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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第四部 プレイヤー戦乱編
50/117

第3話 和解



 1.【塔】外層部




    「アビリティジェム。」




      「解放(リンク)!」




 …やっと、【縮地】と魔力放出の連続で【塔】へとたどり着けた。



 …【第零段階(ロゥ)】を解除。ギルマスは…居るんだけど…。







 ---ヒュゴォォォオ…!!





「【突進】!」


 【突進】…

 『速度60キロメートル毎時づつに比例して、一.五倍ずつダメージ量が上昇し、衝突するときの自身へのダメージ量を少なくする。スキルアビリティ。』







「くそっ、突撃バカが…!【剛撃(バスター)】ッ!」



 騎乗し悠々と空を飛ぶギルマスに狙われる女は、地上で双大剣をクロスさせ、受け流しの構えを作った…!







 ---ガギッ、ギィィィィィィィィィィ…、


「ぐっ…。」


 ---ギィィィィィィ!!


「う、おおおおお!!」


 ---ガァァァァンッ!!


「おらぁああああっ!!!」


 ---ブゥオォン…!



「…【突進】!」



 必死の均衡で受け流すその一撃は何度も何度も繰り返される。…数秒毎、流線は畳み掛ける。






「くそっ…!【付与(エンチャント)】!」



 【付与(エンチャント)】…

 『あらゆるものを一〇〇%の範囲で足したり引いたり出来る。足したもの、引いたものの対象は視覚的に現れる。このスキルは効果時間が二分しかなく、再使用には一〇分必要。』



 …重力が増す力場がギルマスを取らえようとするが、騎兵は軽くその網を潜り抜ける。






「私にはその技は効かないと言っただろうっ!」


「…それは、お前単体に【付与(エンチャント)】を使っていたからだ、突っ込んでくるものなら、周囲に付与すれば良いだけの事…。」







 …力場が【女帝】の周囲にとどまる。




 ギルマスは考える。



(…上司からの情報では、【付与(エンチャント)】の限界時間の二分以上はもう経っている…。)



(彼女のスキルだろうか?)





「…これは、手厳しいなっ!!」



「…ここでお前は、逃げるわけにもいかんだろう、私を倒すために。」



「---それに、急には止まれまい?」




「---ご名答っ!!」



「【突進】×(コネクト)剛撃(バスター)】!」







    「【<撃滅突貫(グラニ)>】!!」



 ---ゴォォォォォォン……!!



 …ここで、終わらせる気だ…!!


 風圧は雲を飛ばし、嵐さえ追随する…。



 一切合切を破壊する一撃…!







「おい、俺の【塔】が吹き飛んじまう…!」


「…ザタワくん、諦めたまえ。私ならともかく君に白兵戦能力は無い。」


「絶対あんなのに太刀打ち出来っこないぜ…!」


「…お前、俺の雇われやってんだからもっと気張れよ!」




 ---カシャン、カシャン。



 【女帝】は何を思ったか、剣を捨てた。




「…【女帝】、それはこのゲームだと【皇帝】と兼任の【アルカナ】だ。」


「その能力は、『あらゆる力を支配する』ことにある。」




 その【付与(エンチャント)】はギルマスが突っ込む方向へと設置される。




「…"お前の突進力"の向きを、反対にした。」





「…なっ…!今までやっていた重量操作はブラフだったのかっ…!?」




 ---ドォムッッ!!!!!





 その直後、ギルマスの反対に自身の突進力が向い、『幻獣(グリフォン)』は四肢をバラバラにした。



「ぐああああっ!?」



 …ギルマスは空中で『幻獣(グリフォン)』よりすっぽ抜ける。



 そのまま、【付与(エンチャント)】の効果で加重された重力で地面へと押し付けられ、粒子と化した。



 …え、まさか、それって。



「…ギルマスが、死んだ…!?」


 あっ、まずっ---!?







