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【エター】新興VRMMO記【ビクトリア】  作者: 松田勝平
第一部 メインストーリー編
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第9話 【星】を破壊せよ!

 


 1.世界会議用ルーム内




 ザチャリオが言った





「ザスター。君の所も表かい?やれやれ、我々としてはこれはマズイ流れだ。」




 そう言って彼は溜息をついた。


 ザスターは言う。





「私達の中で裏に成功しているのはザワルドだけか………。中々に厳しい。」




 ザタワが噛み付く。





「俺の所だって【勇者】の偽造は完璧なのによ、成功扱いで良いじゃねぇか!」




 ザワルドが口を開く




「我々には一二人の【魔神王】が必要なのを忘れるな。………最悪、【勇者】から魔神王を守りきればそれで良いこと。NPCの勇者は傀儡にすることができんからな。」




 ザハーミの番だ。



「僕たちはまだ五人だけど、まだ隠れてる奴らがいるのかな。もっと協力者の【アルカナ】が欲しい所だね。」




「………まずは我々だけで裏のメインストーリーを進めるしかないだろう。

 各サーバーで【魔神王】を保護し、【勇者】に【魔神王殺し(ディ・オーチーデ)】を与えるな。解散!」







 2.酒場




「今日はみなさんにー、ビッグなイベントがありまーす!パチパチー。」



 雇ったコンパニオンに言わせる。酒場の備品だ、コイツらは。




「なんと、この『【星】ザスターの討伐作戦』にご協力なされる方には〜、レベル×二〇〇Gをプレゼント!

 そしてぇ、ザスター組織傘下の者をいくら討伐したかでランキングをつけ!

 討伐数上位三名の方には、【壁走り】【剣術】【魔力増強】のどれかを贈呈!さぁさぁ、先着二〇〇〇名様までです!受けるのであればお早めにお願いしまーす!」



 何故かクエスト名が『【星】ザスターの討伐』となってしまった。



 ……それは良いとして、何人集まるかなぁ…。


 3.強襲用飛空船内




 俺は騎士団長の権力を使い、無理矢理出させた強襲用飛空船内に、一五六八人のプレイヤーが集まっていた。





「このクエストの概要を説明する!君達には俺がザスターへと到達するまでの露払いをしてもらう。以上!」



「敵を倒したらそこの腕章に記録されるため、ガンガン倒してくれ!」




 俺は悪魔系から搾り取った【違法的上昇:(エボリューション)経験(ギフト)】のアビリティジェムを見る。



 ………これは使わなさそうだな。




 俺は作戦決行時を待つ。




 3.ザスターのギルド 上空




 ---ヒュオオオオ…。




 青空の下、皆で飛び降りる。支給品として『飛べ箒』を渡しておいたので落下ダメージの心配はないだろう。





「総員、突撃ィィーーッ!」





 うおおおおおおおおおおーッ!





 4.ザスターのギルド内部




 【破壊士】が複数方向から外壁を破壊する。



 何故このように大々的にギルドを破壊するかというと、この【ビクトリア】では基本死がペナルティにならない。


 よって取り返しのつかない固定資産を狙って破壊する方が、俺を追っている奴らに打撃を与えられそうだからだ。





「ヒャッハーッ!火をつけろォォーッ!」


「滅多打ちだぁぁぁああ!!」






 そして今回コイツらが張り切るのは理由がある。




 実はダンジョン攻略などの、『宝を見つけるかも知れない依頼』では見つけた装備を依頼主に一旦渡さなくてはならない。




 今回はそう言うのなしで、一番速めに見つけた奴が宝を取る、と言うことにしている。





 皆独占欲の塊だ。よく働いてくれるだろう。






 5.ザスターのギルド 会議室



 …荒らされた後の部屋だ



 ここは会議室だって言うのに広すぎる。戦闘が起こることを見越しての造形であろう。



 今回はレベル一四七九の人も来てくれたので、随分と早く攻略が進んでるようだっ。



 ---ギィンッ!



