第二部「破滅を照らす者:賢者との出会い」その5
目次
第11章「青薔薇の死神」その1
第12章「青薔薇の死神」その2
ジョゼフィーヌの『祝福』について
あとがき
第11章「青薔薇の死神」その1
「それでは…最後は私ですね!」
ここはいつも通り慎重に…
「私の名前は『ジョゼフィーヌ』です。年齢は19歳で、イギリス人です。私は少し特殊な傭兵部隊に所属しているので…申し訳ありませんが私や部隊に関する詳しい事は話せません。周りの方々からは『ジョゼ』とも呼ばれていますので、呼びやすい方で呼んでくださいね!」
「あぁ、分かった、よろしく頼む。それにしても…傭兵部隊か…通りで…ところで、部隊内で階級のようなものがあれば君の階級を教えてくれないか?」
これは…少々まずい…
今ここで見習いでは無いと言えば、彼等に違和感を与える事になる。
しかし、今ここで見習いだと言えば…彼には確実に見抜かれてしまうだろう。
『マーリン』…彼は確実に歴戦の兵士だ。
自然な所作から溢れ出る隙の無さ、歩き方、冷静な瞳、リボルバーの扱い方。
そして…戦いに身を置く者からしか感じ取れない独特な威圧感…!
彼は私の部隊の仲間達とも…いや、恐らくそれ以上の実力者だ。
きっと私も彼には勝てないだろう。
素直に階級が無いと言えば…
いや…ここは…
「そうですね…部隊内では階級があるのですが…私は見習いなのでまだ階級を与えられていないんです。ですが…」
ここで私の事を完全に隠そうとして彼に不信感を与えるよりも、意図的に分かりやすい嘘をつけばいい…
「部隊内でトップクラスの方と作戦を遂行した際に、お褒めの言葉を頂き…1度だけ、高難易度の作戦を指揮する小隊のリーダーとしての権限を頂いた事があります!」
今ここで避けたいのは彼に不信感を抱かれる事と、彼等に私が嘘をついていると言われることだ。
「初耳っすけど違和感無いっすね。」
「はい…何かもう…納得したって言うか…」
「もう驚かねぇな。」
「ふむ…なるほど…」
やはり…彼だけは違和感を感じているようだ。
少々心苦しいが…嘘をついていることが彼等に気づかれなければ今は問題無い。
これは彼等の為だ…時には真実を知らない方が幸せな事もある。
しかし、いつかは真実を話さなければならないだろう。
だが、彼等が望むまでは…話さないままで終わるなら…
「では、君は大体のことはできるのか?」
「はい!基礎的な知識や戦闘能力を身につける訓練を全て受け、実戦経験も何度かありますので、お役に立てるかと思います!」
「それは素晴らしい。君のように優秀な兵士の助けを得られるのは実に有難い。『祝福』についての話を終えた後で私と一緒に作戦の内容を見直して、改善点やアイデア等を話し合わないか?」
「はい、分かりました!」
「ジョゼフィーヌさんの『祝福』…何か楽しみですね!」
「何か強そうっすよね。」
「あんたの『祝福』は…あんたがなんでも出来るせいで思いつかねぇな。」
「ふふふ…皆さんからの評価はとても嬉しいものですね!」
確かに期待されるのは嬉しいが…流石にプレッシャーが…!
「それでは…君も『魔武具』か『魔道具』を?」
「はい!出し方は…名前を呼ぶだけでしたよね?」
「あぁ。準備が出来たら試してみるといい。」
「はい!それでは…」
『魔武具』を受け止める為に両腕を前に伸ばし、手を上に広げる。
あの時に迷い込んだ場所で見た『魔武具』の姿と名前を思い出す。
……始めよう。
「『深淵の夜《Night of the Abyss》』!」
【彼女が名を呼ぶと同時に、彼女の手の前に銀の粒子の様なものと、夜の闇のような漆黒の霧が出現し、その2つが集まると一瞬にして狙撃銃へと変化した。】
「これは…ッ!」
私が愛用しているスナイパーライフルのプロトタイプ…UK.338BASと酷似している!
