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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第五部 トーナメント編
74/117

第5話 【世界】の真相



 俺の目の前に、ゆっくりと歩いてくる男。


「アフラさん…!」


 彼は、俺の上司だった男。

 【組織】の、頂点。


 ───アフラ、その者だった。


「───ッ!?なんで、ここに、アンタ達が…!」


 ラマンダ君から、叫ぶように放たれたその言葉に、アフラはこう、返した。



「君と、そろそろ遊びたくなったからね。」


「"後輩"。」


 それが、その言葉が、俺には向けられてはいない事はすぐ分かって、そして───。


 ───ゾッ、とした。

 ラマンダ君から放たれた剣呑な雰囲気が、場、全体を包んで、"拒絶"しようとしている。




「…また、奪いに来たのか…!力を…っ!」


 ラマンダ君は、今にも泣きそうに、そう言い放った。


 …その必死な様子に、アフラは悲しそうに眉を下げた。


「…【世界(ワールド)】が、君を縛る鎖。」


「大丈夫だよ。渡してくれない?君は、拒絶するだろうけど…。」


「───君の腹を、その"呪い"がいつ食いつぶすか、分かったものでは無いから…!」



 俺は、口を開いた。


「…【世界】?【アルカナ】、か。」


 それは、余りにも気になったから。


「そうか、ラマンダ君、君は───。」


 【アルカナ】なんだな、と。

 俺はそう言った。



 …その先の答えの前に、ラマンダ君は、いや【世界】は、俺を心配そうに見る。


「………アーサー?どうしたんだ…?」


 女神の為の、素材。俺が倒すべき、力を奪うべき標的。


 それがはっきりしてしまった以上。ここで、ここで決めなくては、俺の意思が、"変わってしまう"。



 『アーサー君。君に、覚悟はあるか?』




 【宿舎前】


 ───殺せ。



 《宿舎へと戻るまで、俺は黙っていた。》


『おい、いつまで落ち込んでるんだよ。』


 《そこにラマンダ君は待ったをかけて、俺はそれに、こう返した。》


『…だってさ、見たかよ、あの実力。』

『剣を振ったかどうかも分からなかった。』


 ───殺せ。


『ナギトに比べたらまだ遅い部類だろ、お前どうしたんだ?』


『…正直言うと、ちょっと前までかなり能力重視の戦いをしていたんだ。』


『なら、来ないか?』


『…何処にだよ。』



『ナギト式ブートキャンプ。』


『アイツには少し借りがあるから、お前一人ぐらいなら何とかなると思う。』


『どうだ、やってみないか?』



『…ああ、頼む。』


 ───アイツは、俺の事を人一倍、俺よりも、考えていてくれた。


 ───関係、無い。


『おい、ラマンダ君。どうするんだ。』


 《我が友人はチャッ、と武器を構えた。》


『………戦おう、アーサー。俺は逃げたくない!』


『………【幻魔盾シェル・イービル】は破壊されない。あくまで相手の攻撃を()()するスキルだ。破壊不能オブジェクトの性質を持つ、ね

 ---俺は、そこに目をつけたんです。』


『その、腹の紋章………もしかして、【付与術】か。それに【概念抽出】を使ったな。』


『当たり…!あのスキル習得クエストは長かったなぁ………!』



 …彼は、その"力"が無くとも、なんとかしようと努力を続けていた。


 ───なら、尚更のこと殺せ。力が無くとも、なんとかなるんだろう?


『お前と組んでからだな、このゲームで上を目指すようになったの。』




 《………なんでだ?ラマンダ君は俺と会った時でも充分な強さだったと思うけど。》





『このゲームって正直理不尽の塊みたいなもんだろ?高レベルプレイヤーには勝てねーし、俺なんか初めに教えてもらえなきゃ【魔力操作】無しで魔力を使うなんてまるっきしわかんなかったからな。』


