4 交渉。
この物語は共通の世界設定を持つ作品群の一つです。
関連作品を未読でもお楽しみいただけます。
下記の物語に続く話が今作の時系列です。
『雑魚ヒーラーだと言われおはらい箱にされた資源召喚士だったが、機転を利かして無双する。』
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『世界規模の即落ち2コマ ~主人公とヒロインの異世界恋愛が成立しないと世界が滅亡する~』
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今作。
4
「あなたの精気は淫魔にとって特別に美味、それを彼らに一定期間献上する、それによって彼らからの精気吸収を完全停止する契約をする。
なるほど、彼らにとって希少な好物を提供することを利用して、彼らに取り入ろうという訳か。まるで理想を叶えるための投資みたいな、あるいは借金返済みたい感があるな?
おそらく条件は飲んでくれるでしょう。
彼らはこの交換条件を無視することであなたの精気をその欲望に任せて絞りつくそうものなら損する。そのように彼らがしたら精気不足であなたは死んでしまって、結果的に二度と美味しい精気が吸収できなくなる恐れがある。
今までぎりぎりまで、あなたの精気を吸収してから泳がせて微々たる精気を貯めてまた吸収する、というループを彼らはやっていたけど、それだと遅いうえに吸収量も少なくて効率が悪い。
即物的な彼らとしては、たとえこの取引に応じることでこれ以降あなたの精気が得られなくなることよりも、一定期間に質の良い精気を早く大量に得ることの方が有意義であると判断してくるというわけ。
そこで彼らと交渉する際に、俺のコネを利用する。コネというよりネコだけど。
それを実現するための元となるあなたの精気を予め貯めるために、俺とねんごろになれと?」
「無理な話?」
日中。
あれから。
私は、ビゾーさんの導きに従って、エイヨ・タベさんの家を直に訪ねた。
てっきり、ビゾーさんとエイヨさんは人間関係があると思っていて、その体で話をしたんだけど、知り合いではなかった。この話をした時エイヨさんは私を詐欺師の類だと思ったみたいだ。ビゾーさんとエイヨさんは面識がなかったけど、私が調べた評判的に彼がでたらめを言っているとも思わなかったので、紹介先のエイヨさんについても信頼できると思った。そこで現在はかろうじてその不信感を解きつつ協力してもらえるか交渉しているというところ。
ビゾーさん、説明不足……
説明と言えば、ビゾーさんは私がなぜ淫魔から多めに精気を吸収されているか、その謎について話してくれた。
同時に、それは今回の問題を解くためのキーにもなっていた。
ビゾーさんはこれを、好都合なこと、と言っていた。
そうかなぁ? なんかズレているような。
ともあれ。
ビゾーさんは自分のスキルで私の情報を得た結果、私は特別な精気を持つ体質だと分かったらしい。とにかく。私の精気は淫魔やその類からして、格別に美味しいものであるらしい。
その影響で普段は少量の精気の吸収で済んでいた淫魔たちだったが、中毒的に貪るようになったらしい。
いや、人間に対して影響力のあるような女王みたいになりたい私は、モンスターにモテる精気を持つ体質だった、とか。昨今のラノベのタイトル感があるような。そんな体質。全然、嬉しくない。
というわけで、なぜ私が淫魔から多めに精気を吸収されているかの理由が分かったのだった。
その説明を受けつつ、さっきエイヨさんが復唱したような解決策を提示するように言われた。
「農婦さん。無理な話っていうか。突拍子のない話なので動揺するわ。農婦さんはいいのか? 俺と曲がりなりにも男女の関係になって精気を高めるということに」
「私? 全然かまわないよ。ほくほく」
「あの。さっきから何を片手で食べているんだ?」
「バターでソテー風にしつつ片手間で食べやすく特殊加工をした野菜。ちなみに調理人によると、この野菜は古来から過酷な冒険をしている配管工に好まれているスーパーフードらしくて、私のような衰弱状態になりつつある人にはおすすめの食材らしい」
「ははぁ」
「私が食べているのは、調理人のスキルで特殊効果が付与されているやつで恩恵がとても高くなっているんだって。これを食べてないと精気不足で体力のステータスが枯渇して倦怠感でダウンしてしまうから困った話だよね」
ほくほく。ぱくぱく。
「……おかげで栄養のある野菜について知識が1つ身についた。参考にするよ。ありがとう」
「どういたしまして。あとね。これを食べないと、淫魔との契約で提出する用の精気を貯めるための前提となる体力が確保できない。その体力を使ってあなたとやることをやりまくって、私の精気を貯めるって寸法。悪い話じゃないと思うんだけど? 女性といちゃいちゃできる上にいくらかの資源も提供されるのだから」
予め、この話の交渉材料として私のいくらかの備蓄資源をエイヨさんにあげることを提案していた。
「いやぶしつけだな。たしかにそうなんだが。分かった。1つ質問させてくれ。俺じゃなきゃダメか? 別に精気を貯めるだけなら俺じゃなくても良いだろ。なんというかあたかも俺じゃなくちゃいけない、というような圧をかけられているように思えて疑問を感じる。淫魔との交渉については俺のコネに話を通しておけるから、それは良いとして。俺よりも良い男を探さなくてマジでいいのか?」
「むしろ、あなた。エイヨさんに頼った方が良い。そういえば話してなかったことがあった。これを聞いたらエイヨさんはこの話を飲んでくれるはずだよ」
◇◆◇
「俺と似たような志を持っていて、それぞれの理想を叶えるために、協力関係を築きたいと? 農婦さんの精気枯渇問題を解消するついでに」
「ええ」
私は自分が女王に転職したいということ彼に打ち明けた。
アイドルではなく女王に転職したいと。本音を語った。ここまできて体裁を気にするのは、なんだか自分を蔑ろにしているような気がしたから、真意を伝えた。
疲れて感情的になっていたのかもしれない。
でも直感的に、この人には真実を伝えないと、この交渉を承諾してくれないと思った。
そして、エイヨさんが魔術網界で一角の存在になりたいという情報を知っていることについても話した。
「ビゾーというナレッジワーカーを謳う情報屋は一体何者なんだ。どうしてそんな俺のプライバシーについてまで知っているんだか。というか女王になりたいて」
「引いた?」
「引かないけど。俺も似たようなことを考えているし。魔術網界で一角で在りたいというのはいわば一国の王になりたいということだからなあ。ただ、引っかかることはある」
引っかかる? 私と似たような志を持っていながら、何か許せないことでもある?