弾丸は…やはり0.388inch口径のマグナム弾か…!
「それは…イギリス軍で採用されているものと良く似ているな。」
「はい…恐らく、UK.338BASと同型かと思われます!」
「めっちゃ強そうじゃないですか!」
「カッコイイっすね。」
「それで、肝心の能力は?」
【彼女が銃の能力について聞かれると、『魔武具』を出すまで曖昧だった能力の詳細が、全てはっきりと脳内に浮かび上がった。】
「はい!能力は『私の思い通りに自動で、スコープの倍率調整やカスタマイズなどを瞬時に変更すること』と、『魔力を消費して2種類の魔弾を発射できる』というものです!」
「この銃の能力はこれだけっすか?」
「はい!」
「なるほど、1つめは戦闘時の状況に合わせて武器のカスタマイズを行って対応するものか…2つめの『魔弾』の能力について話してくれないか?」
「はい…『魔弾』には、あらゆる怪我を治療し、体力を回復させる『治療弾』と、あらゆる物に対して…特に魔物に有効で、対象から魔力と生命力を吸収する『銀の弾丸』の2種類が発射できるようです…!」
「『治療弾』…そいつはありがてぇな。」
「『魔物に有効で、対象から魔力と生命力を吸収する』…か。」
【彼はそう呟くと深く考え込んでいた。】
「どうかしましたか?」
「いや、恐らく思い違いだ…気にしないでくれ。それで、他の『祝福』はなんだね?」
「はい!それと先に申し上げておくと、『魔武具』と『異能』があと一つずつ…合計で3つあります!」
「す…凄い!4人の中で初めて3つも『祝福』が!」
「じゃあ…先に『魔武具』の方を終わらせちまおうぜ。」
第12章「青薔薇の死神」その2
「はい!それでは…『ReaperRose』!」
【彼女は『魔武具』の名を呼び、『深淵の夜《Night of the Abyss》』を回転させた。すると、『深淵の夜《Night of the Abyss》』が霧散し、青い光と漆黒の霧が集まり始め、やがてそれは大きな鎌へと変化した。】
「大鎌か…それは実に扱いが難しい武器のはずだが、それが君の『魔武具』として選ばれたということは…何か理由があるのだろう。」
「はい…その様ですね…少し振ってみてもいいですか?」
「あぁ、良いぞ。念の為に君達は私の後ろに来たまえ。」
「はい!」
「OKっす。」
「頼むから…間違えてもこっちにすっ飛ばすなよ?」
「…最善を尽くします!」
この大鎌…『ReaperRose』を手に取ったときは、扱い方が分からなかった。
しかし…
「はぁっ!」
【彼女が大鎌を振り下ろすと、大きな刃が空を斬る音を立てた。】
今までで大鎌を触った事は1度も無かったはずだが…
大鎌を扱う技術と体の動かし方が自然と身に付いている!
【今度は柄を片手や両手で持って軽く振り回したり、クルクルと回転させた。】
「ふぅ…『祝福』とは凄まじい力ですね…!」
「す…凄ぇ!」
「そうだな…ってかお前さっきから凄ぇかカッコイイしか言って無くねぇか…?」
「重たくないんすか?」
「はい!とても軽いので、片手でも扱えます!」
「扱い方は問題なさそうだな。そして、それにはいったいどんな能力があるのかね?」
「『魔力を消費して、対象から魔力や生命力を奪う茨や蔓を出して操作する能力』です!『ReaperRose』に触れていなくてもこの能力を使える様です!」
「マーリンさんのあの剣みたいに、使い方次第でとっても便利な能力になりそうですね!」
「他には能力が無いので、次の『異能』で最後になります!」
「それで、君の『異能』は何だね?」
「条件が少しややこしいのですが…簡単に説明すると、『魔力を消費して、私がしっかりと視認できた物体や生物の位置を入れ替える』というものです!」
「転移魔法か…それは実に素晴らしい…!」
「条件も軽く知っておきてぇな。」
「そうですね…まずは入れ替えられるパターンの説明をしますね!」
「あぁ、頼む。」
「1つ、視界内の物と物の位置を交換…2つ、視界内の人と人の位置を交換…3つ、視界内の物と人の位置を交換…4つ、視界内の物か人と自分の位置を交換する。という4つのパターンがあります!」
特にこの4パターンの中でも、スナイパーの私にとっては4番目のものが実にありがたい。
狙撃後に瞬時に別の場所へと移動したり、場合によっては高所にすぐ移動することが出来るというのは、狙撃ととても相性が良い…!