 ───彼は、もっと前から、力では無く、技を磨き始めた。


 ───…。


 それこそ、俺達が出会ったあの時から。



『…お前、名前はなんだ?』



『…アーサー。』


 《俺は、腹が暴風によりズタズタにされている。》


 《彼の、槍。それが、俺を貫いた為だ。》



 《そんな俺だが、目の前にいるコイツは、始めはクソを煮詰めた性格だと思ったが…。》


『…なぁ。』


『…どうした、負け犬。』


 コイツはコイツで、泣きそうな顔をしているな、と思った。


『…お前は、どうして、【組織】なんかに。』


『給料が高いからだ。』


『…なぁ、もっと、上に行く気は、無いのか?』



 ───ここから、俺"達"は始まった。


 ここから、俺達の因縁は、始まったのだ。


『…俺は、こんな場所は、嫌いだ。』


 《…なら、分かった。》


『お前を、鍛えてやる。』


『力には、技量が必要だからな。』



『…何言ってやがる。お前が、俺に剣を教わるんだろうが。』


『…それでもいいさ。』


『は?』


『お前の様な気持ちのいい奴は、もっと相応しい所がある。』


『お前が納得するなら、俺は、それでも構わない。』



『……。クソナイトが。』








 《このゲームにはギルドがあるが、俺はギルドには入り浸らない事にしている。ナイトは平等であるべきだ。》




 ───俺は【皆のメイン盾でありたい】。




  【ナイトの誓い】だ。




  『おーい、アーサー。今日空いてるか?』




  《ラマンダくんだ。どうしたんだい?》

 



  『今からダンジョン行くからよー。一緒に行かないか?』




  《しょうがないな。ほれ、メイン盾が今行くぞ!》





「───ザスターさん、すみません、俺は。」



「いや、俺が、ラマンダを、守ります。」




「俺は、ラマンダを信じてるから。」



 アフラは、ラマンダの前に立ち塞がった俺に近づく。


 ───お前にその位置は、ふさわしく無い、と。



「…【世界(ザ・ワールド)】。」


「僕は君を、救いに来たんだ。」



 それに向けて、俺はラマンダを庇うために、引きつけるために、アフラへと立ち向かう…!


「───貴方が、そんな名で、ラマンダを…!」



「僕の友人を、呼ぶなッ!!」



「…ならば、力を示してよ。」


「【僕は(対象選択)】【とても(修飾詞)】【強くなる(効果選択)】…ッ!」



 彼は、アフラは、服の裾から出したナイフを、おもむろに、俺の方に投げた。



「…アー、サー。」


 …そう言うラマンダの前に、黒鎧の魔物が現れる。


「なら、お前の相手は、俺だ。」


「【波撃(ウェイブ)】ッ!」



 1.コロシアム内部


「救いに来たなら、なんで戦う必要があるんですか…ッ!?」


 俺は投げられたナイフを難なく避けて、接近してきたアフラの掌底を躱す。


「【君たちは(対象選択)】【いずれ(修飾詞)】【辿り着く(効果選択)】。」


 …だが、彼は、答えない。


 スキルの言葉を皮切りに、俺の背後にあるナイフ達は"目的地()"を目指して軌道を描く。



「…答えませんか…!」


「…ただ、近づいたのは失敗でしたね。」


 俺は片手剣をアフラの掌底を放ち、伸ばし切った右手へと振り下ろすが…。



「【私は(対象選択)】【離れない(効果選択)】。」


「君は、資格がないから。」


 その右腕は、離れない。まるで剣がペーバーナイフにでもなった様だった。



「知らない者に、用はないんだ、"スロット"。」


 ならば、全身を砕くだけだ。


「僕が…ラマンダの隣に、"今、隣に居る"僕に、資格がないと言うんですか…っ!」



「…【全属性魔法弾フル・オールボム】連射ッ!!」


 至近距離からダメージを与える為の攻撃。


 ドババババッ!と、身体全体から放たれる超連射。


「───ならば、今、ラマンダについてやらない僕は、要らない落伍者だと…?」



 ───そして、そんなものを無視して、アフラから放たれた掌底は俺の顎を吹き飛ばした。



「あガっ!?」


「ッハ!ァそんな事は無いッ!でも、俺も無関係とは言えない…!」



 その勢いは凄まじく、空中にまで飛ばされる。だが、そこで一回転してアフラは何処だと眼を忙しなく回すと…。


「【俺は(対象選択)】【打ち砕く(効果選択)】。」


「…君は、ここで、やられるんだ。」


「…だから、この話はここで終わりなんだよ。」


 今、目の前に、彼はいる。


「───ッ!?」


 遥かに、先程よりも威力が大きいと感じる程の速度の一撃が、俺に向けて放たれる…。


(…俺は、どうしたら、良いんだ…?)


