ペンギー:王国を追放されて辛い
■Side-ペンギー
砦の静かな一室で、木の椅子に腰をかけて空を見上げる。
朦朧とした意識の中、独り言を呟く。
「どうして……」
私はもう、助からないだろう。
王国を追放されて、辺境の砦で一人。
誰に看取られることもなく、死んでいく。
なにが、いけなかったんだろう。
灰色の空を見上げて、人生を振り返る。
「あの時……」
私は幼少期、狼に育てられた。
やがて群れのボスとなった私は、縄張りに入ってきた騎士団を襲撃して敗北する。
もしあの時、騎士団を襲撃していなければ。
私は今も、狼として森林を走り回っていたかもしれない。
「だれか……」
その後私は、騎士団で育てられる事になる。
そこでは剣術や人間社会の常識を学んだ。
もしこの時、冒険者になっていれば。
今とは違う人生を歩めたかもしれない。
「たすっ……」
やがて私は、騎士団へ入団する。
困っている人のため、私は剣を振るった。
だって皆が、そうするべきだって言うから。
「け……」
やがて周りの人たちは、私のことを剣聖と呼ぶ様になる。
剣聖の二つ名は、一つの時代に一人しか居ないと言われる、特別な存在だ。
私にはよく分からなかったけど、皆がそう言うから、そうなんだと思った。
そして気がつけば。
私は王国で一番えらい騎士になっていた。
そのころにはもう、私に自由なんてなに一つ無い。
いつもいつも、後方でお飾り。
「あの子……」
やがて、体が衰えたころ。
私の道場に、とても強い子が現れる。
興味をもって、稽古をつけてあげようと思った。
それ以来、私を剣聖と呼ぶ者はいなくなった。
「もう……」
他人の言うことを聞いて、お利口に生きて。
その結果が、これだ。
一人寂しく、屈辱と後悔に塗れて死んでいく。
こんなことなら。
もっと、もっと。
自由に、生きたかった。
「いち、ど……」
最期に私は、そんな呪詛と後悔の言葉ばかりを呟いていた。
「あー」
結局、私のユニーク”もう一度”の効果って何だったんだろう。
あれ? 何か変だね。
久しぶりに意識が鮮明だな。
「ペンギー、おいで」
薄暗い洞窟の中で、巨人が私を持ち上げる。
「おんぎゃあ!」
大声を出そうと思ったら、赤ちゃんみたいな声が出た。
あ、これ、違う。
”もう一度”って、そう言う意味だったのかな。
「おんぎゃあああ!」
男に支えられ、洞窟の様な場所を移動する。
あ、これ、山賊だね。
私も前世では山賊狩りを嗜んでいたから、わかる。
「さあ、ペンギー、触れるんだ」
通された部屋で、水晶を差し出された。
人類は文明を開花させては絶滅寸前に追い込まれ、崩壊した文明をまたイチから立て直すというのを何度も繰り返している。
その為、使い方はわかるけど原理が解らないオーパーツが結構ある。
この水晶は比較的、近代のオーパーツらしく、出土数が多い。
その為、値段も安価で普及率が高い。
「あーうー」
この水晶には、触れた人間の情報を表示する効果がある。
一般的に、これをパーソナルと言う。
促されるままに、水晶に触れた。
■名前:ペンギー
■年齢:一
■クラス:メタモルⅠ
■スキル:リカバディ
■称号:ー
私の眼前に、木目調の板に金の縁取りさがされた看板の様な物が現れる。
ちなみにこの看板、触れた人によってデザインが違う。
そこには古代文字で、私の情報が表示されていた。
古代文字は現代語とかけ離れているけど、文章はそんなに多く無い。
各項目の意味さえ分かっていれば、大体、読める。
ちなみに私は全部ちゃんと読める。
えっへん。
「すでに、クラスを持っているだと!?」
クラスとかスキルは引き継がれないみたいだね、残念。
現実は、そんなに甘くないらしい。
私のパーソナルには、クラスとスキルが一つだけ表示されていた。
「……」
だけど、やってやる。
前世は人の言う通りに、困っている人の為に生きた。
我慢して堪えて、そしてあんな最後を迎えた。
もうあんな死に方は、絶対に嫌だ。
今世では、なに一つ、我慢なんてしない。
やりたいことは、全部やる。
やりたくないことは、一つだってやらない。
私の人生をほんの一欠片だって、他人に渡してやるもんか。
私は、自由に生きてやる!