第2話 初めての戦闘
1.【バゼリ王国穀倉地域】
…一面に麦の様なものが生えている。その稲穂が風に揺られる様は、まるで黄金の草原の様な。
『ぎぃぎぃ!』
…ゴブリンがおいでなさったか、俺は腰の剣を抜き、盾を構える。
【片手半剣】…、このスキルは大雑把に言うと『剣を扱いやすくなる。』と言うスキルだ。
扱いやすくなる、と言うのは武器の重量をそのままにして軽く扱える、と言うことである。…つまり、このスキルを極めれば片手で大剣を振り回すことが可能。
さらに、【剣術】、【片手剣】を習得することによって、元々威力の低い片手剣の攻撃力を増大させて、ついでに、【剣術】でダメージ量が高い大剣を振り回す時もある程度の補正をかけることが出来る。
ズォッ…!---ブシャアッ!
「ギィィィ!!??」
…よし、まずは一匹、そしてwikiに載っていた人族のパッシブスキル、【魔法弾】を試してみる。
【魔法剣】と同じ要領で魔力を練り上げて、塊として吐き出す!
ボンッ---バスゥッ!!
「ギィィィ!?」「ぎぃぎぃ!?」「ギィッ!」
…成功!
…【魔力変質】を利用して、【魔法弾】を色々な属性で打ってみる。
〈【魔法剣:炎撃】、【魔法剣:水撃】、【魔法剣:風撃】、【魔法剣:地撃】を習得しました〉
【魔法剣:炎撃】【魔法剣:水撃】【魔法剣:風撃】【魔法剣:地撃】…
炎は風に強く、風は闇に強く、闇は光に強く、光は土に強い、土は水に強く、水は炎に強い。要は炎→風→闇→光→土→水→炎、という風に属性の相性は決まっていて、それぞれが弱点とする属性へは『相乗効果』が乗る。
人族は光属性に長けていて、魔物は闇属性に長ける。
それぞれは得意とする属性を重視していて、俺は人間だから"基本的には闇属性は使えない"。
…脱線したが、魔法剣の効果はそれぞれが得意とする属性へと一.五〇倍の特効を持つ、という効果だ。
「【魔法剣:炎撃】!」
---ジィィィィン…!
…『相乗効果』も試してみるか。
炎と風、風と闇、闇と光、光と土、土と水、水と炎の属性魔法弾を隣接させる。
(…まぁ、闇属性はまだ使えないので闇属性の相乗効果は使えないのだが。)
---ゴォォォォ…!
炎は風に吹かれ大きくなり、光は土を乾燥させ飛距離を上げ、土は水を泥にして単純に質量を上げ、炎に包まれた水は蒸気と熱水となって敵に襲いかかる───筈だった…。
………ベチャ、バシャ、ゴシャァ…!
『ギィ?』
…相乗効果を持たせたそれらは悉く地面に落ちるかゴブリンに砕かれてしまった…!
(つ、使えねー…。)
なんと俺の手から現れた属性付き【魔法弾】の軌道は曲線。早い話がまっすぐ飛ばない。
…いやーそれぞれ単体だけなら遠くまで飛ぶんだけどなー、なんでだろうなー。
「…グオオォンッ!!」
…ッ!?な、なんだこの咆哮は!?
咄嗟にゴブリンから目を離して、咆哮のあった方角に振り向く。
「…ギィィガァァァァッ!!」
「ギィィィ!!」
…俺が振り向いた直後に背後にいるはずのゴブリンから悲鳴が上がる…。
エフェクトだけぼうぼうと燃えている剣を手にして警戒する。相手はとても早い筈だ…!目で追いきれなかった…。
鳴き声から察するに狼かそこら辺。視線をゴブリンの悲鳴があった背後へ向ける---ッ!?
---ダンッ!
死神の足音が聞こえる。
「ガァァァァッッ!!」
………そいつは、狼ってレベルじゃない巨大な体を俺に向けていた…!
---ダンッ、ダッ…!
飛びかかるその巨体、俺は急いで回避する、が。
---ブォォォンッ!
三メートルを軽く超えたその巨体が持つ尻尾は俺を逃がすことはなく、俺の体は二、三メートル程吹き飛ばされた!
(…ッ!?がぁっ、ぐ…。息がっ、できなっ…!)
「グルルルルル…!!」
目の前にはその巨体に見合わず高いスピードを持って俺を殺さんとする狼が…っ!
三メートル。
…ダウンしている場合じゃない!俺は立ち上がろうとする、が…。
二メートル。
(…足が、動かねぇ、だけど『相乗効果』なら一発打てる。)
一メートル!
あの、相乗効果を利用した【魔法弾】の連続攻撃なら…!
「『五大属性魔法弾』!」
---ドォムッ!!
「…グオオォンッ!??」
至近距離での相乗効果による一撃!
---俺の前で鮮血が飛び散って、粒子となり消えた…!
〈レベルアップ!〉
〈アーサーさんのレベルが、75になりました!〉
…勝った、のか。
俺からしてみればコイツは、まだ生きているのかわからんから、両の手の平から【魔法弾】でダメ押しを---っ!?
…これ、もしかして同じ手の平から【魔法弾】打ってるから"混ざったまま"の状態で生まれてくるのかな。
なら、違う手の平から打って、当たった時に相乗効果を発動させれば…!
---ドォムッ、ドォムッ!!
「…ギィィィッ!!?」
…命中!そのままついでに撃った一撃でゴブリンは倒れた!
「…これは、強いのでは…。」
俺はその後、試行錯誤しながらバゼリ王国へと戻ることにした。




