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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第四部 プレイヤー戦乱編
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第8話 チキンレース


 1.【第三段階(サード)】『月面の黄昏(ムーン・トワイライト)』内部




 ---瞬間、世界は一瞬のみ、"紫光"に包まれ…。



 剣先がアーサーの喉元を切り裂くことによって、それは、止まった。



《パーソナルクエスト 【魔神王】アーサーの復活 が 達成されました!》



《報酬 ワールドアイテム【魔神王の魂】》




「…やっと、か。」


 剣を抜き、血飛沫が大量にばら撒かれる。

 【月】の体にも血が付着し、マトモなら少し気分でも悪くなりそうだが、【月】の表情はまったく変化しない。

 …そして、数秒後、アーサーの体から、血が止まった。



「【第三段階(サード)】解除。」



 血に濡れた月面は、焼け野原の遺跡へと戻った。

 …見ると、視界の端にメッセージがある。











 2.遺跡


 彼は、遺跡に佇む。


《レベル4185→4184》


 レベルが、減っている…?


 【月】は一つの異常を見つける。


《レベル4185→4184》


 "【屍魂吸収(啜るもの)】は、どの"グレード"の【魔神王】も持つ、基礎技能なのだよ。"

 そして、突然にその言葉を思い出した。


《レベル4185→4184》


 …つまり。



 アーサーが、俺のレベルを吸い取ったってことか?


 発言は、疑問へ。


   「アビリティジェム…!」


 そして、疑問は---


  ---待て、まさか、本当に…。


 ---"確信"へと変わる。


     「解放(リンク)!」



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 【違法的上昇(エボルリューション):経験(ギフト)

  ※このアビリティジェムの効果。

  自身のレベルを五分間1000上昇させる。このスキルは1日に一回しか使用できない。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 《スキルランクアップ!》


 《【悪魔殺し(ヴァプティズム)】→【悪殺し(ライニゴング)】》


悪殺し(ライニゴング)】………

 相手のカルマ値×〇.一の追加ダメージを自身がダメージを与えた時に加算する。(【悪魔殺し(ヴァプティズム)】の効果も得る。)



《レベル0→1000》


 背を向ける、その"敵"へと、照準を定めて…。



「【魔法剣:煌撃(クルー・ジーン)】…。」



 "アーサー"は、今、走り出した!



「『終焉の稲妻(カラドボルグ)』…ッ!」


 そして、【月】は振り返らずともその殺意に応える。


 …声!…疑いは、確信に変わった。


 お前は今、確実に蘇った…と、言うことがな…。


 そして、同時に、"俺の背後にいる"、と言うこともまた確定している…。


 (…ならば、剣での"壁"を作るだけだ。)


 判断にかけられる時間は少なくとも、歴戦の猛者である【月】は簡潔に思考をまとめる。


 そこから瞬時に【月】の持つその『終焉の稲妻(カラドボルグ)』はひとりでに刀身が伸び、それは分裂して、切っ先による擬似的な槍衾を作った。

 

 いばらの棘の如く歪なるその剣列は、外観に違わないほどの殺傷性を内に秘めている。


 そして、その鉾なる盾が、瞬時に編まれたことにアーサーは驚きを隠せなかった。


 少なくとも、四歩も踏み込まないうちにそれが展開されるとは、流石に想定外であったのである。


 汗と共に血が地面に落ちた。アーサーはここで、回り込むのは後手に回るに等しいと感じる。これ以上相手にアドバンテージを与えてはならない。


 相手は、確実に格上。ミラとの戦闘を見た結果。最優先で警戒するべきは、先ほどにも見せられた【月】の余りにも多い、技の引出しの多さだ…!


 鉤爪、【第二段階(セカンド)】、そして…。





    【第三段階(サード)】…!


     「アビリティジェム…!」





 アーサーは、いつでも彼が【第三段階(サード)】を発動できると踏んで、戦闘を行う。


     「解放(リンク)ッ!」



 【縮地】ッ!

