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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第四部 プレイヤー戦乱編
53/117

第6話 その者達、執念深く




 1.『不可視の宮殿』内部


 入り口から入るとザスターがいた。


「…【月】には逃げられました。」





「…そうか、逃げられた、か。」


 …ザスターは落胆して肩を竦めた。


「すみません。ですが奴の能力は分かりました。」


「いや、それは私も分かっている。それよりもだ。次の任務に就いてくれ。」


 俺は次の任務、というワードに既に憂鬱だ。


「はぁ…、どこでしょうか。」


「"遺跡"だ。君には前任に変わってイベントアイテムを守護する役割を与える。一人ではキツイだろうから一人協力者を送ろう。」


 …遺跡へと急ぐ。



 2.遺跡





 ここは遺跡の入り口、俺と協力者が守る手筈の地である。



「アーサーさんっ!頑張りましょう!」



 …俺の横にいる協力者の少女の名は、ミラ、らしい。



(どうしてミラがここにいるんだよ…!?)


 あいつは流れの傭兵だったのでは無かったか?俺は混乱する。


「…ミラさん、久しぶりですね。でも猫被りはもういいのでは?」


 …一瞬、思案した。


「あら、いらないの?貴方は明るい子の方が好きだと聞いたのだけれど。」



 俺は訝しむ。




「その情報、誰からですか?」


「ザスター。」


「…あんちくしょうめ…!」




 …俺達がそんな会話をしていると、フードを被った四人組が現れた。



「…!そこの方、止まってください。」




「…何でしょうか、我々はこの遺跡に用があっただけですが。」



「そうですよー。私達はただの旅人です!」



「…なぁ、やはり私には性に合わ---「いいから、黙ってるだけで良いから…!」






 …怪しい。ここに来る時点でNPCの筈が無いし、先ずここは誰も通してはいけないのだ。



「えーと、ここは通れま--「【魔砲】!」



 ---ドォムッ!



(な、何撃っちゃってくれてんのこの女ァ!?)



「…一応事情は説明しますが、我々はここを通すわけにはいきません。つまり…。」




 チャッ、と、彼女は鎌を煙の中の彼らへと向ける。



「来た奴らは全殺しです。ドゥーユーアンダスタン?」



(コイツもかなりの危険思想だ…!)



 …しょうがない、要は、戦わないと行けないって事か、通ろうとする奴には。


「…分かりました。」



 …好戦的すぎるところに目を瞑れば、コイツは割ともっともな事を言ったわけで、従わないメリットは無い。


 対する【月】チームも黙ってはいない。予め決めておいた連携でアーサー達へと襲いかかった。



「…フフ、まさかいきなり撃ってくるとは思いませんでしたよ。」


「そんな事言ってる場合ですか!?行きますよレイザド!」



 …煙の中から二人、敵影!




「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』ッ!」


 ---先ずはその、動きを止める…!

 青い波が放出され、煙の中の彼らの動きを、"壊す"。






「【模倣(トレース)】、【第二段階(セカンド)】…。」


「『暗黒騎士の甲冑(シェルズノワール)』。」


 ---ガァン…!

 甲冑と波がぶつかり、…動きを、壊す。



「…『解除(パージ)』!」



 【月】が逃れた事に、アーサーは気づいてはいない。



 …俺の目の前には動きを止めたレイザドと【審判】。


「サポートします。【祝福(ブレス)】!」


 緑色の光が、アーサーを包み込んだ。


 【祝福(ブレス)】…

 『使用された者のステータスを三〇パーセント上昇させる。職業スキル【司祭(ビショップ)】派生。』


 【高位司祭(ハイ・ビショップ)】…

 『全ての魔法による回復率を八〇パーセント上げ、付与できるステータスを五〇パーセント上昇させる。』







 …八〇パーセントの強化が俺に降りかかった事を確認し、奴らへと斬りかかる。



「【衝撃波(スパーク)】…【剛撃(バスター)】!」




 ---ズォンッズンッ!



