両への搭載、それに船舶などにも防空用としていろいろな場所で活躍することになった。”


真田大佐

「これで日露戦争で陸軍の主力小銃として使用されたボルトアクションの三十年式歩兵銃は口径6.5mmの銃弾を使用していましたが、それを中止して、英国のリー・エンフィールド小銃に使われる.303ブリティッシュ弾と呼ばれる口径7.7mmの銃弾の日本製を量産して、それを使う新型の国産小銃と機関銃ができましたよ。」


「あとは、英国の砲弾がつかえる野砲や重砲の開発ですね、」


有坂少将

「それも、政府から資料が届いているよ、すでに開発が進んでいるが、もう馬なんかでは運ばないで、”自走砲”とか呼ばれる大型車両に大砲を積んですぐに移動が出来るそうだ、凄いじゃないか~、あの重量のある野砲が自分で動くんだぞ、そんなもん誰が考えるだよ。」


真田大佐

「それは、すごいじゃないですか~、世界で初めての試みじゃないですか機動力が増して陣地変更が用意になりますよ」 


有坂少将

「そうなんだ、軍の実権を握った政府の考えは馬での移動は考えてないぞ、馬は生き物だから水や餌も大量に必要だし、病気にならないように、馬の面倒をみる専用の兵士も必要になるから、金ばかりかかるそうだ、すべての軍馬を中止にしてガソリンで動く車両に変更するそうだ。」


「騎兵部隊なんぞ一番最初に潰されたそうだ、あんなのは機関銃の前ではただの動く標的だから、欧州まで行って無駄死にさせたくないとさ」


「まあ。人はあんまり増やさないが、兵器や車両には金をかけてぜいたくな軍にはしてくれるそうだ。期待するしかないな。」


こうしてセミオートの装弾数8発で英国と同じ銃弾を使う小銃は、前年の1909年に完成したことから、この年の明治42年から四十二式小銃と呼ばれ、国産初の機関銃は一式機関銃と名前がつけられたのである。この二つの小火器と南部式短機関銃は、第一次世界大戦において連合国から勝利を呼び寄せた、最高の兵器と評価をもらうことなになり自国の兵器より、日本のこの兵器を欲しがったのである。ある貴族出身の英国士官は自慢の年代物の最高スコッチウイスキーを、日本の将官に渡して予備の四十二式小銃と交換してもらい、飛び上がって喜ぶのであった。このように銃弾が共通で使用できるため英国では戦争の後半になると日本の小火器を輸入して使用するようになるのであった。


 

 ~~~~~~~~~~



皇居半蔵門近くの麹町こうじまちに公安警察のビルが建っていた。公安には200名程の忍びの特技をもった、服部軍団と呼ばれる正規の職員と地方都市には普通に仕事をして、生活している草と呼ばれる、忍びの技を代々引き継ぐ一族が多数存在していたのである。


徳川幕府の約260年のあいだ、公儀隠密として服部半蔵に仕えていて、幕府に敵対する藩の情報収集や諜報活動を行い、幕府の他藩の統制に役立てていたのである。現在はこの公安警察の為に地方都市での協力者となっていた。


12代目の服部半蔵元政 公安警察所長とその娘、汐音が尋問室が見える隣の部屋の小さな開口部のガラス越しに、先日の尚美達を襲撃した皇道派の残党の尋問を見ていた。


元政

「やはり、なにもしゃべらないか、、」


汐音

「はい、何か、術がかかっているのかしら、誰一人と支援者の名前は言わないというより、記憶から消されて自分の使命だけで動いているような、まるで操り人形のようです。」


元政

「操り人形のようだと言うのか、それだけの強い術を使う連中か」


「他の大臣を襲った連中も同じじゃなかったか、やはりこの背後にはとんでもない連中が絡んでいるかもしれないな」


「五条長官には誰が護衛についているのだ。」


汐音

「はい、百地家の長男で竜一がついております。」


「フフフ、そうか竜一がついていれば安心だな」


「政府の中で唯一、我々の事を認めて頂いているお方だ、必ず五条長官には奴らに手を出させないようしっかりと護衛をしなさい、」


「はい、わかりました、お父様」




岡田誠道大尉が転生して取りついた、誠天会の会長である鬼山誠天は不思議な術で誠天会の事がわからないように、皇道派の残党を使い執拗に政府の重鎮と五条長官の命を狙っていたのであった。






つづく、、、、





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