第12話 比翼なく
1.【塔】中心部
-----衝撃音と共に土埃が舞う。
『幻獣』は大量のガレキを生産して止まった。
(………とにかく今は状況の改善をするしかあるまい。)
「………【魔砲】。」
ザスターの両掌から紫色の光が収縮、『幻獣』の周囲へ向けて発射される。
「---……ッ!?ぐああっ!?」
襲撃者から高い苦しみの声が上がった。
---そのまま、連発!
声のした所に無数の直線が集中。
直撃した様子だが、襲撃者の動く様子は無い。
「………フン、死んだフリのつもりかな?」
「【攻性防壁:拘束】。」
薄い魔力壁が襲撃者の周囲を囲う。
「-----【攻性防壁:逆ハリネズミ】………!」
"それ"の囲いの内側へと無数の魔力針が飛び出した。
………血は、無い。
であればこの室内の何処かだろう。
「………【塔】。位置は分かるかね。」
「………フン、俺を何だと思っていやがる。」
「俺の【アルカナ】は破壊特化。【塔】の内側に入られても探知は出来ねぇんだよ!!」
そうイラついた様子でザタワは返した。
「フム、ならば仕方ない。」
「アビリティジェム」
「解放」
【探知】の効果だ。
「---………おい、それなんだよ、【星】!」
「アビリティジェムだよ。スキルアビリティを登録でき、自由なタイミングで発動できる物だ。」
「は?そんな便利なモノがあんならサッサと使えば良いのによ。」
………そう言われると、唐突にザスターはそっぽを向いた。
「………あるプレイヤーにその便利なモノはくれてやったのさ。私の使っているものは、ソレの廉価版だ。」
「これは正真正銘"使い切り"だよ。効果の大小も、使うまでは分からないのでね。」
「………そうか。」
「---………あと、襲撃者はもう居ないようだ…。もう【塔】の射程圏外だろう。」
「そうか…!厄介な奴らは消えたか。なら、俺の役目を続行するだけだ!」
2.【塔】迷宮層
---迷宮は酷い有様だ、ここに残る物好きは居ないはずである。
「---………ッ!俺ぁ、ここでお宝を見つけるまでは止まれねぇ………止まれねェんだッ!」
それでも残るものは馬鹿か、自信過剰な者だけである。
この男、カインはコロシアム崩れだ。
ストーリー攻略へと赴き、《攻略組》との決して埋められぬ差を感じ、次に目指したコロシアムでも25000位〜20000位から先へは壁が厚すぎて、まるで頂点など取れなかった。
その結果がプレイヤーの依頼のクリアに都合の良い戦闘力。【傭兵】だ。
『【塔】の調査』
『詳細
二〇人まで募集。レベル15000〜20000まで、スキル最低8個以上所持で雇います。
5点ほど【魔道具】を持ち帰って来てくれたら依頼達成とします。
報酬
鍛治ギルド〈乱数調整〉の全部位防具、一種類武器交換券×一』
破格。
このゲームでは市販の武器、防具はよほど高価なものでなければプレイヤーメイドの方が出来が良い。
そんな中、最高レベルの鍛治ギルドと名高い〈乱数調整〉の武具防具が貰える…!
これほどの幸運があろうか、いや無い。
「やっと、四つ見つけたってのに………!こんな事ねぇだろ………!?」
あと、一つ。
その『あと一つ』がカインを縛った。
欲を生んだのだ。
「俺ぁもう、引き下がるわけにはいかねぇんだ!」
3.地上
-----空間に淀みが見られる。
【テレポート】の予兆だ。-----
「ギルマス!」
「クフりん、ウェイン君……!あの"城"を撃つ準備は!?」
出てきたのは傷だらけのギルマスだ。
俺達は揃って傾いた。
「よし…っ、なら撃とう!今すぐにっ!」
………なにやら迫真な様子だ。急ごう。
「了解!」 「了解です!」
「聖剣裁定…!」
「光魔力混合比率60%!」
「-----……照準!」
「発射ぁーーッ!!!」
---【極光】が前回放った時とは段違いの範囲・威力で発射された。
その破滅の光は、まるで絵の具のような広がりを見せる。
そして中空に控える【塔】を直撃した。
4.【塔】中心部
〈エラーエラーエラーエラーエラーエラー〉
〈致命的なダメージ。【塔】の動力、機能20%ダウン。〉
「なっ…なんだ………!?何が起こっている………!?!?」
「落ち着けザタワ君。こういう時こそ平常心ほど心強いものは無い。」
「………まだ君の手札はあるはずだ。使えよ、【塔】。」
………【塔】は大袈裟にため息をついた。
「フン………。俺の手札は見せたくなかったんだけどな、畜生!」
そう言って彼はレバーを弄った、だが…。
「安全装置が動かない、か。」
………ガチャガチャとレバーが弄られる。
「……システムAからBへ、自動迎撃兵装ダウン。魔力バリアを30パーセントから120パーセントへ、高度上昇1キロメートル。」
「………前から思っていたが、君。」
「んだよ、今集中してるから話しかけん---」
「所感だが、意外と頭脳派な戦闘方法だと思ってね。」
「………"意外"とだぁ!?舐めてんじゃねぇ、俺はハナから頭脳派だッ!」
5.地上
「オイオイ、全く響いてねぇ。どういう事だよウェイン!?」
………さらに地上からの【極光】が"城"から外れようとしていた。
「………運動魔力を削りすぎたんでしょう。それでも十分過ぎるほど入れたと思うんですが………っ!」
実際、撃ち始めの時は装甲がポロポロ剥がれ落ちていったのだが………。
ギルマスが言う
「多分、魔力をバリア代わりにしてるんだ。領地戦じゃあ拠点を守るための常套手段さ………!」
クフリンが聞いた
「対策はあるのか、ギルマス!」
「相手は魔力を全身に纏っているんだ。魔力の天敵になるモノがあったら一発でバリアを壊すことができると思う!」
「………そうか、なら!」
「クフリン、何か思いついたんですか!?」
「………ギルマス、俺を"城"のバリアに連れてってくれ!」
「………そうか。わかったよ、クフりん。」
二人は息をつく暇も無いまま『幻獣』に乗り込む。
「何をするつもりなんですか!?」
「ウェイン!お前はそのまま【極光】を出してろッ!相手のバリアをオレ達が着くまでに展開させ続けるんだ!」
「------行くよっ!」
「待っ---!!」
………行ってしまった。
勝手な奴らだ。自分達だけ解決法話し合って、………それはあまりにも俺が不甲斐なさすぎるでしょう?