 剣の軌跡は、そのまま奴らへと脅威となって襲い掛かる。


 …その筈、だった。




「【模倣(トレース)】、【第二段階(セカンド)】!」



「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』!」



 ---ガギィィィンッ!!




 …その大盾は、【月】達を守った。


 この場面に突然現れた【月】に彼は困惑、だが、対するレイザドらは黙っているわけではない。


「なっ---!?」



「…全く、焦りましたよ【月】。【多重化(マルチタスク)】、【魔砲】。」


 多数の砲門が、アーサーを狙うようにレイザドの周囲に展開された。


 【多重化(マルチタスク)】…

 『次に出す魔法の数を任意の数だけ増やす。消費魔力は増やす度に二倍される。』






 …優に、二六門を超えるビームが俺を狙う。だが、焦ることはない。


 ---ボォンッ!


 …このように盾にぶつかる、だが、このまま狙われ続けていたのでは攻めに出る事が…!


 そこでフリーになっていた【審判】がミラへと仕掛けた。当然ミラがカバーに入る。



「【第二段階(セカンド)】、『暗黒騎士の甲冑(シェルズノワール)』ッ!」



「【焉撃槍】ッ!」



「…ッ!させません。【剛撃(バスター)】ッ!」



 …!耐え続けている俺を横から狙おうとした【審判】をミラが抑える。


 ---ガァァンッ!


 その鎌は、器用なことに射線のみを俺からずらして物理攻撃と衝撃波から、俺を守った。




「【焉撃槍】は衝撃波攻撃を兼ねている…。軌道をずらせば、物理、衝撃波、両方とも当たりませんね?」


「…!【暗黒撃】ッ!」


 ---ドォムッ!



 俺の元へと迫る暗黒の【魔法弾】、だが、『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』の力を使えば…!




「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』!全方位だッ!」


 全てを止める、青い波が放たれる、だが…!




「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』ッ!」


 向こうから来た青い波に、"相殺"されてしまった…!?



「…おいおい、俺の事を忘れてるのか?」


 彼は笑みを浮かべて、アーサーと向き直った。



 【月】…!

 …そういえば、【魔術師】、【審判】は前にいる。


 【女帝】は、何処へ---!?


「…命中!」


 そう、棒立ちになっていたところに【暗黒撃】がぶつかり、アーサーは大きく吹き飛ばされた。



 ---グッ!?しまっ、た。

 【暗黒撃】への対処が、間に合わなかった…!


 これにはミラも怒りを抑えきれない。声を荒げて、彼に喝を入れる。


「ふざけてるんですか、アーサー!【治癒(ヒーリング)】ッ!」



 …体の傷が治る。だが、休んではいられない。俺の予想通りなら…!



「…【女帝(エンプレス)】ッ!【魔砲】を切らすなよッ!レイザド!」



「…ッ。分かっています…!」


 【女帝】…! 今まで隠れていたとなると、何か狙いが---


 それを考えさせないように、【審判】と【月】は同時に攻撃を行う。



「【暗黒撃】ッ!」「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』ッ!」


 駄目だ、『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』は相殺される…。ならば、他の防御手段を…!



「…ッ!?『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』!【瞬間防御(プロテクション)】ッ!」





 【瞬間防御(プロテクション)】発動中は動くことは出来ない…っ!十二倍の高い防御力を誇ったとしても、状況は改善することは無いのだ…。


 予想通り、【暗黒撃】は彼に命中する。このままでは、"【月】達はアーサーに勝つことが出来ない"。


 そう、"復活"。それが彼を倒す時の最後の問題だ。




 ---彼の大魔術師は、唄うように。








    「【魔術師(マジシャン)】ッ!」




 魔法陣が連結し、見覚えがある赤が更に燃える。



   「さらに【連結方陣】×(コネクト)多重化(マルチタスク)】ッ!」






 ---『収束化』『威力範囲限定』『持続』




  「…詠唱破棄!行きますよ…!」





 その赤は、"緋"と成りて、敵を焼き滅ぼさん…!





