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第10話 20回忌


 母さんから電話があったのは、それから10日後の週末だった。気付けばもうカレンダーが最後の1枚になっている。

 師走と呼ばれる12月は忙しさよりも寂しさを感じる。年が明けるまであっという間に過ぎ去っていくひと月だ。


 ――――先生もやっぱり、走り回るくらい忙しいのかな。


 そんな呆けたことを考える。先生は隣でハンドルを握っていた。


「さすがに動きが速いね、君のお母さん」


 僕が顔を向けたのに気付いたのか。サングラスの下の視線の位置はわからないけれど。


「うん……だね」


 僕が母さんに電話したのは1週間前。

 僕の提案に驚きを隠せないようではあったけど、思いあたることもあったのだろうか。突然のことにも関わらず、すぐに対応してくれた。


 明日の日曜日、僕の実家で美花の20回忌を執り行う。実際には1年遅いのだけれど、そこはそんなに厳しいことは言わない。僕が姉の記憶を取り戻したことで実施する。そこが大事。


『親族が一同に集うのは無理だけど、意外に来てもらえそうよ』


 とは母の言。なぜ意外にも遠方から彼らがわざわざ来てくれるのか。その理由は僕にある。


『みんなには、僕が思い出して話したいことがあるって伝えて欲しい』


 なにを思い出したのか。それは言わない。これは僕と先生が練りに練った策だ。思惑通りに運ぶとは限らないけど、やる価値はあるはず。




 10日前の夜、僕は先生の思わせぶりな言動に感情的になった。先生が疑ってる人物に僕は思い当たったからだ。

 僕もどこかでそうじゃないかと考えていた。心当たりがあった。


「とにかく落ち着け。まずはお茶でも飲んで」


 激高した僕を座らせ、先生は僕の湯呑にお茶を注いだ。ビールじゃないのがミソだ。僕は熱いお茶をふうふうしながら飲む。するとどういうわけか落ち着いてきた。


「先生はいつから疑ってたの? 今井さんに会って話を聞いたからじゃないよね?」


 今までもどこか先生の言動には気になることがあった。今にして思えばだけれど。


「そうだね。疑ってたわけじゃないんだよ。私も最初は、警察と同じ見解だった。でも、少しずつ考えが変化していった。最初のきっかけは美花さんの写真を見た時だ」

「写真……僕と実家に行った。2回目の時のことだね」


 その時、ようやく僕ははっきりと僕の美しい姉、美花のことを思い出した。


「それで、そうと仮定して色々考えてみたんだ。美花さんは私と同い年だった。自分のその頃はちょうど母親が亡くなった直後でヤサグレてたけど、同級生の女の子はもっと大人びてた、なんて思い出したりしてね」


 美花との会話で、僕が思い出したことなんかをつぎはぎしながら、先生は推理を構築した。


「光とH県に行ったとき、割と確信した。まあ今となってはだけど、祖父さんがもう少し生きててくれれば、もっと早く動けたんだけどね」

「それは……仕方ないよ。僕がもっと鋭ければ……」

「それこそ仕方ない。信用してた人なんだ……それより、もしこの考えが正しければ急がなければならない。それはわかるな?」


 僕は深く顎を引く。急がなければならない理由もわかってる。


『光、あんまりあいつと仲良くしないで』


 美花の言う『あいつ』。それは僕が『にいちゃ』と呼んでいた人物。亮市叔父のことだ。





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