………………まぁ、与えられた仕事に特に不満はないわけだが、ここまで来たらやり遂げる以外はないだろうな。ナイトは与えられた職務は無言で全うするし。
6.【塔】外層部
「………クフりん。本当にアレをやるつもりかい。アレは………。」
「………止めないでください。ギルマス、いや先生。俺は、後輩の頑張りを無駄にさせない義務がある。」
「………っ!わかった、もう止めないからね。---着いたよ。」
「………【経路】。」
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結局のところ【経路】とは"魔力"で相手と繋がるスキルではない。
その本質とは『どこにいる対象とでも縁を作れる』事にある。魔力なら届かないところも届いてしまう。
………彼が今やろうとしているのは、必殺技とは程遠い自爆技なのだ。
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「【賢者の石】。」
【賢者の石】…
『命を引き換えに万能のエネルギー物質を創生する。一つ作り出したら再取得するまでこのスキルを使うことは出来ない。』
「【液体化】ッ!からの【同化】!」
クフリンの身体が、一瞬にして液体となり【塔】を包む魔力バリアと同化した。
「………これが、戦闘能力を持たないクフリンの切り札。相手を自身と同化させて………。」
「「自爆させる!」」
7.地上
………!攻撃によって破壊されるガレキが多くなってる…?
多分、クフリンが言ってた"対策"とやらの影響だろう。なら、このまま【極光】の出力を上げて押し切るしかない!
8.【塔】中心部
「………チッ、ザスター。脱出準備だ。」
「………そうか。何があったか教えてくれないかね。」
「どっかのバカが【塔】全体のバリアのコントロール奪って自爆しようとしてんだ。【霊体化】使えるやつに妨害させてるけど長くは保たねぇぞ!」
「ふむ…。なら、少し試してきても良いかね。私の【勅令】なら止めれる可能性がある。」
「あっそ、死ぬなら勝手に死ね!………借りは、返したからな。」
9.【塔】外層部
ザスターは破壊された【塔】の頂点から、侵食されゆくバリアーを見下ろした。
「さて、遂にお披露目と行こうか。
---この私の【ランクアップ】をね。」
「【星】!」
〈---"剣"が彼の手の甲から生える〉
〈それは"棍棒"で、"聖杯"でもあり"コイン"でもある〉
〈世界全ての"権"が今、彼に委ねられ〉
〈この【星】の掌握権を持つのは彼だけだ〉
---彼の者は"王権"を手にし、高らかに謳う。
「【王命】!!」
10.【塔】付近上空
急に"城"の頂点が発光したっ!?
「------なんの光!?」
………呆けてる場合じゃないっ!
「あ、そうだ。クフリン!大丈夫!?影響とかあった!?」
「………あー、イヤ、特に無いっ---」
------ざくり、と"私の槍"がクフリンの胴体を貫いていた。
「………え?------あっ…?ああ、ああああ!?」
「あ、れ?」
「なんで、おれ、血---」
ばたり、と私の『幻獣』の上で力尽きた彼を、私は呆然として見つめている。
「---………フフ、アハハ!フハハハハッ!!【自動操縦】に近い操作性だッ!まさかここまで【ランクアップ】による上昇率が高いとはッ、思いもよらなかったぞぉ!!」
------頂点で、あの男が笑っていた。
11.地上
「"城"はクフリンの頑張りで俺がなんとか破壊できた。」
「だが………ギルマスの様子が変だ。すぐ降りて来ないのもおかしい。」
それに、急にクフリンからの【経路】が切れたのも気になると思っていた時。
---俺は、とある性悪男の笑い声を聞いた気がした。




