第5話 【世界】の真相
俺の目の前に、ゆっくりと歩いてくる男。
「アフラさん…!」
彼は、俺の上司だった男。
【組織】の、頂点。
───アフラ、その者だった。
「───ッ!?なんで、ここに、アンタ達が…!」
ラマンダ君から、叫ぶように放たれたその言葉に、アフラはこう、返した。
「君と、そろそろ遊びたくなったからね。」
「"後輩"。」
それが、その言葉が、俺には向けられてはいない事はすぐ分かって、そして───。
───ゾッ、とした。
ラマンダ君から放たれた剣呑な雰囲気が、場、全体を包んで、"拒絶"しようとしている。
「…また、奪いに来たのか…!力を…っ!」
ラマンダ君は、今にも泣きそうに、そう言い放った。
…その必死な様子に、アフラは悲しそうに眉を下げた。
「…【世界】が、君を縛る鎖。」
「大丈夫だよ。渡してくれない?君は、拒絶するだろうけど…。」
「───君の腹を、その"呪い"がいつ食いつぶすか、分かったものでは無いから…!」
俺は、口を開いた。
「…【世界】?【アルカナ】、か。」
それは、余りにも気になったから。
「そうか、ラマンダ君、君は───。」
【アルカナ】なんだな、と。
俺はそう言った。
…その先の答えの前に、ラマンダ君は、いや【世界】は、俺を心配そうに見る。
「………アーサー?どうしたんだ…?」
女神の為の、素材。俺が倒すべき、力を奪うべき標的。
それがはっきりしてしまった以上。ここで、ここで決めなくては、俺の意思が、"変わってしまう"。
『アーサー君。君に、覚悟はあるか?』
【宿舎前】
───殺せ。
《宿舎へと戻るまで、俺は黙っていた。》
『おい、いつまで落ち込んでるんだよ。』
《そこにラマンダ君は待ったをかけて、俺はそれに、こう返した。》
『…だってさ、見たかよ、あの実力。』
『剣を振ったかどうかも分からなかった。』
───殺せ。
『ナギトに比べたらまだ遅い部類だろ、お前どうしたんだ?』
『…正直言うと、ちょっと前までかなり能力重視の戦いをしていたんだ。』
『なら、来ないか?』
『…何処にだよ。』
『ナギト式ブートキャンプ。』
『アイツには少し借りがあるから、お前一人ぐらいなら何とかなると思う。』
『どうだ、やってみないか?』
『…ああ、頼む。』
───アイツは、俺の事を人一倍、俺よりも、考えていてくれた。
───関係、無い。
『おい、ラマンダ君。どうするんだ。』
《我が友人はチャッ、と武器を構えた。》
『………戦おう、アーサー。俺は逃げたくない!』
『………【幻魔盾シェル・イービル】は破壊されない。あくまで相手の攻撃を軽減するスキルだ。破壊不能オブジェクトの性質を持つ、ね
---俺は、そこに目をつけたんです。』
『その、腹の紋章………もしかして、【付与術】か。それに【概念抽出】を使ったな。』
『当たり…!あのスキル習得クエストは長かったなぁ………!』
…彼は、その"力"が無くとも、なんとかしようと努力を続けていた。
───なら、尚更のこと殺せ。力が無くとも、なんとかなるんだろう?
『お前と組んでからだな、このゲームで上を目指すようになったの。』
《………なんでだ?ラマンダ君は俺と会った時でも充分な強さだったと思うけど。》
『このゲームって正直理不尽の塊みたいなもんだろ?高レベルプレイヤーには勝てねーし、俺なんか初めに教えてもらえなきゃ【魔力操作】無しで魔力を使うなんてまるっきしわかんなかったからな。』
───彼は、もっと前から、力では無く、技を磨き始めた。
───…。
それこそ、俺達が出会ったあの時から。
『…お前、名前はなんだ?』
『…アーサー。』
《俺は、腹が暴風によりズタズタにされている。》
《彼の、槍。それが、俺を貫いた為だ。》
《そんな俺だが、目の前にいるコイツは、始めはクソを煮詰めた性格だと思ったが…。》
『…なぁ。』
『…どうした、負け犬。』
コイツはコイツで、泣きそうな顔をしているな、と思った。
『…お前は、どうして、【組織】なんかに。』
『給料が高いからだ。』
『…なぁ、もっと、上に行く気は、無いのか?』
───ここから、俺"達"は始まった。
ここから、俺達の因縁は、始まったのだ。
『…俺は、こんな場所は、嫌いだ。』
《…なら、分かった。》
『お前を、鍛えてやる。』
『力には、技量が必要だからな。』
『…何言ってやがる。お前が、俺に剣を教わるんだろうが。』
『…それでもいいさ。』
『は?』
『お前の様な気持ちのいい奴は、もっと相応しい所がある。』
『お前が納得するなら、俺は、それでも構わない。』
『……。クソナイトが。』
《このゲームにはギルドがあるが、俺はギルドには入り浸らない事にしている。ナイトは平等であるべきだ。》
───俺は【皆のメイン盾でありたい】。
【ナイトの誓い】だ。
『おーい、アーサー。今日空いてるか?』
《ラマンダくんだ。どうしたんだい?》
『今からダンジョン行くからよー。一緒に行かないか?』
《しょうがないな。ほれ、メイン盾が今行くぞ!》
「───ザスターさん、すみません、俺は。」
「いや、俺が、ラマンダを、守ります。」
「俺は、ラマンダを信じてるから。」
アフラは、ラマンダの前に立ち塞がった俺に近づく。
───お前にその位置は、ふさわしく無い、と。
「…【世界】。」
「僕は君を、救いに来たんだ。」
それに向けて、俺はラマンダを庇うために、引きつけるために、アフラへと立ち向かう…!
