第108話 幸子をプロデュース
伊藤博文閣下の事件で予定が変わってしまったが、俺は政府の関係者として築地にある海軍技術研究所を訪ねた。若い士官に案内されて中にはいると水雷、電気造船、造機、光学等の研究部門があり大勢の技官が働いていた。
応接室に案内されてしばらく待つと副官の平賀譲技術将校が話を聞くことになった。俺は自己紹介をして関わっている関連会社で蒸気タービンの技術があり、それを使えば海軍の戦闘艦の速力を大型艦で28~30ノットのスピードで走らせることができると言って、簡易な図面をだして説明をした。
これは石炭ではなくて重油を使う近未来の技術で、高温高圧の蒸気を受けるタービンの羽根が特殊鋼でできており、小型でありながら高出力が出せる蒸気タービンだった。
話しを聞いた平賀技術将校は非常に驚いて、「こんな技術が、民間ですでにあるんですか、ぜひ、この蒸気タービンの供給をお願いします。」
「供給は問題ないんですが、平賀技術士官にお願いがあるんですが、これから英国のような弩級戦艦と同じような新造戦艦を作る予算は国にはありません。
昨年、英国から引き渡された香取型戦艦が2隻ありましたよね、戦艦・香取と戦艦・鹿島このできたばっかりの新造戦艦が、この日露戦争にも間に合わなくて、さらに”技術革新で弩級戦艦より旧式艦になってしまったから、また戦艦を作るので予算を下さい”、ではいくら金があっても足りませんよ、申し訳ありませんが新造戦艦を作るより、いまある、この最新の二隻を改造しませんか?」
「この小型で高出力の蒸気タービンを3基つければ大型艦で、英国の弩級戦艦より高速で暴れることができますよ、それと主砲も30.5cm(45口径)二連装砲2基4門で、その性能は重量386㎏の砲弾を最大射程21,000m、およそ1分間で1発の発射速度ですよね。」
「これもこちらで開発した、特殊鋼鉄で作った砲身に、速射に耐えるようにガン・ワイヤーをまいて28cm(55口径)三連装砲2基6門で、その性能は重量315kgの砲弾を最大射程20,000m発射速度は毎分で2.5発つまり2分で5発、相手は2発で、手数ではこちらが上になりますよ。」
「え~、なんで主砲がそんな早く撃つ事ができるんですか、」
「はい、これも、関連会社がつくる新型モーターを使った半自動の砲弾装填装置を使えば素早く砲撃準備ができます。慣れれば毎分3発も可能です。」
「これが、蒸気タービンの資料と28cm砲の装填装置の資料です。」俺は事前に作ってきた資料を渡した、これで昨年できた新造艦の香取型戦艦2隻が弩級戦艦に負けない性能になるのだ。戦艦一隻つくるより安く上がる。
「わかりました。どうもこれが一番の解決方法みたいですね、、」
「ところで、話はかわりますが、平賀技術士官にお伺いしたいんですが、」
「何でしょうか、」
「飛行機については関心はあるんでしょうか、、」
「え、飛行機ですか、確かにあれは便利そうですね、敵の索敵とかいろいろと使い道があると思います。確か他のチームで水上飛行機の研究をしているんじゃないかな、」
「実は、関連会社に飛行機会社も持ってましてぜひこれを海軍でも運用につかってもらえないかな~と考えています。」
「どのような運用に使うんですか、」
「海上に長い飛行甲板を乗せた船を浮かべて、その船を母艦にして、そうですね船の大きさもありますが、10機から20機くらいの飛行機を、飛行甲板の下に機体整備場所を作り、上下するデカいエレベーターで機体を甲板にあげて飛ばすんですよ、」
「それはすごい、でも新しい船を作るのは難しいのではないんですか、」
「はい、新しい船ではなくてロシアから捕獲した戦艦が2隻ありますよね、あれを海上飛行基地、ズバリ航空母艦と言いますがその研究用にさせて下さい」
「あれですか、ボロボロですよ、船は動きますが上部甲板や構造物は見世物にする為に修理せず、そのままですからね、そのうち標的艦にするかなんて言っていますからね、」
「あのままでいいです、どうせ上部構造物は取っ払ってもらって平らにしなければいけないので、ぜひこれを、航空母艦による運用計画書も作ってきましたので検討してもらえませんか、こちらは飛行機を準備しますし資金も政府から用意します。これがその改装概要です、細かい打ち合わせは決まってからでも」