(ラマンダの為に、何を、すれば良い…?)


 《ラマンダは、俺の、友達だ。》


 《だが、たかだか、友達程度だ。》


 《…ならば、この、ラマンダの先輩を名乗る男に、任せた方がいいのでは…?》





「───馬鹿な事を、言うんじゃ無い…!」


《…だが、しかし。》


《アーサーの思考は、親愛なる友人を救う為、加速した…!》


 ───いきなり、掌底が、自分の動きが、ゆっくりに見えるようになった。


「迷ってる時点で、答えは出ているんだ…!」



 いや、世界全体が。ゆっくりと動いているのだ。


   「───【第四段階(フォース)】ッ!」


 態勢を整え、片手剣を掌底の軌道に合わせる。


   「【属性付与:炎エンチャント・ファイア】…!」


 粒子が、煮立つ。


 炎が俺の体を覆って、混ざって、同化する…!



「【第四段階(フォース)】…!?」



「お前に、ラマンダが救えるかぁーーッ!!」




 魔力は主に粒子と粒子の間のエネルギー。そのため、【魔法弾】は粒子を必要としない技能。


 ───だが、粒子そのままを放ってみたら、どうなるか。



 答えは、魔力が生成され続け、【粒子弾】は過剰な魔力を元に───。



 ───焔を撒き散らし、爆発する…!



「赤光よ、彼を包み込め…!!」


 極光が、赤い光が、彼ら全員を包み込み…!



 暁は、此処に再誕する…。




「───【此処に白夜は在り、(ヘリオース)日輪は顕われる(・ブレイカー)】ーーーッッ!!!」


 それは、ラマンダへの配慮を伴った小爆撃として、アフラの身を包み…。



 ───溶かす。


 アフラの身体は、離れない。

 これに、虚飾は無い。実際に、この爆発の中でも五体満足で居続けられている。


 ただ、燃える。

 いや、焦げる。概念的にその存在が、固定されているのであれば、この赤光は、それを焼き続けて、破滅の中に包み込み続ける。



「アンタが、何をしようとして、ラマンダ君がどうなっていたかは、分からない。」


 光が、止むことは無い。



「…それが良かったのか、悪かったかなんて。」


 ───なればこそ、全身がそのまま、焼かれ続け、焦げるのだ。



「だけど、俺も、彼の友達だ。」


「あんな事は、言ったが…。」


「…やっぱり、アイツの辛い時に、側にいてやれなかった奴に、信頼なんて、置けない。」



 …そして、爆発は、止まる。


 【第四段階(フォース)】の、停止と共に。


 一撃によって戦いを終わらせたアーサーは、だが、それでも考えることをやめない。


 ラマンダ、彼の為に。



「ラマンダ君っ!!」


 場を見渡してみれば、随分とまだ、煙が残っている。


 ───だから、気づかなかったのだろう。



『【君たちは(対象選択)】【いずれ(修飾詞)】【辿り着く(効果選択)】。』


「───が、は。」


 胸から、血が。背中に、何かが刺さっていると不快感が主張する。


 後ろから付けて来たナイフは、ついに俺の背面へと辿り着いたのだ…!




「オイ、随分と派手だったんじゃねえか?」



「お前。」


 ───ッ!

 黒鎧の、魔物…!


