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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第三部 終末放浪編
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エピローグ 終わらない【ビクトリア】



 1.魔王城『†堕天使†』内部




 「………【異形狩りの妄執(ベルセルクル)】、【魔法剣:煌撃(アルスター)】、【悪魔殺し(ヴァプティズム)】!」





 ---タッタッタッタッ!





 思い切り、走る!

 魔王城に配下がいないのは考えにくい、ならば見つかるのは当然。



 …見つかっても一気に走って巻く事を考える!



 ………予想通り大量の魔物が現れた。ここは【衝撃波(スパーク)】を使って切り抜け、奥を目指して走り続ける。


 アーサーはまさに獅子奮迅の活躍を見せた。何しろ一撃で魔物がバターのように切り裂かれ、抵抗もできず消し飛ぶ。何であろうと彼の進撃を止める事は出来ない。




 …手っ取り早く【<撃滅衝波(リーズ・スコック)>】を使いたい所だが、【精錬極技(アビリティコネクト)】にはデメリットがあるため、今は使いたくない。


 …【精錬極技(アビリティコネクト)】、それは『スキルアビリティやスキルを合成させ、それぞれの特徴を持って両方のダメージ量を足して二倍させた一撃を放つ』、というものだ。





 例えば、【紫電掌】と【魔纏】、



 【魔纏】は『自身の攻撃を魔法扱いともする』、【紫電掌】は『雷属性の筋力を一.二倍した拳撃ダメージを与える』。


 これらの効果は『魔法扱いでもある雷属性の筋力を一.二倍した拳撃ダメージを与える』と集約され、それぞれの威力を足して二倍される。(【魔纏】のダメージ量は0なので【紫電掌】のダメージ量を二倍する。)



 …だが、当然デメリットはあり、一度【精錬極技(アビリティコネクト)】に使った素材のスキルやスキルアビリティは戦闘が終了するまでは使用することが出来ない。



 悪魔族に敵対している人族は、魔王城にいるだけで戦闘状態とみなされてしまう。


 ずっと戦闘状態が継続する。


 ………そのため今回は【精錬極技(アビリティコネクト)】は使えないと思ってもいいだろう。






 …俺はなるべく体力を温存しながら通路を走る。








 2.魔王城『†堕天使†』最上階






 …階段を上がって、魔物を殺して、返り血にまみれて。俺は、魔物無き回廊を歩いていた。

 右手側に扉を発見、扉の方を向いて立ち止まる。



 …かなり歩いたが、この城にはトラップの類も仕掛けられていないようだ、容易く開けられるだろう---ッ!?



 ヒュッ---トットットッ!!



 前方に、瞬時に躱した【ダークランス】三槍が刺さる。

 …飛んできた方向、背後を振り返った。


 …なんだ、魔法陣のトラップがあっただけ---


 ………バァンッ!

 背後の扉が蹴破られる音、それと同時に…!




「---その首、貰ったああッッ!!!」

 あかいつの---


 赤い角を生やした牛鬼(オーク)は、手に持つハルバードを思い切り振り切るが、あと一瞬という所でアーサーの持つ剣に阻まれる。





 ---カァンッ!…カァンッ!カァンッ!ガキンッ…!



 …撃ち込まれる隕石のような二本のハルバードの四連撃、彼はなるべく、ダメージにならないように盾で受け流す。



 ………よし、これならノーダメージで凌げるだろう。だが、どうにも最後の一撃で盾はすっかり二分されてしまった…!



「…何者だ!」


 彼は問いかける。が、赤角のオーク、『PvPしようぜ!』もハルバードと共に自身の疑問をぶつけた。



「それはこっちの…!」



 ---ズオッ…!


 風が唸り、空間が悲鳴をあげる一撃…!



「---セリフじゃいッッ!!」



 ブォンッッ---ガキィィィンッ!!




「ぐぅっ…!!」



 こいつ…ッ!?……なんて馬鹿力だ…!?

 剣が衝撃に耐えかねてギチギチ悲鳴を漏らしてやがる…!


 彼の心配を他所にその乱撃はスピードをどんどん上げて、増やして、切りつける…!



「まだまだぁっ!!」






 赤いツノのオークが二本のハルバードを同時に振り上げた…。


(…あれを受けたら、ただじゃ済まない…!)