これも事前にわかっている未来の資料から航空母艦の運用計画と改装の為の仕様書を渡して検討をお願いした。
平賀技術士官は五分刈りの頭を右手でかきながら「いや~、面白いアイデアですね~、高価な飛行機の提供もしてくれるという事は、こちらの士官の飛行訓練もしていただけるという事ですか、」
「もちろんですよ、陸軍にも飛行機のPRをしているので陸海まとめてパイロットの育成をしたいと思いまして、いま茨城県の霞ケ浦,(かすみがうら)に国の許可をもらいまして、水上機と陸上機の為の飛行訓練所を作る計画を出しています、そこでたっぷりと練習ができますよ。」
「そうですか、わかりました、これについては早急に上層部にあげて検討します。結果は五条さんに連絡しますので、私もこの計画は気にいりました、うまくいくよう頑張りますよ。」
こうして、平賀技術将校との打ち合わせを終えて築地にある海軍技術研究所をあとにしたのである。
~~~~~~~~~
尚美自宅
幸子ちゃんがアカペラで歌い終り、ビールの入ったグラスをもって口開けた状態で時間が止まったままの三人は我に返り
尚美
「幸子ちゃん、料理だけでなく、歌も凄くじょうず、ビックリしちゃった。」
玲子
「すご~いよ、これなら未来でも間違いなく歌手でデビューできるわよ、ところでこれ誰の歌、初めて聞いたわ、」
(テ〇サ・テン台湾出身の歌手、1980年代にかけて日本、アジアにおいて人気を博し、「アジアの歌姫」と呼ばれる人で~す)尚美パパ、久しぶりの登場
マサオカ
「おいらも驚いたよ、幸子ちゃんの標準語初めてきいたぜ!」
(そこかよ!!~~)海軍の事で忙しい結城
この時、幸子はこの家にきて7年すでに21歳の大人の女性、胸は尚美よりデカく、(ジャカマシ~、クソ~)尚美 、上〇石 萌歌のようなキュートな大人になっていたのである。
照れくさそう席に座り、マサオカがついでくれたビールを飲む、幸子ちゃん
尚美
「これは、いけるわ、、玲子どう思う、あの計画覚えている、」
「フフフ、覚えているわよ、芸能事務所の事でしょ、それでどうするのよ、」
「幸子ちゃんをこの時代のスターにするのよ、明治時代の演歌の女王の誕生よあんたと私でプロデュースするのよ。」
「え~、おいらも入れてくれよ、これはおいらの話しからきた事だろう、ところでその、ぷろなんとかはなにをするんだい、」
「幸子ちゃんの歌を、日本中の人に知ってもらう為にいろいろと企画したり、宣伝したり、曲の選定をすることよ、」
尚美
「そうね~ 幸子ちゃんはどうなの、歌でお金を稼ぐことができるけど、人生が変わるわよ、」
「おらは、やっぱ~田舎のか~ちゃんとと~ちゃんを楽させて~だ、好きな歌で金かせ~で弟の立派な墓作るだ、」
「そうこなくちゃ、おいらがラジオにどんどん出してやるぜ~、そんで幸子ちゃんを売り出そうぜ」
玲子
「それだけじゃ、だめよ、レコードをたくさん出して買ってもらうのよ、そのお金が収入になるんだから、それとどこかの劇場でもコンサートをやってその売り上げも収入になるのよ、それに今の蓄音機は輸入品で高いから、まだそんなに普及してないわよ、」
尚美
「玲子パパに言ってさ、もっと安くてあんな朝顔みたいなスピーカーじゃなくて本体にスピカーつけてカッコいいの作りなよ。あとそうだ!、別売りでマイクもつけてそのスピーカから歌声も出せるようにしなよ、売り出すレコードのB面はカラオケバージョンにして、歌なしバック音楽だけにして売り出すのよ、フフフ、明治時代にカラオケを流行らせてやるわ、」
「そうそう、品名はレコードプレイヤーよぜったい、蓄音機なんかで売らないでね、もしだったらラジオも聞けてレコードも聞けるダブルの機能もいいかもしれないわね、」
「おもしろそ~、任せてよ、この時代のパパによ~く言ってオシャレなプレイヤーを作らせるわ、どうせなら本格的なアンプ、とスピーカーのコンポーネントも作ってもらうわ、」
こうして幸子を歌手にするための壮大な準備が始まるのだった。
つづく、、、




