エピローグ 女神へと、捧げるために。
これは、スキルではない。
これは、スキルアビリティでもない。
ならば、これは何なのか。
「…何だって、いい。」
「そんな些細な事で、今更、"見失うものか"。」
1.『月面の黄昏』
「俺、は───。」
アーサーは、彼の身体は、粒子となって溶ける。その身体は千切りにされ、即座に分解が始まり…。
…そして、終わろうとしていた。
ズシャリと、そう音を立てて剣山が抜き取られる。すると面白いように身体は頭部を残して賽の目切りに崩れ去った。今の彼には、筋肉の欠片でさえも操ることは、出来ない。
月面を、真紅が汚す。
「…死ね。」
そして、勝者はその剣を、頭部に突き刺し…。
…戦いは、ここで、終わった。
彼が、【魔神王の魂】を手にして。
「…【第三段階】解除。」
2.戦線地下 塹壕
ガチャリ、と。
普段は【模倣】で転移してくるのだが、今日は、違った。
…扉から光が入る。それはこの空間に、開けた其の者が主であるにも関わらず、警戒心を与える。
「…ただ、いま。」
「みんな。」
戦場を避けて、息も絶え絶えとなってここへたどり着いた【月】を、その仲間達は歓迎する。
「首尾はどうです?」
と、【魔術師】。
「ほう、貴様にしては早かったじゃないか。」
と、【女帝】
それに対して【月】は辺りを見回すようにして、一言。
「【審判】が居ない。」
「さて、分かりません。」
「私もだ。そこらへんはサッパリでな。」
そして【魔術師】は椅子に座る。楽な姿勢だ。
「まぁ、多分、リスポーン中かと思いますよ。」
…そうか、それは、良いことを聞いた。
「あぁ、そうだ。首尾の話も含めて、あと、新しい情報が入ったから、外で話をしないか?」
「ちょっ!?【月】!いきなりどうしたんです…!?」
そう、ズルズルと引きずられて、彼らはフェードアウトした。
【女帝】は、一人ぼっちなのである。
…どれくらい経っただろうか。まぁ、私が律儀に待つ必要は無いが、あの【月】の事だ、【審判】と共に全員で話をするために【魔術師】をこき使っているのだろう。
「…!これは、【テレポート】…?」
身体が唐突に半透明になって行く、何が起きているんだ、先ずはこれを…。
───拒否、しなければ。
…ふぅ、危なかった。
あと、一瞬でも申請が遅れていたら何処からか知らぬ場所へ拉致されようとしていた。
「とにかく、これを報告───。」
地上へと続く階段。そこから剣の根が、生えてきて───。
そして、【女帝】は何も抵抗できず、その身を貫かれた。
「な、に、シ、【月】。」
《【アルカナ】が、取り出されました。》
《ふなつかラギ さん の ステータス が 更新されます。》
…え?
「どうい、グゥッ!?…ァ、どういう、事だ…!」
口から鮮血を撒き散らしながら、彼女は、どうしてと、叫ぶ。
「シグ、ムンド───!」
2.『不可視の宮殿』内部
煌びやかな世界の中で、その主人は妖しく微笑んだ。
「よく帰ってきた。シグムンドくん。」
「いや───。」
彼に相対するは、血濡れの、【月】。
「───アーサー君。」
すると、【月】は、その姿に似合わぬ理性的な笑みを浮かべて…。
「───置換。」
…その姿を、アーサーへと変えたのであった。




