第2話 転換期
1.酒場
このゲームにはギルドがあるが、俺はギルドには入り浸らない事にしている。ナイトは平等であるべきだ。
----俺は皆のメイン盾でありたい。
ナイトの誓いだ。
「おーい、アーサー。今日空いてるか?」
ラマンダくんだ。どうしたんだい?
「今からダンジョン行くからよー。一緒に行かないか?」
しょうがないな。ほれ、メイン盾が今行くぞ!
「さんきゅー!助かるぜ」
2.ダンジョン内部
「カバー頼む!」
任せろ。【挑発】、 【ヘイトブレード】!
ラマンダくんは槍で筋力集中型だ。
【槍術】のスキルには防御無視のスキルが多いが、デメリットとして【体力低下】がくっついてくる。
護りがいがある。
二つのヘイト管理スキルを行い、攻撃を引く。
「【瞬間強化:速度】!」
【瞬間強化】は人族パッシブスキル。チュートリアルでは言われなかったが、人間プレイヤーなら誰でも使える。
「そして【ブレイクランス】!」
---ドルゥゥンッ!!
ラマンダくんの獲物が『荒くれイノシシ』を貫いた。
……戦闘終了後、一息つく。
ふと、ダンジョンの通路の曲がり角をのぞいてみる。
すると、そこには見たことのあるような銀光が
瞬間、斬撃が飛んできた。
---ズバンッ!!
「また会ったな。クソナイト。」
受け流す事はできないので躱した
ふざけるな....!タイミングというものを考えろよ全く
いつぞやの鎧兜のアホは言った
「俺の名はナギトだ。ナイト狩りは楽なんでな。今日の俺の肥やしになってくれよ。」
3.ダンジョン内部奥地
ラマンダくんに金を預けて逃走させてから時間が経った。
未だ防戦一方。そして相手の実力は未知数だ
「しぶといな、お前」
---カァンッ!ガキッ、キィィィンッ!!
…前回からの経験からコイツとはマトモに打ち合っていてはいけないと感じる。
ならば中距離から勝負するしかない。
そして相手の戦力は未知数だ。
俺が中距離から勝負するという狙いがナギトに解ってしまったらナギトも中距離で戦うかもしれない。
それだけはダメだ。
ナギトは中距離戦の方が得意かもしれないからだ。
なんとか防戦が成立している今がチャンス!
俺がナギトの事をよく知らないように、相手もまだ俺を知ってはいない。
もう切る手札が無いように見せかけなくては...!
ナギトの攻撃の軌道は読める。
---ブゥオォンッ!
斧の大振りが来た。ここだ!引く。
相手の油断を誘った甲斐あってなんとか流れを引き込めた。
【スモーク】、魔法を展開。
煙がぱっとダンジョンに蔓延する。
「ここでスモークか...【精錬極技】は使わないのか?」
兜越しのくぐもった声が聞こえる。
【精錬極技】、デメリットは大きいがメリットも大きい技だ、だが継戦能力が低下するため、あまり使うわけにはいかない…。
………相手が何かしらの行動をしないうちに攻撃に出る。
【魔法弾】を【魔力変質】させ、
「【五大属性魔法弾】連射!」
---ドバババババッ!
ナギトが言う。
「属性弾が俺に効くとでも思ったか?」
スキル【魔力変質】には魔力に属性を持たせるというチカラがある。
もっとも、【五大属性適性】というスキルが無ければゴミ同然であるのだが。
この技の真価はただ属性弾をばら撒くことでは無い。
「HPの減りが速い...相乗効果狙いか。」
火が風に吹かれて大きくなるように、属性の相乗効果によるダメージ量の増加を目的とした技である。
---バババババババババッ!
轟音の中、ナギトの姿がうすらと浮かび上がる
姿も見えない彼は嗤っている。
「見直したよクソナイト。楽しかったぜ。だが、」
魔法弾の衝撃により煙が晴れそうになっている。
さすがに少しは効いたはずだ。よし、視界がさらに良くなる前にラマンダくんと合流しよう。
「---終わりにしよう。」
「【臨界強化】」
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【臨界強化】…
『自身の素早さ、攻撃力をニ.五〇倍上昇させる。
自身のレベル×〇.〇〇一秒それを持続させる。
(このスキルはレベル一〇〇〇〇から以上は成長しない)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
---ズブッ…!!
その様は疾風迅雷、俺の背中から刃先が突き抜けた
俺は驚く、なぜ俺の位置が
「このスキルはコロシアム10000位からは余裕で使わ
れてる【補助スキル】だ。」
質問に答えろ
「…位置は発射角度から余裕でわかった。」
………そうかよ。
俺は落胆した。何かトリックがあったら次の時に利用してやろうと思ったのに…。
「………じゃあな」
---バタン。
俺はナギトに殺されて死んだ。
強い通り魔には会いたくねぇもんだ。