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偽神と創造者  作者: 奏沢
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一話 青年、外郭にて

《或る少年の日記 1 》

20xx年4月12日

今日、この本をわたされました。

えらい人は、この本に1日で何をやったか書くようにいいました。

それを"にっき"とよぶそうです。

なので、ぼくはこれからまいにちにっきを書きます。

まいにち何もすることがないのでにっきを書けばたいくつしないとおもいます。

でも、今日は書くことがなにもないので、あしたからはがんばって書くことを見つけたいです。


************************


カーテンを閉めた車窓の隙間から入り込む日の光で目を覚ました。時刻は12時丁度を指していた。

「…そろそろ着く頃か」


外郭、即ち内紛が絶える事なく、国から見放された地。技術の進化は数年前の状態から止まり、退廃した場所。能力者が全てを支配し、持たざる者は支配される。

その中でも人口は僅か1000人程の安全地帯を訪れていた。

列車を降り、駅近くにある受付に立ち寄る。

「ようこそ、通行証を確認致します。」

言われた通り、通行証と呼ばれた1枚の紙を受付嬢らしき女性に見せる。

「確認致します。…如月伊吊さん、でお間違いありませんでしょうか?」

「はい、合っています。」

"如月伊吊"、俺の名前。

緑の目に少し薄めの黒髪。

今の時代では珍しい日本人とフランス人のハーフ。

「こちらは外郭、『クラウダ』となっております、確認が完了致しました。どうぞ、お通りください。」

まるで機械の様な話し方をする受付嬢から通行証を受け取り、俺はその場を後にした。


俺は数年前に故郷を離れた。しかし、あの頃の事は、どうやっても思い出す事が出来ない。

自分が何をすべきなのか、どうしてここにいるのかも、ハッキリとした理由が思い出せていないのだ。

一時的に住むためにこの町に訪れたのだが、外郭での抗争が日に日に激しさを増しており、近いうちにこの町にも被害が及ぶだろうとも言われていた。


歩き始めて数十分、ある一角のマンションに着いた。想像以上にこの周辺は綺麗に整備されている

ここの大家に挨拶を済ませ、部屋の鍵を受け取る。そこには"402"と書かれていた。

部屋の前、鍵を開けた、その時、

「ふぁ~あ…ん?あれ?キミ、新しく引っ越してきた人かな?」

偶然出てきた隣の部屋の人に声を掛けられた。

「珍しいねぇ、今はもう殆どの人が都市部に避難したっていうのに、今更引っ越して来るなんて。」

と欠伸をしながら言ってくる。

「まぁ気を付けなよ、ここももういつまで持つか分からない様なもんだから。じゃ。」

そう伝えるとお隣さんはぶらぶらとどこかへ行ってしまった。

借りた部屋のドアを開けた。中は殆ど使われてなかったからか、ホコリが舞っている。

「掃除しないとだな…」

すると部屋の隅に、一冊の本が落ちているのを見つけた。分厚く、黒い表紙。これが俗に言う魔導書みたいなものだろうか?いや、有り得ないだろう。

とりあえず、本の持ち主について調べる為に、外に出る事にした。

受付の女性か大家にでも聞けば、前に住んでいた人について聞けるかもしれない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「申し訳ございません、前住居者の情報は残っておりません。」

先程の受付嬢からあっさりと告げられた。

マンションの大家にも聞いたが、分からないと首を横に振られてしまった。

前住居者の物かと思っていたが、どうやら俺の検討違いだったらしい。

…しかし、その人の情報が残っていないなど有り得るのだろうか。

持ち主は一体誰なのか、考えながらその場を後にする。


その時だった


照明、爆発音

町の一角が弾け飛ぶ


俺は自ずと理解した


これ程の被害を出せるのは、"能力者"しかいない、と。

能力者同士の抗争が、遂にこの町で起こった。

恐怖で叫び、逃げ惑う人々、その中で、俺はある存在に気づいた。


(あそこにいるの…人か?)

