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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第七部 西方戦線編
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第一話 影の中に。



 1.ナイトケ王国-機密特区-十三州統合議会-


 席は、十三。


 そこに座る者は、談義を繰り返す。


「…で?この件には、誰を当てがいますかな?」


 白髪のふくよかな老人…グレン。


「王様。」


 そう呼んだ先には銀髪の少年…ユシュエン。

 彼の顔は、険しい。


「コンラを、当てる。」


 …───瞬間。


 殺気づいた者が、四名。


 全身を赤鎧で包んだリロ。


 黒髪赤目の一万を超えるコロシアムトップランカーを抱えるギルド《朱雀》の盟主、ロシュ。


 フリーで活動している流浪人、セキ。(会議前から殺気づいていた。)


 金髪赤目の帽子を被る優男、ガイスト。


 そのうち発言したのは、二名のみ。


「…ユシュエン。それはダメだ。」

「今回の戦線は間違いなく大一番…。私にしないとは、それなりの考えがあるのだろうな?」

「…コンラにするなら、せめてわた…僕も共に連れてってもらいたい。」


「少なくとも、ここの中で軍勢にデバフを掛けられるのは、僕ぐらいしかいない…と思う。」


 領地戦では、"ランキングポイント"が大量取得できる。


 そのため、彼らが必死になるのは当然。


「俺もガイストに賛成する。」

「北方は大事だが、先に狐を殺してしまった方が良い。」

「その為には、軍勢の中でも多数を占めるギルドメンバーを率いる俺が行った方が、軍の統率がしやすい。」

「コンラはユシュエン…君の副ブレインだろう?ならば、一応フリーにして、君と共に国の一大事に対応してもらいたい。」


 しかし、此処に件のコンラが発言した。


「卿らの意見は分かる、しかし、盟主がこう言ったのだ、従うほかあるまい?」



 上位千名に入る為にユシュエンと契約したコンラ。


 今は、ユシュエンにとって彼が最後の希望。


 痩せこけた顔をした彼は生き生きとして語る。


 …しかし、笑顔で顔を固めた先達の顔を崩すことは無い。


「…見せかけの王の、布巾着が…!」

「"順番待ち"の癖に、要らぬ事をする奴よ…。」

「それにしては仕事は完璧にこなすのだから、手がつけられん…。」


 ボソっと、銀髪の、銀鎧を着た青年…オウリが呟いた。


 彼から見て、"今期"は利用したい期間。

 傀儡にならない王を望まない。


「いやはや、これは難しいでしょうな。」

「ですが、聞いた所、盟主としての命令、という所でのみしかやる理由は無いようですかな。」

「はは、ですが、人事は適材適所を尊ぶべきでは?」



 恰幅の良い老人…グレンが笑った。


 おまえ如きが、出しゃばるなと。



 …これに、ユシュエンは険しい顔をして言う。


「…賛成しないのであれば、もう一度、審議の機会を…。」


 王などとは呼ばれている。


 しかし、その権威は紙よりも薄っぺらい。


「いや!皆。ガイスト、ロシュの両名を西方に当てがうという決定に賛成の者は、その意思を示せ!」


 黒色の、髪を後ろで一つに縛った女性…キュビが高らかに言い放った。

 その黄金の目は、どこまでも玉座を見下している。


「…キュビ…!!」


 苦々しく、しかし、この様を見ることしか出来ない。


「賛成。」「賛成。」「賛成。」「賛成。」……。


 ついに、ユシュエンと、茫然自失のコンラ以外の全会一致となった。


「…では、経費は、我らが集権ギルド、《大華》より頂きたい。」


 黒髪の青年…ロシュがそう言う。


 皆、この若造のことなど、人形とすらも思ってはいない。


「否、そのような事は…。」


「認められる、これは国務である。」


「肯定。」


 国務であるとしたロシュの意見に、黒髪緑目の女性…リトが賛成した。


 発言していない四人の内、中立派の二人を見る。


 しかし、目線の先にいたボサッとした茶髪の無精髭を生やした男性…ヘカクと肩まで伸ばした赤髪の少女…レイアはただ、こちらを見つめるばかり。


 ハナから恩を期待して助ける価値もないのだ。


「…よろしいかな、王よ。」


 恰幅の良い老人がそう語りかける。


「…っ。」


 ユシュエンは、屈辱に身悶えしそうになりながらも…。


「議決を、西方へ行くのは、ガイスト、ロシュの二名とする…。」


 それを悟られずに、終わらせた。


(…魔窟の、悪魔どもめ。)


(…まぁ良い、どちらにせよ、今は"僕の王権"…。)


(…必ず、のし上がって、全てを我が手に…!)