 一瞬でその剣藪を超えて、上空にて、斬りかかる体制を作る。



「『全属性魔法弾(フル・オールボム)』ッ!」

 牽制として放つ…。奴の『終焉の稲妻(カラドボルグ)』の変化を複雑なものにはさせない。


 …『終焉の稲妻(カラドボルグ)』。


 "好きなタイミング"で、好きな"刀身"を作り出す事が出来る。


 多分だが、形状を作り変える時には、"思考"が必要な筈だ…。それが、長く続けば長いほど、難解な形状に作り変えられる…。


 思考する間もなければ、形状は直線的となる筈。ならば、俺の噛みつく隙も有るだろう…。



 だが、アーサーの読みは外れ、【月】は後退する。


 それは、『終焉の稲妻(カラドボルグ)』では一手足らない、と言う彼自身の判断に従ったものだ…。


 【月】。彼の持ち味は、"サポート"で最大限に発揮される。


 彼は様々な【第二段階(セカンド)】を使い回せるが、"一種類"のみしか継続して使う事はできない。【(ムーン)】に於いても、それは同様だ。


「【模倣(トレース)】…。」


 だからこそ、"適切"を選ばなければならない。


(…【第三段階(サード)】は切った。自前の【第二段階(セカンド)】も切った。)


 果たして、手札にあるのか…?


「【第二段階(セカンド)】---。」


(残ってるカードは、【(ムーン)】での【女帝】、【審判】、【魔術師】と…。)


 アーサーは、こう思考している間にも、近づいて来ている───。


(【第二段階(セカンド)】の、『終焉の稲妻(カラドボルグ)』、『黎明さる天地の蒼穹(グングニル)』、『暗黒騎士の甲冑(シェルズノワール)』と…。)




 ………そして、幾秒かの悩みの後に、彼は決めた。




「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』ッ!」


 それは、絶対専守にして、絶対攻勢。



 光子が、彼の手の上に集まる…!


 その青い光は、【停滞】を示す、盾を顕現させた…。


「…!?【殿の心得】、【瞬間防御(プロテクション)】ッ!」


「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』ッ!」


 アーサーの体を青い膜が覆い、そこに突風に色をつけたような『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』の、必停の一撃が衝突した。


 だが、【瞬間防御(プロテクション)】を発動したアーサーに、物理による打撃はあまり効果がない…。


 属性攻撃を与えるしかないのだ。

 それも、一撃。とびきりのを…。



 …決めに行くぞ。


    「【(ムーン)】:---。」


 こいつは、とびきり分の悪い賭けだ。


    「---【魔術師(マジシャン)】。」



 【高速詠唱(スペルキャスト)】。それに賭けるしかない…。



 アーサーの瞳は、驚愕、そして恐怖に染まった。

 いくら物理防御力を固めても、属性攻撃を当てられてしまえば、おしまいだ。



 …何か、属性防御に特化したものでもあれば---ッ!?



 あった。アレを、使いさえすれば…!

 胸中の策に考えを巡らせながら、彼は勢いよく地面を蹴って、炎に包まれる大地から退避する。



「…【焼却(インセンエリメント)】!」



 …火球。それも、大玉ころがしのサイズ。

 さらに"侵食"は終わってない…。



 アーサーはなんとか身を屈めて回避する事ができた。地を這うのを一段階上げた、地を飛び回る動きを見せる。だが、それの弱点は…。


「…ぐあっ!?」


 今のように、あまりの前傾姿勢からバランスを崩して転ぶ事である。


「…【焼却(インセンエリメント)】ッ!」


 …果たして、【瞬間防御(プロテクション)】を使っていないアーサーにわざわざ【魔術師(マジシャン)】を使って攻撃することに、意味があるかはわからない。


 だが、少なくとも。少なくともこの体勢、状況、そして今までの経験から、この状況は、必殺になりうるものだと【月】は思った。


 何故なら、アーサーだから、熟練の戦士であろうものがこのようなミスでやられるものとは、【月】は考えなかったからだ。




「---【第零段階(ロゥ)】…!」



 彼は、"水属性"の魔力壁を展開する…。

 放たれた【焼却(インセンエリメント)】を、迎撃する為に…!



