第4話 離別の時、来たれり。
1.バゼリ王国穀倉地域【魔神王の深域】
………私がログインした時にはスロットの姿が消えていた。
当然、私は【契約】で彼を探す…っ!?
………彼は今、『フォイドラ』さんの魔王城にいるらしい…。
追いかけるべきか、私は思索する。
…ん、決まった…。………彼は、魔王城が邪魔な様なので良い機会だろう。ここで一つ、試してみるとする。
「【テレポート】!」
2.魔王城『フォイドラ』
---ズォォォオアッッ!!!
………巨大な光を放つ【衝撃波】、その巨大な軌跡を誰も止める事は出来ない…ッ!
「「「「「「………【大魔術:巨人腕の大投石】ッッ!!」」」」」」
---ドッドッズドドドドドドッッ!!!
轟音、合音、豪音ッ!!
彼らの投擲は一心不乱にスロットを狙い続ける。
「アビリティジェム…ッ!」
「解放ッ!!」
---【縮地】の効果だ。
フォイドラは叫ぶ。
「………何で75%もステータスが下がってる筈なのに真面目に動けるんだ!?」
「………さあ、僕は知りませんねッ!!」
---ッ!?
フォイドラは突如背後に現れたスロットに驚くが、ここで咄嗟に【巨竜転生】を使うあたり、彼も弱い訳ではない。
「グ…グ、ぐ…!!Guoooooooooッ!!!」
---バシャアッ!バシャッ!パキッ…!
フォイドラの四肢の内側から液体と共に『竜』の手脚が生える…!
………彼の変異は、新たな"誕生"をも示していた…!!
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【巨竜転生】…
『自身のHP×〇.五秒間、自身の全ステータスを二倍すると共に、《語学》関連のスキルを使うことが出来なくなる。尚、この時自身の種族に『竜族』が追加される。(このスキルはHP一五〇〇以上から先は成長する事はない)』
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「………ッ!【殿の心得】、【|魔法剣:煌撃】…!」
「さらに…!」
「【六大属性魔法弾】連射ッ!!」
---ドバンッ!ドバババババッッ!!
…至近距離で放たれた相乗効果の一撃は、フォイドラへの確かな削りと"硬直"を与えるには充分だった。
「Guaaaaaッ!………Aaaaaaaaッ!!」
---ズォォォオアッ!!
爪から飛ぶは斬撃の【風】、だが、スロットはひょいひょい、と躱して近づいて行く。
---彼は、"詠唱"を始める…。
「………【悪魔殺し】、【破却】…ッ!」
「【衝撃波】×【剛撃】…!」
「---………【<撃滅衝波>】ッッ!!」
………結果は、語るまでも無いだろう。
その光の奔流が魔王城内部の魔物を殺し尽くすまで、そう時間はかからなかった…。
…さて、ここからが正念場だ。
「………おい、スロット。」
「---あぁ、イトウさんですか。お早いですね、まだ、4時なのに…。」
「『魔王城』を、消す方法を知りたいか。」
---緊張が、場を支配する。
「………良いのですか?私のネットワークでも探してはいるのですが。」
「方法は一つだけだ。」
「---………『城主』を、殺すこと。」
………彼の顔がほんの少し、歪んだ。
「………イトウさん。僕は…っ。」
「………魔物陣営の、デス・ペナルティとは、『凶暴化』による、初回のみの操作不能状態だ。」
「『凶暴化』したモンスターのレベルは二〇〇〇上昇し、死亡しない限り解除はされない。」
「どうか、その時に、私を殺してくれ…っ!」
「………【契約】は、解除する。協力関係は、ここで終わりだ。」
「---PvPでも、しようじゃないか。」
---その瞬間、地面から杭が出る。
"俺"は驚いて飛び退いた…!
「どういう事ですかッ!?イトウさんっ!」
「…どうだろうな、だがPvPはどちらかが死ぬまでは終わらないぞ。」
「…ッ。【魔法剣:煌撃】、【殿の心得】、【悪魔殺し】!」
---ドスゥッ!ドスドスドスッ!
…血の杭は、止まらない…!
---それと同時に出てきたこれは、何かの花粉か…?体が重くなってきた…!
