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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第五部 トーナメント編
75/117

第6話 "親友"の、為に。



 ───……俺は、白い、部屋の中に居た。




 …あれ、俺は負けた、筈だ。


 【世界(ワールド)】の、前回での残り時間が、切れて…。


「…ラマンダ、君。」


《アーサーは、この白い部屋の中に居た。》


《ラマンダは、目を見開いた。》


 …アーサー?なんで、こんな所に…。


「君の事情は、聞いた。」


《アーサーは、そう言って顔を俯かせる。》


 …はは、そうだよ。

 お前とは、始めのその始めから、立場を無視した付き合いだった。


「うん。」


《柔和な表情で、アーサーは応えた。》


 お前が俺に教えた、【世界】無しでの戦い方は、無駄になった。

 …そして、お前と俺の付き合いは、無駄になる。


「───なんで?」


《アーサーは、不思議そうに首をかしげる。》


 …俺が、負けた以上。

 俺の力は、俺の【ビクトリア】での戦いは、トロフィーは、失われる。


 俺の、仲間との思い出も、失われるんだ。


(ラマンダ)は、元盟主と呼ばれていた。》


 …だから、俺きっと、此処に、戻って来れない。


《それが嘘偽りないと言うのなら、それはβ時代、常に最前線と向き合い、数々の仲間と、数々の発見を共有していた筈だ。》


 …仲間の為にかけたβを、俺は…。


《彼にとって、この世界は。》


《いや、(ラマンダ)のデータは、そのまま、彼の異世界での、思い出の証だったのだろう。》



「…そうか。」


《アーサーは、いきなりラマンダを服から取り出した"蒼い"鎖で、繋ぎ止めた。》


 ……アーサー。


「ラマンダ君。」


 俺は、お前を、信じる。


 だから───。







     「助けて、くれ…。」



 1.コロシアム内部



「───聞き届けたぞ。」




「【第四段階(フォース)】。」


「───【属性付与(エンチャント・):炎(ファイヤ)】。」




 ───倒れ伏したラマンダの身体を、炎が包む。


 まるで、不死鳥の復活のように。


「───ッ!なんだ、それ…!」


 一つの、事例を、見た。


「【世界(ワールド)】…ッ!いや、お前は…!!」


 体に粒子を紛れさせ、その体を、乗っ取った男がいたと言う。


 その、男の名は───。


「───アーサーッ!!」


「───ッ!!」



 硬質的な衝撃音がなって、粒子によって作られた炎剣と、手刀がぶつかり合う…!


「…だけど、剣があったところで…!」


 『【私は(対象選択)】【離れない(効果選択)】。』


 その効果により、アフラは切断されない…。


 その結果、片方は素手だと言うのに、剣戟と思わしき攻防が、彼らの間で繰り広げられる…!


 放たれる拳を剣で受け止めて、棍棒としての用法で、痛打を与えようとするが、対するアフラも、そんな事は分かっている。

 振り下ろすたびに剣の腹を叩かれ、軌道をそらされる。だが、それはつまり片手を剣への対処においているという事。

 ならば、と蹴りを放つが、当然それも見越して、手によって受け止められたので…。


 頭突きを、思い切り放った。



「後は、貴方を倒せばッ!アフラさんッ!!」


 頭を打った衝撃。想定していなかった行動。

 それに、アフラの意識は一瞬、かき乱される。

 そこを隙とみたアーサーは、炎の剣を思い切りアフラの右腕へと打ち付ける…!


「……ッ!やはり、火傷か…!」


 アーサーの持つ剣は、粒子を炎へと感染させる…。


 剣は離れない体に打撃を与えるのみではない。その体を、炎へと作り変えながら、崩れない体を焦がすのだ…!


「貴方さえ…ッ!!」


「奪おうとする貴方さえ、居なくなれば、今の【世界(ワールド)】なら、文字通り、世界を変えれる!!」




「───ッ!?」


 …アフラは、目を疑った。


 なんと、アーサーの持つ剣は、いつのまにか戦鎚へと変化していたのだから…!


