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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第ニ部 ギルド浪漫編
34/117

第14話 "彼"に対するジョーカー




 1.地上〈コロシアム運営〉





 ───時はザスターとアーサーの決戦中


 戦場は混沌を極めていた。


 「おいっ!大丈夫か!?「戦えないものは一人ずつ進めーっ」「あいつは何処の所属だ?」「あいつの力は未知数だ。死に戻りした奴もどんなスキルを使ったかわからないって言ってる!」「怯むなーっ!」「特攻じゃああーっ!!」「おいっ!単独行動は危険だっ!」




 「───静まれェェーッ!!!!!!」





 これを納めたのはこの"鬼軍"の本部長。


 モトナリである。



 「申しわけありません、本部長。」

 「ある一人のプレイヤーが現れ、我が軍の【塔】攻撃前線をかき乱しました!」

 「現在、【塔】は完全破壊となっておらず、『侵略ゲージ』は依然上昇中です!」




 「ウムゥ………。ジオマの奴らめ、随分と手間をかけたな。これほどの超巨大兵器を運用できる【塔】を今回の侵攻に持ってくるとは…!」



 ………モトナリは眉間を抑える。




 「………特段、指示することはあるまい。我らの軍は【塔】を360度にかけて囲い込んでいる。そして、此処に、我らのギルドのトップランカーの一人、【斥候(ハイ・スカウト)】のジンが助力のために向かっておる。」





 「安心せい、我らの勝利は揺るがん。」




 「ほっ本部長!【ナイトリッチ】から『手紙』が届いております!」





 「………!それは本当か!?どれ、見せてみろ。」




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

from:ナイトリッチ


 『【モトナリ】、【組織】が動いた。奴らが今此処にいるのは推測するにアピールのためだ。ジオマ所属の【塔】を守った事実を利用し、ジオマに拠点を構えるつもりだ。』



 『これはあくまで私の考えだが、それをどう扱おうが君達に責任はない。我々の中でも【塔】近辺にギルドを構えていた支部に対処させたが、今、君達の手元にこの『手紙』があるということは失敗したということだ。』



 『どうか、【組織】をどうするかについて考えていてくれることを祈る。』



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜








 ───答えは一つだ。




 「………我々にはこの事実による戦力の操作を行うことは出来ん。昔、【ナイトリッチ】に誤った情報を与えられた事がある、我々にはな。」



 「あやつは少々判断が早すぎる、それがやつら〈BON〉の反撃の速さに転じているのかも知れんがな。」



 モトナリは目を細めた。



 「………では、そのように前線には伝えます。」



 ………【足軽(スカウト)】が去る。


 その背中を見つめるモトナリはこの先の〈コロシアム運営〉の身の振り方について考えていた………。









 

 2.地上〈組織〉


 縛り付けられていた囚人は此処に生還した。



 「ジタン、いるんだろう?………行動を起こす。」



 「何かあったら報告してくれ。以上!」



 そう言いながら彼は近くにいたプレイヤーを背負い投げる。


 「………【占い師】、職業スキルアビリティ発動。」



 「【僕は(対象選択)】【とても(修飾詞)】【強くなる(効果選択)】!」







 3.【塔】頂上







 ---蒼天の空を背後にザスターは呟く。





 「………フン、やっとだねアーサー君。」




 「君には報酬として様々な知識を渡してきたのだが…。その結果がまさか、こんなところで出ようとはな。」





 アーサーはボロボロだ。何故なら状態異常【昏倒】はHPが三割以下でないと基本的には発動しないからだ。



 【魔砲】によって消し飛ばされた筈の下半身は、『欠損回復ポーション』によってある程度治ってはいるが、奴が気付く前に行えた準備はこれだけだった。







 「………ハァ………ハッ。」


 「僕は、いや俺は、此処で負けるわけにはいかない、そんな気がする………!」





 ………正直、状況は絶望的だ。相手にはカウンターを兼ねた硬い盾があり、それを破る手はもう見せてしまった。






 相手だってボロボロなのは確かだが、少なくとも攻撃の為に動く必要がある俺に比べて、ザスターは待っているだけで良いのだから、途轍もなく継戦能力が高い事もまた、確かだ。





 …………………切り札を使おうにも、俺のジョーカーたる【第二段階(セカンド)】は【第零段階(ロゥ)】の効果により、消失してしまった。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

第零段階(ロゥ)

 『自身の肉体を魂装に変換させることにより、魔力の操作性、回復率を【第零段階】侵食度分上昇させる。この形態時に肌又は髪の黒と白の比率が高ければ高いほど侵食度は高いとされる。

※肉体の持っていたスキル又は職業は【第零段階】解除時までロスト扱いされる。


 ※俺調べ(身体増強系のスキルは名前がスキル欄から消失するだけで効果は持続する。【第二段階(セカンド)】発現時にこのスキルはロスト扱いとなる。)』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 だから、【第零段階(ロゥ)】でも【第二段階(セカンド)】を発動できないわけじゃない。



 それは、いつぞやに盗み見たお前の実験成果が証明してくれている───!






