ダグラス:海の男の人、ごめん
ヴォイテクとは一度別れ、しばらくたった。
バーのステージで演奏が始まる。
独特なリズムに合わせて、吟遊詩人の男が歌う。
「なあ、この歌詞……」
不吉の黒猫、不沈のサム。
彼女が乗った船は必ず沈む。
彼女の主人は必ず反逆によって殺される。
しかしもう安心、不沈のサムは軍神ダグラスによって討ち取られたり。
「あ、あはは……」
気まずそうに、視線を逸らすサム。
俺がジト目で見ていると、彼女が弁明を始めた。
「確かに僕は過去に七回、海に出て、十回、僕の乗った船が不運な事故で沈んではいるけど……」
「そこまで行ったらもう必然だろ!」
「まって、落ち着いてくれ。僕が何かした訳じゃないんだ、本当に、不幸な偶然が重なって……」
その時、船が大きく揺れる。
「クラーケンが出たぞぉおお!!」
外から、誰かの声が聞こえてくる。
うん。
海の男の人、ごめん。
本当に、ごめん。
貴方が正しかった。
「行こう! 甲板にいるペンギーが心配だ」
俺たちは甲板へ向かって走り出す。
道中、レジーナが別の道へ入る。
「みんなの分の武器を取ってくる!」
「頼む!」
乗客をかき分け、俺たちは甲板へと上がる。
そこでは、武器を持った男たちが船を沈めようと絡みつく触手と戦っていた。
「ペンギー!」
「ダグ!」
男たちに混ざって闘う彼女を見つける。
彼女の容姿は、戦場でもよく目立つ。
「ダグラス君!」
すぐに、レジーナが俺たちの荷物を持って帰ってきた。
俺も武器を受け取り、戦いに加わる。
「行くぞ!」
甲板へと上がってくる触手にタイミングを合わせて、ハルバートを振るう。
”ペネトレイト”が発動して、触手を両断する。
明らかに、刃より触手の方が太いと思うんだが。
まあ、いいか。
「がぁぁぁぁぁあああああ!」
水しぶきが上がり、クラーケンの頭部が見える。
同時に、ペンギーが飛びかかる。
おい、下は海だぞ!
「リピート!」
吹き飛ばす呪文を水面へ向かって撃っている。
落ちた時のリスクを考えると、俺にはできない行動だな。
「ペンギー!」
ペンギーの元に、触手の攻撃が襲いかかる。
彼女はそれを、自慢の鉈武器で切り裂いていく。
やがてクラーケンの頭部に辿り着き、渾身の一撃を放った。
「ーーーー!」
重低音が響き、クラーケンが海に沈んでいく。
「やったか!」
「ダグラス君、何かにつかまって!」
直後、レジーナが声を荒げる。
考えるより先に、船の縁にしがみつく。
「ペンギー!」
彼女に声をかけて、手を伸ばす。
「ダグ!」
クラーケンに一撃を入れたペンギーも俺へ手を伸ばした。
「沈没するぞぉぉおおお!」
海底から、クラーケンの触手が伸びてくる。
それらが船体を締め付け、バキバキと砕いていく。
やがて、船は真っ二つに折れて、沈んで行った。