 そこから、放たれた一閃は、アフラの体へと焔を撒き散らして、灯す!


 もくもくと噴き上がる黒煙が、火の戦鎚を、包み込む…!



「…【剛撃(バスター)】ッ!」


 ───破壊鎚。

 炎は、アフラを包み込んで…。


 そして、"砕ける"。


「【紫電掌】…ッ!!」


 彼は砕いた。黒煙の炎鎚を…。


「───ッ!?」



 …そして、アーサーは、一瞬、驚く。


 …だが、歴戦の戦士たるアフラが、その隙を見逃す訳でもなく…!


 その打撃は、思い切りアーサーの身体を吹き飛ばした!


「が、は…!ッハァ…!」



 アフラの目に、反抗の炎が宿る。


「…───知った、事か…!!」


 さらに、地面を一つ蹴ってアーサーへと追いついて、その拳を何度も何度も振るい続ける…!


 だが、アーサーも負けてはいない、なんとか剣で捌きつつ、蹴りを入れるタイミングを見計らう…!


「ぽっと出の癖に、僕は、βから居たんだ…!」


 大振りの、一撃。


「…ここッ!!」


 全力の、膝蹴り。

 それはアフラの膝へとあたり、それを突き飛ばす、だが…!


「ラマンダは…ッ!」


 アフラは、意に介さずに、せっかく離した距離を、大きく地面を蹴って埋めようとする…!


「ラマンダから、奪うしか無いんだ…!」


 彼の目には、少しだけ迷いが生じた、様な。


 …そんな気がした。


「なんで、貴方はそんなやり方を選んだんですか…ッ!!」


 だからこそ、俺は、思った。


「…【衝撃波(スパーク)】ッ!!」



 そんな貴方なら、ラマンダ君の意思を尊重する方法くらい、10でも20でも探せただろうに、と。


「───〜〜ッ!?」


 その衝撃波は、飛び込んでくるアフラを吹き飛ばすには至らなかったが、そこで足を止めさせる事に、成功した。



 ───必殺の、間合いだ。



「消えろ…!俺と、ラマンダ君の前から…!」


 ───粒子は、更に赤く、紅く燃える。


 是こそ、あんたを滅却する焔…!!



 そしてそれらは、ラマンダに取り込まれた"アーサーの器官のみから供給される"精一杯の数を、搔き集める事により…!!


「此処に因縁を、焼却する…ッ!」



 ───それは小さくながら、赤光を放ち、光輝く…!