    「アビリティジェム…っ!」



 それは、神速の一撃への一手。





      「解放(リンク)!」





 …【縮地】の効果だ。背後に出る!



「【超衝撃(ハイパーノックバック)】!」







 【超衝撃(ハイパーノックバック)】…

 『相手を最大1キロメートル先まで吹っ飛ばす。ダメージ量はノックバックの距離に比例せず、ノックバックの長さをプレイヤーの意思で操作できるが、最低三メートルはノックバックさせないといけない。』







 シュッ---ブォォンッッ!!



 だが、易々と赤角のオークはその一撃を受け止めた。…だが。




「………甘い…っ!」


「………!?……ぐうぅ!?」


 あまりの"反動"。それをまともに受けてしまったら最早吹き飛ばされる他ないと思われたその時!



「ぬぅッ!!」



 …ギギギ…ッ…---ガァァンッ!!!



 その膂力は、自身の態勢を少しだけ崩すのみの反動に、ノックバック効果を破壊した…!


「………なっ…あっ…!?」




 …完全に視界外からの一撃だったのに、こいつ反応してきやがった…!?


 それにあまり吹っ飛んでいない…!離れすぎても面倒だから飛距離は八メートルにしといたが、それでも奴は五十センチメートルも後退していない!


(なんて…馬鹿力だ…っ!)



(…ただ、あいつも振り下ろす所で無理に反応したせいか俺の方に攻撃を与えることが出来ていない。)


 さらに、【超衝撃(ハイパーノックバック)】の効果は、完全に無かったわけではないのだ。



 奴は体勢を崩し始めている…!


 これは、大きな好機、態勢を崩したままの彼を更に崩すべく、彼は仕掛ける。



(ならばここで、思い切り攻勢に出なければ!)



 一度離れ、だが、時間を与えずアビリティを放つ。



「【衝撃波(スパーク)】!」




 …これで、微量だがさらにノックバックを相手に与えて完全に態勢を崩したところを超重量と長刀身が売りの剣で強襲する…!



「………!なぁっ!?」


 赤角のオークはその不意の一撃を、防いでしまった。


 ---今だ!



「ぜやぁっっ!!」




 盾を放り投げ、超重量と長刀身が売りの剣を抜いて、思い切り投げる!




 ズォン…!---ガァァァァンッッ!!



 弍撃での、確実なる破壊を主とした攻撃が放たれた。



「………!…ぐぅ………っ!」


 赤角はこれから起きる惨状を予想し、顔を歪めた。




(この一撃は当たったら致命傷、相手は避けるか防ぐしか無い…。)


(だが、奴はよろけさせたので、避けられる態勢に入れてはいなかった。防ぐ他ない…!】



「…ぐぁぁっ!?」


 よって更に大きな衝撃を食らった赤角は、更に大きくよろめく…!


「………【剛撃(バスター)】!」




 そこを見逃さず、彼は片手で持つ普通の剣を、両手に持ちかえて威力を上昇させる…!




 ---ズォンッ!!




 ………大きな風切る音を立てて、俺の剣は奴の腹をかっ捌いた、それは明らかな致命傷。


 ---だが、これでも奴は戦意を喪失していなかった。


 アーサーの剣に腹わたを切り裂かれながらも、その眼光は衰えはしない。赤角は、鈍く笑みを浮かべながら、ハルバードを、彼の体に突き刺そうとする。



 剣を差し込んだ事で油断した俺の隙を突くかのように、彼の持っていた筈のハルバードが視界の端から勢いよく飛び出してきた…!




 (…ッ!?間に合わ…!?)



