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第1話  タイムスリップ  その1

初めて投稿します。どうかよろしくお願いします。

 3月に入ってやっと暖かくなり春の気配がしてきた関東地方である。2025年が始まっても各地で観測史上最高の降雪で話題となっていた。


俺の名前は五条 結城ゆうき26歳,姉の尚美なおみ28歳といっしょに親父の遺骨が入った骨壷をもって母が眠っている墓石の前にいた。


親父の名前は五条和彦, 愛媛県松山市の高校を卒業し東京の大学の医学部を卒業して、28歳で結婚し30歳の時に北区王子で町医者として開業した。俳句で有名な正岡子規とは同窓という事をよく自慢していた。


母親の真由美は薬剤師の資格があったので院内処方で薬をだし、親父と一緒に

この医院を盛り上げてきた。非常に仲のいい夫婦だった。


だがその母は2020年に世界中でパンデミックとなった、コロナの大流行で亡くなってしまった。親父の医院にも、 熱を出し苦しんでいる町の人たちが大勢

やってきて、ついに母も感染してしまいあっというまに死んでしまった。


当時の親父は相当気落ちしていたと思うが、藁にも縋るようにやってくる患者

を見捨てるわけにもいかず、休む事無く診療を続けた。


そしてこの町の住民の為に、一生懸命に働いてきた親父も1ヶ月前に全国で

大流行していたインフルエンザに罹り、母と同じようにあっという間に死んで

しまった。


夜間や休日でも熱をだして苦しむ患者から連絡が入ると、いつも「大丈夫、大丈夫、いつでも診察しますから、そんなに気にしないで来ていいですよ。」とやさしい言葉をかけていつも丁寧に患者の容態を診ていた。そんな事を続けていたら自分が感染してしまった。ほとんど過労死のようなものである。


そんな親父の骨壷を母の骨壷のとなりに寄り添うように並べ、また母と二人に

なれて親父も満足しているのかなと思ったら、涙がとまらなかった。


””姉 尚美””

今日は父の納骨の為お墓にきている。となりで弟の結城が母と父の並んだ、骨壷を見つめながら涙ぐんでいるのがわかった。


私は両手を合わせ、父に謝ることしかできなかった。私は救命救急医として近くにある都立病院に勤務していた。父が町医者として頑張っている姿を見て育ったので自然とこの道に進むことができた。5年前のコロナパンデミックの際はまだ医学生だった、どこもかしこも人手が足りなかったので大学の関連病院に泊りがけで応援に駆り出されていた。


喘息の持病を持っていた母がコロナに罹ってしまったという連絡を結城からラインで受けた。だがこの時期は国の決まりで感染防止の為たとえ家族でも面会することができなかった。


私は泣きそうになりながら回復することを祈っていた。


だがそれも2日とまたずに亡くなったと結城から連絡がはいった。亡くなった後も母との最期のお別れもできず、感染防止用の遺体カバーに入れられて そのまま火葬場に運ばれ遺骨となって帰ってきた。寂しがり屋の母が誰にも看取られずたった一人で死んでしまった。


それから5年、今度は父がインフルエンザで亡くなってしまった。父が倒れて私の勤めていた病院に運ばれてきた時、絶対に元気にしてあげると気合を入れていたが、悲しくなる程状態が悪かった。先輩医師からは持っても4~5日だと思うと言われ父はICUへ運ばれた。


父は昨年から全国で大流行しているインフルエンザで、夜間や休日でも来院してくる患者さんにいやな顔もしないで、親身になって診療を続け過労が重なった体にとどめをさすように感染してしまった。そして急性肺炎に、、、私は何もできないまま泣きながら父の手を握り最期を看取った。



ふたつよりそうように並んだ骨壷に蓋をして、もう一度手を合わせてお墓をあとにした。弟と一緒に車で来ていたので途中のスーパーでお寿司といろいろ食材を買って家に戻ってきた。


俺は居間のソファーに座り、買ってきたものを広げて少し遅い昼食を食べながら姉に聞いた。


「姉さんはこれからどうするんだ?」


「親父と同じ医者なんだから、この医院を継いでいくのかよ。」


姉は今、近くにある都立の救急救命センター病院の勤務医で働いていた。


「まだ、今の病院はやめる気はないわ、一人でやっていく自信もないし、まだ

いろいろ勉強したいの。」


親父の医院は表通りに患者専用の駐車場があり、一階は受付、待合、レントゲン室、内視鏡室、点滴処置室、検査室、診察室それと薬剤調剤室となっており2階にはスタッフの休憩室 院長室 薬品や医療材料の倉庫となっていた。そして母屋とは渡廊下でつながっていて、こちらは裏通りに面している。そこには車4台が入るガレージがあり、親父の趣味のガラクタが詰まっている、母屋の2階にも親父の趣味部屋があった。表通りから裏通りのほぼ2軒分が我が家の敷地となっていた。


