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第116話 叛乱その3 


1908年2月26日午前5:30


陸軍大臣、寺内正毅てらうち まさたけ陸軍中将の私邸に、金山久松中尉が率いる150名の部隊が私邸を取り囲んだ、士官と数十名の部下が玄関を乱暴に破壊して土足で乱入すると、片っ端から部屋のふすまを開けていった。


住込みの女中達が敷布団の上で浴衣姿で悲鳴あげながら震えている部屋を確認しながら奥の方へ進むと、ひときわ立派な部屋の扉を開けたら、そこには洋式のベットに浴衣の上に羽織を羽織った夫人と、その後ろには陸軍大臣寺内正毅中将が部屋の片隅に立っていた。夫人が金山久松中尉達の殺気だった様子に対して、りりしく引き締まった態度で「何事ですか~。無礼ではないですか!、これが帝国軍人のすることですか!!」と睨みながら一喝を入れると金山久松中尉が一瞬ひるんだ。


後ろにいた寺内正毅中将もそれを見て「無礼もの、何のようだ、どこの部隊だ、部隊名をなのれ、」と叫んだ。


金山久松中尉が右手に握っていた二十六年式リボルバー拳銃を、寺内正毅中将に向けると「我々は~、閣下の軍隊ではありません、天皇陛下の軍隊です」と大声で叫び引き金に指をかけると同時に夫人が「待ってください、待ってください」と叫びその腕にすがりかけた瞬間、「バーン、バーン、バーン」と寺内中将の胸に向けて9mm弾を三発放った、倒れ込んだ中将の頭にさらに2発撃ち込みとどめをさした。


倒れ込んだ寺内正毅中将に「あなた、あなた~、あなた~~」と駆け寄る夫人 死んだ寺内正毅中将に対して、金山久松中尉と数人の部下は綺麗に整列して敬礼をすると一礼して部屋を出ていった。部屋には泣き叫ぶ夫人の声が続いていたのである。


金山中尉が陸軍大臣の私邸を出ようとした時、目が眩しくなるくらいのシライ製のサーチライトから、光の筋が彼らを照らした。彼らを取り囲むように防弾の為の鉄板をボディに張った機動隊特注のカザマ製の鼻づらのデカいバスが、どこに隠れていたのか家の周りを何台も囲んでいた。そのバスの窓の防弾鉄板の隙間からいくつもの南部式短機関銃が突き出して、また天井は開閉式となってそこから狙撃銃を構えた機動隊が狙いを定めていたのである。


またバスを遮蔽物にして機動隊は総勢500名の隊員が南部式短機関銃と防弾チョッキを身に着けて彼らを取り囲んでいた。


第一機動隊の隊長である伊達鷹一警視は叛乱軍に対して投降を呼びかけた。


「聞こえるか~、お前たちはすでに我々、第一機動隊に囲まれているぞ~武器を捨ててすぐに投降しろ、一般の兵士は命令に従っただけだ~今なら罪にならないぞ~手を上げて出てこ~い」


陸軍大臣を殺害してアドレナリンで興奮している金山久松中尉は、もう正常な判断は出来なかった。部下達にもその異常な状態が伝播していて、みんな興奮して殺気だち目を充血させて三十年式歩兵銃をかまえ槓杆を操作して銃弾を装填していた。


殺気づいた中尉は拳銃を第一機動隊の隊長に向けて「お前達、「君側の奸」の手先の言う事なんか聞くもんか~ 全員、射撃開始~」と叫ぶと同時にその頭に一発の狙撃銃の弾が命中し彼の頭部を吹っ飛ばした。


それと同時に小銃をかまえていた叛乱兵士達に狙いをつけていた南部式短機関銃が「ダダダダダダッ~」と銃口を光らせ銃弾の雨を密集していた部隊にふらせた、外にいたほとんどの兵士は糸が切れた人形のように体をくねらせ、大量の銃弾を浴びながら死んでいった。


驚いて隠れようと住宅に逃げ込む兵士には、さらに3人一組となった機動隊が突入すると家の中でも「ダダダダダダ~」と短機関銃が響き、第一機動隊は誰一人も銃弾を受けずに金山久松中尉が率いる150名の叛乱軍を一人残さず射殺したのである、


こうして夫人と家中の女中達にケガがないか、伊達鷹一警視がやさしく聞いてまわり、大臣の御遺体を丁寧に扱うと夫人が泣きながら感謝してくるのだった


伊達鷹一警視はこの計画が大臣には知らされてないことに、心苦しさがあったが電車の割り込み事件で、殴られて死んだ巡査の事や法をなんとも思わない陸軍兵士に対してやっと仕返しができたと思っていたのである。   


この事件が一段落して、世の中が落ちついた時、一人残らず叛乱軍を皆殺しにした事が、世間に知られ尾ひれが付いて何倍もの酷い殺害話しになると第一機動隊は鬼の一機と恐れられ、警察の武闘派の連中がこぞって入隊をするのであった、それから組織犯罪の現場に赤い生地に白字で「誠」の端に数字の1を見た犯罪者達は「鬼の一機だ~、皆殺しにされるぞ~」と叫び、すぐに武器を捨てて命乞いをするようになるのはこの時からである。