「───貴方が、そんな名で、ラマンダを…!」
「僕の友人を、呼ぶなッ!!」
「…ならば、力を示してよ。」
「【僕は】【とても】【強くなる】…ッ!」
彼は、アフラは、服の裾から出したナイフを、おもむろに、俺の方に投げた。
「…アー、サー。」
…そう言うラマンダの前に、黒鎧の魔物が現れる。
「なら、お前の相手は、俺だ。」
「【波撃】ッ!」
1.コロシアム内部
「救いに来たなら、なんで戦う必要があるんですか…ッ!?」
俺は投げられたナイフを難なく避けて、接近してきたアフラの掌底を躱す。
「【君たちは】【いずれ】【辿り着く】。」
…だが、彼は、答えない。
スキルの言葉を皮切りに、俺の背後にあるナイフ達は"目的地"を目指して軌道を描く。
「…答えませんか…!」
「…ただ、近づいたのは失敗でしたね。」
俺は片手剣をアフラの掌底を放ち、伸ばし切った右手へと振り下ろすが…。
「【私は】【離れない】。」
「君は、資格がないから。」
その右腕は、離れない。まるで剣がペーバーナイフにでもなった様だった。
「知らない者に、用はないんだ、"スロット"。」
ならば、全身を砕くだけだ。
「僕が…ラマンダの隣に、"今、隣に居る"僕に、資格がないと言うんですか…っ!」
「…【全属性魔法弾】連射ッ!!」
至近距離からダメージを与える為の攻撃。
ドババババッ!と、身体全体から放たれる超連射。
「───ならば、今、ラマンダについてやらない僕は、要らない落伍者だと…?」
───そして、そんなものを無視して、アフラから放たれた掌底は俺の顎を吹き飛ばした。
「あガっ!?」
「ッハ!ァそんな事は無いッ!でも、俺も無関係とは言えない…!」
その勢いは凄まじく、空中にまで飛ばされる。だが、そこで一回転してアフラは何処だと眼を忙しなく回すと…。
「【俺は】【打ち砕く】。」
「…君は、ここで、やられるんだ。」
「…だから、この話はここで終わりなんだよ。」
今、目の前に、彼はいる。
「───ッ!?」
遥かに、先程よりも威力が大きいと感じる程の速度の一撃が、俺に向けて放たれる…。
(…俺は、どうしたら、良いんだ…?)
(ラマンダの為に、何を、すれば良い…?)
《ラマンダは、俺の、友達だ。》
《だが、たかだか、友達程度だ。》
《…ならば、この、ラマンダの先輩を名乗る男に、任せた方がいいのでは…?》
「───馬鹿な事を、言うんじゃ無い…!」
《…だが、しかし。》
《アーサーの思考は、親愛なる友人を救う為、加速した…!》
───いきなり、掌底が、自分の動きが、ゆっくりに見えるようになった。
「迷ってる時点で、答えは出ているんだ…!」
いや、世界全体が。ゆっくりと動いているのだ。
「───【第四段階】ッ!」
態勢を整え、片手剣を掌底の軌道に合わせる。
「【属性付与:炎】…!」
粒子が、煮立つ。
炎が俺の体を覆って、混ざって、同化する…!
「【第四段階】…!?」
「お前に、ラマンダが救えるかぁーーッ!!」
魔力は主に粒子と粒子の間のエネルギー。そのため、【魔法弾】は粒子を必要としない技能。
───だが、粒子そのままを放ってみたら、どうなるか。
答えは、魔力が生成され続け、【粒子弾】は過剰な魔力を元に───。
───焔を撒き散らし、爆発する…!