「そんで…今のが入れ替えのパターンって事は、発動条件とかもあるんだろ?」
「はい、それが… 1度に複数の交換を行うことは不可能で、大き過ぎるものや重すぎるもの、私がしっかりと視認できない場合などは、位置を交換出来ません。」
「なるほどな…いや、それでも十分使えそうじゃねぇか?」
「こ…こんなチート級の能力を手に入れるなんて…流石はジョゼフィーヌさんです…!」
「そっすね。」
「これで、皆の『祝福』の確認が済んだな。君達が望むなら私も自己紹介をするが…どうする?」
「めちゃくちゃ気になります!」
「そっすね。」
「あぁ、ぜひ聞かせてくれ。」
「私からもお願い致します!」
「…分かった。少しだけ長くなってしまうかもしれないが、休憩がてらの暇つぶしにでも聞いてくれ。」
ジョゼフィーヌの『祝福』について
Gift Type:魔武具
Weapon Type
ボルトアクションスナイパーライフル」
Name:『深淵の夜《Night of the Abyss》』
Skill
『臨機応変』
ジョゼフィーヌの意識を常に自動で汲み取り、状況に応じて瞬時に『深淵の夜《Night of the Abyss》』
をカスタマイズする。
スコープ、マズル、バレル、グリップ、ストック等のあらゆる部品を組み替える。
『魔弾:血の施し』
魔力の中でも生命力を消費し、血の魔弾を作り出す。
対象のあらゆる怪我の治療、生命力の回復を行う。
『魔弾:銀の杭《Silver Stake》』
魔力を少し多めに消費し、銀の魔弾を作り出す。
あらゆる物に対して凄まじい威力を発揮し、特に魔物や邪悪な物に有効。
対象から魔力と生命力を吸収する。
特に、頭や心臓に当たると威力と吸収力が増加する。
Gift Type:魔武具
Weapon Type:大鎌
Name:『ReaperRose』
Skill
『骸に咲く花《Corps Flower》』
魔力を消費して、対象から魔力や生命力を奪う茨や蔓を出して操作する。
茨と蔓による拘束、刺突、棘による出血などの効果があり、茨を刃に巻き付けることで威力が上がる。
『ReaperRose』に触れていなくてもこの能力を使える。
対象から魔力や生命力を奪う度に、茨と蔓に青薔薇が咲く。
Gift Type:異能
Name:『影の霧《Trans Figuration》』
視界内の物や人の位置を入れ替える。
入れ替えには物と物、人と人、物と人、物か人と自分の位置を入れ替える等の4パターンが存在する。
短時間内での連続使用は2回まで可能であり、1回で複数のものを入れ替えることは出来ない。
入れ替えの際には対象をしっかりと視認できていないと入れ替えることはできず、重すぎるものも入れ替えることは出来ない等の条件もある。
あとがき
ここまで読んで頂き誠にありがとうございました!
主人公メンバーの能力紹介はこれで終わりです!
次回はマーリンの生い立ちや作戦会議についての回になります。
『祝福』についてここが分からない・もうちょい詳しく知りたい!
等がありましたら是非、指摘して下さい!
感想・コメントなどもお待ちしております!
あと誰の『祝福』が好きだったかも教えてくださいね!
それでは次回をお楽しみに!