プロローグ
更新が長らく遅れていて申し訳ありません!
ですが、特に速まる事も無いと思いますので、これは生存報告のような物です。
書溜めが遂に尽きてしまい、更になかなか書く時間が取れないなどと、制作にはかなりの苦労があります。
その為、数ヶ月程度はこれから遅れると思います。
それでもよろしいのであれば、どうか、これからも【ビクトリア】をよろしくお願いします。
「ジタン。聞いているんだろ?」
アフラは、影に向けて話す、
彼にとって、その影はβ含めて一年間ほど、自身を守って来てくれた始まりの仲間。
…姿は、今だに見せてはくれないが。
「結局、僕は、君が側にいる、という事実しか、知らないけど…。」
…影は、少しギョッとする。
「───君になら、任せても良い。」
その宣言は、信じている者にかけるものとは違い、少し、突き放すようなニュアンスが、現れていた。
「僕は君に期待する訳ではない。今でも、影から出てこない君には、油断を許してはいない。」
だが、そこで思い出すのは、いつも影が、自身を守っていた、という事。
…いつも、側にいる影が、姿を見せないのはある種の信頼関係なのかも知れない、とでも思って。
そんな、当てずっぽうの信頼に、彼は期待してみた。
「ランクアップ四段階目"制御"を果たせなかった僕は、きっと、【世界】には勝てない。」
「でもね、負ける気もないんだ。」
彼を、力に呑まれた彼を、【組織】に入れれば、多少は復帰のための【スキル秘伝書】を手に入れて融通する事が出来るだろう…。
彼を救えるのは、現状、僕しかいない。
「だから、僕が彼を、倒せないと思った時は、自滅覚悟で【大予言】を適用するから…。」
「…君が、倒せ。」
その言葉を受けても、影は動かない。
もう、その場には居ない、という事なのか、それは分からないが…。
「…じゃあ、頼んだ。」
アフラだけは、それが居る、と信じていた。
1.コロシアム内部
俺たちが、此処から立ち去ろうとする時だった。
ザスターが、突然魔力針を打ったのである。
「さて、と。」
「【攻性防壁】。」
あまりにもタイミングをずらして放たれたその針群。
その針は、途端も無く広がって、そして…。
───視界の中央に潜んでいた、小さな影が飛び出した…。
「…やはり、ね。」
ザスターは得意げに言う。だが、そんな事を気にしている場合では無い!
「粒子、複製…。形態変化…!」
粒子は、集まり、列を成して、そして、その形は、いつも使っている片手剣となる。
だが、これでは強度が足りない。長さの割には、密度がスカスカの為だ。
ナイフのような長さにして、システムサポートの恩恵を受けようと、一つのスキルを発動する。
「【魔法剣:蒼穹】…ッ!」
…成功。硬度はさらに硬くなり、剣はナイフの長さから片手剣へと変わった。
咄嗟に戦闘準備を整えて、後方を庇うために前へと出る。
…飛び出してきた影は、黒々とした膜に外面が浸っていて、とてもでは無いが、人型である事以上、性質を見極める事は、出来ない。
「君の弟子、結構判断力は良いね。【家具設置】。糸よ、【硬質化】しろ。」
【家具設置】…。
『物を一瞬で配置するが、図面は一人で、それも脳内で接合部分まで詳しく想像しなくてはならない。』
【硬質化】…。
『物を、硬質化する。【精密操作】スキル派生スキルアビリティ。』
【精密操作】…。
『全てに対する視界をミクロにする。』
「…スキルキャスト。【振り子斧】。」
…一瞬で、闘技場の空を糸が覆い尽くし、その糸に斧がかかる。完全に、逃げ場を無くす形となった。
【家具設置】の宣言は無く、ダイレクトな発動だ。
「…スキルキャスト?どうやったんだい?ザスター。」
「…別に、音声認識から、押しボタン式へと切り替えただけさ。」
「それより、見たまえ。」
アーサーの前に、存在しうる敵。それはアーサーへと、攻撃を仕掛ける。
まずは掌底。それを粒子の剣によって防がれたら、その後に身体を回して回し蹴り。それにアーサーは、吹き飛ばされる…!
(…ッ!?なんだ、コイツ…!)
