表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/86

第6話 健康なからだ


 その夜は、いつの間にか眠っていた。というのが正直のところ。

 リビングで先生の視線を感じながら、昔話や、僕の会社の話をしてる間にうとうとして眠ってしまった。朝、気が付くと自分にあてがわれた客室のベッドだった。


 ――――これで、先生といると眠れるってことが揺るがない事実となった。


 ふう、と大きな息を吐く。でも、やっぱり眠れるって素晴らしい。頭だけでなく、体も軽い。軽い……で思う。どうやってこのベッドに来たか。


 色々思うところはあったが、僕はとにかく出勤した。メトロで満員電車に遭遇したくない(赤坂から会社は自転車では遠すぎるので、今は駅まで自転車それから電車通勤している)。

 ありがたいことに先生はまだ寝ているようだったので、こそこそとマンションを出た。




 人の少ないフロアは好きだ。同じような趣向の同僚、もしくは仕事を溜め尽くしている気の毒な奴、少数だけが黙々とモニターに向かって作業をしている。

 珈琲の香りがどこからか漂ってくるのも心地よい。かく言う僕も、デスクの右端に地下の店で購入したカップコーヒーを置いている。

 実は、配属されてから珈琲なんて買ったのは初めてだ。ただでさえ眠れないのに、カフェイン投入するような暴挙に及ぶことはなかった。


「え? それ、どういうこと?」


 すると、目ざとい隣人の声が頭の上から降って来た。いつも通りの時間に出勤してきた同期だ。


「おはよう。どういうことって?」


 なにが言いたいのかわかってて、僕はとぼけてあいつの顔をみた。すると、あいつはぎょっとして後ずさった。


「おまえ、またあの医者と会ったんか、昨日は日曜日だぞ? クリニック開いてないやろ?」


 おまえは僕のストーカーですか? 僕は呆れながら珈琲を口にする。


「眠れるようになった。それだけだよ」


 これ以上三笠に妄想されるのも面倒だ。なんか、その妄想に引っ張られそうなのも怖いし。なので、僕はあいつに嘘を吐くことにした。

 ちょっとばかり後ろめたさもあるが、正直に言えば、今まで打ち明け過ぎた。これもまた、睡眠による僕の脳回路の動きが良くなったおかげだろう。判断がはかどる。当然仕事も。


「嘘つけ……なんやねん」


 三笠は僕の態度になにかを感じ取ったのか、それとも懸命に仕事をする僕に感動したのか(するわけないが)、その後はこのことに触れることなく、二人とも画面に集中した。




 それから、僕は毎日きちんと睡眠をとり、どんどん元気になっていった。先生の言う、心身ともに健康な体が戻ってくる感覚。


 それとともに、僕の先生への気持ちも少しずつ変化していった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