第110話 幸子をプロデュース その2
外国人商社員が「karaoke」にぶったまげる、半年ほど前に遡る・・・
シラトリエレクトロニクス(株)
白鳥社長の自宅
私は結城君から教えてもらった、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する電力原動機の総称であるモーターの魅力に取りつかれていた。このモーターを使えば、いろいろな便利なものが作れるのである。その為には形状を小さくしたりパワーがあるものを作ったりして、内燃機エンジンではまかなえない細かい動きの動力装置としてモーターを使うのである。
未来では、これで空を飛ぶドローンと呼ぶ動力として、無線で操縦して景色をカメラで撮ったり、爆弾を付けて兵器にもなると言っていたが、私はいつかこれで電動歯ブラシをつくって自分で使おうと思っていた。
そんな時に家の前にカザマの軽のワゴン車が止まって、娘の玲子と尚美ちゃんと知らない男がやってきた。
3人は家に上がり、玲子が二人を案内して応接間に連れて行くと、私を呼びにきた。私は何の用事かと思い応接室に行くと
「白鳥のおじ様、おひさしぶりです、、」
「尚美ちゃん、久しぶりだね、樺太に行っていたんだって玲子から聞いていたよ、向こうでヒグマ退治したとかすごいよね~」
「そうりゃ~ヒグマも尚美ちゃんの怒りの鉄拳をくらえば一発さ~」・・・と受け狙いで答えるマサオカ
誰にも受けずに
「あんた誰?・・」と聞く白鳥社長
「えっ、おいらかい、おいらはえ~と(どっちの名前で答えようか迷うエロ吉)」
玲子
「お父さん、この人は帝国ラジオの福助亭エロ吉よ~ いつも笑って聞いているじゃないの、」
「まじ~、マジに福助亭エロ吉さん、え~ホントに本人かい、うれしいね~、いつも聞いているよ、あんたの話し面白いよね、」
「お~い誰かいないか~、」そう言ってお手伝いさんを呼んでお客に美味しいコーヒーを持ってくるよう頼む白鳥パパ
「それで、今日は三人そろってどうしたの、」
玲子
「お父さん、会社はいま忙しいかな?・・」
「結城君のおかげでそりゃ~忙しいよ、ラジオに無線機に発電機や冷蔵庫に炊飯器、照明器具だろ、今じゃ、工場も増えて国内に5ヶ所稼働しているよ、これからは軍の仕事も入ってくるから、また増設しないといけないんだよ、」
「エ~、それじゃ、玲子のお願い聞いてくれないの、」
「ハハハハハ、そんな事はないよ、玲子のお願いが一番に決まっているじゃないか~」と娘にと~ても甘い玲子パパ
「白鳥のおじ様、このエロ吉も私が未来からきていることを知っている仲間なの、わたしがこの世界に初めて来た時に最初に治した結核患者よ。」
「未来の薬だったから、ホントの事を言って3ヶ月間あの家で一緒に暮らしながら治療したの、だから未来の技術はよく知っているのよ、」
「そうだよ~、おいらや渋沢先生もみんな尚美ちゃんの仲間さ、これからの時代を、尚美ちゃん達と楽しい毎日にするんだよ、」
玲子
「それで、お父さんにお願いは、今はやりの蓄音機を未来ではレコードプレイヤーて呼ぶんだけど、それを作って欲しいの、それも庶民が買える値段で、」
「あ~、そう言えば結城君から見せてもらっていたよ、あの尚美ちゃんのお父さんの趣味のレコードプレイヤーとアンプにスピーカーあの真空管の電気信号増幅器が今のラジオに使っている技術だからね、」
「そんなに、難しくないから今の蓄音機よりも良いものが、すぐに量産できると思うよ、うちは儲かるけど、それを売り出してどうするの、」
玲子
「フフフフ、レコードを大量に売り出すにきまってるじゃないの、その為には安いレコードプレイヤーが必要なの、」
「なるほど、そのレコードを聴きたくてレコードプレイヤーが売れるのか、そんなみんながプレイヤーを買ってまで聴きたくなる音楽なんてあるかな~お父さんだったら、ラジオでたまに流れている、演歌かな~、あれはいいよ、心に染みて何度でも聴きたくなるけど、あの、レコードは探したけど売ってないよね、誰が歌っているのかな、」
「うん、そう言えば、福助亭エロ吉さんあんたが流してたじゃないか、あれは誰が、歌、ている・・・もしかしたらあんた尚美ちゃんの家の未来のレコード
を持っていってラジオで流したのかい、」
「そだよ~、おいらが尚美ちゃんから借りて流したのさ、」
「そっか~、それで探してもないのかい、店の人も言っていたよそれでも予約していく人が大勢いて、”あれがレコードになって発売してくれれば大儲けするんだけど”と言っていたよ。」
玲子
