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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第五部 トーナメント編
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第4話 【世界】の実力






 「君は、どれだけ耐えられる?」


「【あなたは(対象選択)】【すごく(修飾詞)】【脆くなる(効果選択)】。」



 …その言葉に、俺はハッ、と笑い返した。


「お前は、俺を縛れない。」




「だけど、ゲームシステムは、君を補正し続ける。」

「直しても、きっと"世界"が許さない。」




 遠くでラマンダ君が、叫んだ。


「アーサーッ!糞…!」


 そして、黒鎧の魔物を睨みつける…!


「なんでお前が、此処にいるんだよ…!」


「盟主殿に会えるとはナ。こいつぁ、いい一日になりそうだぜェ…!!」



「【波撃(ウェイブ)】ッ!!」


 そう言い残して、黒鎧の魔物は手に持つ斧を、思い切り振り下ろした…!










 1.宿舎前



 …死線を潜り抜けて得た勝利には、何故か喜びよりも内容の反省の方が大きかった。


(…まさか、あの土壇場で、【第四段階(フォース)】を発動できてしまうとは…。)



 地味に嬉しい、だが、現実感が無い。


 再現しろと言われれば、普通に出来る分、余計に。



「…クソナイト。」


「…ナギト…!」


 ようやく来たか、ならば、早くしよう。



 ───さぁ、感想戦と行こうか。



「なんでお前あんな速いの?加速した意識の中でもやべーくらい速いんだけど。」


「ステータス性能の差だ。だが、あの一撃必殺はどうやった。」


「粒子に属性を与えてそれを他のにも感染させ続けた。あと、お前実は本気出してなかったんじゃ無いの?」


「…ほう、なんでそう思う。」


「なんかそれっぽいし。なんか、直感。」


「当たりだ。ステータスの十分の三はお前のその加速した意識とやらの中で発揮したがな。」


「…俺ですらスローモーションなのに、お前速すぎないか?要はプールの中で皆ゆっくり歩いてる中、お前だけ五十メートル走を陸上と変わらず行えてるって事だぞ。」


「それにはもう答えただろ。感想戦は終いか?」


「終いだ。」


「よし。」




 すると、ナギトはいきなり胸倉を掴んで、小声で喋りかけてきた。



「…クソナイト、お前は、あのトーナメントに行くのか?」


「…?あー、ラマンダから聞いたのか。そうだけど?」


「…きなくせぇ。お前、アフラ見つけたらすぐ逃げろ。」


「あいつ…ザスターんトコに良く行ってる物好きなら、どうせ【組織】に良い思いはしてないだろ?」


「…は?てか、なんであんたアフラさんの事───。」


(こんな運営主催の最強を決めるトーナメントに【組織】の人が来るのは、ある意味当然だと思うけど。)


「とにかくだよ。普通に過ごしてるだけで噂が聞こえてくるくらいには目をつけられてるからな。」


 …何故、こんな忠告を?俺は怪しんで眉を顰めた。


「…おい、お前んなこと言う奴じゃなかったろ?」


「昔のお前に対しては、経験値だと思ってたからな、ナイトはDPS低いし。」


「だが、お前は、俺を一度殺して見せた。」


 …それを皮切りに、ナギトは「お開きだ」といって歩き出した。



「おい!」


 それを、俺は引き止める。


「…なんだ、クソナイト。」



「なんで性転換してるんだ?」



「ゲームの中でも男のケツずっと追いかけてぇのか?」


「そうか!帰ってくれていいぞ!」


「そうさせてもらう。」



 …こんなくだらない流れでナギトと別れると、息を切らしたラマンダ君が走ってきた。


「はぁ…はぁ…。アーサー!」


「ラマンダ君…!どうしたんだ!?VRでは息切れなんて無いのに!」


 急いで走ってきたラマンダ君を支える。


「いや、やっぱそう言うムーブいいわ。」


 …そうか。

 俺は彼から名残惜しそうに手を離す。


「アーサー。今すぐ来てくれ。もう一回戦が始まっているんだ。」


「は?」



 2.コロシアム内



「【ブレイクランス】!【ハヤブサランス】ッ!【剛撃(バスター)】ッ!」


 槍使いの相手に中段突きを与え、その後上段下段の二連続。

 最後に槍を鈍器として下からカチ上げる…!


