第2話 激戦激闘
1.世界会議用ルーム内
「イベント行かね?」
【世界】だ。
「…ふぅ、君の、その。なんだ。」
「たまに緩くなるよねー。ザワルドって。」
「いやさー。俺の友人がギルド入ってんのね?」
「でさ、そこが《BON》の管轄なのよ。絶対対抗戦出てくるよね。あいつら遺跡からイベント用素材取ってきてさぁ、メインストーリー変えようとしてるだろ、絶対。」
「考えられない話じゃ無いだろう。我々は毎回そう言う輩を見つけているのだから、ね。」
「だねー。あ、ボクは今回無理。少なくとも協力は出来ない。」
「おい、【軍師】の力を今使わないでどーすんだよ。」
「【塔】、そんなこと言って前君はカインとか言うやつとイチャイチャする為に一抜けしたじゃ無いか。」
「い、イチャイチャ…?なんだそりゃあ。俺はホモじゃねえ。」
「はい、ストップ。ザハーミもザタワも変わんないんだから、困るね。」
「愛嬌というものがあっていいじゃないか、ザワルドもそう思うだろう?」
「おい、ザスター。」
「…?なんだね。」
「---話がある。」
2.酒場
「なんだね。…君の口からはロクなことが出てきたことが無いんだが。」
「リアルマネートレードだ。」
「…!《攻略組》が、来るのか…!?」
「多分な。俺たちの他の【アルカナ】。【女帝】、【魔術師】、【審判】、【月】。」
「そいつらが今回の為の援軍に誘ったらしい。」
ザスターは肩を竦める。
「また、空振りだろう。《攻略組》がメインストーリー以外の事に耳を貸すことは無い。」
「…"メインストーリーの完結"、それを奴らは知っている。」
---ダンッ!
ザスターはテーブルを叩く。
「我々のβでは、そんなものはなかった…!無くされたのだ。我々の失態だ。」
「だから女神を発売初日で【アルカナ】総員で殺したのだろう!《攻略組》も黙認した!だが…!」
「あぁ。やはり女神の復活。そして打倒。それがメインストーリーの完結なのだろう。」
「…"NPCが強くなる"、それがストーリーを進めると起こる絶対条件なのなら…。」
「そうだ。もしも、女神が復活し、それを我々が倒したとする。」
「そしたら新しいストーリーが始まり、NPCによってβ時代より弱い我々は蹂躙されてしまう。」
「…だからこその、この防衛任務か。」
【世界】は弱々しく言った。
「受けてくれよ。正直、お前が居ないと心細い。」
【星】は軽口を叩きながら応じる。
「ふ、リップサービスもほどほどにしたまえ。最終的にはギブアンドテイクに収まるのだから。」
3.赤陣営の本部より20キロメートル北に離れた荒地
【戦車】は場に似合わない煌びやかな王座の上で、顰めっ面をする。
「やれやれ、僕の罠が全滅してしまった…。この【戦術試行】も案外当てにならないなぁ。」
頭の後ろに手を回して枕にした。
【戦術試行】…
『持ちうる戦力と、相手の戦力を本人が分かっているだけ反映した戦争シミュレーションを行うことが出来る。【戦術眼】から派生。』
「でもまぁ、守り手が居ないのは気になるね。」
「【結界】×【魔力変質】。」
「【<摩天楼>】。」
【<摩天楼>】…
『【結界】の効果である、"自身の魔力値×レベル×〇.五の分の物理攻撃を無効化し、受けた物理攻撃の総合のダメージ量がこの値を超えられたら破壊される。と言う効果と【魔力変質】を混合し、属性を結界に纏わせることが出来る。』
………彼の身の回りを魔力の壁が囲い、それらは瞬く間に電気を帯びた。
指揮官である彼は絶対的な攻撃力と生存力を持ち合わせる必要がある。そのための【結界】、そのための【魔力変質】。
「…地中に張り巡らせてある水銀はまだ大丈夫か。そこにこの水銀を繋いで遺跡へと…。」
そこに、襲いかかる白銀!
---ブォォンッ!ガキィィンッ!!