「止めろ、アーサー…!」


 嫌だね、止めないし、あんたはきっと生き残るだろう。そんな事を考えながら、操作を続行する。


 …景色が、見えない。周りが光量に溶けて、紅く、目が血でも染まったかの様に、染まる。



 ───地は溶け、



「【此処に白夜は在り、(ヘリオース)───!」



 ───空は染まり、



「僕を、止めるな…!」



 ───全てのものは、光へと。





「───日輪は顕われる(・ブレイカー)】ーーーーッ!!!!」



 そして、灰となる。


「…はぁ、仕方、ないね。」



 赤熱は、全ての者へとその威容を見せつけ…。



 世界に、色が戻った。



 そして、アフラの焦げ跡は、自身の目の前には無い。




「…………。」


 その沈黙は、誰のものだったか。


「……───【紫電掌】。」


 勿論、両者の物。


「…やっぱり…!」


 剣を逆手に、その掌打を受け止める…。

 だが、狙われていたのは、手首。掴まれる前に引く。すると拳が迫ってくるので、咄嗟に前へと跳躍し、相手との距離を取って、態勢を整える事を優先する。


「【テレポート】。僕は、【占い師】だぜ?」


 あの一撃を避けられた事への種明かしをしながら、実際に彼はアーサーの目の前には現れた。

 そのまま、背後への【テレポート】は行わず、蹴りと拳を使って近接戦闘へ移行する。

 …どうやら、すぐに背後へ来ない以上は、クールタイムがあるものと思っていいだろう。


「追い詰められる時間を予測して、予めエスケープを置いておくなんて、訳ない。」


 そんな誰にでも嘘と分かる事を言いながらも、彼は自分の手を緩める事はしない。

 アーサーも負けじと、手に剣を合わせて防御するが、蹴りは流石に無効化できない。

 蹴りに蹴りで対抗すると、重心が崩れる。ならば、その時追い詰められるのは自分だから。


 だが、姿が、消える。股の間を物が通り抜ける。


 どうやら、股抜きをされた様だ。


 対処しようと、振り返るが…。


「…君は、見せてくれただろ?」


 ───一瞬で、振り返った後の死角へと、移動していた。


「なら、今度は僕の番だ。」


 ───どうやら、俺が振り返る時の首の動きとは逆方向に移動したらしい。

 そんな事を思いついても、次の一撃は回避できっこないだろう。



 背後から、拳が迫る。


「君は、どれくらい、楽しませてくれるの?」


 そうは言っているが、顔には、笑顔が貼りついているだけ。


 彼の殺気がこの身を包み込む。だが。



「…貴方には、僕は、負けない。」


 背後からの一撃を躱せず、だが、モロに衝撃で吹き飛ぶ事はしない。

 魔力壁を、展開する。

 つま先に作って、踏ん張る為にだ。


「貴方は、もう、時間切れだ。」


 そして、ギリギリ吹き飛ばずにいられたので、この手で、アフラの体に触れる…。



「…何を───ッ!?」


 何をするか。それは、至極単純な事。


「燃やし尽くす…!」


 ───掌は、紅く発光する…!!



「…お前ッ!ぁ離せッ!!」


 炎と化した粒子を流しこもうとする所で、アフラは、強引に撤退する…!


 だが、俺はそれを許しはしない。

 俺のつま先で、奴のつま先に草結びのように結んだ魔力の糸を、引っ張る。


 ───ブチィッ!!


 しかし…奴は、態勢を崩しもせずに走り去った。

 この手で止めようにも、ここまで密度の薄くなった体では、正直、接近戦にて骨を砕くくらいでしか勝機はない。



「グゥ…ッ!」


 くそ…!身体を構成する粒子を、あの時に放ったばっかりに…!


「ならッ!!」


 そうこうしているうちに、彼も俺の掌に対抗する為の策を考案したらしく、その言葉には、覇気が宿る。

 そのまま殴ってくるので、なんとか剣で対処すると、それは拳かと思いきや、ナイフ。


 彼は、ナイフを指の間に差し込んで、即席のナックルダスターとしたのだ…!


「これなら…防げないだろ…!」


「───ッ!!」


 無数の、拳撃が、俺へと打ち込まれる。


 …駄目だ。攻撃する隙が見つからない。近距離なら、俺も好む所であるが…!


 …ッ!やばい…!これでは…!?



《思い出すのは、【月】の鉤爪。》


 ───アイツは、どう崩れた?


「アイツは、確か…。」


 盾なら、奴の攻撃を易々と防げた…。

 …盾を、どう作るか。


(だが、盾なんて…。そうか!)


「粒子を横に、広げれば…!」


 剣の粒子を横に広げて、自身を守る盾を構成する…!


 【壊撃の魔盾(ブリュンヒルデ)】には、程遠い硬度だが、一撃くらいは、耐えてくれるはずだ…!


「あの時の言葉、そのまま、お前に、返すよ…!」


 そんな、期待を持って作り出した盾。


 …だが、砕かれる。

 炎に塗れながらも、それでも、我が拳は無くなってはいないなら、負けではない、と。


 舐めた作りで受け止められる様な拳に、自身は作ったつもりは、無いと。


「…ッぐぉぉぉ…!」


 一発、臓腑で食らって。

 二発、顔面へと刺さって。

 三発、右肩を破壊して、


 最後の四発を持って、それは、俺の左足を打ち壊した…!



「…お前に、ラマンダは救えるか。」


 …アーサーの身体は、瓦礫へと埋まって…。




 …動かなく、なった。



「…死ね…。」


 慢心は、しない。


「【衝撃波(スパーク)】…!」


 ラマンダを救う方法は、一つしか無いのだから。


 ───ドゴォンッ!!


