二話 双子と人形技師
《或る少年の日記 2》
20xx年4月15日
今日はひさしぶりにれいはいによばれました。
ぼくはとくべつらしいので、あまりきょうかいにくる人にあうことはできません。
いつもよりたくさんの人たちがおいのりをしていました。
その中には、ぼくと同じくらいの子たちのすがたもありました。
みんな、なかがよさそうです。
ぼくもおともだちがほしいとかんじました。
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ようやく少女を転移させた場所へとたどり着いた。思っていたよりも離れた場所へ送ってしまったらしい。
「あの子は…あ…」
まだ遠くへは行っていないだろうと仮定し、探していると少女の姿を見つけた。その近くには少年もいる。見た目はそっくり、双子だろうか?
「イル、大丈夫だった?」
「大丈夫だよ!ウルは大丈夫だった?」
「大丈夫だよ。」
互いをイル、ウルと呼び合った2人は会話をしている。家族に会えたから安心しているのだろう。
「あの…」
「「あ!おにーさん!」」
声を掛けたら同時に反応してきた、本当に双子みたいだ。
「2人とも、大丈夫みたいだね」
「助けてくれてありがとう!」「ありがとう」
少女が元気よく礼を言い、少年が真似するかのように繰り返す。
動きまで同じだった、まるで同一人物かのように。
「2人はどういう関係なの?」
「双子だよ!!」「姉弟だよ」
口々に答える、やはり双子で間違いないようだ。
「こっちがウルで、そっちがイル!」
「違うよ、さっきまでそっちがイルじゃないか!」
「今変えたの!今からこっちがウルなの!!」
自己紹介をしてくれるのかと思ったら急に揉め始めた。名前を交換しているかのように…
ん?名前を、交換?
わけがわからない…
「おーい!イル、ウル!こんなところにいたのか!」
1人困惑していると男性が走ってきた。ん?あの顔、どこかで見たような…?
あっ…お隣さんだ。
「「ローゼル!!」」
双子が彼の名を呼ぶ。
「すいません、迷惑かけてしまって…おや?キミは…」
「どうも」
ローゼルと呼ばれた男性はすぐこちらに気づいたようだ。
「2人は知り合いなの?」「知り合いなの?」
双子は興味深々だ。心なしか、目が輝いているように見える。
「え…まぁ…」
「あぁ!最近お隣に引っ越してきた子だよ!」
俺が説明する前にローゼルさんが説明してくれた。
「へぇー!」「そうなんだ!」
双子が嬉しそうにはしゃぐ。
「にしても、こんなところで合うなんで偶然だねぇ。」
「はぁ…」
距離の詰め方が上手い、いや、早いと言うべきだろうか。こういうタイプの人間とは、あまり話した経験がない。
「仲良しさんだ!」「仲良しさんなの?」
双子からも質問攻撃、どうやら気になるようだ。
「いや、その…」
「私もキミについて聞きたいなぁ、少しだけでいいからさ!」
完全に会話から外れるタイミングを見失った、その時、
『いつまで話しているつもりだ阿呆!』
突然悪魔が本の中から話し始めた。
「いや、今、人前だから…」
面倒事がまた1つ増えた。
ここで話すのはまずいことくらい理解できる、出来れば騒がないで欲しい。しかし、俺の願いとは裏腹に、
『関係あるかいボケ!吾輩はもう飽きたぞ!さっさと帰らせろ!』
悪魔は声を更に大きくし話し続ける。
「だから、少し静かに…」
『悪魔の声は一般人には聞こえないんだ!こんなところで喋っても問題は…』
「おや?随分と可愛らしい子を連れているじゃないか」
「…!?」
今、なんて言った?コイツに気付いているのか?だが、さっき悪魔は"一般人には声が聞こえない"と言っていた。気づくのは明らかにおかしい。
『お前、吾輩の声が聞こえるのか?』
「あぁ、もちろんだとも」
『お前…まさか…』
悪魔は何か思い当たるらしいが、俺は検討も付かない。何故、彼は悪魔の声を聞けるんだ…?
