第二部「破滅を照らす者:賢者との出会い」その7
目次
第15章「作戦会議:情報その1」
第16章「作戦会議:情報その2」
あとがき
第15章「作戦会議:情報その1」
「まず、この作戦における絶対的な勝利条件を伝える。その勝利条件は、『邪神クトゥルフ』の召喚の儀式の阻止。教団の秘密と儀式を知っているであろう『ロキの化身』と教祖の無力化。教団の秘密、儀式や危険な魔法系統の物や、それらを記した資料の入手又は抹消だ。」
「えっと…新しい単語が2つくらい聞こえた気がしたんですけど…」
「あぁ…そうだった。君達にはまだ話していなかったな。」
「そんで…そのクトゥルフってやつとロキの化身ってのは何だ?」
「クトゥルフ…奴は地球に存在した神々によって封印された『悪夢の邪神』であり、悪夢を司る邪神であるという事しか分からない。詳しい事はおそらく教団の中でも教祖しか知らないだろう。ただ…」
「ただ…?」
「ただ1つ完全に分かることは、奴の封印が解かれると…この世のあらゆる生物は発狂して死に絶えるという事だ。」
「もし封印が解かれちまったら…どうにも出来ねぇのか?」
「あぁ、奴が現れた時点でこの世は終わりだ。私が全力をもってしても1秒も耐えきれないだろう。」
「ヒッ…」
「ヤバいっすね。」
発狂して死ぬって何!?
てか魔導師でトップのマーリンさんでも秒殺って何ッ!?
「つまり、私達が7月7日の午前か午後の12時のどちらかのタイムリミットまでに召喚を阻止できなければ…」
「世界は終焉を迎える事になる。」
「こいつは…大分やばくねぇか?」
「あとロキの化身ってなんすか?」
「『ロキの化身』は教団内で最も力を持っている13人の幹部のみで構成されたチームだ。そして、その13人全員が『祝福』を持っており、その『祝福』に因んだ異名をつけられている。」
うわぁ〜ヤバそう…って!
「13人も!?」
「あぁ…そうだ。因みに私もその内の1人だった。」
「としても…残りは12人か…」
「そのうちの一人ってサラッと凄いっすね。」
「まぁ安心してくれ、恐らく君達が対峙する強者は私を除く、化身の12人の内の2人と教祖の合計3人になるはずだ。」
「えっ?何でそんなに少ないんです?」
「私が調べたところ、化身のメンバーは2人ずつでペアを作り、教団員を数名ほど引き連れて世界各地に出払っているという事が分かっている。」
「じゃあ10人は出払ってて…2人は教祖を守る為に残ってるって事ですね?」
「まぁそんな所だろうな…だが、ヤバい奴が教祖含めて3人しか居ねぇってのは俺達にとってはありがてぇな。」
「ですが…マーリンさんの話によると、『ロキの化身』のメンバーはそれぞれが独立した部隊を持っているとの事でしたので油断はできません…」
「『クトゥルフ』と『ロキの化身』についての説明はこれくらいだ。ついでに、今のうちに気になる事があれば聞いてくれ。」
うーん…気になる事かぁ…
「あっ…そういえば…教団と教祖について全然分かんないんですけど…」
「あぁ、その2つについても話しておこう。」
「よ…よろしくお願いします!」
第16章「作戦会議:情報その2」
「教祖については…自らを『レイ』と名乗っており、教団を設立して今回の騒動を引き起こしているリーダー的な存在ということと、19~20歳あたりの年齢の女性であることしか分からない。恐らく彼女もトップクラスの実力者ではあるのだろうが…彼女の能力は一切不明だ。」
「あんたに能力がバレないように振る舞うことが出来るって事は…そんくらいには有能って事だな。」
「あ…確かに…」
「まぁとりあえず教祖はヤベェ奴で…教団ってのは?」
「教団…正式名称は『救済の闇《Darkness of Salvation》』で、予想できると思うが『レイ』が設立した一種の宗教団体のような物だ。教団は1~2年前に設立された様だが、それにしては教団員が多い印象を受けたな。」
宗教団体…しかも『救済の闇《Darkness of Salvation》』って!
