第13話 大きな流れに揉まれて
1.戦線 地上
ガゴガガッガァンッ!
『暗黒騎士の甲冑』が、【波撃】の射線上に現れ、レイザドを守る事に成功したのだ…!
「…っ。【暗殺短刀】…!」
「さて、レイザドを───。」
その言葉に、【魔術師】の前に立ち塞がる彼女は待ったをかけた。
「───レイザドを、殺させはしないッ!」
…そう、猛々しく吠える彼女とは対照的に、レイザドの思考は冷静極まっていた。
(暗殺者二人、彼らの目的は私を殺す事…。)
(何故、私が真っ先に殺される?)
(いや、奴は私を殺さなければならないのだ。)
【屍魂吸収】、経験値、大量のプレイヤー…。
(…私の、広範囲の爆撃が、問題なのか?その"被害"が───)
(───理解、したぞ。奴の、アーサーの目的。)
「…やるべき事がわかっても、今は時期では無い。まだ、速い。いや、遅いのか。」
「…レイザド、何言ってるんですか!?」
この様な発言をするに至ったのは、"もう既に万を超えるプレイヤー"がここの周囲に集まっているからである。
…そして、空から落ちてくる人物。
(…はぁ、全く命知らず、ここに極まる…。何故、ここに集まるのか。あの大質量の炎で威嚇しても、彼らはその火に群がる選択をしたと言うのか。)
…だが、どうする?私の魔法の威力が減衰しない程度の範囲で消し炭にできる人数は精々三百だ。
…今からでは、もう何をやっても遅い。
【屍魂吸収】、経験値、大量のプレイヤー…。
(タイミングが、良い、というよりは、この利用方法を見越してのイベントだったのだろう。)
(…確かにコレは、この状況は【屍魂吸収】を使うには絶好の機会ですね。)
ならば、こうしましょうか。
一人でも多く、戦力を残す為に…。
「…【魔術師】!」
「…ッ!」
レイザドが、魔法を使う構えに入る。
ならば、守るのは私の仕事だ。
暗殺者二人から放たれるナイフを弾いて---。
「【テレポート】ッ!!」
……………え?
「な、何やってますか!?冗談でも辞めて---「聞いてくださいッ!」」
【審判】は急いで振り返ろうとする、が。
「…私はもう、長くは無ッ---カ、ヒュ。」
---振り返った時には、"変幻自在のナイフ"が、【魔術師】の首を断ち切った後であったのである。
「か、あ、ヒュー。」
(やられた…!『彼らを手伝って来てください』の一言も言えなかった…。)
「…【高速詠唱】。」
だが、浅かった。彼は、音は絶たせなかった。
(…流石に、ここでは一言言う余裕ぐらいしか無いので、伝えるのはやめておきましょう。安全志向!)
「【魔力暴走】…ッ!」
「れ、レイザドさん?私は、何が何だか───!?」
その言葉を最後にして、ここに広範囲の爆発が起きたのであった。
2.『不可視の宮殿』 内部
───カァンッ!!
二刀演舞、【女帝】の前に、剣の重さは羽根となり、敵の前には二倍の重量となって牙を剥く。
「…ッ!?【王命】ッ!」
───だが、その"補正"は、翠の鎖に絡め取られた。
「面倒だ。それもいきなり剣が重くなるとはな…!」
「君の歩ける足場は可能な限り潰す。それが私の勝ち方だ…!」
「───それは難儀な事だ。」
「【剛撃】ッ!」
「【王命】ッ!」
彼らは未だ、打ち合いの段階。
その状況は、大局的に見れば"両者の陣営共に、歓迎すべき"事であったのだ。
…そして、ここに間も無く転送される暗黒騎士は、彼が作る地獄を見学するだろう。
3.『不可視の宮殿』最上層
【月】は、壊された窓の横で、吐き出すように呟いた。
「…吸うなら、"吸え"。」
「もう逃しちまったもんは仕方ねぇ。」
───とでも、言うと思ったか?
「俺は、お前を見逃したりしない。」
「…まんまと載せられてろよ。俺の、掌の上で、な。」
───さぁ、トリックスターよ。
お前は、俺から逃げられるかな?
4.戦線 上空
もう、彼らの、アーサーの目的は分かっただろうか。
奇遇にも利害が一致した事で進められたこの計画は───。
───最早、最終段階にあるのだ。
「…お前らの、力…!」
「全部、俺に、寄越せェッ!!」
───ガリリ。
結晶が割れ、魂はアーサーに吸収される…!
"紫の"ウェーブが、彼を中心として発せられる。
それは、覇道の予兆。
そうして彼は、
───戦場から、その全てを奪った。
「【第三段階】。」