「…【模倣(トレース)】、【第二段階(セカンド)】ッ!」


 【月】は、これ以上の"長期戦"は意味がないと断じた。

 このまま、アーサーを追い続けても…これは勘だが、時間はアーサーを助けるだろう、と考えたのだ。


 さらに、『終焉の稲妻(カラドボルグ)』は、この状況が一番生きる。


 …思考を戻すが、アーサーが、【焼却(インセンエリメント)】に直撃した、という程のチャンスはもう、二度とは回っては来ないはずだ…。



「『終焉の稲妻(カラドボルグ)』!」


 だからこそ、今、此処で、ケリをつけてやる…!


 その宣言と共に、【終焉の稲妻(カラドボルグ)】は多重にアーサーの居る爆炎の中に突き進む…!



    「…アビリティジェム…!」



     「解放(リンク)ッ!」



 アーサーの目指す地、それは【月】の背後。

 たとえどのように背後を見せないようにしても、アーサーにとっては無警戒にも等しい。だが…!



    (…ッ!?剣衾ッ!?)


 アーサーの顎に汗が一筋垂れ、【月】は背後からしか見えないが、会心の笑みを浮かべているのだろう。


 何故か、それは爆炎の所為で見えなかった彼の背後に、大量の刃が、まるで将兵かのようにズラリと、規則正しく並んでいたからなのだ。


 飛んだところは、丁度その剣衾には入らなかったが、問題は対策だ。


 …『終焉の稲妻(カラドボルグ)』、その効果の発動には"伸び直し"が必要だ。つまり、今此処で急に刃が伸びるわけではなく、一度、前兆として刃が縮むのだ。



 ならば、回りこむのみだ。


 アーサーは地を蹴るのと共に、魔力を背後から放出して多大なブーストを得る。

 【月】はその動きを予見していたように、剣の長さを戻し、さらに植物の根のような形状に作り直した。


 『終焉の稲妻(カラドボルグ)』が振られるたびに、アーサーは、その巨大な刀身と、いつ作り変えられるか警戒しなければならない。


 だが、そんな状況と正反対に、アーサーは余裕で、【月】の表情は強張っていた。


 【月】は【瞬間防御(プロテクション)】と【第零段階(ロゥ)】によって攻撃のその全てが相手に軽減されてしまい、アーサーはもうその性質までわかった『終焉の稲妻(カラドボルグ)』の対処はかなり楽となっている。


 …その実、アーサーには制限時間があるのだが。


「【衝撃波(スパーク)×(コネクト)剛撃(バスター)】ッ!」


 この場面であれば、最早、使い渋る事も無く。


「…ぐ…ッ!?【模倣(トレース)】ッ!」


「【<撃滅衝波(リーズ・スコック)>】ッ!」


 アーサーは何も戸惑う事なく、その破壊の一撃を放った。

 …大地をも削り取るその一撃を前にして、【月】は致命的にも、一瞬、その言葉を頭に浮かばせるのが遅れた。


「『暗黒騎士の甲(シェルズノワ)---!?」


 当然、甲冑が間に合うより早く、その一撃は【月】の臓腑を抉り取る。

 その被害は、すでにボロボロであった彼の身体を完全に壊した。

 …だが、ここは逆にそれだけで済んだ、と喜ぶところだったのかもしれない。


 【月】にはこれからも、死線が襲ってくるのだから。



     「…聖剣裁定(セットアップ)。」


(目指すべきは短期決戦。悠長に剣戟をしている余裕は、ない。)


 「…ゲホ…ッ!が、あぁぁあ…!!」


 無様に転がる【月】。だが、その視線はつぎの"必殺"に向けて向けられている。


 【月】はあまりの内臓のダメージによって、声を出すのもままならない。


   「光属性魔力混合比率四〇%…ッ!」


 ……ここで、決めるしかないのだ。


       「…照準。」


 【月】は、何をするでもなく、そこに座り込んで、光の奔流を、口元の血を拭い去りながら、見ている。

 …その右手に、何かを握りながら。



 そして、大気をまとめて吹き飛ばすほどの超巨大な一撃が放たれた…!

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