第一機動隊が派手な銃撃戦をしている頃、西園寺首相官邸に向かった松尾伝蔵大尉率いる叛乱軍は、突入すると護衛の警察官が誰もいないのを不思議に思いながら、各部屋を確認していくのである、建物のなかには住込みの女中の姿もなく殺害予定の本人もいないのである、しまいには正面玄関で見張りをしていた兵士が慌てて近寄り、「大変です、警察の機動隊に囲まれております」と報告してきた。


「なんだと~、やられた~、襲撃がばれたのか、全員建物に入り窓にも兵士をつけろ、この頑丈な官邸に立てこもるぞ。」そう松尾伝蔵大尉が指示すると首相官邸の扉を閉めて、窓には三十年式歩兵銃を構えた兵士が150人立てこもったのである。


そのまわりには500名の第二機動隊が、やはり防弾の鉄板を取り付けた機動隊用特注のカザマ製の鼻づらのデカいバスが何台も囲んでいてサーチライトが照らしていた。


同じ光景が高橋是清大蔵大臣の私邸でもおこっていた、こちらは神尾直次中尉が指揮をした叛乱部隊が私邸にこもり第三機動隊と睨みあっていたのである。


帝国ラジオ 旭新聞社 東京新聞社 帝都新聞社に向かう各100名の部隊は大通りを縦列行進をしているところに、各第4から第七機動隊が特注のカザマ製バスを突っ込ませて、四方を固めて南部式機関銃で兵士を脅かした、突然の出来事で率いる士官も短機関銃を突き付けられると、抵抗を諦め全員が逮捕されたのである。


2月26日午前6:30


桜田門近くの陸軍参謀本部には岡田誠道大尉、古賀義勇大尉、樋口誠康大尉の菊月会の幹部三人が決起書をもって350名の兵士で占拠していた、建物には当番兵しかおらず、朝早く行軍してくる彼らを見て何かの演習かと思い、そのまま入れてしまったのである。すぐに当番兵たちは任務を解除されて、わけがわからない彼らは近くの三宅坂にある陸軍省に駆け込むのであった。


そして午前6:45分桜田門の警視庁の周りでついに銃撃戦が始まったのである。高倉永則大尉が率いる350名が厳重な警視庁の警備を見て正面突破しようと30名程の部隊を突入させ、周りを囲んだ兵士達が一斉に牽制目的の射撃を開始したのである。


警視庁の玄関に突入しようとしていた30名は、2階や土嚢に隠れていた第八機動隊の南部式短機関銃でアッと言う間に射殺された。そんなものが配備されているとは知らずにやってきた叛乱軍は2階からも撃ちだされる短機関銃や狙撃銃で次々に倒されるのである。物陰に隠れて様子を見ていた高倉永則大尉が後ろの桜田門が開き中から、防弾装備をつけた第九機動隊の隊員が機動隊のバスを先頭に飛び出してきたのである。これによって、高倉永則大尉は第九機動隊員の短機関銃に射殺されると、残っていた兵士も次々と投降するのである。


その様子を参謀本部の3階の部屋から菊月会の三人の幹部は双眼鏡で見ていたのである。


警視庁のまわりには高倉永則大尉を含め200名以上の死傷した兵士が倒れていた。そして武器を捨てて両手をあげた兵士たちが集められていたのである。


陸軍参謀本部の包囲には、皇居外苑に待機していた新潟県警の機動隊は上杉謙信が信仰していた、毘沙門天の毘の文字の旗を機動隊のマークとしてその旗印を掲げて長野県の機動隊は真田家家紋六銭紋を旗印にしていた。彼ら総計800名に第八機動隊と第九機動隊、それに陸軍大臣の私邸から駆けつけた第一機動隊の東京の機動隊が「誠」の旗の下に1500名がさらに包囲していた。


にらみ合いがつづき、朝8:00を過ぎると東京の市民も気づき始めたのである。皇居の周辺は警察が通行止めをしていたし、首相官邸と大蔵大臣の私邸周辺もすべて警察が通行止めをしていた。マスコミ関係の建物は無事だったので解除され事情を知っていた新聞各社はすばやく号外を擦りはじめた。


帝国ラジオでは盛んに臨時放送を連呼して陸軍の皇道派と呼ばれる一派の叛乱を伝えていた。政府要人の殺害で陸軍大臣が殺害されたが、西園寺首相と大蔵大臣は危機一髪脱出ができたと流していた。後は警視庁の前では叛乱軍との壮絶な戦闘が行われ、陛下に対して叛乱を行う陸軍の賊軍を鎮圧したと、すっかり菊月会の連中を国賊として扱っていたのである。新聞の号外もおなじで陸軍には叛乱を行う国賊の仲間がまだ存在していると、将官達の三葉会のことを大きくばらしたのであった。





つづく、、、、










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