      「【焼却(インセンエリメント):魔槍(・グングニル)】ッ!」








 赤い光が、収束する---!















 〈…"それ"は、巨大な槍。〉



      〈青き槍を紅く染め、焔を宿し、〉





 〈---真なる黄昏を、呼び込む槍。〉






 太陽の如く、その光は俺の視界を真っ赤に燃やす…!

 



「行くぞ、『収束』『限定』ッ!」




 …そして、その破壊の槍は彼女の手に収まる。




「…力の支配。ここまで応用が効くとはな。」


 ---これが、秘策。



 …まずい。コントロールが出来る奴に最強の武器を与えてしまった…!


 …レイザドの魔法の威力から言って、それをさらに濃縮した【魔槍(グングニル)】が弱い、ということは、少なくとも無いだろう。


 だが、戦況は止まらず。【審判】は役割を全うし続ける。


「…【焉撃槍】ッ!」



「させません。【波撃(ウェイブ)】!」






 【波撃(ウェイブ)

 『一度の攻撃を五つの多段攻撃にする代わりに威力が半減する。スキルアビリティ。』




 ---ズガガガガッ!


 その音を遠くに、俺は【月】、【女帝】、【魔術師】に向かい合った。



「…どうやら、頼れる仲間は【審判】に夢中の様だな。」


「…僕は【不滅】です。負ける道理は無い。」




 【月】は盾を構えながら言った。




「それでも、お前は完全に抑え込まれたわけだ。」


「…私達の貴方への攻略法。それがこの【魔槍(グングニル)】。」



 視線は、【女帝】が持つ赤き槍へと向けられる。


「…どうです。降伏をお勧めしますよ。今なら【魔神王】は取り上げさせてもらいますが、適切な対応を行いましょう。」









 ---悩む様子なんて、ない。





「…答えは、ノーだ。」






 そして、その答えは彼らも分かっていただろう。瞬時に攻撃を行う。



「分かりきってました。【女帝】!」



「フン。…【塔】での雪辱を晴らす!」






 …あの槍が俺に向かってくる。生半可な剣での防御は溶かされ、『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』では防げない…。


 相性だ。俺はやっとこの【第二段階(セカンド)】の弱点が分かった。


 【第二段階(セカンド)】が防げるのはあくまでも運動エネルギーに限定される。つまり…。






(温度の変化に、【第二段階(セカンド)】はついていけない…!)





 …【不滅の魔神王(ディ・イモータル)】。


 ジョーカーを切るべきか…?


 死ぬ事による即復活、それにはデメリットも当然多い。



    「アビリティジェム。」




      「解放(リンク)!」


 ---パァンッ!


 …【縮地】。先ずは逃れられ…ッ!?

.


 ---アーサーの肉体は、【女帝】へと、一直線に飛び込んだ。


 ---グァンッ…!


「…お。…奴の周辺にのみ"張ったら"本当に【縮地】で引き寄せられたぞ。」


「元からそうなると言ったろう、【女帝】…彼の手札は見切っている。俺達がこうして来たのは、必殺の一撃があるからだ。」







 視界が、【女帝】の能力特有の黒に染まる---




「…そして、それを"確実"に当てる手順もな。」





 俺は、【魔槍(グングニル)】の方向に飛び込んでいた。



「…ッ!?【瞬間防御(プロテクション)】!」




「無駄だ。…溶け落ちるが良いッ!」


 ---ズォォン…ッ!


 焔を撒き散らしながら、俺の眼前まで"それ"は接近し…。







 ---ボォンッ!


 俺の身体は爆発物でも入れられたかの様に、切られた後の一瞬に爆発した…!





「【不滅の魔神王(ディ・イモータル)】ッ!」



 俺の視界は、炎熱に取り込まれた…!