「それを、レコードにするのよ、歌う人が見つかったのよ、とってもいい声しているのよ、尚美、スマホに録画したでしょ見せてあげてよ。」
スマホを取り出す尚美、そして社長に見えるようにテーブルにのせてスタートを押すとそこには昨日、尚美達の家でリクエストの曲を、アカペラで歌う幸子が動画に写っていたのである。
それをじ~と食い入るように見る白鳥社長、動画の幸子ちゃんが歌い終わると少し赤い目をして「パチパチパチパチ、」と一人で拍手して
「玲子、これだよ、この子の歌がピッタシと心に響くんだよ、ぜったいこれは売れるよ、レコード出したらすぐにお父さんの分もちょうだいね、」
「でしょう~、それでお父さんにそのレコードプレイヤーを安く作ってもらいたいのよ、分かった。」
「了解、了解、任せて、」と気軽に返事をする玲子パパ
そこへ尚美が話に入ってきて、
「白鳥のおじ様、”カラオケ”と言う言葉はわかりますか、」
「いや、わからないな~、それってどこの言葉、」
尚美
「フフフフ、未来で流行る日本発祥の言葉で「空のオーケストラ」という略語でカラオケと言うですが、この言葉の内容は、事前に制作された歌なしの伴奏だけを再生して、それを聞いて素人の人が歌って楽しみ、ストレスを発散させたりするための娯楽ですよ。」
「例えばおじ様も、この気にいった歌をマネして歌う時、レコードから伴奏だけ流れてきたらどう思いますか、」
「そりゃ~うれしいよ~、これでも歌はうまいからな~酒を飲んで騒いでいる時にそれが、あれば、私の自慢の歌声を社員に聞かせてやれるよ」
玲子
「それよ~、それが”カラオケ”なのよ、」
「え~、その”カラオケ”がどう関係あるんだい。」
尚美
「私達が作るレコードは、この未来の演歌2曲をA面にいれたらB面には伴奏だけのカラオケ用にして2曲いれます。聴くだけならA面だけ再生すればいいし、
カラオケで歌うならB面を再生するんですよ、」
「それは、面白いじゃないか、絶対それは流行るよ、」
尚美
「はい、未来ではこの”カラオケ”専門のお店に客がいっぱい集まります。それほど日本人は歌が好きなんです。」
「それで歌詞を書いたカードも入れて歌いやすくするんですが、その歌声用のマイクを別売りで作ってもらい有線のコードでプレイヤーに繋いで音楽にのせて歌声もスピーカーから出せると、最高なんですけどできますか、」
「う~ん、それはできるな~、マイクもちょっと高いけど別売りならば問題ないか、大丈夫だよ、簡単だ、差し込み式でいいよね、コードの長さは5mもあれば十分だね」
「はい、それでお願いします。他にもお願いがあるんですが、いいですか、」
「何だい、」
「ラジオとレコードプレイヤーを上下にドッキングさせてほしいんですが、それとスピーカーも箱型で別にしてデカい奴を作ってほしいんですけど、」
「それは、できるけどずいぶん高い価格になっちゃうけどいいの~、それで売れるのかな~」
玲子
「お父さん、大丈夫よそれは売るんじゃなくて夜のお店にレンタルするのよ、そうね、18ヶ月位で元を取ってそれから儲けにするような商売を考えているのよ、元を取ったら少し月額料金は下げるけど、」
「レンタルとは賃貸で貸す事なのかい、」
「そうよ、夜のお店が必要ないと思えば返せばいいだけよ、まあ、最初は1ヶ月は無料期間にしてダメなら返却してもらい、そうでなければそのままレンタル契約するのよ」
「それはすごいじゃないか~、そこまでやるとはそれじゃその装置を管理する会社を作らないといけないじゃないか、」
「フフフ、そうよ、装置のレンタルと管理はお父さんの会社でやるの、自分の所で作っているんじゃないの簡単でいいじゃないの」
福助亭エロ吉
「営業と客との契約は帝国ラジオでやるので、玲子ちゃんのお父さんには会社の利益を引いた稼働している装置の、レンタル料差額分を定額毎月振込みますのでお願いします。」
「それじゃ、在庫分はうちの持ち出しじゃないのかよ、」
「儲かっているんでしょ、そんくらい、幾らもしないじゃないのよ、娘の私がやる気だしているのに、お願いお父さん、」
「ああわかったよ、これは日本中に普及してすぐに元は取れそうだよ、」
「ところで、この歌の上手いお嬢さんの名前は何と言うんだい、」
三人そろって「幸子ちゃん!」
「幸子ちゃんて言うのかい、名字は?、」
「・・・・・」顔見合わせ三人は無言
「なに幸子ちゃんて言うんだい、」
三人とも困った顔を見合わせて、尚美が代表して「う~ん知らない」
つづく、、、
後から謝りながら、本人から名前を聞いた三人「おらの名前は小森幸子だ!」それを聞いた、未来人の二人はおしい“木”が一本多いと残念がるのだった。