「【波撃(ウェイブ)】ッ!」


 斧が、多重にその形を成して、俺に襲いかかる。


 手に持つ片手剣でまず、一撃目を防ぎ、多重分裂した二撃目を受け流そうとする時に、遂に身体にガタが来た。



『【あなたは(対象選択)】【すごく(修飾詞)】【脆くなる(効果選択)】。』


 ───その言葉通りに、足が、"崩れた"。


 文字通り、崩れる。踏ん張りなんて効かずに、足の繊維が力を入れる度に全て解けて、重心は、どんどん崩れていく。


「───ッ!?」


 ───その時、世界が、ゆっくりに、なる。



 だが、手は動かない。足は崩れるばかり。



「だけど、それは───。」



 【俺は、みんなのメイン盾に成りたい】。



「最善を成さない、理由にはならない…ッ!」


「そうだろう…!」



 ぎりりと歯を噛み締めて、ここにある"生"の為に戦え…!


「アイツは、必ず、助ける…。」


 コレを為さねばお前は、生きてはいけない…!



「ぐぉぉぉ…!…ハッ、だから…!」


 足が、崩れて、でも、重心は崩さない…!

 もう解けそうな、膝小僧の断面で、何とか支える…!


「だから、アイツが、来るまでは…!」


  そのまま、三撃目、四撃目を受け流して…!


 「【剛撃(バスター)】ッ!!」



 コレで、五撃目ッ!




「───ッ。」



「はぁぁぁぁぁぁ…ッ!!」



 そして、両腕を振り切り、俺は斧の五連撃を受け切った…!




「───アーサーッ!よくも…!」


 ラマンダ君…!駆けつけてきてくれた、だが、俺はもう戦える体では無いと分かると、顔を鬼の形相に変えて、黒鎧へと斬りかかる…!


「…!元盟主様か!なら、死に損ない、お前で遊ぶのは止めだッ!」



 ───その宣言の後。


 一瞬で頭以外の四肢を、右手以外斬り落とされ、俺は後方へと、ラマンダ君へと、投げ飛ばされた…!


「そらよッ!ソイツ、お友達なんだろォ?」



「…ッ!?アーサー!」


 ラマンダ君が、俺を抱きとめた…。



「ラマンダ君ッ!戦えッ!!」


「…アーサー。」


「【世界】は、俺だって欲しい…!」



「───…アーサー!?」



「だけどッ!俺は、メイン盾だから…!」


 俺は、精一杯の力を込めて、右手を、伸ばす。


「お前を、助けた…!」



「お前が、俺の、1番の…!」



「───友達、だったから…!」



 その言葉に、ラマンダ君は頷き…。


「…アーサー。」



「───分かったよ。俺は、抗う。」



「俺も、全開だ。」


 ───空気が、変わった。


 息苦しく、とてもこの"圧"の中では、立つことなど叶わない。


 帝王の、カリスマ。


「はは、あの時以来だな、───もうあまり時間は、残っていないが…!」



「───望み通り、お前らを、叩き潰してやるよ…!!」


 ドスの効いた声で、ラマンダ君は、黒鎧の魔物に向けて啖呵を切った。



「やっちまえッ!ラマンダァーーッ!!」




  「───【世界(ワールド)】ッ!」



 ラマンダの周囲を、突風が包み…。



 ───そして、光に包まれた槍と共に、黄金の鎧姿の男が現れる。


 紛れも無い、【世界】その者だった。


 黒鎧はその威圧感に一歩後ずさる、が、すぐさま笑みを浮かべて斧を構えた。


「【世界(ワールド)】の能力…!」



「………。」


「アーサー。俺、行くよ。」


「…はは、そうか。」


「───やっちまえ。」



 …そして、粒子は完全に、空間へと、溶けた。



「……待たせたな。黒鎧。」


 …ラマンダのその殺意は、見るだけで相手を殺せそうなもの、それに彼自身のカリスマも加われば、ロクに行動できないはず、だが。



「…へへ、面白い。」


「ならば、死ね…!」


 黒鎧は、そう言い、滑るように地面を移動し、その斧を振りかぶった…!


「【波撃(ウェイブ)】【終局の二撃目(クライシス)】ッ!」



 【終局の二撃目(クライシス)】…

 『このスキルの前に発動させたスキルを、威力を一.二五倍させて再発動する。【残虐】派生スキルアビリティ。』


 【残虐】…

 『殺した相手をさらに攻撃できる。』



 威力がそれぞれ異なる、だが、どちらにしてもアーサーに放った物とは比べ物にならない速さの、多段十連撃がラマンダに迫る…!



