第2話 宿敵との再会
1.街道
「………。」
「…………………。」
…俺たちは、PvPモード(試合設定)が終わって元に復元されたのにもかかわらず、何故かそのままの体勢でいた。
放心状態、とでも言うのだろうか。それが今の俺たちを表すにふさわしいと言えるだろう。
「…おい、アーサー。気は済んだか?」
その声で、ようやく体が動く気になると。
「…あ、ああ。大丈夫だ。行こう。」
そこで何か不思議なものを見つめるような目をしたタイトに構わず、背を向けて帰ろうとした。
「じゃあな、タイト…だったか。ありがとうな!」
ラマンダ君が俺の代わりにフォローしてくれたのは良かったが、今回は、俺の攻撃が何一つ通用しない戦いだった。
剣を受け止める事すら出来ず、魔力では容易く超えられ、【魂装】の操作以外では全てが完封されたような試合だった。
【審判】があれば一発だったけど。決闘の場で自分の実力とも言えない物を使うのは憚られた。いずれは女神復活の材料になる予定だし。
…【第二段階】を使っても勝てなかったかも知れない。
何故なら、奴はまだ、未知数すぎるから。
トラップの一つや二つ、軽く使ってくるかも知れない。
…粒子を上手く使って、戦っていくのも、一つの答えかもしれないな。
…何にせよ、実力で、負けた。
自分にとって相性が良い相手に。
2.宿舎前
宿舎へと戻るまで、俺は黙っていた。
「おい、いつまで落ち込んでるんだよ。」
そこにラマンダ君は待ったをかけて、俺はそれに、こう返した。
「…だってさ、見たかよ、あの実力。」
「剣を振ったかどうかも分からなかった。」
ほぼ、惨敗。引き分けに持ち込んだが、あの時、右半身を丸ごと切り落とされた時に、勝負は決まっていたのである、と、俺は思っていたからだ。
…こんな、情け無い返事が出たのは。
「ナギトに比べたらまだ遅い部類だろ、お前どうしたんだ?」
…ナギト、か。
あの時も煙を出して、見えなくなった所を強襲したわけだが、多分、読まれていたんだろう。
今としては、それほどまでに奴と俺との差は広がっていたのだ、と感じる。
…俺は、奴を追い越せるはずだ。この【アルカナ】の力なら。
どうせ俺の元から無くなる力なら、使いこなしても意味は無いのだが。
「…正直言うと、ちょっと前までかなり能力重視の戦いをしていたんだ。」
…【月】。奴は、どちらかというと手札の切り方が分かっていた相手で、使っている鉤爪はリーチが少ない分、受け止め安かったし、アイツはどちらかというと体全体で戦っている印象だった。
断じてデタラメな威力の一撃にはこだわっていない、丹念な準備をしてジャイアントキラーをするような、そんなスタイル。
「なら、来ないか?」
「…何処にだよ。」
「ナギト式ブートキャンプ。」
「アイツには少し借りがあるから、お前一人ぐらいなら何とかなると思う。」
…たしかに、アイツの斧は俺の見てきた中でも最速の部類に入る。
───一度、経験しておくのも、悪くは無い。
「どうだ、やってみないか?」
俺は、そんな地獄への誘いに───。
「…ああ、頼む。」
躊躇いもなく、乗った。
3.攻略組拠点地下都市ライド 戦闘ブース内
「…おい、ラマンダ。」
連れてこられたのは、なんだかよくわからない地下施設、【組織】関連ではなさそうだ。
見たこともない。
「別に良いでしょ、ナギトさん。あなたの斧の被害者が増えるくらい。」
「俺はお前の攻略組復帰を手伝ってやってるだけだぞ。」
「だから、俺はコイツと復帰したい。協力してくれませんか?」
「…なら良いだろう。だが、期間は短縮する。あと鍛えられる7日分で復帰しろ。後は料金外だ。」
「え、えーと。」
「…黙ってろ、クソナイト。お前はこう言う所に顔を出すような奴ではないと思っていたんだがな。」
何故かナギトは残念そうだ。どう言うことだろうか。まず、お前は通り魔で、長い事お前は俺の復讐リスト入りしてるんだが?
だから、此処で為すがままなのは少し癪に触る。
「…悪いが、お前とは今日は手合わせするだけだ。」
そう、言った。ラマンダ君は少し、目を細めてこっちを見ている。
悪いが、これもまた俺の意志だ。そして、俺は修行をつけにもらった訳じゃない。
殺し合いに来たのだ。
「…ほう、ラマンダ。」
ナギトはラマンダに目配せをする。
「…やれよアーサー。」
「仲介までしてやったのにこれはあんまりだ。大人しく潰されてろよ。」
(…そうか、ラマンダ君は、俺の事をそういう風に見ていたのか。)
「あんな奴に苦戦していたお前じゃ、ロクに勝ち目は無い、とは思うがな。」
(大人しく、力を宿敵に縋り付いてでも求める、醜い畜生だと。)
返答を求められたラマンダ君は、如何にもどうでも良さそうにそう言い放った。
だが、それで良い。
この場をぶち壊すのは、勿論、覚悟あっての事だからだ。
「ラマンダ君、俺は、勝つ。」
「修行と言って、先ず初めにナギトと言ったお前を救い出してやる。」
「…君は、あの時の怒りを、忘れてしまった。」
…ラマンダ君は、何も言わずに俺の背中を見つめていた。
「───話は、済んだか?」
「勿論だ。」