 そして俺は、その横で、片手剣で鍔迫り合いをしていた剣使いを足払いで崩し、すぐさま剣を握ってない方の手で首を捻る。




「カール!マシダ!今、蘇生を…って、今、私は観客席だからなぁ…。」



 …そうして、俺たちの一回戦は終了した。



「よし、このままの調子で行こう!ラマンダ君。」


 そう、声をかけてみたら、まさか話しかけられるとは思わなかったのか、ラマンダ君は少し驚く。


「…ッ!?ああ、うん。」



 …彼が、見ていた視線の先には、黒鎧の魔物と将軍じみた格好をした男。それと…。



 青い装束に顔まで包んで、深く帽子をかぶる男がいた。


「…次はマキナとアリス。マキナは知ってるけど。」


 …そこに、彼ら、マキナとアリス、その二人は現れる。


「おいおい、俺の相棒を知らないとは、言わせないぜ!」


 その手に持つ斧を、鎧に叩いて鳴らした。


「マキナさんは、強いから、私抜きでも…。」


「…アリス。あの時の事をまだ引きずってんのは、お前らしくねぇ!」


「…決める時は決めるぞ。お前が此処に来たってことは、そう言うことだろ?」


「…はいっ!」



 そんな惚気に、ラマンダ君は水を差す。


「あー、青春してるトコ悪いんだが、もう始まってる。」


「そりゃ悪いな。尋常に、勝負!」



 …そうして、第ニ回戦が始まった、


 まずはラマンダ君が【衝撃波(スパーク)】を放ちながら女を牽制し、俺はマキナへと回り込む。


「あの時の続きをさせてもらう…!【一騎打ちの誉れ】、【衝撃(インパクト)反撃(カウンター)】!」


 相手を引きつけ、それを打ち砕く…。


 だが、それは前回でもやられている。ならば、【極光(シャインピラー)】無くとも、【魔法弾】を連射するだけで勝てるのだが。


「【受け流し】…!」


「そしてぇ…!」


 おもむろに彼はアイテムボックスから槍を取り出した。


「【投擲:スロー・ランス】ッ!!」


 離れられても、そこで腹に槍を刺さるように、彼は研鑽を積み…。



 遂に、【一騎打ちの誉れ】の、遠距離攻撃にはどうしようも出来ない、と言う弱点を、克服して見せたのである。


 アーサーの身体はマキナへ、マキナの槍はアーサーへ。それぞれ、加速する…!


 それは、すれ違う電車と同じように加速して、スピードを持つ槍を避けるのを困難にする。



「…だが、スピードが足りない。」


 ───カァンッ!


 鉄が弾ける音を立てて、槍は吹き飛ぶ。


 少しばかり修羅場を潜りすぎたこの男には、生半可な"必殺"は最早通用しなくなっていたのだ。


「…そして、受け取れ。」


 ───スキルなど使用しない、正真正銘、ステータスのみの一撃。


 それにマキナは反応は、出来て、対応も、完璧だったが。


 ───マキナは、片手剣に心臓を貫かれ、死亡した。


 …マキナにはその一撃を防ぐ"腕力"が、足りなかったのである。


「…………。は、ぁ…!」


「アリスッ!負けんじゃ、ねぇぞぉ…!!」



 ───場面は、ラマンダとアリスへと移る。


「【人体改造】『概念抽出(ロード)』、『機械種(アイアンズ)』…!」


 アリスの体は、鉄に覆われる。

 …そして、その後一瞬で跳躍する。

 ───スカートの中から銃口が覗いた。


 背部から生えたジェットパックにより飛行しながら、彼女は全方位から弾丸を放つ…!


「…【幻魔盾(シェル・イービル)】ッ!」


 盾が、身体に鎧として纏われる…。

 それは、【スキル】と魔法壁の中間物質。実態を持ち得ながら、無いものとして扱われる。



 打ち出される弾丸、その一撃はラマンダを削る。文字通りに体を削り、骨を砕き、吹き飛ばす。


 …しかし、彼は、その【スキル】を身体に適応した。【付与術】を使用して。


 【スキル】は、物理的には破壊できない。ならば、その"性質"を身体に刻みつけて仕舞えば、自身は戦闘が終了するまでは、"破壊"されることはない…!!


 それこそ、【破壊】スキルでも無ければ、の話しになるが…。



 今回は、幸運だった。



「【衝撃波(スパーク)】ッ、【焉撃槍】…!!」


「そして、【瞬間強化:速度(プラススピード)】…!」


 目くらましとして出した一撃、その後に続く本命と思わしき一撃が、ラマンダの槍より、浮遊するアリスへと放たれた…!


「…そんなもの…!」


「"私には効かない"…か?」


 背後から、不意に、声がした。


「───ッ!?」


(視界を、攻撃に誘導された───!?)



 この男、いつの間にやら背後を取っていた。


「【剛撃(バスター)】…。」


「落ちろ…!!」


 振り抜かれた槍が、ジェットパックごとアリスの腹部を貫き…。


 ───前方面から来た【焉撃槍】との挟撃により、アリスは破壊された…!


 

 ───ガァンッ!


 機械が落ちる音は、ラマンダの着地の音を搔き消す。


 …此処に、第二回戦は終着した。



 3.街道


 そして、そのままの調子で三回戦まで通過してしまった。





「なんとまぁ、呆気ない…。」



「何がさ。」



「あれ、ほら、一回戦の。」


 あの男二人組である。



「あー、まー、それくらいだよ。Cランクは。光ってるのはさっき戦ったマキナぐらい…だと思う。」


「いや、よく見ていない俺がこんな事を言うのもなんだけどさ…。」



「…マキナか。アイツはアイツで、結構な即死技を持ってたんだがな。力と速さが足りなかった。」


 あれは、うまく決まれば俺たち二人とも、倒せる技だった。


 しかし、俺達は勝ってしまった。


 同じ土俵だったら、即様負けてしまうような、綱渡りを───。


 ───ステータスの暴力にて、跳ね返してしまった。


「お前ちょっとそれは上から目線だろう…。」


 ラマンダが言う。

 俺は、少し傲慢さを持っているのかもしれない。


 だからこそ、手加減をしていたナギトの気持ちが、分かった気がする。


「…すまん。」


 …マキナはマキナで本職は今何やってるんだろうな。まぁ、戦っただけだけど。


 …そうしていると、ラマンダ君が次の対戦相手を教えてくれた。


「次の相手は…。知らない奴だ。【warn】と【APRA】か。」



「へぇー。」



 どうなるかは分からない。


《ジョーカーは笑う。》


 だが、勝ち進もう。ラマンダ君の為にも。


《黒鎧の下には、悪辣な顔が潜む。》



《縋り付くべき希望は、絶望の中に。》

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