「…お前、普通の相手だったら、負ける事は無かったのだろうが。」



「…この、【世界(ワールド)】の鎧には効かない。」



 避ける事も、その槍で防ぐ事もせずに。


 "鎧の硬度"のみで、その十連撃を彼は防ぎ切ったのだ。



「…受けろ。」


 ───暴風が、嵐が彼の槍に巻きつき、敵のものを威嚇する。


 足に風が纏わりつき、退く、という行動が取れない。

 その事実に、黒鎧は驚愕し、そして、笑う。


 強者は、ここにも居たか…!



「【剛撃(バスター)×(コネクト)波撃(ウェイブ)】…!!」



 貴様は、アフラに任せるには惜しい。



「───【<波衝の撃滅(デュオニュソス)>】ッ!!」



「ここで、お前を殺すのは、俺だ…!」


 その斧から放たれるは、五重の必殺撃。


 【精錬極技(アビリティコネクト)】を使用した、掛け値無しの究極の一撃。





 …【世界】は、その名を告げるのを戸惑う。


 だが、一度"その名"を告げれば、彼の槍は、彼自身に忠を尽くすのだ。


 …今まで以上の対価を彼に求めるだろうが。




「───。だが、構わない。」


「俺が、アーサーに、救われたから。」



「ゲームを、俺に教えてくれたのは、あいつだから。だから───。」



「───応えてくれたあいつの意思を、繋げるのは、俺だ。」


「あいつの思いを、それを無駄にして、負けてたまるか───!」


 その決意を胸にして、彼は、その名を呼ぶのだ。


    「───【世界(ワールド)】ッ!!」


 暴風が、全てを包み、圧し、撃ち壊す。


 それは【精錬極技(アビリティコネクト)】にて放たれた法外な威力の五重の斬撃を…!



 拮抗の余地なく、黒鎧ごと撃滅せしめた…!!


 一の牙、二の牙、三の牙。

 まだまだそれは、終わる気配は無い。


 嵐とは、元来、質が数を持ってきたような、力とそれを振るう時間を充分に持ち合わせる存在であるのだから。



 ───そして、破滅の暴風がここに過ぎる。


 黒鎧の姿は、見えない。


 それを確認して、彼は背後へと振り返る。


 彼は、その槍を手にして佇むのみだが、未だに暴風は彼の身を守るように包み込んでいる。


 不意打ちを意識して索敵を行っているのだ。


 …そして、その風の音のみが鳴る静寂は、一秒と持たずに、【世界】より崩された。



「───待たせたな、"アフラ"。」


 遂に、彼は、見つけた。


 砂煙の中から、ゆっくりと歩いてくるアフラを。


「ならば、君を倒すのは僕になるのか。」



 ───トリックスターは動き出す。


「ウォーンも要らない配慮だよ。倒してくれて構わなかったのに。」



「…でも、スロット…アーサーの『不壊不欠(スクルド)』をやっぱり無駄にはしたくは無かったからね。」


「君が残ってくれたのは、好都合だ。」



 『不壊不欠(スクルド)』…

 『一つのみ分体を出すことが出来、それを任意で破壊した時に本体を五分後に復活させる。本体、分体両方に【関節強化】、【筋力増強】のスキルがつけられている。このスキルは本体のレベルの高さと効果が比例する。』



「…。アーサーの身体が尋常では無い壊れ方をしていた。」



「『不壊不欠(スクルド)』が無くなったら、僕の【予言】には逆らえない…だから壊れた。」


 アフラはあっさりと種明かしをした。


「…つまり、お前は、アーサーを犠牲にして、利用したって事か。」



「……僕だって、こうなるなんて、計算外だった。」



「───許さない。お前は、アーサーを先の『崩界事変』にて利用した挙句、正当な報酬さえ与えなかった。」



 ───王者の、覇気。



「───そうだね。でも、ここで君の【世界】さえ奪い取れればそれで良いんだ。」


「それが、ザスターの、いや、アーサーの望みなんだから。」



 アーサーの、望み…?