「…そこに、誰か居るのか?」



 【女帝】は勘ぐった。






「………!」


 やばい、だが…。



 ---ここで仕掛ければ先制できる。










     「【第二段階(セカンド)】!」




 〈それは宝石、全ての雛形。〉






     「『概念抽出(ロード)』…!」






 〈盾も、剣も、槍も、そこから作り出される。〉





「アーサー君か…!良いぞ、あの力ならば…!」






    「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』!!」







 〈青い光は、覚悟の形を成した!〉




「おい、待てザスター!」







     『クエスト発生』


 パーソナルクエスト

 『【不滅の魔神王(ディ・イモータル)】アーサーの復活』


 ⦅アーサー さん が 【魔神王】へと ジョブチェンジしました!⦆



 ⦅称号獲得!

【ワールドボス】【不滅の魔神王(ディ・イモータル)】⦆




 


 このメッセージは俺にしか見えない。"パーソナル"、だからだろうか。




「…誰だ。その物陰にいるのは…!」





 【女帝】は双大剣の片割れを俺へと投げる。




「【勅令】!【攻性防壁(カウンターシールド)】!」






 ---ガンッ!ガシャアアアアッ!!



 魔力の破片が割れたガラスのように飛び散り、消える。







「…アーサー君。出てくるが良い。」


 振り向かずそう言った。

 彼が何故、この様な行動をとったのかは話を聞いてみない限り分からないだろう。

 ならば、会話を続けるとしよう。


「…僕に、あなたに協力するメリットはありますか?」







 コイツは散々俺を利用した挙句、それが叶わないと見ると殺そうとした。


 …だが、俺は奴から貰わなかった知識が無ければ生き残れなかった。強くは、成れなかった。


 だから、話くらいなら---。







「共闘すべきだ。彼女は【魔神王】たる君の命と力を狙っている。」


「それに、私は君を助けただろう。」


 【女帝】は、その話の【魔神王】に反応した。


「…ほぅ…!ザスター、本当か?その話は。」





 ---【女帝】の目の色が変わる。





「おや、てっきり知っていたものだと思っていたが…。すまないね、アーサー君。」


 …彼は肩を竦めた。


 …初めから陣営を、俺の陣営をザスター側につけることで、俺をコントロールしようとしていたのか…!


 まぁ、確かに今は奴からの共闘を拒む理由はないが、な。


「……………ザスター、そういう所ですよ。」


 …確かに、相手は、ギルマスを倒していて、そして『アルカナ】なのだ。戦って、何が起きて逆転されるかも分かったもんじゃ無い!


 協力するしか無いのだ、セコいぜ!


 ---やっぱりコイツは、無茶振りばっかり振ってくる…!





「はぁ…。【悪魔殺し(ヴァプティズム)】のスキル継承クエストを思い出しますよ…!」





「なに、あの時よりはマシさ、何故なら…。」






 ---私が、いるだろう?





「…見直したつもりが、幻滅し直しましたよ。」


 テキトーな相槌を打って、目の前の敵に備えるために、カチャリと、武器を構えた。





「おや、そうだったか。それは失礼だったね。アーサー君。」




「---仲良く棒立ちでお話とは、いい身分だな!」




 ---ガァンッ!



「…貴女の攻撃は『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』の前に、"勢いを壊される"…貴女は、筋力型のプレイヤーは、僕には勝てない。」







「フン…!その顔を驚愕に染めてやろう。」





 …彼女の手の平に、青い光が展開される。






    「【第二段階(セカンド)】!」





 青い光は、一振りの大剣を顕現させた…!






    「『概念抽出(ロード)』」





       "壊す"、力。




    「『終焉の稲妻(カラドボルグ)』!」




 ---バリィッ!






 青い破壊の剣、のその峰、鍔からも刃が出ていて、どこへ当たっても傷が付く作りだ。







「…【剛撃(バスター)】!」




 アーサーは慌てて対応する。




「…ッ!?【剛撃(バスター)】!」



 ---ガァァァァンッ!ギィィィ…ッ!







 上から叩きつける【女帝】、下からかちあげるアーサー。


 だが、膂力は完全に【第二段階(セカンド)】のアーサーの方が上。








「…フンッ!情報にあった通り、これが【魔神王】の【第二段階(セカンド)】、ということか…!」




「【付与(エンチャント)】!大剣への重力を増せーッ!!」






 ---ゴゴゴ…ガッ!!


