ダグラス:冒険者酒場のシステム
■Side-ダグラス
「はい、選手こーたいなのだ」
反響した幼女の声が店内に響く。
「て、店長……!」
「ど、何処だ?」
下の方を探すが、見当たらない。
すると、天井の一角が外れ、階段が降りてくる。
忍者屋敷か何かか。
「初めまして。ノダは、ノダって言うのだ」
そう言って、奇抜な姿の幼女が落下し、ふわりと着地する。
階段、使わないのかよ。
身の丈は120センチ程度だろうか。
背の小さいペンギーと比較しても、尚も小さい。
金髪に同色の翼と甲殻を持った尻尾。
「ドラゴノイド……?」
レジーナが、ボソリと言葉をこぼす。
「知っているのか?」
「えっと、ごめん。今のは失言だった……」
「ノダがせつめーしても良いけど、今はかんけー無いからスルーするのだ」
ノダと名乗った幼女はそのまま俺たちをかき分けて、店の奥に歩みを進める。
「詳しい話は奥でするから、付いて来て欲しいのだ」
俺たちは彼女に連れられて、店の奥へと入っていく。
先は更に階段が続いていて、店全体が一つの迷宮の様だった。
「この部屋で良いのだ?」
そう言って、ノダが扉を開ける。
背の低い長テーブルが中央に置かれ、それを囲う様にソファーが配置されていた。
カラオケルームみたいな配置だが、シックで落ち着いた雰囲気だ。
部屋の広さも申し分なく、ノダを含めた五人が入っても充分に寛げる。
「ああ、問題ない」
「じゃあ、どうぞどうぞなのだ」
彼女に促され俺たちは部屋に入り、ソファーへ腰をかけた。
「スタアトから来たって事は、この街の冒険者のシステムを知らないと思うからせつめーするのだ」
あれ、その話は彼女がくるよりずっと前にしていた話なんだが。
どこかで聞いていたのか?
「聞いてないけど、状況から考えれば概ねわかるのだ」
「ああ、なるほどってええ!?」
おい、今、俺は口に出して無かったぞ。
「聞いていなくても、状況から考えれば概ね分かるのだ」
さっきとほぼ、同じ言葉。
だが、今度は納得できない。
納得できないが、多分説明を聞いても理解できないと思う。
「いいや、話を続けてくれ」
「えっとね……」
その後、ノダによるこの街の冒険者システムに関する説明を受けた。
なんて言うか、全体的に滑舌が悪くて、喋り方も子供っぽいから。
理解に多大な労力を必要とした。
ペンギーなんて猫みたいに丸くなって寝てるぞ。
「まあ、話は分かった」
ノダの話を、脳内でもう一度整理する。
冒険者の多すぎるサアドの町では、パーティ単位での管理は行っていない。
複数のパーティが集合したクランに冒険者の等級をつけて管理している。
スタアトの様な、冒険者が依頼の争奪戦をする事もない。
各クランには個室やテーブルが割り当てられ、依頼者がそこに赴く形だ。
「この部屋が、そうだって事か」
「せーかいなのだ」
「それって、常にこの部屋に誰か一人はいないといけないってこと?」
全員を代表して、レジーナが聞く。
「常にいる必要は無いけど、なるべくいた方が依頼の面では有利だよのだ」
「まるで、店側も極力、依頼の内容に関与したく無いと言わんばかりだね?」
「ノダ、むずかしーこと、わかんないのだ」
サムの問いに、ノダがすっとぼけた回答をする。
意図的……だよな?
まだ少し、掴みかねるな。
「それで、冒険者として食っていけるのか?」
「まあ、大半は無理だよねのだ。大体の人は、冒険者ドリームを夢見つつ、生活の為に他の仕事もしているよのだ」
幸いな事に、クラーケンの討伐で俺たちの懐は相応に暖かい。
この状況を聞くと、低級冒険者でもギリギリ食っていけていたスタアトは良い方だったんだな。
当然、酒場が管理したく無い依頼もあるって訳か。
「話は大体、分かった。それで、俺たちは何級クランになるんだ?」
「他のクランに入るよてーは無いのだ?」
「ない」
「それなら……」
ノダの蛇の様な目が金色に輝き、俺たちを見渡す。
すると体が急に硬直し、身動きが取れなくなった。
「そっちの、リス獣人のお姉ちゃんも仲間なのだ?」
金縛りは数秒で終わり、ノダが問いかける。
「ああ、そうだ」
「それなら、ゴールド級だよのだ」
「……ちなみに、レジーナがパーティでは無かったら?」
「しーるーばーのだ」
「分かった、これから……よろしく頼む」
「ノダの方こそ、今後ともよろしくなのだ」





