第13話 此処は、ゲームの世界
1.地上
………俺が"城"を破壊した後、何故かそれは持ち上がった。
馬鹿な、すでに降下を始めていたというのに…!?
「あれ程の欠損がありながら、動いているだと…。」
そう俺が呟いた、直後
【魔法弾】特有の"発射音"が聞こえた。
周囲を見回してみると、《コロシアム運営》と書かれている旗が、次に大量の軍が"城"を囲んでいるのが目に入る。
………増援が来たか。それはつまり他のバゼリ王国のプレイヤーもこの"城"を危険だと判断したということだ。
つまりあの時のギルマスからの『破壊しろ』という指示は間違ってはいなかったのだ。まぁ、俺は壊さなかったが。
俺が眺めているだけで無数の【魔法弾】と、砲弾が"城"を食い破っていく、その様子を眺めながら今は空中にいるギルマスの元に向かった。
2.ギルド〈剣の騎士〉
「ギルマス!どうしたんですか?」
ギルマスは蒼白した顔で答えた。
「わからない。謎の光を浴びたらクフリンを刺し殺していたんだ………。」
「………光!?いや、ギルマス。あなたがクフリンを刺し殺そうとしたわけじゃないんですね。」
「そうだ…。体が勝手に動いていたっ。」
「………犯人とかの心当たりは?」
「………いる。」
「実は、私がクフリンを刺し殺した後にあの"城"の上で笑っていた男がいたんだ。」
「そいつは"城"の中心部で私が見た男………だと思う。」
「あの男は"【攻性防壁】"なるものを使っていた………!」
「………どうだい、何か犯人の心当たりとかあれば良いんだけど。」
---心当たりも何も、よく知ってる人物だ。
「---わかりました、倒します。」
「多分その人は、僕が倒さなきゃいけない人ですから。」
3.地上
俺は早速魔力を放出してあの"城"の頂上で待っている奴をとっちめようと思った矢先、
…ある喧嘩が目に入った。
「おいッ!その魔道具はウチの【塔】の部品なんだよぉ!?大人しく返せやぁ!!」
「んなこと言われてもよ、俺ぁこんな面さげてどこに行きゃあ良いんだよ!?帰還用のたっかいリターンクリスタルも使っちまったし………!はぁ……。」
「………!テメー、わかったぞ。働き口が欲しいんだな!?ならウチに来い!!」
…スルーして抜ける。
…………俺は流石に空中を流れる【魔法弾】と砲撃の間を潜り抜けてあの性悪男に近寄れるとは思っちゃいない。
なので此処で俺の唯一の協力者を使うことにした。【魔法通信機】を操作する。
「おい、ジャック。急患だ、ルートを教えてくれ。」
『ダイナ、死ぬだけだ。考え直せ!」
「いや、行くね。俺はただ戦うだけだ。」
『止めやしないさ。【テレポート】で送ろう。』
「助かる!」
「………さてと。」
「アビリティジェム」
「解放」
………サラは現在、【軍師】というジョブについている。
なんでも『ギルド・ギルド間の戦争と領地戦の両方で戦闘をせずMVPになる』事が条件だそうだ。
生憎と職業スキルは知らないが、このジョブの条件を達成できる程の"異能"は当然持っているだろう。
「………!」
俺の身体が粒子状に分解される、これが【テレポート】される人間の気分か。
------俺の景色は暗転した。
4.【塔】頂上
………やっと会えたな。【枢機卿】!
「………今は一応、【高位・枢機卿】だ。………陳腐なネーミングだと思わないかな?」
「------アーサー君。」
「ザスター!」
---…ドゥンッ…!!
雲を切る勢いで俺の身体はロケットスタート。
今までエンジョイ勢だったが、これでも俺の剣を奴の喉元へ届かせる努力はしてきたつもりだ。
魔力を放出して縦、横、下、上へとザスターの身体を切り刻む。
奴はギリギリの所でそれを見切り、避け、時には拳打を繰り出しながら応対する。
………ザスターは前と同じ轍を踏むつもりかと小さく溜息をついた。
大方、【攻性防壁】にまた引っかかるつもりかと呆れているんだろう。
「君の本気はこれだけか?………【攻性防壁】」
---その技はもう見切った!
俺は【攻性防壁】の"強力な力場を張る"、というところに目をつけた。
力場を"張る"必要があるのだ。余程優れた空間認識能力を持っていたとしても、あらかじめ力場を張る所を確認しておかなければならない。
………まぁ、つまりだ。
「目を潰されたら【攻性防壁】は展開できないだろッ!」
俺はただ縦横無尽に動き回っていたのではない、『閃光玉』を気付かれないように投げておいたのだ。
「解放!」
ボォン…---カァァァァ!!