「赤光よ、彼を包み込め…!!」
極光が、赤い光が、彼ら全員を包み込み…!
暁は、此処に再誕する…。
「───【此処に白夜は在り、日輪は顕われる】ーーーッッ!!!」
それは、ラマンダへの配慮を伴った小爆撃として、アフラの身を包み…。
───溶かす。
アフラの身体は、離れない。
これに、虚飾は無い。実際に、この爆発の中でも五体満足で居続けられている。
ただ、燃える。
いや、焦げる。概念的にその存在が、固定されているのであれば、この赤光は、それを焼き続けて、破滅の中に包み込み続ける。
「アンタが、何をしようとして、ラマンダ君がどうなっていたかは、分からない。」
光が、止むことは無い。
「…それが良かったのか、悪かったかなんて。」
───なればこそ、全身がそのまま、焼かれ続け、焦げるのだ。
「だけど、俺も、彼の友達だ。」
「あんな事は、言ったが…。」
「…やっぱり、アイツの辛い時に、側にいてやれなかった奴に、信頼なんて、置けない。」
…そして、爆発は、止まる。
【第四段階】の、停止と共に。
一撃によって戦いを終わらせたアーサーは、だが、それでも考えることをやめない。
ラマンダ、彼の為に。
「ラマンダ君っ!!」
場を見渡してみれば、随分とまだ、煙が残っている。
───だから、気づかなかったのだろう。
『【君たちは】【いずれ】【辿り着く】。』
「───が、は。」
胸から、血が。背中に、何かが刺さっていると不快感が主張する。
後ろから付けて来たナイフは、ついに俺の背面へと辿り着いたのだ…!
「オイ、随分と派手だったんじゃねえか?」
「お前。」
───ッ!
黒鎧の、魔物…!
「【波撃】ッ!」
斧が、多重にその形を成して、俺に襲いかかる。
手に持つ片手剣でまず、一撃目を防ぎ、多重分裂した二撃目を受け流そうとする時に、遂に身体にガタが来た。
『【あなたは】【すごく】【脆くなる】。』
───その言葉通りに、足が、"崩れた"。
文字通り、崩れる。踏ん張りなんて効かずに、足の繊維が力を入れる度に全て解けて、重心は、どんどん崩れていく。
「───ッ!?」
───その時、世界が、ゆっくりに、なる。
だが、手は動かない。足は崩れるばかり。
「だけど、それは───。」
【俺は、みんなのメイン盾に成りたい】。
「最善を成さない、理由にはならない…ッ!」
「そうだろう…!」
ぎりりと歯を噛み締めて、ここにある"生"の為に戦え…!
「アイツは、必ず、助ける…。」
コレを為さねばお前は、生きてはいけない…!
「ぐぉぉぉ…!…ハッ、だから…!」
足が、崩れて、でも、重心は崩さない…!
もう解けそうな、膝小僧の断面で、何とか支える…!
「だから、アイツが、来るまでは…!」
そのまま、三撃目、四撃目を受け流して…!
「【剛撃】ッ!!」
コレで、五撃目ッ!
「───ッ。」
「はぁぁぁぁぁぁ…ッ!!」
そして、両腕を振り切り、俺は斧の五連撃を受け切った…!
「───アーサーッ!よくも…!」
ラマンダ君…!駆けつけてきてくれた、だが、俺はもう戦える体では無いと分かると、顔を鬼の形相に変えて、黒鎧へと斬りかかる…!
「…!元盟主様か!なら、死に損ない、お前で遊ぶのは止めだッ!」
───その宣言の後。
一瞬で頭以外の四肢を、右手以外斬り落とされ、俺は後方へと、ラマンダ君へと、投げ飛ばされた…!