「…私は、私達魔物プレイヤーはどんな姿になっても、元は『悪魔』族である事に変わりはない、だが。」
「---お前の特効が刺さるのは『まともに攻撃を受けた時のみ』だろう。ならば、近づけさせなければいい。」
………この人っ、出来る…!
「アビリティ、ジェム…!」
「解放!」
【縮地】の効果だ、イトウさんの背後に---!?
「………前、【縮地】同士の戦いを見たが、」
「---やはり皆、背後に出たがるようだな?」
---ズドドドドドドドッッ!!
---地面から生える、杭、杭、杭!
「ぐッ…!ぐあああああああッ!!?」
………剣で対処は出来ず、ならば!
---ズォォォンッ!
「【衝撃波】ッ!」
………この、一撃でッ…!
---カァンッ!ガ、ギギギギギッ!……パキィンッ!
「…ッ!【魔壁】…ッ、…ぐあッ!?」
防がれたが、壁は割れる。
………態勢が、崩れたっ!
「そこだぁぁぁぁッ!!」
---剣が胸を貫く前に、囁かれた。
「………間抜け。」
---グラッ…!
………魔王城が、崩れていく…!咄嗟に態勢を立て直そうと魔力放出を行うが、姿勢を制御できる程の魔力が…無い…!?
しまった、雑魚の残滅に使いすぎた…!
「………【血飛沫の祭宴】!」
………そして、この状況は…イトウさんが、空中で態勢を崩してもっ…!
『魔法を使う分』には何も関係が無いッ!
「アビリティジェムッ!解放ッッッ!」
【縮地】を使って崩れる魔王城の外側へっ…!?
---ヒュンッ!ヒュヒュヒュヒュヒュンッッ!!
なぁッ!?杭を飛ばして…ッ!
「………くぅっ!」
体を捻るが、避けきれたわけでは、無い。
---ダァンッ!
…なんとか杭の無い地面に着地。このままでは間違いなくジリ貧だ…!
だが、迫り来る杭は俺に考える時間を与えない。
---ドスゥッ!
「…痛ぅっ!」
………博打だが、やるしか、無い。
「アビリティジェム、」
「解放…。」
---パァンッ!
「【破却】…ッ!」
「【衝撃波】×【剛撃】…!」
「---………【<撃滅衝波>】ッッ!!」
---ズォォォオアッ!
その光の"軌跡"は物体、物質を悉く破壊せしめる焼却の刃!
「………【魔壁】×【周囲断絶】…!」
「【<天守・究硬>】---!」
イトウを守る盾と、殺そうとする刃がぶつかり合う…!
…威力は互いに拮抗し、減衰に至る。
このままでは、どちらか威力が優ったほうが勝利するだろう。
甘い---。
この戦いが、そんなありふれた、威力勝負の顛末で終わるわけが無い---!
直後、突風を巻き上げながら背後から現れるスロット。その姿は、音を伴わず。
「馬鹿な、あのような一撃が陽動だったとでも言うのか---!?」
………彼は、答えない。
ただ、その剣を纏う光は、昔、遠目から見た、【魔法剣:光撃】の光にとてもよく似ていて---。
---ズァンッッッ!!!
…風圧、血飛沫、振り抜かれる光剣。
………その身体を、赤く染めたイトウは儚く笑う。
「…頼むぞ…スロット…。」
「私は、君を信頼しているから、こんな事を頼んだんだ。」
---俺は…。
「…助けてくれ、どうか、頼む---!」
---………俺は、そう言って粒子となった彼女を見送った。
だが、感傷に浸る間も無く、彼女の粒子が集まり、収束し…。
巨大な、魔猪と化した---。
《Warning! Warning!》
《Unique Boss【バーサーク】が 出現しました》
〈…………!Juaaaaaaaaaa ッッ!!!〉
…【サイレント】の効果がここで切れた。
「………【悪魔殺し】、【魔法剣:煌撃】。」
…そして、彼女の死と引き換えの力を使う…!
「---【異形狩りの妄執】。」
「………覚悟は出来ているか。バーサーク。」
---出来ていないとは言わせないぞ…!