「おい…。」
来たのは"男"だ。
白銀の髪をして、斧を持つ男。
【性転換】…
『性転換を可能にする。任意で変化可能。』
…彼の斧は、容易く【精錬極技】による結界を破壊、そして…!
「俺の名はナギトだ。」
---キィィィンッ!
一歩近づき、ワイヤーと斧がぶつかる。
「指揮官狩りは楽なんでな。」
---ブチィッ!
二歩近づき、ワイヤーを叩き斬る。
「---今日の俺の、肥やしになってくれよ。」
---ブォォォンッ…!
三歩近づき、斧を振り上げる。
「…そう言われて、やすやす殺されると?」
指を動かす、ワイヤーが作られる。
---…キィィィ…!
…四歩目、ナギトの首に、銀の刃。
ワイヤーは水銀、よって服の下からでも生やすことが出来る。彼の前には無残な串刺し死体が完成するのだ。
…一見、ナギトが誘い込まれたかのように見える場面。だが、ここで真に心配すべきは…。
「【臨界強化】。」
---【戦車】の方であった。
ワイヤーが生えてくる速度を"飛び越して"。
---きえ、た?
「………遅い。」
---背後より出でしは死神の白銀。
…その斧からは血は滴らず、それは迅速なる両断の証拠である。
---ブシャアッ!
腹から、手から、首から血が吹き出ながらも淡々と彼は考察する。
「…ステータスが、"強すぎる"のかな、【臨界強化】でそんな。」
目で追えすらしなかったが、あの時…。
「---『時を超える程』の速さが出るなんて…。」
---斬撃は、"七つ"あった。
…王座ごと上半身がずり落ちる。。
「…間抜け、お前、舐めてたろ。」
「だから出し抜かれる。出し抜いたつもりでいるから。」
…【戦車】が初めに張ったワイヤーも、串刺しの為に生やしたワイヤーも、どれも正面から両断されていた。
「このゲームは長期戦なんて無いんだよ。一発で一切合切が決まる。悠長な準備など…。」
---意味を、為さない。
…背後で、派手に血飛沫が舞った。
【戦車】は負け…。
【鏖殺者】は勝ち残る。
…だが、気にならないだろうか。
何故、指揮官を本来守るべきだった彼の部下がいないのか。
…場面は、『遺跡』へと移り変わる。
4.遺跡
…入口の前、佇む番人。
クガン、ファリン。
---カツン、カツン。
「おやおや、律儀ですねぇ、こんな所まで警備が届いているとは。」
「レイザド、油断しないで。彼らは【戦車】の直轄。さらに---。」
---カキィンッ!
結界に刃が当たる音。
「話によれば、かなりやる感じの暗殺者が居るってね。」
………織部色の髪が揺れる。
その人物は、初めからいたかのように堂々と立っていた。
「ザチャリオの数少ない頼み。私が果たさなくて誰が果たしましょう。」
「…残念ながら、貴方方は無残な死を遂げる事になります。」
投槍、全方位から。
いつのまにか周囲を囲い込んでいたクガンとファリンは無尽蔵に槍を取り出し続けて投げる。
…そして、マーメイは影へと消えた。
「フム…ッ。おい、【審判】、準備は出来ているか?」
「レイザド、一蹴しますよ。何故なら私は…。」
「"変身できる種族"ですから。」
バサっと、黒曜の羽が生えた。
「【紫電掌】!」
ファリンが接近、結界を破る。
「なぁっ!?」
「…ッ!?【焉撃槍】!」
---ズオアッ!
【焉撃槍】…
『闇属性が付与された一撃を与える。【暗黒騎士】派生スキルアビリティ。』
槍が放たれ、闇属性の衝撃波が追随する…が。
「【稲妻投げ】!」
紙一重でクガンに避けられ、一撃を放たれる…!
---ガァァァァンッ!
その一撃は、魔力による防壁にて防がれた…!