それと2年前に関東大震災から100周年という事でTVではいろいろと、特集番組

をやっていた。そして南海トラフによる大地震の確率が大きくなり防災への心がけを訴えていた。


その時、父は真剣に防災に目覚め、町の医療を震災で絶やさない為という事で屋根には太陽光発電のパネル、発電機や車からも電気を貯められる大容量ホーム蓄電池を家の壁に取付、家の中はオール電化の工事をして空調、給湯、調理はすべて電気に変えた。そして業者に頼み敷地に井戸を掘り電動で2階のタンクに水を送り簡単な切り替えで母屋と医院で水道と井戸水が使えるようにし耐震補強工事も念入りにしていた。



またそんな我が家の防災工事をしている時、事情を知った町内会長が親父に町の災害備蓄品の一部保管をお願いしにきた。町内会費で揃えた水や食料、携帯太陽光発電機、モバイルバッテリー、小型発電機、LEDランタン、燃料、テント 携帯トイレなどもろもろ、公民館や公園のプレハブ倉庫、マンションなどにも備蓄しているが、何せ町の住民が多い為各所にこういったものを備蓄したいのである。親父にしてみれば町の予算で揃えるので全く問題がなったようでる。


それから2年,親父も亡くなり少し前まで勤めていたパートの看護師さんや,事務員,薬剤師さんには少しばかりの退職金を渡し、医院としてはしばらく休院の張り紙を玄関に掲げ、ネットの医院案内も長期の休業のお知らせをいれた。


「確かに急な事だししばらくはこのままにしておくか、それと親父の趣味で集めていたガラクタはどうする。」


俺は寿司を食いながら姉さんに聞いてみた。


「あんたの好きなようにしなさいよ、確かお母さんからも早く捨てるよういわれた時に、男のロマンとか言ってお父さんの味方の様な事言ってなかったけ」



”尚美”

弟の結城は大学をでて大手の商社に就職している。身長は185㎝で顔は彫りが深く鼻すじが通り 少しハーフぽいところもあるが 俳優の横浜〇星によく似ている。


中学や高校の頃は芸能プロダクションのスカウトから何度も声をかけられていたが本人はいたってその気がなく、理由をきいたら有名人になったらいろんな女の子と遊べなくなると豪語していた。


たしかに我が家の2月14日はチョコレート祭りとなり結城の実力を知ることになる。そんな彼も高校2年生になると世界を知りたいとイッチョ前のことをいって、イギリスのかなり伝統がある姉妹校に留学した。


卒業後も日本にもどらずにそのままオックス〇ォード大学に進学した。あの女好きな弟がこんなに勉強ができるとは、さすがにたまげてしまったのである。そして4年間の在学中もイギリス人の彼女やフランス人、ドイツ人の彼女などとっかえひっかえ日本に遊びにつれて来た。彼いわく英語やフランス語 ドイツ語の勉強ためそして相手は日本語の勉強になるからと、、絶対違うと思う。



そんな武勇伝をひっさげ、卒業後は語学力をいかし大手商社の欧州方面担当となり日本とヨーロッパを行き来している。会社でも創業はじまってのいらいの優秀な営業らしく他社に決まりかけの案件でもひっくり返すという、ずぶとい営業マンらしい。


「それじゃ姉さん一緒に親父が何をため込んでいたか確認しようよ。」


”結城”

お昼も食べ終えたので姉と一緒に渡り廊下を通りまずは医院に確認にいった。

退職したスタッフの方々が診察室や処置室などきれいに片づけてあり、いつでも再開できるようであった。クスリや点滴、各種医療材料などもけっこう買い込んであり使っていないものは後で業者から見てもらって引取りをお願いすることにした。


”尚美”

「すぐには無理かもしれないけど、他の医師にこの医院を貸し出す事もいいんじゃないかしら、確かそういう専門の仲介業者がいるから相談してみましょ」



”結城”

姉はそう言っているが、俺としては姉がこの医院と母屋を継いでほしいと思っていた。








つづく、、、、


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