プロローグ
作り物ではよくある話、あるとき人口の何割かが特殊な能力を手に入れる。
この話では、その能力は『肌』に表れた。
勿論悪用するものが出てくる。
一つの事件が起きた、とある『肌』を持つ犯罪者が、十人もの人々を殺害した。
死体は何れも損壊が激しく、無惨なものだった。
法整備の定まらない中、『肌』を持つ犯人は口々に「俺は触っただけだ」「私がそんなことが出来るとは知らなかった」などと言った。
まして凶器を持たぬ彼らを規制する術はなく、犯罪率は上がる一方であった。
また、『肌』を持たない者達は、持つ者達を化物と罵り、迫害した。
対立は激化し、およそ十年が過ぎ事件は起きた。
ある日、インターネットの迫害派掲示板に一本の動画がアップロードされた。
タイトルは『バケモノ退治』
何処かの倉庫と思われる場所で、『肌』を持つ事を隠して生活していた女子高生を、同級生と見られる生徒数名が暴行しているものである。
少女は泣き叫び、何度も「やめて」と懇願するが、暴行はエスカレートしていく、動画は途中で終了するが、最終的に少女は自殺を選ぶこととなった。
世論は変わった。
それまでは『肌』を持つ者を、皆総じて化物と見ていた。しかし、この動画の少女は『肌』を持たない者と何ら変わりない、ただの人間だった。
当たり前のことである、特定の『肌』を持つ者を差別する。
それがどういうことか自分達は知っていたのではなかったか。
問題が『肌』にあったために、それを差別するのは間違いだという意見は、意外にも早く浸透した。
対立していた両勢力は和解した、ただし、『肌』を持つものは、自分たちが法によって他の者と区別されるのを嫌った。
そこで、世界の国々はあえて法を変えることはしなかった。
そして事件から数年後、ここ日本に、ある機関が発足した。