胡散臭いなぁ…
コイツはクソ以下の臭いがプンプンするぜぇ!っていう漫画のセリフがピッタリだよ…
「あ…あの〜…その教団で信仰されてるのってやっぱり『クトゥルフ』なんですか?」
「いや…完全にはそうとも言いきれなくてな…確かに『クトゥルフ』の事を上位の存在として認めてはいるが…教団員が崇めているのは奴の力と教祖のカリスマ性だ。」
「神様がおまけってことっすか?」
「そうなるな。」
「ところで…2人で話をした際に聞いていなかったのですが…教祖である『レイ』が教団内で広めた思想はどの様なものでしたか?」
「奴が過去に1度だけ、教団員を大聖堂に集めて演説を行った事がある。」
「その内容は?」
【星次がマーリンに演説の内容を問うとマーリンが指を鳴らした。するとどこからとも無く蓄音機が現れ、レコードか無いにも関わらず、女性の声が再生された。】
「…この世に神が存在しているのかは誰にも分からないでしょう…しかし、一つだけ確実に言えることがあります。それは…神が存在しているとしても、彼等は私達に救いを与えず、私達がどれだけ敬虔な信者になろうとも見向きはしないという事だけです。この言葉の意味は…ここに居る貴方達ならば…神に裏切られた私達ならば理解出来る筈です。故に私はここで誓いましょう。」
【演説をしている教祖と思われる女性は、そこで言葉を切り、間を置いて話し始めた。】
「私は…神という忌まわしい存在を消し去り、ただ破滅に向かうだけの世界に終わりをもたらします。そして…新たな世界を作り、悪人という忌まわしい存在を消し去り、ただひたすらに平和と幸福を望む善人達に救いをもたらすという事を…」
【するとまた彼女は言葉を切り、間を置いて話し始めた。】
「例え、私の全てを悪魔に明け渡そうと…憎き神の力を使おうと…神に成り下がろうとも。私は全てを実現させることを、ここに立っている同志である皆さんと…神に誓います。」
【彼女の演説が終わると同時に、万雷の拍手と彼女を崇める歓声が鳴り響いた。そして、鳴り止まない拍手喝采はマーリンが出した蓄音機と共に無へと消えていった。】
「何か…こう…おかしいですよね?だって…」
「…宗教団体を設立した張本人が異常な程に神に対する深い憎悪を示し…その意見に教団員も深い理解を示している…」
あっ…ジョゼフィーヌさんの推理タイムだ!
「神を滅ぼすことを神に誓うという皮肉…言葉の端々から感じられる深い憎悪…しかし…善悪の区別をつけ、救いという言葉を強調している…」
「何か分かったか?」
「いえ、まだ不確定要素が多いのですが…私が個人的に受けた彼女に対する印象は、彼女は人心掌握に長けており…意味も無く世界を滅ぼす様な思考を持っているとは思えない様な印象を受けました。」
「まぁ…そうだよなぁ…」
「僕は何も分かんなかったっすね。何か辛そうだったってこと以外は。」
「ん…?辛そうってどういう…」
「いや、今は止めとこうぜ。爺さん…もう他に情報はねぇのか?」
「いや、特に無いな。」
「じゃあさっさと本題に入っちまおうぜ。情報整理はここまでだ。」
「あっ…はい…」
は…春喜さんの言ってたことが気になるけど…
確かに時間無いよね…
「それでは、早めに済ませようか。」
あとがき
ここまで読んで頂きありがとうございました!
『祝福』についての話が終わり、今度は敵の話になってしまいましたので、内容をなるべく簡単にしながら投稿ペースを上げて行こうと思います。
コメント・感想も是非どうぞ!
次回をお楽しみに!