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ペンギー:勇者

これにて、第一部、完結です!!!

■Side-ペンギー


 狼との戦いを通して、私は昔を思い出していた。

 そう、私は、もっと、荒々しい戦い方をしていたんだよね。

 人間世界で生きているうちに、忘れていた。


 私は、自由に生きるんだ。

 もう無理して、お利口に闘う必要、無いよね。


 例えば、ほんの少し、素早く攻撃するために、莫大な準備動作が必要だとする。

 普通ならそんな攻撃は、しない。

 だけど、そのわずかな速度の差で、相手を倒せるなら。

 費用対効果は抜群だ。


「ペンギー、次からはもっと俺の方の担当を増やして良い」


 彼はすごいね。

 これが初めての戦いなのに、もう慣れてきている。


「気づいてたんだ?」


「流石にな」


 この調子なら、彼が言う通りにもう少し任せても良さそう。


「や、やったぞ!」


「俺たち、生き残ったんだ!!」


 しばらくして、狼たちの襲撃がいち段落した。

 ふう、なんとかなったかな。


 がさり、と茂みに音が聞こえた。

 普段なら聞き流すか、聞こえすらしない小さな、小さな音。

 だけどそれがなぜか気になって、視線を向ける。


「!」


 今まで相手にしてた狼とは比べ物にならない程、大きな狼がいた。

 あれは、ジャイアント・ナイトウルフだ。

 まずい!


「ダグ!!」


 大狼がダグラスの元に走っていく。


「がぁぁぁああ!」


 挑発のスキルを発動するけど、もう遅い。


「がふっ」


 彼が、大きく吹き飛ばされ、地面を転がる。

 咄嗟に、大狼へ斬りかかる。


「こっちだ、駄犬!」


 なんとか、注意を引くことができた。

 力の無い体が、恨めしい。

 この鈍ら剣じゃ、毛皮に攻撃してもまるでダメージにならない。


「えいっ!」


 如何にジャイアント・ナイトウルフが頑丈といっても、それは部位による。

 爪の間や鼻先とか。

 致命傷には程遠いけど、確実に痛い部位へ攻撃を刻んでいく。


「……」


 このまま戦えば、私の負けは無い。

 私には、リカバディのスキルがある。

 少しだけど、継続的に傷と疲労を直すスキルだ。

 私の魔力量なら、スタミナ負けは無い。


 だけど、このままだと、周りは助からない。

 もし、この大狼がダグラスにとどめを刺しにいったら。

 私に止める力は、無い。

 増援の狼が現れても、私にできることはない。


「!」


 後方に闘志を感じて、視線を向ける。


「う……そ」


 ハルバートを杖の様にして、ダグラスが立ち上がっていた。

 私はいつも、彼を反則負けとか言っているけど、これは、本当にすごい。


 私はただ、できることを、やっているだけ。

 別に凄くはない。

 彼は今、本来、できないはずのことを、やっている。


「……そろそろ混ぜろよ」


 彼はそう言って、不敵に笑う。

 ダグラスは今まで、半分の力……強さだけで戦っていた。

 だけど今の彼は、弱さを受け入れて、この場に立っている。


 例えばそれは、突然、身体能力が強くなる訳では無い。

 強力なスキルが得られるわけでも、無い。

 だけど、不可能を可能にしてきたのは、いつだってそんな人間だ。


「……遅い」


「待たせたな」


 もし、ここで私たちが勝っても。

 この世界には、何の影響も無い。

 辺境の子供が、ちょっと強い魔物を倒した。

 それだけの話だ。


 だけど、私には。

 この瞬間、この場所が、歴史の一ページの様な、そんな気がした。


「がぁぁぁああああ!」


 私も、負けてられない!

 これからも、彼の横に立つために。

 私も、変わらなければならない。


 咆哮をあげて、大狼に突撃する。

 鋭い爪が、私に振り下ろされた。

 うん、知ってた。


 生前のトラウマなんか、振り切ってやる!

 その動きを読み切って、回避する。

 同時に、強く振り絞った剣を狼の足に突き刺した。


 ふふ、生前なら、絶対にしない動きだね。

 こんな、失敗した後の隙が大きくて、溜めも長い動き。

 読みが成功する前提じゃないと成立しない、不安定な動きだ。


「ダグ!」


「ああ!」


 動きを止めた大狼の頭部に、ダグラスのハルバートが振り下ろされた。






 空が僅かに、明るくなってくる。

 あの大狼を倒してから、増援が来ることはなかった。


 大人たちの方も、事前に準備していただけあって、死人は出ていない。

 今はみんなで、深夜の大宴会だ。


「ねえ、ダグ」


 一人、焚き火を見つめる彼の横に座る。

 内容が内容だけに、体を寄せて、小声で話しかけた。


「どうした?」


「前にさ、いつかここを出るって言ってたよね?」


「……ああ」


 私は、多分、不器用で、あまり頭もよく無い。

 だけど、彼と一緒なら、どこまでもどこまでも。

 自由にこの世界を生きていける。


 そんな気がした。


「その時は、私も連れて行ってね」


「もちろんだ」


「約束だよ?」


「ああ、約束だ」

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます!

今後とも、頑張らせていただきます。

よろしければ、是非、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] やるやーん 中々おもしれーです
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