 アーサーの体は爆発を続けながらグズグズに溶け、死と再生を繰り返しながらもその勢いは衰えを知らない。





 《レベル5758→5757》


 ---身体が

 《レベル5757→5756》



 …溶ける。

 《レベル5756→5755》



 遥かに、熱い…!



 《レベル5755→5754→5753→5752→5…》



 数十秒後、やっとミラが異変に気付いた。



「…ッ。【第二段階(セカンド)】、『概念抽出(ロード)』『暗殺短刀(アサシンズナイフ)』…!」


 そして、苦い顔をしながらも救助を行う。


 《レベル1482→1481→1480》

「…はっ!」


 ---ビュオォンッ…!


 《レベル1480→1479》





 …袖から投げられた短刀は、溶けずに、火だるまの中の男を吐き出させた。


 《レベル1479》










 ………。

 ……たす、かった…?





 這いつくばったまま状況を見る。




「…アーサー。感謝してください。」




 ---カァンッ!

 彼女は、槍の刺突を、細い峰で防ぐ。


「私の前で余所見とは、随分と余裕ですね…!」


「あら、見なくても受けれます。そんな太刀筋。」





 彼女らは散開し、離れてはぶつかり合うを繰り返す。


 …【暗黒撃】と【波撃(ウェイブ)】の応酬。一見攻撃が激しいのは【審判】だが、ミラは多段攻撃による"かすり"を生かして【審判】に深くダメージを与えている…。



「…どうだ。【魔神王】。降伏する気になったか?」


 …っ!あっちを観戦している場合じゃ、無い…!



「【縮地】は使えないぞ。…おまえの【縮地】は初動に、解放(リンク)が必要だ。」


「それが分かっていれば、あくまで"瞬間移動"では無く、"超速移動"のカテゴリに入るスキルを支配できる私が、最終的な座標を操作できるということ。」





 レイザドの眉間から脂汗が垂れる。


「…喋って無いで、殺すなら殺してくださいよ…!これの維持は大変なんですから…!」



「フン…。根性無しめ。だが、それならば一太刀で終わらせてやろう。」


 彼らは、こっちの都合なんて御構い無しだ。


 …そう言って、奴は焦げている俺の近くにわざわざ近づいて来た…。






「…一太刀で終わるのは、お前だ、マヌケ…!」



 力を支配するのなら、『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』を使えばそれで済む話だ…!




「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』ッ!」



「…ッ!?『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』ッ!」






 いくら俺のと同じ物を持っていようとも、【女帝】への距離は俺の方が短い、【女帝】の動きを止め、殺害するのは俺の方が早い…!



 アーサーは剣を振りかぶる。【女帝】は『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』を受け切って動けない。



 ---このまま、死なせていいのか?


 レイザドは焦りを交えながらも冷静な声色で言った。



「…不味い。ここは【審判】に任せるしか無いですね…。解放(リンク)ッ!」


 【女帝】は、リスクを考慮しても、それを超えるリターンがあると思った為、少々、"制御権を手放す"のが遅れた。



「レイザド…!?…グッ…!…解放(リンク)ッ!」



 ---パァンッ!


 …元より、【女帝】による『収束化』の前、つまりはレイザドの『収束化』の状態ですら、【魔槍(グングニル)】はかなり大きい。


 …それらの枷を一度に引きちぎり、いきなり自由にさせてしまったらどうなるか。








 ---それは、巨大な太陽となるだろう。




      「…!?【瞬間防御(プロテクション)】ッ!」






 それは、大量に光を放出しながら、皆を包み込む---!







 …そして、時が、経った。


 ………ここはどことも分からないが、周りは、炎熱の中。やっと、天空に佇む火元が消えた時だろうか。




《レベル2→1》


 一人の、身につけているその鎧すら溶けかけている青年は、システムメッセージと共に…。


《レベル1→0》



《レベルが0になったことにより、強制的に【屍魂吸収(啜るもの)】を行います。》



「…っ!はぁ、はぁ…!」


 ---駆け寄る者の足音を、聞いた気がした。

 

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