エピローグ 風来坊から抜け出す日
1.酒場
ふー。やっと【グリーンボア五匹討伐】が終わったか。
「お疲れ様でした。」
このゲームを始めて早一週間。
威力に優れノックバックがある【剛撃】や、威力は劣るが中距離に対応できる【衝撃波】を覚える事が出来た。
ライバルは未だ多い中、俺は地道に討伐活動を続けている…とっ。
「…サラか。どうだそっちは、俺はレベル一二〇になったばかりだ。」
今の時代、チャットはボイスチャットが主流だ。俺は【魔法通信機】に耳を当てる。
『アーサー、こっちはなんか【組織】とやらに勧誘された。相手はどう考えてもVRMMOエンジョイしてるテンションじゃないんだが。』
「ええ…。いや、それは普段の行いが悪いよ。」
実はコイツ、情報を色々と売り飛ばしていて俺は専属契約の客第一号。
まぁ、俺の仕事と言っちゃあ、サラの所にデカイ組織の情報を売り込んでたんまり金もらうくらいかな。
『いや、ホントに。なんか消すとか言われたし。』
「いっそ行けば良いんじゃないかな。さそわれてるんでしょ?」
『…そっか。それもそうだね。一応僕も称号スキル持ちなんだからさ。』
…サラは自分を景気付ける時はいつもこのセリフを言う。ただの称号スキルなのか気になるのだが、俺には詮索する趣味はない。
「…ん、じゃな。」
…実は最近、俺も良い所のギルドマスターに目をつけられたので、頑張っていかなくては!
そのギルドは俺に【スキル秘伝書】を前払いでくれるっていう金払いの良さ、良い情報が取れそうだ。
「あ、貴方が依頼主ですね!僕はアーサーです。お見知り置きを!」
…対峙する彼は、いかにも偉い人な感じで言った。
「私はザスターと言うんだ。」
「…これからよろしく頼むよ。アーサー君。」
……ここから、奴の目的を知るのはかなり先のお話。




