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ダグラス:闘技場の誓い

■Side-ダグラス


 作戦の決行準備中、俺が搬送された施設をうろつく。

 どこかと思ったら、これ、アーノルドの店だな。


「よう、坊主」


 後ろから、件のアーノルドが現れた。

 レジーナから紹介され、ペンギーの装備を作ってくれた人だ。

 手には、ハルバートが握られている。


「貴方も”希望の剣”だったんですね」


「まあ、な」


 そう言うと、アーノルドはハルバートを差し出してきた。


「これは?」


「これから大仕事だって言うのに、丸腰では困ると思ってな」


「ありがとうございます」


 ハルバートを受け取る。


「お前の武器だがな、今、戦鉄として鍛え直している。こいつは、それまでの繋ぎだ」


 ああ、確か、サムとの戦いで壊れたんだったか。


「こんな時に、良いんですか?」


「こんな時だからこそ、だ」


「よろしく、お願いします」


「なに、良いってことよ」


 武器を受け取って、その場を後にする。

 背後から、彼から声をかけられた。


「坊主、前に言ったこと、覚えているか?」


「はい」


「なら良い、頼んだぞ」







 闘技場につくと、そこは既に、不満を抱えた市民によって包囲されていた。


「思っていたより、すごい事になっているな」


「ああ、ブルーノさんが、メンバーに指示して喧伝してくれたらしいよ」


「流石だな」


 何が必要か、きちんと理解している。


「もう一押しで、決壊するぞ」


 背後から、声をかけられた。

 ブルーノだ。


「俺で、良いのか?」


「適役だろう?」


 そこまで言うなら、一番槍は俺がもらおう。

 ハルバートを構え、大きく息を吸う。


「俺に続けぇぇぇぇぇぇえええ!」


 警備兵が守りを固める入り口へ、突撃していく。

 突撃の勢いをそのままに、なぎ払う。

 

 今の俺にとって、街の警備兵ならどれほど来たってあしらえる。


「おい、あれ、”鏖殺”のダグラスだ!」


「よし、俺たちもいくぞ!」


 俺が切り開いた道に、市民や希望の剣のメンバー、そして冒険者が突撃していく。


「奴隷剣闘士を開放するんだ! 武器も全部、回収するぞ!」


 相手は、訓練を受けた警備兵だ。

 本来であれば、平民が挑める相手じゃ無い。

 だけど、数が違う。


 日本でも、国民が全員蜂起したら警察では止めようが無い様に。

 こうなってしまえば、一時的に施設を占拠するのは容易い。


「進めぇぇえ! 進めぇぇぇええ!」







 闘技場の、ステージの上。

 中心には、台の上に乗ったブルーノが立っている。

 周囲を”希望の剣”メンバー、元、剣闘士奴隷、市民が覆っている。


 熱狂の中、彼の雄大な姿に全員の視線が集まる。


「今、ここに宣言する! ”希望の剣”が拒否する全ての行政は無効であり、貴族にも、皇帝にも拒否権は無い! ”希望の剣”が承認しない租税徴収、いかなる新税も不法である!」


 革命には、政府に反抗する非公式組織ではなく。

 ポーズだけでも、公式組織を名乗る必要がある。

 もちろん、こんな宣言、政府が認める筈はない。

 だが、それでも、国民に対して、示す必要があった。

 そしてこの宣言は、力によって、必ず、認めさせる。


 周囲から、歓声が上がる。

 言っている事を理解しているのが、一体どれぐらいいるのか。

 今は、それで良い。


 歓声に負けない声量で、ブルーノは続けた。


「憲法が改定され、かつ堅固な基盤の上に確立されるまで”希望の剣”は解散せず、状況に応じて、いかなる場所でも戦い続ける!」


 今はまだ、小さな火だ。

 だけどこの火は、やがて帝国中を燃やす事になる。

日間ランキング乗りました!

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