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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第四部 プレイヤー戦乱編
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第9話 覚醒


 1.遺跡




 ---達するべき、目的は二つ。


 一つ目、【魔神王の魂】の入手


 二つ目、それを、"女神"に捧げる事…!


 …最悪、【魔神王の魂】一個だけでも覚醒させる事は出来る。だが、求めるべきは二つ…。


 (だが…。)


 彼は、アーサーは、剣を俺に構えながら魔力を剣先に集中させている…。


(…出し渋っている間に、彼は俺を殺すだろう。)



 ならば、やる事は一つだけだ。


 "【魔神王】の、奪取。"



 俺は、その、"魂"と呼ばれる結晶を---。


 ---粉々に、噛み砕いた…。







 そして、その姿は、極光の中へ---。

















   《…Warning…! Warning…!》



 〈彼の身体は、再構成される。〉



      『クエスト発生』



 〈変化が表に出ぬ【不滅】とは違い、その目は、"赧'く。〉


 パーソナルクエスト

 『【不滅の魔神王(ディ・イモータル)】アーサーの剥奪』


 〈その皮膚は、所々、溶岩が冷え固まったかのような、そんな岩盤で隆起している。〉



 ⦅シグムンド さん が 【魔神王】へと ジョブチェンジしました!⦆



 

     〈迸る、"狂気"。〉


 ⦅称号獲得!

【ワールドボス】【狂奔の魔神王(ディ・ベルセルク)】⦆




 〈彼の覇王は、悠々とその野心への一歩を踏み出した…!〉




     …煤煙より、声。







「……お前は、何も分かっちゃいない。」






  「お前自身が、人形である事すら。」




      彼は、無手だ。



  《【第二段階(セカンド)】 失敗。》


   【狂奔の魔神王(ディ・ベルセルク)】:『シグムンド』



   《魂 が 欠損 しています。》


       【(ムーン)



《【屍魂吸収(啜るもの)】 は 発動 出来ません。》




      レベル、1。


   ステータスの変化は、無い…。














 大気が、地が、景色が、紅く、全てに狂気が伝播するかのように、染まっている。



「…それが、おまえの、【魔神王】か…!」


 俺は、奴を睨みつける。



「…否定は、しない。事実だからな。」


 彼は魔力を剣状に集める、….それらは、金属へと変貌を遂げた。



「俺の【魔神王】、【狂奔の魔神王(ディ・バーサーク)】は、戦闘に最も特化している…。」




 彼は、そう言って、アーサーから視線を外す。




   「…こんな、風にな。」


 すると、目の前にいきなり直剣が現れた。


     「ッ…!?」


 咄嗟に飛びのこうとするが、あたりを見れば、全方位に剣、剣、剣。


 それらの殺人兵器は、音を立てるでもなく、アーサーの周りに独りでに現れていた…!



      「消えろ。」



 彼は、パチン、と指を鳴らす---マズイ…ッ!?




    「アビリティジェム!」





      「解放(リンク)ッ!」




 …この体は、【縮地】特有の、一瞬の浮遊感と共に囲いの外へと飛び出した…!




(あれは、【魔神王】、なのか…!?)


 アーサーが戦った【魔神王】は未だ、"無垢"のみ。


 よって彼が【月】の力を測りきれぬのはまた当然、今、これからする話はそんな事ではない。


 …【月】の"剣"の正体である。




  「…何処に逃げても無駄だ。」



     「狂うがいい。」



  「…【狂奔の魔神王(ディ・ベルセルク)】…ッ!」




 それは、今度は壁となって現れる。


「な…っ!?」



 そして、遂にアーサーはその、"狂気"に触れた。触れてしまった。


「…な。なんだ…。」


 アーサーは酷く安心する。まさか、実態だと思っていたものが、"幽体"であったのだから。


「とんだ、見掛け倒しじゃないか…!」



 そして、彼は歯をぎりり、と噛み締める。

『どうして、こんな攻撃に引っかかってしまったのだろう。次は、捨て身でも---、と。」


(…ッ!?なんだ、今の、は---!?)


 まるで、思考が書き加えられたような…っ!?



『…いや、確かに、今攻め込まなければ、俺に好機は訪れないだろう…。」


 …攻め込む、しか無いみたいだ。なら、攻め込む、のが良いの、だろう…。


「…【超衝撃(ハイパーノックバック)】ッ!」


 アーサーは、ゆっくりと立ち上がって、その言葉を発しながら長刀身と超重量が売りの剣を引き抜いて【月】へと斬りかかった…!