 ……。


 それをよく観察する者が一人。


 この会議は原則としてそれぞれの州の代表とその従者のみしか出席は出来ない。


 顔を白銀の鎧で隠した彼は、流浪の旅人の側近。


 事が此処に至っては、ただ、起こるのを待つのみ。



 2.バゼリ王国-西方戦線-



「…全く、酷い有様だ。」


 一人の男は塹壕の下でそう呟いた。

 名は、ジン。


「あの件から、俺に残った物はこの剣のみ…。」


「資格も、許可も失ってしまった…。」


 その片手剣を、上へと掲げ、腕を下ろす。


「しかし、だ。」


「俺は、チャンスを貰った。」


「そうだろう?」


 …それを聞くと、直ぐに彼の首にナイフが突きつけられた。


 黒髪を揺らして出てきたのは、緑衣の女。


 仮面をつけた女の名は、タキ。


「情報を、話して貰おうか。」



「おっと、戦場の中で話してしまって良いのか?」


「誰かに聞かれるやも───。」


 タキは、ナイフを首筋へとさらに近づけた。


「おまえ如きのような存在は沢山いる。」


「こちらへ来るのは、お前じゃなくてもいい。」



「…わかった。では、話す。」


「こちらの西方戦線は、魔物・人族共同前線…なのはお前の所も一緒だろう。」



「…。」



「今は、もうどちらも長くない、一度に用意できる数がこっちの方が少ないからだ。」


「要は、手が足りない。」


「その上で、此方は勝とうとしている。」



「…速く、話せ。」


 ギリギリまで短刀が食い込む。

 だが、その心遣いは無用だ、俺は全てを話す覚悟でいる。


「人魔複合実験。」


「…。」


「一人に沢山の"手"を生やす事を目的とした、死ぬまで継続する改造さ。」


「死んだらデータはオリジナルの肉体のみを復元するために一度きりだが…。」


「このゲームは人体実験が容易だ。直ぐに完璧なモノが出来上がるだろう。」



「…そこへ、立ち入る許可は。」


 強情な人だ、此処まで話したと言うのに。


「ない。」


 ナイフを、俺の身体へと押しつける手が緩められる。


「よし、連れて行くとしよう。」


「非常に良い成果だ。」


 彼女はそう言い、俺の襟首を掴んだ。


「…フゥ、助かった。」


 小声で呟く。此処で殺されてしまっては終わりだ。

 俺の目的も、叶わぬものとなってしまう。


「では、テレポートする。」


「【テレポート】。」


 虹色の輝きが、俺の視界を奪った。





 3.ナイトケ王国-首都-バセラヌ


 此処は、ナイトケ王国。

 市街は進化しきった建設者達によりビル街へと変貌し、円形状の首都の中央には町四つほど囲えそうな正方形の建物が配置されている。


 その建物は、機密特区と呼ばれ、様々な国内運営の為の施設が揃っている。



「…あぁ、此処は閉塞的でとても息苦しい。」


 石畳の上、流浪人、セキは気怠げに言った。


 見上げるは現代とも見間違う高層ビルの数々、しかし、この街では混乱は起きていない。


 常にゴーレムが空を飛んでいるため、どんな企みもすぐさま鎮圧される…。


「しかし、此処に来る事を望んだのは貴女じゃないですか。」


「良いじゃないか!トリトォ!私だって修羅の国と聞いてきたのに、こんな面倒な真似を任せおって〜!」


「…まぁ、僕も、面倒な事になるとは予想してましたがね…。」



「…で、どうします?この国。」


「また壊しますか?」


 物騒なことを言う青年。

 彼の名は、トリト。


 このセキという女性のお守りを行っているらしい。


「いや、此処まで徹底しているとなると、難しい。」


「新規スタートや下層ランカーはまず、ログインした時点から中層ランカーの配下へ入り、訓練を受ける。」


「そこで壁を知り、冒険を忘れる。」


「後は、国の歯車となるか、なれないか。」


「私の持つ対国召喚物だって、精精が絶対的破壊耐性を持つだけだし、決め手には欠ける…。」




「壊したいですか?」


 しかしトリトは止まらない。

 彼は残念な事にストッパーでは無かった。

 ただの、道連れ、という奴だった。


「そりゃ、壊したいだろう。ゲームだし。」