「【周囲断絶】!」
一手間違えれば武器が喉元を掻っ切るような状況。慣れていないレイザドは今にも泣きそうだ。
「よくやりましたね、褒めてあげます!」
【審判】が褒めるのをよそに、レイザドは"自身の仕事"に、取り掛かった…。
「【魔術師】!」
【魔術師】…
『相手の全ての魔法攻撃を〇.五倍し、自身の魔法攻撃を二倍する。全ての知っている魔法を使用可能であり、射程は無限。ステータスはレベルアップ以外は変化する事はない。宣言すると【大魔術】、【高速詠唱】、【破壊】、【魔力増強】が適応される。』
【高速詠唱】…
『どの魔術も"〇.五秒"で発動できる。消費魔力量が四倍される。』
「………ッ!」
…ファリンはその大きな"〇.五秒"を見逃さない。レイザドへと接近しようと試みる、そこに───。
「【暗黒撃】!」
【審判】がカバーに入る。暗黒の魔力撃がファリンへと襲いかかった。
それをファリンは易々と避けて、接近する。
【暗黒撃】…
『闇属性の、ダメージ量が三倍となる【魔法弾】を放つ。自身のHPの四分の一が失われる。』
「…【稲妻投げ】!」
そして、そのカバーは、クガンの【魔術師】への一撃を、許してしまった。
---ドゥムッッ!!!
刺さる槍、跳ねる体。
レイザドの体から粒子が漏れている…。
「…レイザド!?」
ファリンからの殴打の雨の中、【審判】はそのような叫びを聞くことが出来てしまった。
クロスレンジの更に近くまで来られたら、槍は使えない。【暗黒撃】を放つ事は、消耗につながる。
下がる事は、レイザドを守る観点から出来ない。よって、彼女は、打たれ続けていたのだ。
「ぐあっ…!!あっ…、あがっ…!!」
---だが、彼は笑みを浮かべてこう言った。
「終わり…ました…!」
クガンは、何一つ彼にやらせる気は無い。追撃の一撃が、今にもレイザドに放たれる。
「【稲妻投げ】ッ!!」
レイザドを刺し貫く一撃が、放たれてしまった。
「…【魔壁】×【周囲断絶】!」
そうであるにもかかわらず、レイザドの結界の赴く先は、"レイザド"ではない。
「【<天守・究硬>】…!」
ドスッ…!---ブシャアッ!
---親指を上げて、彼は瞬時に粒子と化した。
…レイザドの死とともに、瞬時に【審判】に結界が張られる。
そしてこれは、最後に与えられたチャンスでもある。
「---ッ!?」
ファリンは、結界に弾き飛ばされた。
「【焉撃槍】×【暗黒撃】。」
ファリンの目の前の【審判】の目は赤く、報復せよと滾るようだった。
「【<深淵に馳せよ、我が怨槍>】!」
---グルルァァアッッッ!!!
そのような雄叫びが、聞こえるような凄惨な暗黒の光。
そして、暗黒龍を模した一撃が、ここに放たれた。
「…チッ。【稲妻投げ】。」
「【稲妻投げ】!」
…彼らはその一撃に吹き飛ばされないように上空へと槍を投げて結界の破壊を狙う…。
---ドルゥン…!
洞窟の、遺跡の入り口。そのため、本来は音が反響するのだが、それは、今は行われない。
洞窟は、抉られたからだ。
…地面ごと抉られながら、彼らは抵抗なく吹き飛ばされて粒子と化した…。
…【審判】は、戦闘終了間もなく苦痛の声を上げる。
「が…、あ、ぐぅっ…!」
---ガキッ!ガァンッバギッ!!
…ファリンの殴打の雨から集中的に狙われていたのは【審判】だ。降り注ぐ雷の槍の中、彼女は身悶える。
「はぁ、はぁ…。レイザド。レイザドが、いれば…!」
---パリィンッ!!
雷槍により彼女を守る、正真正銘最後の砦が崩壊した。
ブチィッ!---ドサッ。
「あ、」
…【審判】はナイフで、首を両断される。
---ブシャアッ!!
鮮血が彼女、マーメイの服にかかった。
何の手品か、何処からともなく、彼女は現れたのだ。
「…任務、完了。」
「あぁ、しかし…。」
「なんとも、血生臭い。私にはキツイ匂い。」
彼女は【戦車】の名をその口で紡ぐ。
「…ユシュエン、一人で寂しくないかな、奥の封鎖…早めに、終わって欲しい。」
…彼女は、そう言って門番の役目を果たそうと、影へと隠れた。