 ---ガコォッ!…カランカランッ…。



 …赤角のオークは、参ったとばかりに両手を柄から離し、名残惜しそうにこう言った。



「…俺に、勝ちやがったな、お前…!」



「また、勝負---」



 魔物プレイヤーは、粒子になる速度が人族より早く、それは死亡直後であっても筋力がひどく衰えるほどだ。






 …そのせいか、奴は最後に、俺の胴鎧に凹みを残す"のみ"で、消えたのだ。


 …剣を、血を払ってから鞘にしまう。


 ふぅ、これで俺の仕事は終わったようなものだ。忠臣らしい奴もここで倒すことが出来たし。


 そんなことを思いながらクフリンに打ってもらった安モンの鎧を身につけた。


 白く、意匠も少しはしてあるが、品質が良い鎧と比べると見劣りする程、それは安物という言葉が似合っていた。


 …他の高い鎧はあるが、ジブリールに頼んだ鎧なので壊したくない。


 …クフリンの野郎は、口は悪かったが、量産品は品質は一定だったなぁ。

 チッ、やっぱりなまじ腕が良い分タチが悪りぃ。



 …さて、連絡はしたからそろそろ来ないかねぇ。


 そう、彼は今日の来賓であり、メインキャストでもあるのだ。


 そんな考えをしだした直後に、廊下に紫の魔法陣が現れた。


「ほう、ここが城主の部屋の前ですね。」


 彼は、興味深そうに眼鏡を上げた後、こちらに近づく。急に【テレポート】で現れた、レイザドさんはいきなり魔法の詠唱を始める。


 まぁ、これも手はず通りなのだが。


「【連結方陣】×(コネクト)多重化(マルチタスク)】。」


 …『蒸し焼きにしましょう』、その一言から始まった。



 魔法陣は脈動し、血液の如く赤く染まり、発動せずとも、その熱量が伝わってきた。





「…『収束(グラン)』『(バーン)』『蒸気(スチーム)』『六重(セイス)』。」





 …もともと、魔物相手に相性がとてもいい俺と、オールレンジで座標さえわかれば大魔術を正確にぶっ放せる魔法使い。


 陽動作戦には丁度いい。だが、あくまでもレイザドを主とした作戦と決まってしまったのだ。


 ただ、レイザドの魔法では集団で固まったらダメージがあまり入らないらしいので…。


 もういっそのこと、『他のやつ全殺しにしてから城主を部屋ごと爆殺すれば良い』のでは、と言う考えに彼らは至った。




   「【<焼却:(インセンエリメント)輝く鬣(・スキンファクシ)>】………。」




 ---ブォォォン…。



「あと、逃さないように【固定結界】。」




 【連結方陣】は『魔術を合体させる』効果があり、【多重化(マルチタスク)】は文字通り魔法を重複させて強化する効果を持つ。



 火山の噴火が如き火柱が、その部屋を包んだ。


『なんだ…!?熱い!?』


 奴は【炎魔術】から習得できる『形状』『性質』を付与できる、と話していた。


 まぁ、奴を逃さず、蒸し焼きにするくらいの操作は簡単に出来るだろう。



 ---…ボワァァァァアアッッ!!




 …一方、部屋の中で優雅に佇んでいた彼、『†堕天使†』は慌てて扉へと駆け寄った。このまま蒸し焼きにされたのでは余りにも呆気なさすぎる。奴らが魔法陣の準備をしていた頃には逃げ出すべきであったと、今更ながらに後悔。



『ぐわあああ!?と、扉を、扉!』



 初めは結構勢いが弱いのだが、すぐに部屋1つを軽く覆いつくすほどの火力に出来る。



 ---ガチャガチャ、ガチャガチャ。



 ---開かない。

 なんだ、これは、私は魔王だぞ。こんな爆発オチなんて最低だ…!