「そらよッ!ソイツ、お友達なんだろォ?」
「…ッ!?アーサー!」
ラマンダ君が、俺を抱きとめた…。
「ラマンダ君ッ!戦えッ!!」
「…アーサー。」
「【世界】は、俺だって欲しい…!」
「───…アーサー!?」
「だけどッ!俺は、メイン盾だから…!」
俺は、精一杯の力を込めて、右手を、伸ばす。
「お前を、助けた…!」
「お前が、俺の、1番の…!」
「───友達、だったから…!」
その言葉に、ラマンダ君は頷き…。
「…アーサー。」
「───分かったよ。俺は、抗う。」
「俺も、全開だ。」
───空気が、変わった。
息苦しく、とてもこの"圧"の中では、立つことなど叶わない。
帝王の、カリスマ。
「はは、あの時以来だな、───もうあまり時間は、残っていないが…!」
「───望み通り、お前らを、叩き潰してやるよ…!!」
ドスの効いた声で、ラマンダ君は、黒鎧の魔物に向けて啖呵を切った。
「やっちまえッ!ラマンダァーーッ!!」
「───【世界】ッ!」
ラマンダの周囲を、突風が包み…。
───そして、光に包まれた槍と共に、黄金の鎧姿の男が現れる。
紛れも無い、【世界】その者だった。
黒鎧はその威圧感に一歩後ずさる、が、すぐさま笑みを浮かべて斧を構えた。
「【世界】の能力…!」
「………。」
「アーサー。俺、行くよ。」
「…はは、そうか。」
「───やっちまえ。」
…そして、粒子は完全に、空間へと、溶けた。
「……待たせたな。黒鎧。」
…ラマンダのその殺意は、見るだけで相手を殺せそうなもの、それに彼自身のカリスマも加われば、ロクに行動できないはず、だが。
「…へへ、面白い。」
「ならば、死ね…!」
黒鎧は、そう言い、滑るように地面を移動し、その斧を振りかぶった…!
「【波撃】【終局の二撃目】ッ!」
【終局の二撃目】…
『このスキルの前に発動させたスキルを、威力を一.二五倍させて再発動する。【残虐】派生スキルアビリティ。』
【残虐】…
『殺した相手をさらに攻撃できる。』
威力がそれぞれ異なる、だが、どちらにしてもアーサーに放った物とは比べ物にならない速さの、多段十連撃がラマンダに迫る…!
「…お前、普通の相手だったら、負ける事は無かったのだろうが。」
「…この、【世界】の鎧には効かない。」
避ける事も、その槍で防ぐ事もせずに。
"鎧の硬度"のみで、その十連撃を彼は防ぎ切ったのだ。
「…受けろ。」
───暴風が、嵐が彼の槍に巻きつき、敵のものを威嚇する。
足に風が纏わりつき、退く、という行動が取れない。
その事実に、黒鎧は驚愕し、そして、笑う。
強者は、ここにも居たか…!
「【剛撃】×【波撃】…!!」
貴様は、アフラに任せるには惜しい。
「───【<波衝の撃滅>】ッ!!」
「ここで、お前を殺すのは、俺だ…!」
その斧から放たれるは、五重の必殺撃。
【精錬極技】を使用した、掛け値無しの究極の一撃。
…【世界】は、その名を告げるのを戸惑う。
だが、一度"その名"を告げれば、彼の槍は、彼自身に忠を尽くすのだ。
…今まで以上の対価を彼に求めるだろうが。
「───。だが、構わない。」
「俺が、アーサーに、救われたから。」
「ゲームを、俺に教えてくれたのは、あいつだから。だから───。」
「───応えてくれたあいつの意思を、繋げるのは、俺だ。」
「あいつの思いを、それを無駄にして、負けてたまるか───!」
その決意を胸にして、彼は、その名を呼ぶのだ。
「───【世界】ッ!!」
暴風が、全てを包み、圧し、撃ち壊す。
それは【精錬極技】にて放たれた法外な威力の五重の斬撃を…!
拮抗の余地なく、黒鎧ごと撃滅せしめた…!!
一の牙、二の牙、三の牙。
まだまだそれは、終わる気配は無い。
嵐とは、元来、質が数を持ってきたような、力とそれを振るう時間を充分に持ち合わせる存在であるのだから。
───そして、破滅の暴風がここに過ぎる。
黒鎧の姿は、見えない。
それを確認して、彼は背後へと振り返る。
彼は、その槍を手にして佇むのみだが、未だに暴風は彼の身を守るように包み込んでいる。
不意打ちを意識して索敵を行っているのだ。
…そして、その風の音のみが鳴る静寂は、一秒と持たずに、【世界】より崩された。
「───待たせたな、"アフラ"。」
遂に、彼は、見つけた。
砂煙の中から、ゆっくりと歩いてくるアフラを。
「ならば、君を倒すのは僕になるのか。」
───トリックスターは動き出す。
「ウォーンも要らない配慮だよ。倒してくれて構わなかったのに。」
「…でも、スロット…アーサーの『不壊不欠』をやっぱり無駄にはしたくは無かったからね。」
「君が残ってくれたのは、好都合だ。」
『不壊不欠』…
『一つのみ分体を出すことが出来、それを任意で破壊した時に本体を五分後に復活させる。本体、分体両方に【関節強化】、【筋力増強】のスキルがつけられている。このスキルは本体のレベルの高さと効果が比例する。』
「…。アーサーの身体が尋常では無い壊れ方をしていた。」
「『不壊不欠』が無くなったら、僕の【予言】には逆らえない…だから壊れた。」
アフラはあっさりと種明かしをした。
「…つまり、お前は、アーサーを犠牲にして、利用したって事か。」
「……僕だって、こうなるなんて、計算外だった。」
「───許さない。お前は、アーサーを先の『崩界事変』にて利用した挙句、正当な報酬さえ与えなかった。」
───王者の、覇気。
「───そうだね。でも、ここで君の【世界】さえ奪い取れればそれで良いんだ。」
「それが、ザスターの、いや、アーサーの望みなんだから。」
アーサーの、望み…?
