番外 到達点
黒いコート。
そして、短い蒼髪。
その蒼は、暗く、闇を包む。
「…此処か。」
その言葉に、短い茶髪の女が反応する。
彼女は身に纏う厚い鎧をガチャリと鳴らした。
「ああ、ここが最先端だ。」
「…"上"で起こってる事もあるから、速めに調査を終わりにしたい。」
そう、ここは、海上。
曇り空に豪雨…荒れ狂う天候の中、一隻の船は進む。
「ワールドアイテム、『天つ羽』…まさか、貸出許可が降りるとは、思いませんでしたよ。」
「…それで、此処にいる"怪異"とは?」
青年は聞く。
その拳を握り締めながら。
「…まだ、キーを動かしてないらしいから、分からない…と。」
「自分は、そう聞きました。」
そうした中、波による揺れは次第に大きくなっていて…。
「…これは…!」
「…来る…!」
甲板に立つ二人は警戒する、すると───。
───瞬間、荒れ狂う波の中、巨大なクラーケンが現れた…!
『P u o o o o o o o o n !!』
そして、瞬時に彼の怪物の脚は甲板を横に幾度となく撫でる…!
一撫でにて船が水中へと押し込まれ、二撫でされれば空中へと放り出された。
そんな環境の中、"彼ら"は抵抗を始める…!
「【僕は】【すごく】【強くなる】。」
「それと、【臨戦強化】。」
「───【剛撃】。」
その巨大なクラーケンに、空中を蹴って青年は拳を叩き込んだ。
その挙動すら、見させずに。
クラーケンの巨躯を揺るがすほどの一撃、しかし───。
「駄目だ、相性悪いみたいですね。」
しかし、クラーケンは、びくともしていない。
打撃耐性を持っているようだ…。
自由落下にて落ちて行く青年、それを捕まえるイカの足。
「…【僕は】【離れない】…骨が折れるぞ、これ…!」
そのまま締め付けられ、身体中の骨を微塵に砕かれる青年。
「【臨戦強化】。」
「避けて、アフラ。」
それを見かねた彼女は、背中の太刀を引き抜いた。
「───……【轟撃】。」
空中を蹴り、脳天へと飛び、一撃にて切り裂く。
【轟撃】…。
『ダメージ二倍の一撃を与える。"進化"スキルアビリティ。』
『P u a a a a a a a a a !?』
切り裂かれた巨大イカは、海中へと戻っていく。
遊具で遊ぼうとしていたら、思わぬしっぺ返しを喰らったからだ。
切り裂かれた胴体を修復し、叫びながら沈んでいくその姿は、ほんの少し悲しげだった…。
「…助かったよ、ありがとう。セル。」
身体の自由を取り戻し、空中にいる太刀を持つ女を回収する青年。
彼の名を、アフラという。
「…骨が折れてるのに、動けるの、ずるい。」
セル…アフラの腕に抱えられた女は顔をむくませる。
「『強く』なってるからね…しっかし、『天つ羽』は此処でリタイア、か。」
…見かけでは、船は無事であるが、中身の人間は絶大な衝撃を受けて、粉々になっているだろう。
空中で観察していると、『天つ羽』は、荒れ狂う波の中、勢い良く流されていった…。
「甲板にいて良かったね、僕達。」
そう言いながら、アイテムボックスから浮き輪を取り出すアフラ。
流石に、この天候の中、"空を蹴って"移動するのは諦めたようだ…。
「…流されるつもり?」
セルは聞く。
「その通り。」
「運が良くても悪くても…どこかに辿り着くはずだ。」
ドポン、と音を立てて着水。
そして、二人は鎖で繋いだ浮き輪に捕まり、漂流を始める。
彼らの行き着く先は、最果てか、それとも…。
「【女帝】…っ!おい、しっかりしろ!」
「…ぷはっ!…た、助かった…!やっぱふなつかは最強だな!」
「メガネが流されてしまいました…。無念。」
「…こういう時リーダー役に立ちませんね。」
意図的に操作される水流…その流れの中にいるのは、不正に乗り込んできたらしい謎の四人。
彼らも、また、流されながら最果てへの渡航を続ける…。
生存報告を兼ねた投稿です…すみません、二月下旬の投稿は間に合いませんでした…。
少なくとも、三月六日までにはこの章分を投稿したいと思います…。
どうか、【ビクトリア】を、よろしくお願いします。




