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第16話 母の実家


 滞在三日め。ようやくこの日、僕は母さんの実家、今は伯父さんが住んでる家へと出かけた。

 伯父さんはまだ現役、仕事で不在だったけれど伯母さんが僕らを迎えてくれた。彼らの子供、つまり従兄弟たちは既に独立しているので家には二人だけだ。

 あ、それと猫が一匹。この家で一番偉いのは、どうやらこのお猫様、ミルクのようだった。


「久しぶりやねえ。お父さんの葬式以来かな」

「はい、随分ご無沙汰してしまって……」


 古い家をあちこちリフォームしている実家は、内装を見ればその古さを感じさせない。

 まだじいちゃんが生きていたころからバリアフリーにしてたんだけど、今やキャットワークがそこらじゅうに作られてて別物だ。


「先日、母から姉のことを教えてもらって。今更なのですが、その頃のことも思い出しました。その節は色々ご心配おかけしました」


 じいちゃん、ばあちゃんの仏壇に手を合わせ、僕は伯母さんにそう言った。伯母さんも僕のために、美花のことをずっと黙っていてくれたはずだ。


「そうだってね。お母さんから電話で聞いたよ。長い間、ありがとうって言われた」


 伯母さんは寂しそうに、けれどどこか安堵したような表情で僕を見た。


「お父さんの葬式のときも、ドキドキしてね。なんかポッと言ってしまいそうで。光君たちが関東に行ってからは、普通に美花ちゃんのこととか話してたから。光君のお母さんの顔みたら、ついねえ」

「そうでしたか」


 伯母さんはそれから、思い出す限りのことを話してくれた。しつこかったマスコミや、近所の風評等など。

 毎年事件の頃になると、今でも地元ではニュースになるらしい。


「まだ犯人、見つかってないからねえ」

「その頃、容疑者もいなかったんでしょうか」


 医者用営業スマイルで相槌を打ちながら、すっかり伯母さんの懐に入っていた天宮先生が尋ねた。


「うーん。どうかな。意外に思うかもしれないけど、被害者側には事件のこと、本当に情報もらえなくてね。光君のお父さんは怒り心頭だったのよ。引っ越してからも、時々一人でこちらに戻ってきて、警察に出かけてたけど……」


 そうだったんだ。父さんは僕の前ではおくびにも出さなかったけど、ずっと闘っていたんだろうな。


「来年はお父さんの七回忌だから、光君も来てね」

「あ、はい。もちろん」


 伯母さんはちらりと先生の方を見る。『あなたも、良かったら』とかなんとか、言うべきかどうか迷っているのかもしれない。


「えっと、両親と一緒に来る……」


 わきの下に変な汗をかきながら、僕が言いかけたその時、思いも寄らない声が上から降って来た。


「よお、本当に来てたんや」

「亮市叔父さんっ」


 ラフなパーカー姿の亮市おじさんが、にやりと口角を上げ、開け放たれた襖に寄っかかっていた。




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