 彼らは、命の価値がないこの世界で、国を破壊する遊び方を見つけた一団なのだ。


「なら、僕が考えます。」


「どうやら、上は空想の利権を貪る事しか能のない奴のみ、みたいなので。」


「…嘆かわしい。」


 憂鬱げに被るその兜を撫でる。


 だが、明らかにこれは物騒なものである。


「…じゃあ、まずは完全にデータを取る必要があるな。」



「…そうですね。手分けして、"調べ物"といきましょう。」




 4.ナイトケ王国-【魔神王の深域(ヘルヘイムル)】-


 白い隔壁の中。


 いつか見たような景色があった。


 紫色の爆発の残滓。



「…此処が、何よりの証拠、か。」


「トップは【魔神王】を保有している。」



 この爆発痕には、一つ特性がある。


 それは、魔力の結晶体が無限に生え続ける事。



「間違い無い…。」



 しかし、それを収集する彼に、近づくものが居る。


「…消えろォッ!!」


 その爪は、次元を裂くほどの速さ、しかし…。



「…くっ、"あの時"仕留めきれなかったか…!」



 曲者は、前転にて遙か前方へ。


 …そして敵へと向き直る。改めて、それは、竜人。


「…盟主特別管理区、防衛者長、ガラドル。」


「今こそ、その命に殉ずる───。」


 鱗の肌を持ち、竜のアギトを身体に備える。


 人の四倍ほどに巨大化したその様相は、まさに異形の竜。


(…完全な魔物変貌…"クロノス"、か。)


(既に【魔神王】がいるのならば、手に入れていてもおかしくは無い…。あの情報は、間違いではなかったか。)


「…【異形狩りの妄執(ベルセルクル)】、【魔法剣:蒼穹(クラウ・ソラス)】。」


 白銀の衣を刀身に纏いしその剣は、蒼く、巨大なる刃を備える。


「「【剛撃(バスター)】ッ!!」」


 二人は、同時に仕掛けた。

 竜人は爪を、男は刃を振るい、そして───。


「───獲ったァ!」


 男の持つ魔法剣による刃は、砕ける。

 しかし、それでも、剣は、男は進む。


 腕をすり抜け、潜り込む───。


「───【魔法剣:蒼穹(クラウ・ソラス)】。」


 竜はその束の間にて、納得した。

 端からこれは、防ぐための斬撃では無い。


 自身の攻撃力を逆に利用した、致命の一撃。


 竜の伸びきった腕では、この速攻に反応する事は難しい…。


「【剛撃(バスター)】ッ!」


 完全に懐に入られている。


 そして、伸びた剣は甚大な破壊力を持つ。


 さらに、腕が長い分、前述した理由と共に、今この位置にいる男を殺すには時間がかかる。

 ───とられた。


 こうして、竜人はその首筋から下半身までを一撃にて切り裂かれた。


 普通なら切り裂かれぬその鱗も、彼のスキルからしてみれば無力。


 …しかし、男は、侮ってはいけなかった。



「見事ぉぉッ!!」


 竜は、間に合わないと見るや、胸中の自分を絞め殺しにかかる。


 粒子化するまでは時間がかかる。その間に、殺して仕舞えば───。




   「アビリティ、ジェム。」




      「解放(リンク)


 

 【縮地】の、効果。


 黒髪が揺れる。


「悪いが、お前の相手をしている時間は無い。」


「【剛撃(バスター)】ッ!」


 ダメ押しに、背後から首を断つ。


 フォイドラともまた違う彼の竜は、何をしてくるかも分からないためだ。


「…が、ご。」


 確実に断った事を確認して直ぐに脱出する。


    「アビリティジェム…。」



     「解放(リンク)。」



 【サイレント】が彼にかかる。


 そして、そのまま彼は、隔壁を、ゴーレムを無音にて破壊し、外へと脱出する。



「…なるほド。」


 そして、それを見る者が、一人。


「アイツは、たしカ、あの時殺しタ…。」


「…わざわざ、此処を襲撃したと言う事は、答えを既に知ると言う事。」


「しかし、隙を見せたら、今度こそ、カ。」


 …曲者は、闇の中へ消える。


 それを見逃すのは、また闇の者。


「…しばらク、泳がス。」


「全ては、我が主人の、地位と名誉の為ニ。」


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