第10話 【アルカナ】
1.不可視の宮殿 内部
------戦乱の狼煙が、上がろうとしていた。
一人の若者が宮殿の戸を叩いた。
「おい、【星】!お望み通り来てやったぞ!」
「良いね。さすが【塔】、良い速さだ。」
「歓迎するよ、ザタワくん。」
2.【組織】 囚人室
------この"世界"そのものを巻き込む大戦乱が…!
「………よし。………データチェック完了。
やっと自己拘束を解ける。〜〜っ!長かったなぁ〜〜っもう。」
「退屈はヒマなんだよ。当然だね。」
「さてと、そろそろ、新しい未来を"視"に行こうじゃないか。ねぇ、みんな。」
3.ギルド〈BON〉
「ついに、領地戦が本格的になってきたか………!我々には、まだ強大な力を持つβテスター、【アルカナ】への対処も終わっていないのに………!」
「【ナイトリッチ】、オウガの【魔神王の深域】の調査報告書です。」
「ッ、ままならないものだ…!カズィくん。至急ザマル・バゼリ前線の調査に行ってくれ!〈コロシアム運営組〉の真意が知りたい!」
「ハッ!【ナイトリッチ】!」
「………ノータッチだった〈攻略組〉の活動も
情報が倒錯した今では掴みにくい…!本当に、ままならないものだ…!」
4.コロシアム 戦争対策本部改め軍部総司令部
「攻略組の情報がつかめましたーっ!「なんだってー「凄いじゃないか!」それで何をしてたのかというとですね!」「早くしろーっ」「情報が欲しいんだよぉー!」「それが、組員を一人も回してくれるらしいです!」「少なくない…?「攻略組一人でもワールドボス2体分の戦力なんだぞ!「凄いじゃないですかーっ!」
「----静まれェェーッ!!!!!!」
「本部長こんにちわ!」「すみませんでした。」「情報がつかめました!」「うるさくしてごめんなさい…。」「戦いは数だよ兄貴!」「攻略組から一人来るらしいですよ!」「ワールドボス!」
「フン、まぁいい。あやつが人員を回すということは、儂らに情報を回したいんじゃろ。
何か大きなワールドボスの予兆か、それとも『ストーリーの完結』か。なんにせよ、想像しておくことは損にならん。」
「------覚悟を決めておけ。」
5.魔物サーバー内 魔王城
「何か………大きな胎動を感じる。」
「我ら魔物が表舞台に出る日も近いか。」
---クク、くくく、フハハハハ!!
アーッハッハッハッハッ!!!
6.中国サーバー ナイトケ王国 首都バセラヌ
王座で【戦車】は考え込む。
「これでよし、と、やっと成功した。」
「NPC勇者の打倒は簡単では無かったけどね、これで完璧になる。」
窓際へと立つ【戦車】。
そこからは、並び立つ街並みが窺える。
…そこに、まるで役者のように【戦車】は仰々しく、手を差し伸べる。
「さぁ、皆さま、どうか僕の手をお取りください。」
「どこまでも連れてってあげるよ。」
---明るい色の絨毯
王を気取る【戦車】---
---止まることなど許されない。
たとえ、破滅が待っていようとも---
………そこに佇む織部色、
それは清廉さを感じさせる
「ザチャリオ、行きましょう。私が御者となります。」
「あなたの先を示しましょう。」
「マーメイ…。よし、行こうじゃないか!」
7.【次元の決戦場】
俗に言う、決戦のバトルフィールドというものだ。
ワールドボス【勇者】『ナイトケ』
《Warning! Warning!》
《World Boss【勇者】が 出現しました》
〈---彼は少年だった。〉
〈今は違う、ただ、それだけの話である〉
[この【魔神王の魂】を女神に捧ぐために………っ!]
………金髪の少年は剣を構える。
【戦車】は手足に指示を下した。
「全隊、前へ!」
「【王宮】!」
………中国サーバーは平均の戦闘力が高く、どんなに強くとも、群で個に負けるような経験を積んできていない。
【王宮】が前列の犠牲も御構い無しに組まれていく。
一寸のミスも許されぬ現場、無駄のない陣形、無駄の無い配置換え、
………だが、【勇者】は無駄があっても無くても同じことだと蹴散らし、踏みつけ、砕き割る。
「………行け、クガン、ファリン。」
「了。」 「了解です。」
黒髪の男女が現れる。
薙刀と素手
人体を破壊する事に長けている。
「【稲妻投げ】」 「【紫電掌】!」
【雷属性】の攻撃が【勇者】を襲う。
ファリンがゼロレンジから相手を封殺し、縛り付け、クガンがファリンの背中越しや、勇者の頭上など、全角度からの薙刀を投擲する。
「【勇者】はレイドボス。だが、これで倒せてしまいそうだ。【魔神王】になった時の対策はしといたんだがね。」
パチ、と【戦車】は指を鳴らす。
【王宮】の完成だ。
【次元の決戦場】内部に億単位で張り巡らせてあるワイヤー。それらは操作主である【戦車】の手の中に収束する。
【戦車】は【麻痺毒】をワイヤーに垂らすと、たちどころに全てのワイヤーに付与される。
「………僕の【アルカナ】は【戦車】…結果を司る力だ。だから、僕の攻撃は止まらないし、僕の行動は抑止できない。」
「………この能力の名は【一意孤行】」
無数の鉄線に切りつけられるが、【勇者】は動けない。【魔神王の魂】を使えば一矢報えるが、何故かそれをしない。
「僕の【麻痺毒】は止まることを知らない。
永遠に縛られ続けるといい。」
………【勇者】は倒れる。
「回収班、出るぞ!」
無数の盗賊プレイヤーが【勇者】に【盗む】を仕掛ける。
………【勇者】は身をよじるが、動くこともできない。麻痺値が秒で二五ずつ上がって来ているからだ。
全てを完封された貧弱な【勇者】は無事、【魔神王の魂】を抜き出され、死亡した。
8.【魔神王の深域】〈元ザスターのギルド〉
「…………ここは………どこだ………?」
アーサーは目覚める。
………身体の装飾品が付いてない。
直ぐに装備して、周囲を確認する。
どうやら夜のようだ。ふと、空を見上げる
そこには山二つあってどうにかと言えるほどの巨大な城が浮かんでいた。




