終末放浪編 プロローグ
1.魔王城『イトウ』
---全く、今日は厄日だ。
「-----【殿の心得】、【異形狩りの妄執】、【悪魔殺し】、【魔法剣:煌撃】!!」
「あっ、『魔物殺し』だあああ!!」
"彼"は、そう叫んだ下位悪魔を叩き斬り、超重量と長刀身が売りの剣を振り抜いて、その勢いのまま城の中で剣戟とも言えない虐殺を繰り広げる。
「くそっ、どうなってるんだアイツは!【闇魔術】をさっさと発動させろ!!」
「無理です!闇属性の【魔法弾】の囲いが厚すぎて打っても対消滅します!!」
「だったら近接職だ!アイツの防御も我々と同じで紙の筈だ!」
「アイツの振り回す剣の範囲が広過ぎて無駄っす。死にます。ただのスコアっす。」
「………くそっ。ならば、【大魔術】だ!【連結方陣】を作るまでの時間を作れ!!」
---『魔物殺し』は剣を振り回す、
上、下、地上。リーチが届く範囲なら一撃で悪魔は砕けていく。
……突然、剣を納めて居合の形を作る。
"彼"は目を見開いた…!
「……………【破却】ッ!!」
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【破却】………
『自身の発動中のスキルを戦闘中、使用不可にする事により、破却したスキルの特性を引き継いだ一撃を放つ。スキルを破却した数×二.〇倍攻撃力が上昇する。(このスキルは五個以上のスキルを破却出来ず、このスキルを使った一撃を使用した後は、破却したスキルと【破却】は使用できない。)』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「----【衝撃波】!!」
……思い切り振り抜かれたその剣から出る【衝撃波】は横に広がり、広範囲に敵を、文字通り"蒸発"させる。
「………ッ!総員!【周囲断絶】展---」
そう、司令塔の悪魔が言うより早くに"災害"は広がった。
2.魔王城『イトウ』最深部
---思えば、ここで引き下がっておけば良かったのだろう。
ツカツカ、と、悪魔の返り血で汚れた道を"彼"は歩く。
その様は死神、纏う白銀の装束も、赤と黒に染められていた。
「………あなたが、この『魔王城』の主人。」
「『イトウ』で、合ってますね?」
"黒い髪"の彼はその"黄金の瞳"を輝かせて言う。
………最早、逃げる事は叶わない。【周囲断絶】の術者によって、ロックがかけられている。
「………いかにも、この私が『イトウ』だ。」
「私を殺しても魔王城は止まらない、だから考え直せ、手はまだ取り合える---」
私は、必死に生き筋を探す。『魔物殺し』は今まで何万回も魔物を鏖殺してきたプレイヤーだ。目的は『魔王城』の停止だと推測する。
「………?あぁ、そう言う事ですか。そうですね……。確かに、あなたの言う通りだ、なら。」
------取引をしましょう?
私は、その言葉に傾くしかなかった。
「簡単です。『魔王城』の停止の仕方を教えてください。そうすれば、あなたを見逃してあげてもいいと思っています。」
「………………」
答えられる訳がない。
そもそも私だって偶然ポップした『魔王城』の周囲で一番強かったから城主に成れたわけだし、配下は皆、この城の"機能"を利用したくて集まっていただけだ。
「………駄目ですか。分からないのなら、分からないと仰ってください。」
「分かりませんから---」
………よし!
私は意を決して、口を開いた。
「【契約】!!」
「なっ------」
………彼の目は、驚いている。
まさか、自身を従者として【契約】を発動するとは思わなかっただろうから。
「………ッ!!」
彼の手は剣を抜こうとしている…!?
「こ、殺そうったって、無駄だぞ。わ、私の【契約】は成立している!死んだって、付いていくんだからな!」
………【契約】は『主人と従者が無くして成立しない。主人との間に従者は一つまで制約をつけれる。その代わり、主人の命令従わないとペナルティが出る。』という効果を持つ。
「『私を殺さない事』、が制約だッ!や、破ったら、お前のスキルを好きに出来るんだからなッ!!」
…………嘘だ。だが、【契約】についてwikiには詳しくは載ってないし、バレなきゃ問題ない。
「………ハァ、そうですか。多少は想定外でしたが、協力なさってくれるのなら幸いですね…!」
「………………。」
………そう言って彼は、ムリヤリな笑みを浮かべた。
「………やれやれ、はぁ…、………こんな所で立ち話もなんですし、僕の拠点へ連れて行きましょう。」
「………イトウさん、行きますよ。」
「…ところで、『魔物殺し』…。」
「お前の名前は………?」
「………スロット。」
「スロットと、呼んでください。」
---こうして、私は、傍迷惑な彼の"運命"に引き込まれてしまっていたのである。