「誰かの心に自分を刻みたいとか、魅惑的で在りたいとか、アゴで人を使いたいとか。そういうのって全部、自分本位の欲って感じで不快だな。一方的に搾取して愉悦を味わうだけなら淫魔達と同じじゃないか。そんなことをやりたいなんて言われても俺は看過できない。みんなが幸せにならない人生なんて何のための人生なんだ。幸せを相互に味わえるようにならなければ、孤独で虚しくないか?」
「淫魔と同じやりかたが嫌……か」
私の理想は簡単に否定された。
今まで抱いていた理想は、間違いだったのか?
「そんなのは幻想じゃない? 誰かに貢献することは二の次にしないと。自分を満たすことを先にせず、自分と誰かを同時に幸せにすることなんてできないと思う。そんなことは難しい。そうすることに労力を割くぐらいなら、自分だけが幸せになる道を選んだ方が楽。自分を先に幸せにしてから誰かに貢献するという段階を経た方が結果的に、エイヨさんが言う”みんなの幸せ”に繋がると私は思うけど」
「いいや。そんなの嫌だね。俺の可能性を奪った淫魔と同じやり方を許すのは俺の美学に反する。たとえそれが非合理的な思考であろうとこれは譲れない」
「そんなわざわざ難しい人生を選ぶような真似しなくても良いんじゃないかな」
「自分でも頭が硬いと思うんだが。そういうわけで、そんな考えを持つ農婦さんのような人には協力できない」
この人はなぜわざわざ難しい人生を選んでいるのだろう?
不可解だ。
独善的というか、押しつけがましい感じさえする。
でも。
「面白い」
「は?」
「だったらこうします。あなたの一角の存在になりたいという欲。そして淫魔と同じ一方的に搾取するやり方はしたくなくて、受け手と送り手が相互に同時に幸せにしたいという欲。それを同時に叶えるやり方がある。厳密にはその理想に近づく、という表現のほうが語弊がないかな。現在のほとんどファンやフォロワーがいないエイヨさんいとって好都合なやり方になると思う」
「そんなウマそうな話なんてあるか?」
「――最初に、私とエイヨさんで相互に同時に幸せになる関係を築く。それから私とエイヨさんが、それぞれ受け手と送り手が相互に同時に幸せになるように、女王と一角な存在に在れるようにすれば良いんじゃない? これなら私本位の一方的な欲求を叶えるというやり方ではないし、淫魔の一方的な搾取的なやり方でもない。お互いが理想に近づくために悪くないやりかたじゃない?」
「……? 俺と農婦さんで相互で同時に幸せになる関係を築く? それってさっき言ってくれた、協力関係を築くというのと何が違うんだ? 話が振り出しに戻ってない?」
「ちょっとややこしい話かも。かいつまんで説明するね」
◇◆◇
つまり私とエイヨさんは個人的な欲を満たさずに、それぞれが理想とする受け手と送り手が相互に同時に幸せになるような王女や一角で在る、いわゆるインフルエンサーとかカリスマとか配信者的な活動をする。
でも私の目的は変わってる。私はエイヨさんの理想に従う。
念を押すけど、エイヨさんと関係を築くことで精気を貯めても、それは個人的な欲のためだけではなく受け手にも利益があるように使うということ。その違いは分かってもらえる?
淫魔と同じことはしない。私は女王で、エイヨさんは一角の存在で、それぞれの理想を達成する。その手始めに。私はエイヨさんの濃いファンになる。エイヨさんは私の家来になる。
◇◆◇
「なるほど? ん? 家来……?」
「分かってもらえた? なら、私はさっさと問題を解決して女王に転職したいから――」
「ちょっと待って! 農婦さん何を!? 待って待って、あッああ!!」
日中。とある青年の自室で桃色な声が響いた。
◇◆◇
「すごい初体験だった……」
「いや私の処女はまだあげてない。それに私だってそういうことしたのは初めてだったけど?」
「その割には農婦さん、テクニシャン過ぎない……?」
「日ごろ、様々な媒体を観てイメージトレーニングはしてたから」
「すごかった。風俗にすら行ったことなくて初めてで、とにかくすごかった」
「ただの童貞から素人童貞へ。昇進、おめでと」
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