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安平学園物語

七五三は11月の行事 〜翼・まとい編〜【安平学園物語】

作者: ムゲン

今作は前半と後半でわかれており、

『七五三は11月の行事 〜結斗・美香編【安平学園物語】〜』

の翌日の話となっております。

もし良ければ、そちらもよろしくお願いします。


(全文:2,177字)

 ※簡単な人物紹介

 ☆竜ヶ水翼(りゅうがみず つばさ):まといの彼氏。長身無口なクール系男子。安平高校一年生。男子バスケ部。


 ☆鯉沼まとい(こいぬま まとい):翼の彼女。お姉ちゃん属性のロリ。安平高校一年生。女子バスケ部。



 ーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーー



「ーーって感じだったんだ」

「そうか」

「へぇ〜、楽しそうだね」

「またやろうねぇ〜」



 部活が終わった帰り道。昨日写真撮影をしたらしい小鳥遊くんと美香ちゃんから写真を見せてもらっている。いろんな構図で撮られていて、美香ちゃんのお父さんお母さんがいかに力を入れたかが分かる。



「なんだろう、〇タジオアリ〇の写真撮影を思い出したよ。少し恥ずかしかったけど、笑顔が絶えないのは良いことだよね。うちの親も喜んでたし」

「俺もゆいとも、写真にはあまり写りたがらないからな…」



 恥ずかしがりながらも嬉しそうに話す小鳥遊くんに、少し気まずそうに返すつばさくん。騒がしいのが好きじゃないつばさくんの性格からしたら、確かに好きじゃなさそう。

 でも写真かぁ。そういえばつばさくんと写真撮ったこと、一回もないなあ。

 なんて思っていると。



「まーちゃんは、七五三の写真持ってる?」

「え、あ、その〜」

「美香さん、さすがに七五三の写真を普段から持ち歩いてる人なんてそうそういないよ」



 わたしが答えに詰まっていると、すかさず小鳥遊くんがフォローを入れてくれる。小鳥遊くんは常に周りを見てて、困っている人のフォローが上手い。所属してるバスケ部でもそのフォロー力は健在で、味方のミスをカバーしている。



「そっか〜、ざんねん」

「ごめんね、美香ちゃん」

「ううん、いいよ〜。……あ♪ じゃあ今からみんなで写真撮ろ〜」

「唐突だな…」



 つばさくんの言う通り、美香ちゃんは唐突に何かを言うときがある。内容的にはいつも、すぐにできるようなことしか言わないけど、突然だから聞く側はびっくりしちゃうんだよね。



「いいからいいから〜。ほら、寄って寄って〜」



 そう言われて四人で寄り添って、美香ちゃんが自撮りの要領で写真を撮る。撮ったあとすぐにメッセージの通知が来て、開くと今撮った写真が添付されてた。は、早い。これは慣れている人の早さだ…。

 でも何はともあれ、これで初めてーー。



「つーちゃんと一緒だね〜」

「え?」

「あぁ、そういうことだったんだ。つばさ、これ鯉沼さんと一緒に写ってる初めての写真でしょ」

「……そういえば」



 バツの悪そうな顔で答えるつばさくん。もしかして今写真撮ったのって、わたしを気づかって…?



「あ、ありがとう、美香ちゃん」

「ふっふっふ〜、エスパーミカにはなんでもお見通しなのです。ドヤ〜」

「……感謝する、鳳」

「……“いつもなら調子に乗ってる鳳に文句を言うところだが、自分が気を回せなかったことへのフォローだから文句を言うに言えない”、って顔してるね、つばさ」

「……うるさい」



 小鳥遊くんの言葉に、そっぽを向くつばさくん。最近分かってきたことだけど、つばさくんは恥ずかしかったり気まずかったりすると、そっぽを向く癖があるみたい。そういうところはちょっと可愛いな。



「ごめんね、つばさくん。それと、一緒に写ってくれてありがとう」

「ーー。……こちらこそ」



 わたしがお礼を言うと、少し目を見張りながら返すつばさくん。

 つばさくんと一緒に写る初めての写真。

 嬉しいなぁ~!  大事にしないと。



ーーーーーーーーーー



「じゃあつばさ、またあとで。鯉沼さんもまた明日」

「ふたりともまたね~」

「うん、また明日!」



 写真を撮ってしばらく。俺とまといはまといを家の近くに送るため、ゆいとと鳳から別れて帰路についた。



「えへへ~」



 さきほど撮った写真がそうとう気に入ったのか、まといはとても上機嫌だ。今にも鼻歌が聞こえてきそうな「~~♪」、聞こえてきた。



「気に入ったのか?」

「あ、うん。それももちろんあるんだけど、つばさくんと一緒に写真撮ったことなかったから」



 そっちの方がずっと嬉しいの。

 そう語るまといの表情は嬉しそうで、見てるだけのこちらまで嬉しいと思えてくる。写真を撮っただけで喜んでもらえるなら、いくらでも撮る。



「写真か。今まで自分から撮ったことはなかったな。……今思えば、デートのときに撮っていればよかったな」

「た、たしかに。デートのときは緊張しちゃうもんなあ」



 あまり回数こそ重ねていないが、まといとは何度かでーとをしたことはある。しかし、思い返してみると、お互いデートで頭がいっぱいで、写真にまでは考えが至っていなかった。



「これからは、もう少し写真にも気を配っていくか」

「そうだね。……あ、そうだ。じゃあ今撮らない。『写真を撮ることを決めた記念日』ってことで!」

「……そうだな」



 まといと付き合うようになって、その結果鳳とも関わることが多くなったからか。最近のまといは、鳳の突拍子のなさが似てきているように感じる。だがそのことは悪いことでは決してなく、むしろ遠慮しがちなまといには良い変化のように思う。ーーそう感じるのは相手がまといだからか、俺もまといと付き合いだして変わりつつあるのか、それは分からない。



「じゃあそうだなあ。すぐ近くに公園があるから、そこで撮ろっか」

「わかった」



 まといに促され、公園で写真を撮る。

 周りは暗く、少し肌寒かったが。



「あはは、電灯の灯りで、逆に見づらいや」



 その写真からは、明るさと温かさを、確かに感じたーー。


読んでくださり、ありがとうございました。


久しぶりの投稿で、かなり苦戦しましたが、

書いててとても楽しかったです。

他の作品も読んでいただけると幸いです。


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