『で、出れない、だと!?何故だあああああ!!!???』



 いやー、これには勝てませんわ。最悪俺の足元から土の棘とか生やすだけで勝てるし。



 中の哀れなるプレイヤーを無視しながらもその火力は更に強まる。




「…どうでしょう、スロットさん。この圧倒的な火力!…あぁ、いつ見ても素晴らしい…!」




 …実は彼、派手さジャンキーなのだ。



『ああ…あつい…。』



 それは何故かというと、俺はぼうぼうと燃える部屋から一〇メートルくらい離れても熱いというのに、コイツは一メートルあるかないかの所で興奮している。



 ん?声?いや、聞こえないけど。



『ち…、畜生……っ。』




 ………部屋からは何も聞こえないのに、何故かとても儚い気持ちになった。


 ……数分、経っただろうか。



「…これなら、城主はひとたまりもありませんね。」





 …ガラガラと、いくら暴れてもビクともしなかった魔王城が崩れ始める。


 …そっかー、倒せちゃったかー。何故か、戦術的には正しい行動なのに涙が出てくる。


「スロットさん、逃げますよ。【テレポート】!」


 …これで俺の魔王城攻略活動は終了した。なんか、締まらないなぁ…。



 2.【組織】



 …で、【テレポート】先はあの時の【組織】の人の前だった。



「スロット、良くやってくれた。…あと少しでアナウンスが流れるだろう。楽にしていいよ。」



 …俺の目の前にいる彼の名前はアフラ、というらしい。ちょうど《バーサーク》の時に思い出した助言をしてくれた人だ。



「…ところで、彼は何者なんですか?」



「スロットは…、何の【アルカナ】かはわからないけど、まぁ、プライバシーってのもあるし、教えるわけにはいけないね。」



「なるほど、差し支えなければ【組織】で私の片腕としてやってもらいたかったのですがね…。」



 何でこう言う話を本人の前でするんですかね…。



「…ふーん。買ってるんだ。」



「彼の白兵戦能力は目を見張るものがあります。…あの赤い角のオーク、彼を短期で倒せたのは大きい。」





 …っ!…見られていたのか、ぬかった。




「…まぁ、スロット君に聞いてよ、直接。」



「で、君の待遇なんだけど…。」



「まぁ、任務を遂行したから報酬として、そうだなぁ…、ワールドアイテムでもあげようかな。」



 …このゲームにはちゃんとレアリティってもんもある。普通と、ワールドアイテムだ。




 …え?少なすぎないって?…いや、だってそうでもしないと【鍛治師】とかの生産職がみんな死んじゃうから…。





 俺の持ってる武器の中にワールドアイテムはない、これはとってもいい話だ。



「ワールドアイテムを…!?良いなぁ、欲しいなぁワールドアイテム!」



 レイザドさんすごい欲しがってる。



「君のは別にあるよ。普段は《攻略組》の奴らが大体とってっちゃうけど、ダブったってくれたんだ。」




 …《攻略組》、その半数はβテスターと呼ばれている、中規模のギルドだ。





 そのギルドに入らないなりにストーリー攻略活動を続けている奴は準攻略組と呼ばれていて、こちらはサービス開始からまだ三ヶ月しか経ってないのにもかかわらず、関東の人口とほぼ同じくらい居るらしい。




 準と《攻略組》合わせての平均レベルは一二五〇〇、チートだ。


 …俺のようなスキルビルドでは、辿り着けない境地である…。



 …まぁ、元からレベルは上がりやすいはずのゲームだし、それに攻略組の殆どは【怪力】と【蛮族】に特化させているので、下手にスキルを増やして【怪力】の恩恵を受けられなくなる事態は避けたいのだろう。





 だからこそ、彼らはレイドボスをワンパンできるわけで。




「君にあげるのは、『不壊不欠(スクルド)』にしようか。君は【ナイト】で頑張りたいって言ってたからね、サービスしよう。」





 …おっとっと、ついつい考えてたら目の前に出てきたのは宝石だった。





「…これを、どう使うんですか?」





「あー、【鑑定士】じゃなかったよね、えーっと、…飲み込む…?」





 説明書らしきものを取り出してアフラさんはそう言った。





「え…飲み込む、んですか?」





 ここで語尾を『か』にしてしまったのがいけなかった、レイザドさんがヒュッと俺の口の中に宝石をシュート、ホールインワン。





「……!?……あれ、なんか飲み込んだ感覚ないんですけど。」





「体内に入れるだけで自動発動だった様ですね。」





 俺らがこんな話をしていると、うんうん唸っていたアフラさんが口を開いた。





「…効果は、関節補強のパッシブみたいだ。じゃあ、お疲れ二人とも!」





「…いや、私の分は…?」




「…また後でって事で!」



 その後突風のように部屋から出ていった二人を尻目に、俺は動いて体の調子を確かめていた。




「よし、関節は動く…。」





 目立った強化点はなく、精々言えば関節部分が白くなったと言う事。





 やべっ


 間違えて扉の横の壁に膝小僧が---!



 ---ガァンッ!!




「…あれ、痛くない。」



「って、事は…、関節が硬くなる事、それが『不壊不欠(スクルド)』の効果ってことか。」





 むしろ、凹んでいた壁を見て俺は、これは使えると感じたのである。






「…あ、修理費どうしよう。」





 『因縁は結ばれる』







      『因果は収束する』






 『平穏の時が、訪れる』





 『【ビクトリア】の真実を知りたいか?』



   『彼らは、迷い続ける旅人が如く。』

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