間違いなく、そこには小さい少女がいた。戦闘している場所の近くで、身動きが取れない様子だ。このままでは、いずれ巻き込まれてしまうだろう。

しかし周りを見ても誰も助けようとしない、見向きすらしていなかった。

気付いているのは、俺だけだ。


『…だ…ら、…』


…俺が助けるしかない

何故かそう思い、咄嗟にその場を駆け出す。

幸いにも、少女の傍に着くまでには能力者達に気づかれることはなかった。

「大丈夫?」

如月が声を掛けると少女は安心したのか泣き始めた。

しかし、安堵するのも束の間

「オイ!!こっちに誰かいるぞ!!」

「敵だ!!やれ!!」

能力者達に気付かれてしまった。

まずい、こちらには対抗策がない。それに…


この子が危ない


少女を影に隠し奴らの前に出た。

集中的に攻撃されるが、間一髪避け切る。

しかし、このままでは身が持たない。

一体どうすれば…

そう悩んでいた瞬間


…攻撃が止んだ

いや、"止まった"と言った方が正しいだろうか。こちらを攻撃し続けていた能力者も、逃げ惑う人々の姿も、まるで時間自体が止まったかの様に動かなくなっていた。


『…い…おい!おい!!』

その現象に困惑していると何処かから声が聞こえてくる事に気付いた。必死に声の出処を探す。


『全く…やっと気付いたかこのボンクラめが!!』


喋っていたのは、


あの黒い一冊の本だった。


『吾輩の事を乱暴に掴みおって!!挙句の果てにはつまらん争いに巻き込まれるとは!!貴様は相当な世間知らずの様だな!!』

初対面にも関わらず暴言を吐かれまくる。

明らかに少女の声だが、話し方はまるで老人の様だ。

「あの、どちら様でしょうか。」

『フン!!あの本を所持しながらも吾輩の事がわからんとは、ますますこの世は世間知らずが増えたものだな。仕方あるまい、吾輩の姿を見せてやろう!』


そう言って本の中から現れたのは


『ふっふっふ…聞いて驚け!』

『我が名は"クロノエル"』

『時と空間の邪神の眷属なる悪魔よ!!』


"悪魔"と名乗った、人形に近い形をしたものだった。


「悪…魔…」

『どうだ!吾輩の姿に恐怖し、恐れおののいたか!!』

悪魔はやけに自信有り気だが、残念ながら

「いや、そうは見えない」

『なっ…』

悪魔は驚いているが、俺は思った事をただ伝えただけ。

本当に怖い、などという感情は浮かばなかった。どう考えても可愛らしい人形ではないか。

『貴様~!!本当に失礼なやつだな!!ここは嘘でも怖いとか言うとこだろ!!』

「そうなのか、わかった」

『いや、ホントに分かっているのか…?』

悪魔は少し不満そうな顔をした。

「ところで、どうしてここに現れたんだ?」

『…その質問を急に投げてくるか、まぁいい、教えてやろう!』


『吾輩が貴様の前現れた理由、それは、この危機的状況に置かれながらも、無力で可哀想な貴様に救いの手を差し伸べてやろう、という慈悲の心が動いたからだ。』


「悪魔が慈悲なんて口にするのか。」

『貴様、吾輩の事馬鹿にしてるだろ。』


『だが、慈悲がある事は本当だ、貴様に、今のこの状況を打開する術を与えてやろう。』

『この少女を助けたいのだろう?』


御伽噺の中の悪魔は、人間の欲を求め、偉大な力を与え、代わりにそれ相応の代償を求めるもの。

人々は、その行為を「横暴だ」「残虐である」と言う。

しかし、


「その代償は?」


俺はそうは思わない


『想像よりも理解が早いな、全くの無知ではなかったようだ。』


想像以上の力を手に入れるのだ、対価を払うのは当然の行為。


『貴様の身体に、我が主を宿らせる。』

『貴様が死んだ時、その身を我々のものとさせて貰う。』


この状況を変えられる力が手に入るのなら、

あの少女を救えるのなら、

「安いもんだ。」


『その態度、気に入ったぞ。』

突然、周りが輝き始める。

いや、自分が光に覆われているのだ。

『契約成立だ。』

『貴様には"空間を自在に操る力"でも与えてやろう。』


悪魔の声が聞こえた後、時間が動き始めた。

集中攻撃が再開されるが、それよりも先に少女を抱えて転移する。

空間を操る力と言われたが、場所同士を繋げる事もできるのか。

「もう大丈夫だ、周りにも人がいる。安心していい。」

少女を激戦区から離す事には成功した、この力があれば、あの抗争を止められるかもしれない。

もう一度転移して、さっきの場所に戻る。

「戻ってきやがったぞ!」

「コイツは馬鹿なのか!わざわざ死にに来るなんて!」

再び集中攻撃が始まる、


しかし、その攻撃は俺には届かなかった。


攻撃が自分の元へ着く前に、目の前にある空間を割いた、奴らの攻撃は全てその中へと入って行く。

『ふむ、思ったよりも上手く使えている様だな。』

「そりゃどうも。」

悪魔と軽く会話し、すぐに臨戦態勢を取る。

俺は槍を取り出し向かってきた相手に一振りした。男の体が2つに裂ける。

「なッ…」

空間断裂、直接的に斬った訳では無い為、血が流れる事も、死ぬ事もない。

後ろから更に人が押し寄せてくる。

『派手にぶちかませ!!』

悪魔に言われた通り、今度は本気で槍を振り回した。


轟音、周りの退廃した建物が次から次へと崩れ落ちる。

こちらへ掛かってきた者の大半は崩落に巻き込まれた。

体を裂かれた男は驚いた顔をしていた。

その男の元まで近づく。

「君もこうはなりたくないだろ?」

「ヒッ…」

「もう二度とこの町の人々を巻き込まないと約束しろ。」

「わ…わかった…約束する…!!」

体を元に戻してやった後すぐに男は生きている仲間を連れて逃げ出していった。


すぐに悪魔が顔を出す。随分とご機嫌そうだ。

『なかなかに面白い物を見せて貰ったぞ!貴様の事も気に入った!』

「…そうか」

そういえば、あの少女は大丈夫だろうか。

「悪い、あの子の様子を見てくる。」

そう伝えると、俺は少女の元へと駆け出して行った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


『いや~我が主の力をすぐに扱えるとは、吾輩も実に素晴らしい逸材を見つけたものだなぁ!!』

『…にしても、あの槍は一体どこから取り出した物なんだ?あんな力は渡してないぞ?』

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