ぜんざい
「その短刀は 研ぐことができないのです。」
清五郎は、江戸の外れにある鍛冶屋の噂を耳にした。
江戸には『数えられないくらい』刀鍛冶がいる。
武士の二本差し 家宝の刀 名刀の切れ味
いろんな話も聞いてきた。だが
その短刀は文字通り、まったく歯が立たないらしい。
『どこの誰がどのような目的で短刀を質に入れた』かは謎だ。
そもそも
誰が作った短刀なんだ?
短刀には異国の文字が彫ってあったという。
なるほど 海の向こうなら優れた刀鍛冶の技術があっても不思議じゃねえ。
清五郎は不思議な話もあるもんだと 徳利を傾けた。
「それが、異国の地で落としてしまったのだ。しかしながら、女神様に伝説の剣ミスリル・バスターソード・コスモドラグーンをふたたび頂戴し、無事、ブラック・ジョーカーを倒し、ドラゴンの谷を抜けてラテ・メープル姫を助けることができた。」
「それではいかんのだ。」
「どういうことだ?」
「オリハルコンの短刀は、我が国、ブルジョア王国の宝なのだ。短刀を失えば災いが起こると伝えられておる。探してくるのだ。エクセルシオール・シアトルベスト・デュークフリードよ。」
「急ですね。」
『南蛮渡来の着物の男』は再び江戸の地に舞い降りた。
倒したブラック・ジョーカーを締め上げ、異界への行き来を身につけた。
金で解決できる場合でも困らないように大金も持ってきた。
あとは家宝の『オリハルコンの短刀』を探すのみ。
そんな時におかっぴきの清五郎に再び会うことができた。
「おおう!南蛮渡来の着物じゃねえか!国には無事帰れたのか!?」
「またお会いできました。いつぞやはお世話になりました。」
「いいってことよ!またどうしてこっちに?」
「家宝の『オリハルコンの短刀』を探しているのです。」
「あれ?こないだ聞いた『とげない短刀』のことじゃねえか?」
清五郎の子分、甚八に話を聞き 「江戸の端の質屋」に着いた。
「これでその短刀を買い戻したいのです。」
チャリン・チャリーン
「ひいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
質屋が目にしたこともないような大きな金貨が出てきた。
文字は読めないが「金の純度」は間違いない。長年の経験で確信した。
無事に短刀を買い戻し 清五郎とデュークフリードは川沿いの屋台で呑んだ。
「またもやお世話になってしまいました。これで国に帰れます。」
「よかったな。また来てくれよ。ドラゴンとか魔法の話もまた聞きたいぜ。」
「じつは、こちらで『預かった刀』があるのです。これです。」
「ほう・・・」
デュークフリードは『輝く渦』に消えた女神様から預かった剣を清五郎に渡した。
「この世に『2本』しかないミスリル・バスターソード・コスモドラグーンです。もし、清五郎親分さんが『女神様』に会うことができたら、ぜひこれを渡して欲しいのです。」
「自分で渡したほうがいいんじゃねえか?」
「『こちらの世界』には長くいられないのです。清五郎親分さんに預けます。」
「よし。わかった。安心しておくれ。」
南蛮渡来の着物の男は、不思議な光の輪の中に消えていった。
その瞬間を見ている人間は一人もいなかった。
「そんなこんなで預かったのがこの刀なんだが、光るんだなこれ。」
「へええ!親分さんだから安心して預けたんだよ!」
清五郎とおはつは「あめや」の店先で『異国の妖刀』の話題で盛り上がった。
清五郎は刀を大事に抱えると勘定をすませて仕事に戻っていった。
「おはつさん。あの『妖刀』はクサナギノツルギでは?」
「もう少し古いよ。お京さんも『ジュウニノシキガミ』と親しいね。ふふふ!」
「知り合ったのは『最近』なんですよウフフフ!」
二人はぜんざいを食べながら仲良く笑った。
おわり