「どういう事だ…!」




「答える義理は無い!」


「【僕は(対象選択)】【とても(修飾詞)】【強くなる(効果選択)】ッ!」


 ───一瞬で、距離を詰める。

 そして、【世界】に掌底が迫った…!


「【剛撃(バスター)】、【ブレイクランス】ッ!」


 それに対し、槍を、根棒の様にして受け止めて、そこから振り込んでノックバックを与え、過剰な前傾姿勢…次の一撃を振るうには無理な体勢になるが、スキルの強制力を活用して二撃目を放った…!


「君は、君のその槍と鎧は、今にでも葬り去りたいんじゃ無いのかッ!」


「…何故…それを…ッ!」


 槍の側面を押し上げ、無理矢理にでも起動を曲げる。そして、接近。


「君の鎧は、スキルを培って出来た、いや、生贄にその力を得た…!」


「…暴風よ!吹き荒れろ!」


 暴風によって、一時的にも離れたいが、アフラは絶妙なタイミングでバックステップを行い、直撃を避ける事により拮抗を作り続ける…!


 それにより、槍と拳打が交互に繰り返されるが、それぞれ決定打を与えるには心許ない…。


「───君はッ!」



「いくら、昔の【仲間】だからって…ッ!」


「アーサーを利用してまで、俺からこの力を…。」







「───【ビクトリア】に捧げた全て(総数74個のスキル)を…!」





「俺から、奪う権利なんてない…ッ!!」






「…ッ。うん。わかってた。」


「だからって、諦めない。僕は、君とまた、遊びたいんだ…!」


「君の力を取り除けば、君のスキルは、きっと帰ってくる筈だから…!」


「【あなたは(対象選択)】【すごく(修飾詞)】【脆くなる(効果選択)】…!」


 アフラは【世界】へとデバフをかけて、後方に退いて構えを取る。


「…ハッ!!」


 そして、隙を突こうと近づいてきた【世界】に拳の風圧による痛打を与えた…!



「な、あグッ…!!」


 鎧は、衝撃を吸収する。するが、それでも吹き飛ぶものは吹き飛ぶ。


 鎧の中の肉体はぐちゃぐちゃにシェイクされ、もはや、回避行動すら、取れないままに。


(力を…。)


(だが、代償が…───ッ!?)


 目の前に、勢いよく迫る掌底。




「アンタはッ、結局、アーサーやザスターを利用してまでッ!」


「お前が、ただ奪いたいってだけだろうによぉッ!!」



 ───一瞬、その動きが、緩まった。



「【(ワー)───!」



 だが、遅い。


 【世界】は、そこから空中へと飛んできたアフラの掌底により、地面へと叩き落とされた…!


(…!声が、出ない…ッ!)


 …鎧の隙間から、肉が溢れる。

 血が身体から溢れ出し、四肢の骨は落下の衝撃によって、完膚なきまでに折られた。


「が、ッボォ!」


(…あいつを…!)


 目の前に、アフラが近づいてくる。


「ひゅ、は、が、ぐ…!」


(あいつの、意思を、つ、なぐ…のは…。)


 槍を、動かせ。



「───……俺、だ…!!」



「───【世界(ワールド)】ッ!」



 暴風が、【世界】を包み込んで空中へと逃げようとする、だが。




「【それは《対象選択》】───。」


    「───【欠ける《効果選択》。」



 彼が、そう言葉を発する、するとその言葉通りに、【世界】の鎧が欠け、暴風に穴が開く。


 それは、まるで、自然の摂理の様に。


 数々の【スキル】を判例する鎧は、易々と砕かれ、幾多の【スキル】を内包する風も、それに準ずるように、"欠けた"…!


 例えそれが、小さく、ほんの一欠片程の欠損で有っても…!


「───ッ!?」


「【スキル】の、鎧が…っ!?」




「───僕の、勝ちだ…ッ!!」


「【衝撃波スパーク】ッ!!」





 そして、その小さな好機を見逃さず。


 アフラの放った掌底から出た衝撃波は、鎧の隙間を潜り抜けて、【世界】の身体を、いとも容易く貫いた。

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