俺は目を瞑る。
まぶた越しからでもわかるほどの閃光。
「------ッ!?」
------……………まぶたを開けた。
「クゥッ………良く、考えたものだね。」
「アーサー君………ッ!」
野郎はまだ【攻性防壁】を俺の所にピンポイントには置けないはず、
………そういう奴はまず自分の周囲に囲いを作るだろう。反射的にな。
「だが、私は今、【攻性防壁】を周囲に展開している………。君に勝ちの目はまず、無い。」
だから、目を瞑ったまま俺を追うことはしないだろうと思った。
………ドンピシャだ。俺は逃げ、奴は追わない。
俺は影に隠れ、奴の不意を伺う。
「………?アーサー君。どこにいる…。私は君が"どんなことをしても"叩きのめす準備をした。だから君がそこら辺の物陰に隠れているのはわかっているぞ、私には君は怯えているように感じる---ッ!!」
---ザスターの腹から"刃"が生えた。
「………"音もなく刺される"ということは想定してなかったようだな。」
俺の魔力放出により大幅な加速を得た剣が、【攻性防壁】を力場ごと奴の身体を突き破った。
俺が戦闘前に使っていたアビリティジェム、遅効性の【サイレント】。
【テレポート】の前に使っておいて良かった。
「ぐ……ッ------あ。」
「は、は、は。アーサー、君。」
「………なんですか。遺言なら聞きますよ。」
………一応、俺にも情けというものは---ッ?!
「きみの、まけだ。」
トン、とザスターの手が俺の身体に触れる。
「ザスター………何をするつもりで---!?」
………動けない。クソッ、視力がもう回復していたのか!【攻性防壁】を張られている………ッ!
「………カハッ、ハァ………。」
「………君、は、いつも相手の術中にはまる。それ、は君の目が悪いわけでは無い………ッ!」
………ザスターは目を見開く。
「君はいつも、"見すぎている"。だから出遅れる、ハァッ………更に、後手に回っても辛うじて、相手を退けれる実力があるのもその"見すぎ"に拍車をかけている………ッ!」
「先手に回った君は、末恐ろしい存在になるだろうね………。だが。」
「【魔砲】!!」
------その光線は俺の腰から下を消し飛ばした………!
「------今は、確かに私の勝ちだ!」
………泣き別れになった下半身を見て、考える。
………………『また、ダメだったか』、と。
…………奴の笑い顔を最後に、俺の意識は閉じた。
5.空白の心象風景
………………………………。
『まけたく無い』『死にたく無い』『終わりたく無い』『取り戻したい』『また負けた』
『俺はいつも負け続ける』『勝ちたいのに』
………様々な思考が脳髄の中を縦横無尽に駆け回る。
---その一切合切が私怨だ。
「………俺は、また負けた、」
「ザスターに。」
………………アイツは【アルカナ】だなんだと言っていたが、俺はそんなことを敗因にはしない。
………地力が、圧倒的に足りない。
負ける時はいつも"後一歩"でつまずく。
力不足だったのだろう。
---俺はザスターに一矢しか報えなかった。
---ナギトに反応しかできなかった。
………強い奴と戦えば戦うほど、弱い奴と戦った方が10倍は楽で、楽しいことがわかっていった。
よく考えたら、俺は自身が納得できる"強さ"が欲しかっただけなのだろう。
ナギトとか、ザスターとかにしか無い、オンリーワンを。
【第二段階】は別に【魔神王】じゃなくてもなれるし、俺より強い【ナイト】を使って戦っている人達はゴロゴロいる。
………唯一の特権である『アビリティジェム』もザスターから貰った物だ。
借り物だけで充分頑張った。
---そんな言葉が欲しいわけじゃ無い。
今のお前のステータスは希少価値だ。
---他より強いわけではない。
因縁から逃げてもいいんじゃないか?また顔と名前を変えてさ。
---ザスターは俺が倒さなくちゃ、"倒さなくちゃ"………?
………何故、俺がザスターの野郎にそこまで執着しなければならないのか、たかだか一回指名手配されて、襲われただけじゃないか。
それに、報復ならもうやっただろう?
「---違う。」
「………まだ終わってない。」
「今も奴と俺との決戦は続いているんだ。」
「それに………。」
「理由なんて無くても、俺はアイツと張り合いたい。正面から競り合って、勝ちたい!」
そうだ、こんなに考え込む必要は無かった。
なんだって此処は---
「---だって此処は、VRMMOなんだから!」
………俺は昔、聞いたことがある。
『稀に、状態異常【昏倒】になった者は、強い意志によって目覚めるようだ。』
『その、目覚めた者はだいたいこういうのさ。』
『"強い意志に目覚めた"、と。』
《 アーサー さんが 【第三段階】 を 習得しました!》
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【第三段階】………
状態異常【昏倒】となり、三〇秒以内に条件を満たすと習得可能。発動条件は⬛️⬛️値が一〇〇〇を超えている時、⬛️⬛️値六〇〇を代償に発動する。自身の心象風景を基にした結界を作り、その内部に使用者が指定したプレイヤーを引き込む。追い出す時には使用者と連れ込まれたプレイヤー両方の同意が必要になる。(このスキルを使用中、全てのアクティブスキルの同時使用が可能。その時、それぞれの補正は加算されてダメージ計算に使用される。)