「どういう事だ…!」
「答える義理は無い!」
「【僕は】【とても】【強くなる】ッ!」
───一瞬で、距離を詰める。
そして、【世界】に掌底が迫った…!
「【剛撃】、【ブレイクランス】ッ!」
それに対し、槍を、根棒の様にして受け止めて、そこから振り込んでノックバックを与え、過剰な前傾姿勢…次の一撃を振るうには無理な体勢になるが、スキルの強制力を活用して二撃目を放った…!
「君は、君のその槍と鎧は、今にでも葬り去りたいんじゃ無いのかッ!」
「…何故…それを…ッ!」
槍の側面を押し上げ、無理矢理にでも起動を曲げる。そして、接近。
「君の鎧は、スキルを培って出来た、いや、生贄にその力を得た…!」
「…暴風よ!吹き荒れろ!」
暴風によって、一時的にも離れたいが、アフラは絶妙なタイミングでバックステップを行い、直撃を避ける事により拮抗を作り続ける…!
それにより、槍と拳打が交互に繰り返されるが、それぞれ決定打を与えるには心許ない…。
「───君はッ!」
「いくら、昔の【仲間】だからって…ッ!」
「アーサーを利用してまで、俺からこの力を…。」
「───【ビクトリア】に捧げた全てを…!」
「俺から、奪う権利なんてない…ッ!!」
「…ッ。うん。わかってた。」
「だからって、諦めない。僕は、君とまた、遊びたいんだ…!」
「君の力を取り除けば、君のスキルは、きっと帰ってくる筈だから…!」
「【あなたは】【すごく】【脆くなる】…!」
アフラは【世界】へとデバフをかけて、後方に退いて構えを取る。
「…ハッ!!」
そして、隙を突こうと近づいてきた【世界】に拳の風圧による痛打を与えた…!
「な、あグッ…!!」
鎧は、衝撃を吸収する。するが、それでも吹き飛ぶものは吹き飛ぶ。
鎧の中の肉体はぐちゃぐちゃにシェイクされ、もはや、回避行動すら、取れないままに。
(力を…。)
(だが、代償が…───ッ!?)
目の前に、勢いよく迫る掌底。
「アンタはッ、結局、アーサーやザスターを利用してまでッ!」
「お前が、ただ奪いたいってだけだろうによぉッ!!」
───一瞬、その動きが、緩まった。
「【世───!」
だが、遅い。
【世界】は、そこから空中へと飛んできたアフラの掌底により、地面へと叩き落とされた…!
(…!声が、出ない…ッ!)
…鎧の隙間から、肉が溢れる。
血が身体から溢れ出し、四肢の骨は落下の衝撃によって、完膚なきまでに折られた。
「が、ッボォ!」
(…あいつを…!)
目の前に、アフラが近づいてくる。
「ひゅ、は、が、ぐ…!」
(あいつの、意思を、つ、なぐ…のは…。)
槍を、動かせ。
「───……俺、だ…!!」
「───【世界】ッ!」
暴風が、【世界】を包み込んで空中へと逃げようとする、だが。
「【それは《対象選択》】───。」
「───【欠ける《効果選択》。」
彼が、そう言葉を発する、するとその言葉通りに、【世界】の鎧が欠け、暴風に穴が開く。
それは、まるで、自然の摂理の様に。
数々の【スキル】を判例する鎧は、易々と砕かれ、幾多の【スキル】を内包する風も、それに準ずるように、"欠けた"…!
例えそれが、小さく、ほんの一欠片程の欠損で有っても…!
「───ッ!?」
「【スキル】の、鎧が…っ!?」
「───僕の、勝ちだ…ッ!!」
「【衝撃波】ッ!!」
そして、その小さな好機を見逃さず。
アフラの放った掌底から出た衝撃波は、鎧の隙間を潜り抜けて、【世界】の身体を、いとも容易く貫いた。




