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ダグラス:”憤怒と嫉妬”のサム

■Side-ダグラス


 数時間後。

 伝令が届く。


「は、発見! 北西の方角に帝国軍と思われる一団を発見しました!」


「まずいな……」


 すでに、町からかなり離れられている。

 これから追いかけても、部隊単位では追いつけないだろう。


「ダグラス君、ペンギー嬢ちゃん、ついてきてくれるか?」


 ブルーノについていき、グンテの屋敷に入る。

 やがて、魔導機械が大量に置かれている部屋にたどり着いた。


「こ、これは……」


 そこには……前世の知識でいうと、バイクが置いてあった。

 正確には、バイクの様な物、と言った方が良いか。


「妖精王国製の、魔導バイクという物だ。二人までなら、これで追いつける」


「俺と、ペンギーで行く」


「しかし、運転にはコツが……」


「多分、わかる」


 俺はそういうと、バイクに跨がる。

 キーを回して、クラッチを引く。

 左足でギアを落として、エンジンをかける。

 予想していたよりもずっと優しい駆動音だな。


「どうし……」


 説明をしている暇はない。

 アクセルを吹かし、わずかにクラッチを開ける。

 そのまま、バイクでペンギーの前まで移動した。


「ペンギー」


「うん」


 声をかけると、彼女は躊躇う事なく、俺の後ろに跨った。

 呆然とこちらを見つめるブルーノに、声をかける。


「ブルーノ」


「どうした」


「ちょっとこの国、救ってくる」


「……ああ、頼んだぞ」







 荒野をペンギーと二人、バイクで疾走する。

 このバイクには、レーダー機能がついていた。

 すでに、グンテの亡命部隊は完全に補足している。


 このままいけば、間に合いそうだな。


「ダグ、誰かいる」


 大岩の前に、人影が見えた。

 同時に、閃光が迸る。

 バイクが爆発し、空へ投げ出された。


 空中で姿勢を制御して、受け身を取りながら砂漠を転がる。

 異世界でなかったら、間違いなく大怪我だな。


「ペンギー、大丈夫か!」


「うん」


 なんと、彼女はすでに二本足で綺麗に着地していた。

 怪物じみたバランス感覚だな。

 まるで魔法みたいだ。


「やあ、早かったね」


 声のする方へ、視線を向ける。

 そこには、サムが立っていた。

 普段の様な、ラフな格好ではない。

 帝国製のプレートメイルをアレンジした白い鎧に身を包んでいる。


 声にも、いつもの様な穏やかさはない。

 剣呑とした雰囲気が、漂っていた。


「しかし……よくも、やってくれたね。まさかほんの一週間足らずで、国を滅ぼすとは思わなかったよ」


「それは、俺がすごいんじゃない。お前たちが、今までやってきた事が酷すぎたんだ」


「ははは、言ってくれるね」


 彼女の質問は続く。


「ところで……君が、そうなのかい?」


「なんの話だ」


「君が”希望の剣”なのか?」


 ”希望の剣”は、俺たちが協力している革命のグループの名前だ。

 革命を主導している立場として、メンバーと言っても差し障りはないだろう。


「……? ああ、そうだ。俺は”希望の剣”だ」


 俺の答えにサムは俯き、わずかに沈黙が訪れた。

 やがて、彼女からくつくつと笑いがこぼれる。

 それは徐々に大きくなり、ついには爆笑へと変化した。


「ふふ、ははははははは! そうか! 君だったのか! あっはははははははははは!」


「おい、どうし……」


 絶望と狂気を内包した爆笑。

 その声は、乾いた砂漠の大地に響き渡る。

 俺は声をかけたが、遮られた。


「全く……悔しいけど、やはり陛下の人を見る目は確かな様だね」


 彼女はそういうと、二本のククリ刀を抜き放つ。

 顔をあげて、俺を睨み付ける。

 ゾクリ、と恐怖が背筋を駆け上がるのを感じた。


「ひっ!」


 隣で、わずかに悲鳴が上がる。

 ペンギーが、恐怖で体を震わせていた。

 そんな中、サムの口上は続く。


「改めて、名乗らせてもらおうか。僕はサム、”憤怒と嫉妬”のサムだ」


「今なら、まだ間に合う。俺たちの仲間にならないか」


「ははは、悪いね。……僕の剣は曲がっているんだ」


 あくまでも、邪道を進むということか。

 彼女の表情は、憤怒という言葉が似合うほど、強張っている。

 俺は、ペンギーに声をかけた。


「ペンギー」


「だ、だめっ、ダグ、これは、闘っちゃダメ!」


 ここまで動揺しているペンギーは、初めて見る。

 彼女には、俺が感じている以上の何かが見えているのかもしれない。


「俺がサムを引きつける、お前はグンテを追ってくれ」


 サムがこの場にいるのは、時間稼ぎだ。

 ここで、二人とも拘束されている訳には行かない。


「そんな、こと……」


「大丈夫だ、策はある」


 俺の言葉に、彼女は逡巡する。

 やがて、小さくうなずいた。


「……わかった」


 尚も不安そうに、俺を見上げる彼女。

 優しく頭に手を乗せて、軽く撫でる。


「ありがとう」


「ダグ、死んだら殺すからね」


「ああ、解ったよ」


 俺とペンギーはサムへ向き直る。

 サムは武器を構えたまま、俺たちを見据えていた。


「別れの挨拶は済んだかい?」


「ああ、再会の約束もな」


「……これは人生の先輩としての助言だけれど、できない事は約束しない方が良いよ?」


「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!!」


 ペンギーと二人で、サムへ駆け出す。

 懐からアイテムを取り出して、地面へ投げつけた。


 白い煙幕が立ち上り、視界を無くす。


「いけ! ペンギー!」


 同時に、俺はサムのいた位置へなぎ払いを叩き込む。

 避けるにしても、防ぐにしても、無視はできない。

ランキングに、再度乗りました!!

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