表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*PARADICE  作者: 横谷昌資
14/30

“しょぼさ”の果ての——邪悪

これは教育の敗北か政治の失敗か

あるいは国民性の問題か

はたまたインターネットの欠点か

いやいや、そんな御大層なものではない

それは“しょぼさ”の果ての——邪悪


自分が恵まれている、なんて思わない

自分がたまたま幸運だっただけ、なんて思わない

だって自己責任だもの

だから、“うまくいってる”のは自分の功績


いつかどこかで間違えるかも、とは、本気では思っていない

自分も駄目になる危険性を持っている、とは、本気では思っていない

だって自分次第だもの

だから、なにがあっても努力で解決

……が、できると思っている


しかしその一方で己の人生を波乱万丈だと思う

そして自分は弱者の側の人間だと思っている

それなら今まさになにかに困っている人を助ければ

巡り巡って自分の悩みも解決されるはずなのだが

あなたには“困っている人を助ける”という概念が、ない

だって自己責任だから


でもま当たり前

誰だってなにかを抱えているもので

この世に真に恵まれた運のいい人間なんていやしないもの

だって誰もが——

“何かあいつマジムカつく!”みたいな悩みを抱えてるから


それはしょぼく、あまりにもしょぼい闇

世界中のありとあらゆる問題は人間の持つ闇が原因で

だがそれが圧倒的存在感のあるものである必然性はないんだ

だって僕ら人間はみんな薄っぺら

薄っぺらなものから生まれ出ずるものなんて

薄っぺらなものでしかあり得ない

そして、その“しょぼさ”の果てに——邪悪がある


誰もがなにかを抱えてるわけだから

持てる者は持たざる者を救うなんて思うわけがなく

あるいは、思ってはいるけど余裕がない、とか

別に積極的な意志のもと放っといてるわけじゃなくて

誰もがなにかを抱えてるわけだから

だが、そこに拒絶が生まれたことには変わらない


スタート・ラインがそもそも違う

生まれつき他人に迷惑をかけざるを得ない人がいる

他人に迷惑をかけることを悪いことだと思っている

ゆえに彼は悪人になる

あなたにとって


世の中お互い様なんだけど

あなたは自分が彼に救われていることに気づかない

どうしてスロープが存在するのか?

別に“人々の優しさによって”と誤解したって構わない

つまり、あなたは自分が優しくない人間であることは認めるね


これは教育の敗北か政治の失敗か

あるいは国民性の問題か

はたまたインターネットの欠点か

いやいや、そんな御大層なものではない

それは“しょぼさ”の果ての——邪悪


誰もがなにかを抱えてる

誰もがなにかを悩んでる

それはつまらない怒り、ささやかな哀しみ、ちっぽけな憎しみ、

わずかばかりの苦しみ、大したことのない絶望


絶体絶命の肉体的苦痛の中でも

人は看護師の些細な失敗にイラつくし

戦争の真っ最中であっても

靴擦れの違和感が気になるものだ


それはしょぼく、あまりにもしょぼい闇

世界中のありとあらゆる問題は人間の持つ闇が原因で

だがそれが圧倒的存在感のあるものである必然性はないんだ

だって僕ら人間はみんな薄っぺら

薄っぺらなものから生まれ出ずるものなんて

薄っぺらなものでしかあり得ない

そして、その“しょぼさ”の果てに——邪悪がある


けれど人を救うにも技術が要る、訓練が要る

それもまた事実

だから、世界は平和にならない


ちょっとしたすれ違いが

取り返しのつかない失敗に繋がり

そして人は死ぬ

そして、それはとてつもなく穏やかな世界の終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