 地面が割れる。


 ---ガリリリリ…ッ!




 【第二段階(セカンド)】によって手に入れた三倍のステータス。【第二段階(セカンド)】をせずとも元の俺の【違法的上昇(エボルリューション):経験(ギフト)】状態のステータスの二倍より少し上ぐらいだ。


 そんな俺のステータスをさらに三倍したら、どうなるか。


 ---当然、重力があっても軽く吹き飛ばす事が出来る。







「【攻性防壁(カウンターシールド):ヤドカリ】!」



 ---ドルゥゥゥゥンッ!!






 吹き飛ばされた【女帝】の腹を、ザスターの魔力針が貫いた!



 …血が滴る。【付与(エンチャント)】が切れたからか、その動きは正常なものだ。




「…クク、【魔神王】。」



「我らの、悲願のために…!」



 ………ッ!?『終焉の稲妻(カラドボルグ)』の刀身が…伸びる…!!







「こ、ここで…ッ、死ね…ッ!」



 螺旋を描きながらその剣は成長を続けた。




 …『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』を構える。






 ---ガァァァァンッ!!


 衝突、が、砕けたのは『終焉の稲妻(カラドボルグ)』。


「…貴女の負けです。」



 全てのステータスが上回っていて、不壊の盾がある。俺の勝利は確定的だ。


 これは、当然の帰結なのだ。


 …粒子になりながらも【女帝】はうめく。







「…魂の、強度が、違うというのか…?…ぐ…っ。」







 …心当たりがある。【魔神王】になる時の【屍魂吸収(啜るもの)】、…だが、アレはレベルを吸い取るものでは無いのか?なら、【魂装】の強化とレベルの上昇と魂の吸収。







「なら、【第二段階(セカンド)】で、勝てる、道理も---」






 …粒子となって消えた。






 いや、それよりも。もし、経験値なるものが大気に漂う【魂】の補助によるものなのならば…。


 …いや、それでは逆にスキルを使用してのレベルアップに説明がつかない。








「私は別行動する。こちら側の戦力を割く必要はないと吹き飛ばされた【世界】へと伝えておいてくれ。」




「…わかった、ザスター。」



「後お前、余裕面して死ぬんじゃねぇぞ…!」



 【塔】は走り去る。








「…アーサー君。固まってどうしたんだね。君にはまだ頼みたい仕事が沢山あるのだよ。」



 …と、かなりの時間考え込んでいたみたいだ…ってそうじゃなくて!



「ぼ、僕が今更貴方に協力すると思ってるんですか!?」



「ん?そうか、嫌なら嫌で良いんだかね。」



「…いや、貴方は、【魔神王】を、その。」





 こ、コイツは…!

 …いや、初めからそういう奴だったな。




「………はぁ、いや、良いです、やりますよ。やりましょう。ええ。」



「…良いのかね。私は君を半ば裏切ったというのに…。」


 …はぁ、と俺はため息をついた。


「…そういうセリフは、始めに言ってくださいよ!」









 2.『不可視の宮殿』内部





 …透明な"門"を通ると赤と黄色の煌びやかな宮殿が広がる。



「…見たまえ、これが私のワールドアイテム。『不可視の宮殿』だ。」


 …両手を広げてそう言った。



「…やれやれ、ザスター殿。変わらぬようで。」


「アガサ君。」「アガサさん!?」



 女忍者がカツカツと俺たちの方に歩いてきた。



「アーサー殿もお変わり無いようでなにより。…さて、拙者がリスクを承知で此処に出向いたのは、【ナイトリッチ】の行動について報告するためでござる。」





 女忍者の出した情報プレートを取り上げながら彼は言う。






「…アガサ君、良くやってくれた。…ふむ、やはり首謀者だったか。彼は。」



「…【ナイトリッチ】、とは?」





「我々、βテスターは大まかに言うと【アルカナ】と【ナイトリッチ】で分けられている。」





「ギルド、《BON》。Brade Of Night。」





「《夜の剣》の、盟主だ。」

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