第7話 新たな目的と魔王城
1.【バゼリ王国穀倉地域】【魔神王の深域】
…俺が、こんなにも注意を払って移動するのには訳がある。
【組織】に、【魔神王】の存在を気付かれてはいけないからだ。
え…?もう気付かれてる?そんなことある訳ないだろ、それに気づいてたら刺客を寄越すはずだ。
…【第二段階】、【ワールドボス】という称号を持つと半端なく強化されるアクティブスキルだ。
【第二段階】と【ワールドボス】を同時に手にできるこの機会を、情報と富を独占してきた彼らが見逃すはずがない。
…レイザドさんを連れて来なかったのは、戦闘を見させない為だ。
彼は、【組織】からの手の者、俺の中の【魔神王】を知られたらいつ敵になってもおかしくはない。その時のために戦闘は見せない方が良いのだ。
…【縮地】は見られてしまったが、それでも相手に自分の戦闘方法を教えない事は容易く始末できる可能性を上げる事に繋がる筈だ。
…さて、と。イトウさんに連絡を入れるために【魔法通信機】を操作する。
あの時、ちゃっかりフレンド登録していたので連絡は取れる。
…実は、フレンド同士では【魔法通信機】をすぐに繋げることが出来るのだ。
傍受される可能性もあるが、あれ…?
…開いてみると、サラからチャットが来ていた。
早速見てみる、なになに…『しばらく、情報屋活動を止める。他の情報より気になるものができた。』だって?
---正直、疑っている。
…俺が【塔】にいるザスターを追う旨を伝えた時も彼女は事情を察していた。
そんな彼女が直ぐに調べられないものなんてあるか?
【軍師】により遠距離の味方へバフや【テレポート】を行うことが出来るようになって、今までより更に強化された彼女に…?
………うーむ。悩んでいても仕方がない、か。
…人族が大幅に弱体化され、サラも仕事がしにくくなった、てことかな。
推測できるのはこんなもの。後で本人にでも聞きに行くか。
…さて、今はイトウさんだ、指定した時間にログインしてくれているので助かる。
「もしもし、イトウさんで良いですか?」
….声の様子を探ってみる
『…あっ、はい。イトウですが。』
よかった…!目立った後遺症もなく、元気なようだ。
…普通自分が殺される体験は結構応えるはずだからな、特に初回は。…酷い時は精神病にかかる人もいるらしい。
「イトウさん、…【契約】をやり直しませんか?」
『---ッ!?』
驚いている様子だ。無理もない、始めはあんなに【契約】を切りたいと言っていたのだから。
『…何故だか、教えてもらおうか。』
「………イトウさんはいざという時に背中を預けれると感じたからです。」
【異形狩りの妄執】が無くなってしまう条件は、細かく言えば『敵対状態で遭遇し、逃がしてしまう』事だ。
始めから【契約】によって協力関係なら【異形狩りの妄執】が無くなってしまう事はない…。
俺は、その旨もイトウさんに伝えて、返答を待つ。
…彼女は【魔法通信機】側へ顔を見せないようにしていた。
正直、そこまで返答に悩む事か?とも思っているが、人間、悩みという物があるものである。
たまたまこの話題がイトウさんのデリケートな部分だっただけだろうと推測した。
『………【契約】は、出来ない。』
「………!…理由を、聞かせてもらいます。」
…俺にのみしかメリットが無い、と判断したのか?
『---…そも、【契約】を結んだ所で、リアルでログインしていなかったら助けに行けない時もあるだろう。』
『そんな【契約】は結ぶだけ無駄だ、と考えている。』
…【契約】は、お互いの位置をある程度共有できる効果はあるが、チャットを無制限には送れないし、リアルの端末番号を知らなければ【ビクトリア】の中から外へ連絡する事は出来ない。
その方法は、プライベートが侵害される可能性もあるため、皆、かなりの結束な仲間の人にでもあまりやらないらしい。
『更に、【契約】には常時相手の座標を『確認できる』効果がある…。』
『あの効果はプライベートを消し去ってしまう、…この【VRMMO】には、『トーナメント』、『ダンジョンマスター』、『ギルド対抗戦』のイベントや、私達限定だが、【進化】を目指してストーリーを攻略する事もある…。』
『どうやらお前はそこまで私を信頼してくれているようだが、…私の仲間は、スロット、お前だけでは無いのだ。』
『………諸々の理由で、【契約】の再実行は出来ない。『城主』から解放された後、仲間と冒険する約束をしているからだ。差し障りがあってはいけない。』
………考えてみれば、イトウさんにも仲間がいるはずなのだ。それもリアルの知り合いとか、ネットで出会った同士とか。
俺には、どうもその辺りの運がないようなので、考えるに至らなかった………。
『お前と、冒険する事は今は出来ないのだ。だが…。』
『…………たまになら、付き合ってやらんでも無い。だが、今はやめてくれ。』
『………ではな。』
「---っ!…さようなら。」
---ツー、ツー、
…俺は、【魔法通信機】の電源を切った。
………俺も、積極的に仲間を作るべきだったか。思い返せば、仲間と言える仲間といえばラマンダ君とか、団長とクフリン…?とか、あとはサラとかか。
…昔、同僚は居たけど今はあんま連絡とってないし。
…はぁ、仲間欲しいなぁ。
2.魔王城『†堕天使†』
「レイザドさん、行きますよ。僕がまず【サイレント】のアビリティジェムで潜入します。それから五分後に『城全体』に攻撃をお願いします。」
レイザドさんは肩をすくめて馬鹿にするように言った。
「…あなた、城と心中する気ですかぁ?」
…まぁ、普通はこう思われるだろう、だが。
「人族のデスペナは『初回のみ復活から二四時間経つまで職業が【無職】のレベル一に固定される』、というものです。」
「…僕が魔王城内に突っ込む事により、相手に外で見張る、という選択肢を無くしてから貴方が大火力で纏めて鏖殺する、良い条件ではありませんか?」
---"近接職の貴方が死ぬ"という事がダメなんですよ。
そう彼は言い切った。
「…私が、前の《バーサーク》を一撃で殺せたのは『単体』だったからです。どうにも同じ範囲内に何体かいたら威力が下がってしまう…。」
「………もしも、魔王の間に魔物プレイヤーが密集していたら、『城主』を殺せないまま、貴方が死んでしまう…!」
「それは、固定砲台の私からすれば避けたいところです。」
「…つまり、作戦の変更が必要な訳ですね。」
彼は顎に手を当ててながら「はい、その通りです。」と言った。
…まだ、攻略は始まってすらいないが、【第二段階】も【連撃】も、チャージは終わっている。
(切り札になるのは『アビジャン』との戦い前に覚えた【超衝撃】だろうな…。)