 それは、【月】の読み通り。

 狂気に触れた時点で、アーサーの感覚はその全てが"曖昧"なものとなっている。

 後はその脳髄に、愚策を詰め込むだけのこと…!


 アーサーはまんまと思考を剥奪され、【月】へと斬りかかってしまった。


 カァンッ!、と硬質的な音を立てて衝撃を完全に地に逃がした【月】、会心の笑みを浮かべるが、次の瞬間、その笑みは崩される。


「…はッ!」


 アーサーの一撃、それは重が速を持つ。だが、【月】の技量は常軌を逸している。今の、"何事も曖昧になっている"アーサーの攻撃など、軽くいなされてしまうだろう。


「何回やっても…ッ!?」


 ---だが、ここで、誤算が生じた。



(足が、痺れる…!)

 その顔を苦悶に歪め、咄嗟に側転をすることによってその場を離れる。

 流石にこんな状態の足で奴の攻撃を受け切れるとは思っていない。


「【魔法剣:煌撃(アルスター)】ッ!」


 だが、ここで後先を考えない怒涛の連続攻撃、【月】は振り下ろされる剣の勢いを流し、後退することで避ける。だが、その回避行動も所々荒さが目立つ物となっていた。


 そして、【月】の十八番である【模倣(トレース)】も、万全の彼ならこの剣戟の中で発動できるだろうに、今はアーサーの攻撃をいなすことだけで精一杯だ。



 …その理由とは、彼の身体は確かに再構成されたが、その再構成が、ハリボテのようなものだったから、ということ。


 それの説明には、再構成の過程を語らなくばならない。


 …本来ならアーサーの【極光(シャインピラー)】が直撃した段階で【月】の身体は須らく破壊されている。それが今ここにいるのは何故か。


 【魔神王の魂】、である。


 彼の肉体は【魔神王の魂】のリソースを使って、彼自身のステータスそのままで再構成された。まぁ、それも不全な物であるのだが…。

 本来ならばここに【屍魂吸収(啜るもの)】が合わさることによって、完全なる【魔神王】が誕生するのである。


 …だが、今回は【屍魂吸収(啜るもの)】が発動出来なかったのが大きい。これのために【月】は自身の体の完全な再構成のための適量のリソースを確保できずにいたのだ。



「…ぐぅ…ッ!?」


「【超衝撃(ハイパーノックバック)】ッ!」


 彼は、自身のこの策こそが、真の愚策であったことを遂に悟る。



(…策士、策に溺れる、か…!)


 その剣は、遂に【月】の持つ"鉤爪"を、捉えた…!


「でぇやぁぁぁあああぁぁあぁッ!!!」


 ---その軌跡は、流星の様に。


 …遂に【月】の、その心臓を貫いた!



「グッ…!?あ、ああ…!が、はぁ…ッ!」






 ---ここに、決着は決まったのである。





 …ドサリ、と彼の身体が肩に被さる、そして、その身体は軽かった。もう粒子に変換さえされている。


 まるで血が空中に溶けていく様だ、と。

 青い粒子に、想いを馳せる。が。


     「…あんた。」


 アーサーは、藪から棒にそう言えば、急に"【魂装】を強く纏っている"彼の身体に、手を思い切り突っ込んだ…!


「…こんなもの、隠してどうしようとしてたんだ…?」


 魂、そう、【魔神王の魂】。


 【魂装】に魂が取り込まれる感覚を体験したアーサーは、『おそらく、魂は【魂装】と同化できるのだろう』、という結論を出した。



 …結果は、この通りである。



「…それを、返せ…!」


 彼の掌の上には、【魔神王の魂】。




  「…それが、無いと、俺たち、は…ッ!!」


 【魂装】を早くリスポーン地点へ避難させようと、意識して体の分解を行なっていたのが裏目に出たのだ…!


 …アーサーを攻撃しようにも、声を出すのが精一杯。筋組織も保てずに、崩れ落ちて行く。



   「…これは、俺の力だ。」



   「誰にも渡しはしない…。」



 …この身体が、完全に消えゆく前に…。


      俺は、そんな"誓い"を聞いた気がした。

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