「ふふふ…かわい子ちゃんは気づいたみたいだね。」
「あの、貴方は一体…?」
「まあ、ここで話すのもなんだし、よかったらうちに来ないかい?」
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「さーて、改めて自己紹介をしないとだね。ほら、2人とも。」
そう言うとローゼルさんは双子に自己紹介するように促した。
「アタシはイル!」「ボクはウル。」
「あぁ、俺は伊吊、如月伊吊だ。よろしく。」
「「よろしく!!」」
2人が順番に自己紹介する。それに返すように、俺も自己紹介した。
少女の方はイル、少年の方はウルと言うそうだ。しょっちゅう名前を交換している為、ローゼルさんも苦労しているらしい。
「この2人も実は能力者でね、互いが見ている光景がハッキリと伝わるらしい。」
詳しく説明すると、2人の能力は【共有】というものらしい。片方が見ている光景が現在進行形でもう片方にも伝わる上、テレパシーで会話をする事も可能らしい。
なるほど、だからあの時2人揃って"ありがとう"と言ってきたのか。ようやく理解できた。
「ウルの事ならなんでも分かるよ!」
「イルの事ならなんでも分かるよ。」
2人が次々と口にする。仲も良いみたいだ。
微笑ましさと同時に、何故か少し懐かしい感じがした。
「そして私はローゼル、2人の保護者役をしている。よろしくね。」
やはりローゼルさんは2人の面倒を見ているようだ。双子が懐いている理由もよく分かる。
「さて、イル、ウル、これから彼と大事な話をするから、少し席を外して貰えるかな?」
「えーなんで…「わかった、行くよ、イル。」…はーい」
ローゼルさんの言葉にイルは少し不満そうだったが、ウルに丸め込まれて渋々部屋を出て行った。
「…では、少し真面目な話をしようか。」
今までの柔らかい雰囲気とは打って変わって緊張感が襲ってきた。彼の目も、鋭くなったように感じる。
「あの悪魔ちゃんにも出てきて欲しいな。きっとあの子はある程度理解しているはずだからね。」
『…なんのつもりだ。』
彼が一声掛けるとあの悪魔、クロノエルが出てきた。声色から察するに、本当に理解しているようだ。
「伊吊君、君も少しは分かっているかもね。」
「…あぁ。」
"悪魔の声は一般人には聞こえない"確かにあの時クロノエルは言っていた。しかし、ローゼルさんは声を聞くことはもちろんの事、会話すら出来ている。この事が示す答えは
「ローゼルさんは、悪魔と契約したんですか?」
間、静寂が空間を支配する。
彼の目が…少し笑った気がした。
「結構ハッキリ言うんだねぇ、そう言うの嫌いじゃないよ。」
『とっとと言え!契約者!貴様の誤魔化しは効かないぞ!』
答えをはぐらかそうとするローゼルさんに痺れを切らしたのか、クロノエルが大声で叫ぶ。
「まぁまぁそう怒んないでよっ☆」
『イラつくなぁ!コイツ!!』
早く答えてください、この悪魔のイライラがMAXです。
「フフフ、確かに私は悪魔と契約したよ。そしてその悪魔はここに居る。」
そう言って彼が出したのは1つのぬいぐるみ。黒い山羊の形をしている。一見何も無さそうに感じるが、これと悪魔になんの関係があるのだろうか。
「これは…?」
「まぁ、これに関しては悪魔ちゃんから説明して貰った方が良さそうだ。」
そう言うとローゼルさんはクロノエルの方を向いた。
『チッ…悪魔というのは決まって本体とも言える物が存在しており、それの事を"造物"と呼ぶ。例を上げるなら、吾輩の本やそのぬいぐるみの様な物だな。』
「つまり、このぬいぐるみにも同じように悪魔が…?」
「そういう事だよ。」
ローゼルさんがぬいぐるみを指先で2回叩く、すると突如としてぬいぐるみが動き始めた。
「この子が私の契約した悪魔だよ。」
『ギャギャッ』
今のは、鳴き声?確かにこのぬいぐるみ、もとい悪魔から聞こえてきた。
「低級悪魔らしくてね、言葉は話せないそうなんだ。でもこちらの言葉は理解できるらしい。」
『ギャッ』
ローゼルさんに説明され、ぬいぐるみはこちらを向いてドヤ顔した…ように見えた。
「ちなみに名前はヤギ」
『おい!もっと名前ちゃんと考えてやれよ!』
「そのまんま…」
山羊にヤギ…名前を呼ばれて喜んでいるこの子を見ると、なんだか虚しくなってくる。
「契約によって手に入れた力は"人身操作"。元々は物を動かせる程度だったんだけど、もう少し力を付けたくてね。そこで、級を上げたがっていたヤギと意気投合して契約したってワケ。」
悪魔と意気投合…この人、なかなかに凄いのでは?
「あの双子も少し関係あるんだけど、この話はまた今度にしようかなぁ~」
『は!?突然すぎんだろ!!』
これから色々聞けるだろうというタイミングでローゼルさんは突然話をやめてしまった。
「また今度話すよ。伊吊君も今日はゆっくり休むといい。」
「何故ですか?」
「えー、だってさぁ、」
「契約初日ってなかなかにしんどいよ。今までぶっ倒れてないだけ奇跡だって。」
そう言われた途端、いきなり目眩がし始める。
気づいた頃には床に倒れていた。
「人身操作で疲れを軽減してたんだけど、流石に限界だったみたいだねぇ。悪魔ちゃんもちゃんと教えてあげなきゃダメじゃないか。」
『フン!なんで吾輩がコイツの心配をしなきゃいけないんだ!』
「あっはは!確かにねぇ、そんなもんか。」
まずい…意識が…切れ…
「今日のところは私が部屋まで運んであげるから、面倒は見てあげてね?」
『全く…今回だけだからな。』
その2人の会話を最後に
俺の意識は消えていった…。
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夜明け間近の頃
「ふーん、ここがクラウダねぇ」
「ちょっと、勝手な行動しないでよ!」
2人組がクラウダの入口前に立っていた
「分かってるってー!そんなんしないから!」
「全然分かってない!それを勝手な行動って言うの!!」
走り始めた少年の後を少女が追う
「ここは危険なんだよ!指定紛争地帯!私達の住んでる国とは比べ物にならないんだから!」
少女が必死に説得するも、少年の耳には届かない
「そんな心配すんなって!」
「だって俺、"勇者"だから」