 「──────【第二段階(セカンド)】!」









 ………俺の身体に"感覚"が走る。



 俺は、"肉体変化スキルは感覚補助"という推測を立てた



 ……【第二段階(セカンド)】は【魂装】が元となっている。【魂装】を体外へと放出し、それを形とする。



 その"感覚"さえ覚えていれば、【第二段階(セカンド)】へと到達する、とザスターも言っていた………!











 ──────イメージするは"盾"









 相手の意思をも圧殺する"盾"──────










 ───世に蔓延る有象無象その一切を圧壊させる"力"。
















   「…………『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)』。」
























   「………もう、"諦観"には遅い時期だ。」

















     『クエスト発生』


 パーソナルクエスト

 『【不滅の魔神王(ディ・イモータル)】アーサーの復活』


 ⦅アーサー さん が 【魔神王】へと ジョブチェンジしました!⦆



 ⦅称号獲得!

【ワールドボス】【不滅の魔神王(ディ・イモータル)】⦆






 ───これが、正真正銘、最後の一騎打ちだ。








 「………そうか。私の手札で戦ってくれることに喜びを感じ得ないよ。」



 ザスターは、嗤う。



     「アーサー君。」


 だって、その力も、技術も、全て───。


     「………【(スター)】!」




  この私から受け取った物でしか、無いのだから!



          「【王命(ヴィータ・レアル)】!」






 ………それは"強制力"、俺の体を雁字搦めに縛りつけようとする縄。






 その縄は一切合切の意識、思想、方向をも統括し、作り変える。




 だが、




    「『圧壊の魔盾(ブリュンヒルデ)】。」





   その全てを、青い波が"圧壊"させる。





  「お前の力が俺には通用することはない!」




 …俺の心象と、お前の【王命(ヴィータ・レアル)】は途方もなく相性が悪いッ!






  「【魔法剣:煌撃(アルスター)】───【衝撃波(スパーク)】!」



 極光が、無数の光を束ねた一撃が、彼に迫る。


 …だが、彼は、ザスターは、こんな所で諦める訳がない。



「【魔壁(ウォール)】…!ぅ、ぐっ…!!」


 円卓を模した盾が、彼の身を守るが、その盾はまるでガラス細工の様に削れ、砕かれ、消滅する。



 ───それでも、私は…!


    「【王命(ヴィータ・レアル)】…!強化しろ!」


 つい、出た本音。


    「私は、彼にだけは、負ける訳にはッ…!」


 悠々と、淡々と、敗北を受け入れるつもりだったのに。


     「───いかないッ!の、だ、ぁ…!」



 何故か、この心が、突き動かされて───。


 「───届け。」



 ───その時、輝きの暴力が【星】へと、届いた。




   「…ッ!まだ、だ、ぁ…!!」



「【攻性防壁(カウンターシールド):一点集中(コアブロック)】!」


 ───突き動かされて、たまらないのだ!



 …彼らは、叫んで、掴んで、もぎ取ろうとする。



 此度こそ、自身が勝利するのだ、と。


    「「──────ッ!!!」」




 ──その時、両者の咆哮が、場を支配して暴れまわった…!




「…はぁ…。あ、が、…ぐぅっ…!」



 ………鍔迫り合いの結果、場に満ちた土埃が晴れる。



「…ふふ、……はぁ。」



 …そこには、上半身と下半身が両断されたザスターの姿があった。



 彼の表情は、やけに安らかだった。負けたにも関わらず、その笑みは、アーサーの勝利を祝福する様だった。



「………フン、引き際がわからないほど耄碌していたとは。」


     「呆れたものだ。」


 そう言って、焼けただれた自身の手を見る。……そこに、立って見下ろす者が一人。



     「…でも、俺の、勝ちだ。」


       「ザスター。」



 …ザスターとは対照的に、アーサーは勝ったのに、やけに苦しそうな顔をしていたのだが。


 ………両断された腹から先を撫で、ザスターは空を見上げた。


     「やれやれ。困ったな。」



「ならば、先の…『私の勝ちだ』、という言葉は取り消させてもらおう。」





     「そして、最後に。」



 …奴は、酷く好戦的な笑みを浮かべる。




 「……次こそは、勝たせてもらう、とね。」



 ……彼は、最後にそう言い残して消えた。

 わずかの期待と、勝利への羨望を滲み出しながら、消えたのだ。

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