───ドゴォンッ!と、一つ大きな音がなって、壁が崩される。それを聞きながらも、主に中距離が得意な残された彼らは、一度に意見を固めた。
「「アーサー君が来るまで籠城しよう。」」
「…我々に、後退の二文字は無い。良いね?」
「分かってるさ、ザスター。僕の方も、此処で持ちこたえれば増援が来る手筈だ。」
「まぁ、つまりは、僕らが持ちこたえれば、せっかく作り直した光の柱を、壊すのも遅れるだろう?」
「…よく、分かってるじゃないか。よし、報酬は追加しよう。何が良い?」
「スキルキャストを。」
…影が、迫ってくる…!
「オーケーだ。【攻性防壁】ッ!!」
そうして、放たれた一撃は、それも一瞬で影へと辿り着いて、貫こうとし、そしてザチャリオも当然何もしない訳が無い。
その指を曲げるだけで、普通の相手なら、四肢を切断されるだろう。
───果たして、【予言】の力も無しに、アーサーの剣を素手で受けられる者が、普通だと、言い切れるのならば、だが。
「…ザスター、これ、切れなくないか?」
「…ほう、成る程。表の、追加要素か。」
その身体は、切れない。
物理的なダメージを、与える事が出来ない、と。
このVRMMOのトッププレイヤーたる彼らの斬撃が防がれた事が、それを悠々と物語る。
…だが、諦める事はない。こんな鬼札でさえも───。
「巻けば、終わりなんだよね。」
指を、クイっと動かした。
それだけの動きで、コロシアムに広がっていた糸は収縮し、そして…。
その影を、捕らえるに至った。
「…成る程、ならば…。【王命】。」
「その影を縛る糸を、離れさせるな!」
その後に放たれた光の円環。それは、今にも解けようとする糸を、その強制力によって固定する事を可能にする…!
───だが、均衡は一秒と保たれない。
女神復活の為に【星】をアーサーに取り上げられたザスターの【王命】は、今こそ精確で精密な操作を可能にするが、それを実現するための強制力を、持ち得ない為だ…!
結局のところ、影が今までやっていた事は、実力を引き出す為の手心を加えた攻撃に過ぎない。
身体を縛る糸は、影がその四肢を広げるたびに弾け飛ぶばかりだ…。
「───ザスター。」
そして、その言葉を最後に、【戦車】は、消えた。
その顔面を思い切り影に殴られて、その衝撃により頭が弾け飛ぶ。
だが、【戦車】の目はザスターへと向いていた。
『逃げろ。』と。
その目から、最後に言い残した言葉は、きっとそんなものだろうと、ザスターは受け取った。
しゅるる、と、全ての糸が、ザスターの【振り子斧】をも巻き込み、【戦車】へと集まる。そして…。
糸によって、斧が振るわれる…!
「【戦車】…。いや、ユシュエン。」
…ユシュエンは死亡時に、全ての糸が自身に向けて放たれる様にしたのだろう。
「ならば、アーサー君を見つけなければ…!」
ただ、その最期の遺志で行った、何丁もの斧の連続攻撃でさえ、あまり意味を成さない。
一撃が、鉄をも砕くのだ。振るわれた斧を刃ごと拳で潰し、巻きつこうとする糸は、とてもではないが、影のスピードとパワーについてくる事は出来ない…。
稼げる時間は、精々、十五秒。
「───充分!」
「【攻性防壁】ッ!」
【攻性防壁】によって、瓦礫の中のアーサーをサルベージした、ザスターは…。
「…行けぇっ!!」
その身体を、光柱へと思い切り、放り投げた…。
「βでは、加護を受け取る為には…!」
それに、入る必要がある。
言葉は続かない。十五秒も持たなかった。
ザスターの初動の三秒のみで、悠々とユシュエンを砕いて脱出した影は…。
───その拳にてザスターの、頭を砕き割った。
(…光の柱。あれはまだ、一本しかない。)
βでは、プレイヤーが意思を示せば、その場に出たというのに。
(…まぁ、なるように、なるさ。)
2.光の柱 内部
《…プレイヤーにより、待機状態を覚醒。》
《確認しました。対象。【人族】。》
《階位は、四。》
《意識、覚醒確認。》
「…あれ、ここは…。」
…朝焼けの、綺麗な草原。
まさに、キャラメイク時の景色と、そこはまるで瓜二つのようだった。
…大きな風が吹いてきて、朝露が、俺の顔に飛んでくる。
《プレイヤーネーム、アーサー。》
…そうしていると、どうしてか頭にアナウンスが入ってきた。
というか、俺は何故また此処にいるんだろう。
《あなたのタレントを、決定します。》
《許可を、プレイヤー。》