 …瓦礫を破壊する音が、虚しく、響き渡る。


 ───ガラ…ッ!


 その時に、瓦礫はずれて、そして、人影が、そこから飛び出す。

 其の者は、炎の剣を構え、その一歩は、常人の四歩を超えてなお進む。


 アーサーは、アフラへと、飛び込んできたのだ。


「───救えるッ!!!」


 啖呵を切る。俺は、答えを出せなかったお前とは、違う、と強調しながら。


 その炎剣を、肩に構えて、いつでも振り抜ける様に。


「何を無謀に…ッ!」


 苛立ちを、隠せない。こんなにしぶとい訳がない。常人なら、もう腹が抉れているはずだ。


 それを許さないのは、ひとえにアーサーの粒子濃縮技術が一つの天元に達しているからだろうか。


 …とにかく接近させまいと、投げられるナイフ。それを躱しながら接近する…!


 とにかく、近付いていくアーサー。


 だが、それは、遠目から見ても、悪手。

 また、接近戦をして負けるつもりか、と。


「俺が、あいつを…!」


 だが、そうでは、ない。


「あいつの思い出を、繋げるッ!!」


 切り札は、もうこの"(ラマンダ)"に宿っている…!


「【第四段階(フォース)】…!」


 思い出すのは、あの暴風を、導く為の、"光"。

 炎は、あまり意味がない。では、光属性ならば、粒子を離れやすくする性質があると、最近になって判別した。


(…これも、ザスターから教わってなくては、知り得なかっただろう。)


「【属性付与(エンチャント):光(ホーリー)】ッ!」


 炎は、光と変わる。


 熱気は、眩い輝きへと、変換される…!



「全部…。持っていけ…ッ!!」


 彼の粒子の剣は、増幅され、延長。


 今までの全ては、この瞬間の為の、布石に過ぎない…!



「【破戒ブレイク×(コネクト)…。」


 これは、運命を斬り開く、ルール破り(破戒)の───。


 ───究極の一撃。



「───【世界(ワールド)】ッ!」


 【世界(ワールド)】の、真骨頂は、"発動"する事ではない。


 ───黄金の暴風が、剣に纏われる。

 剣は外装から眩い光を放ち、それを覆う暴風が、壺状となって、光を一点へと収束させる…!


 【精錬極技(アビリティコネクト)】にて、"最後の切り札"、として扱う事だ。


 光は、此処に輝きを放ち───。



 ───そして、星光の暴風が、吹き荒れた。



     「【<終わりの(エンディング)───。」



 72の星光を束ねた一撃。


 その一撃は、受けられぬ事を良しとしない。【一騎打ちの誉れ】。


 その一撃は、逃げられる事を良しとしない。【結界術】


「…アーサー。」


 (ラマンダ)の力、思い出は、ここに集まって…。


 そして、発動を前に、その暴風より見えし一点からの光は、さらに眩く、破壊するための力を増してゆく…。


 それを前にしても、彼は、アフラは、何も変わらない。


「だけど、僕も、負けられない。」


 そう言って、スタンスを、変えようとはしない。


「───擬似、ランク、アップ。」


 ───負けられないのだ。


 【予言】の加護も、ワールドアイテム(『不壊不欠』)さえも突き破る一撃。



「【大予言(ノストラダムス)】…ッ!!」


 ならば、それを、超えるだけ。


 それ、だけだ…!!



「【僕は(対象選択)】【絶対に(修飾詞)】【負けない(効果選択)】ッ!!」


 不可能だった筈の、三重の加護が、彼の拳へと纏われる。

 ゲームシステムも、思い切り、打て、という事なのだろう。ならば。


 さぁ、全力で、拳を振るってしまえ───!






     「───始まり(ビギンズ)>】…ッ!!」




 拳と、星光。



 彼らの拮抗は、大きく、さりとて、短く。



 それは疾く、アフラへと辿り着いて…。



「…馬鹿げ、てる。」



 アフラの、思いと共に。


「でも、今回だけ。」



「…今回だけは、君に、譲ろう。」


 ───光は、その心臓を、穿った。

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