 ………背後からくる攻撃を防ぐ。



「バカな…!完璧なアンブッシュだったのに………!」



 ………いつぞやの女忍者だ。あの時から後方確認を俺は怠らないようにしている、だから防げた。





 【忍者】の職業スキルは、

 『足音がなくなり、背後からのダメージが二倍になる』、と言うものだ。だが足音が無くなっても衣ズレの音は聞こえる。




 マトモに食らっていたら死んでいただろう。

 俺は叫ぶ。




「おいィ!コイツ殺った奴には五〇〇〇〇Gだぁあ!」



「殺れえぇぇぇーーッ!!」



 人がいるのだ。俺がわざわざ出張る意味もない。




 狙い通り、俺の言葉を待っていた奴らが女忍者を殺しにかかる。




 へっ、良いイヌッコロだよ。お前ら。





 6.ザスターのギルド ギルド長室



 ザスターの野郎は一番奥に穴熊決め込んでいた。





 …そして、もう俺について来ている奴らは全部他の奴の相手をさせた。



 さらに、ザスターの野郎も用心棒を呼んでいたようで、よりにもよって、ここに来て攻略が膠着状態になってしまったのだ。



 ---斯くなる上は俺がザスターを倒すしかない。



 そう思い、扉を開けたその瞬間。



 ---ブゥオォンッ!!



【振り子斧】が俺に迫る。回避して、ザスターの居ることを確認し、その方向へ走る。


 ---タタタタタッ、ガッ。



 足元にワイヤーがあり、バランスを崩したところに【振り子斧】が迫る。



 ---ブゥオォガキィィンッ!!



 咄嗟に【瞬間防御(プロテクション)】を発動。

 俺は壁にめり込む勢いで吹っ飛んだ。



 ---ドォムッ!ダンッ!ダンッダンッ!!




「どうだね、私の宮殿は………。


 ------存分に楽しんでくれたまえ。」




 ---ニィ、と彼は微笑んだ。



 …壁を二部屋ほど突き破ってアーサーは復帰。壇上に佇むザスターへと走り込む。


 俺は吠える。



「…ッ!貴方はっ!今日!ここで!倒すッ!」


瞬間強化:速度(プラス・スピード)】を使い、一気に駆け抜ける。


 ………足元には細いワイヤーが張ってあって、とてもではないが目視はできない。


 なので、引っかかった瞬間に---




     「アビリティジェム」



 

       「解放(リンク)!」





 ---パァンッ!


 【縮地】の効果だ。



 ---ヒュゴォォォオ…!


 上空で、剣を上段に構えて振りかぶる構えを作った。





 【枢機卿(カーディナル)】、ザスターが顔をしかめる。

 当然だろう。この【アビリティジェム】は貴方が俺に渡したのだから。さぞや皮肉な真似だ。


 彼の体は一瞬で枢機卿の目の前まで到達。

 剣を振る瞬間に、耳元で囁かれた。





「それは私が君に渡した手札だ。

 ならば攻略法を作らないわけあるまい。」



 ---バリバリバリバリッ!ガキィィンッ!!


 青い、雪の結晶の様な。そんな模様を持った"盾"が展開される。



 剣が【枢機卿(カーディナル)】ザスターに当たった瞬間、とてつもない力場が出来て俺はまた吹っ飛ばされた。





 ---ドォォンッ!!!ガンッ!!バゴォンッ!



「がぁあっ…ゲボォッ…ッ!?」


 アーサーは立ち上がり、フラフラになりながらも全力で復帰に至る。



(喉から血がひりだしてくる。…そんなことはどうでもいい。あの力場は…一体…?)


 すると、ザスターは思考を読んだ様にペラペラと能力の概要を話し始めた。



「………私の【アルカナ】は【星】、手に届く事のないものを引き寄せる力だ。そしてそれで、【勅命】の効果範囲を広げた結果がこの魔力シールドだよ。」


 それは自信の表れか。アーサーの顔がさらに険しくなった。



「私はこれを【攻性防壁(カウンターシールド)】と名付けた。」






 ………奥の手だ。






       「アビリティジェム」







         「解放(リンク)!」




 ---パァンッ!



 前使ったのとは別の、【違法的上昇:(エボリューション)経験(ギフト)】の効果だ。


【アーサー:(人族 レベル三三五)】







「………アーサー、君も酷い事をしたものだ。悪魔族のレベル二〇〇〇以上の者にこれだけレベルを詰めさせるとは。」




 ---この五分間のみの、全力全開。



悪魔殺し(ヴァプティズム)】には【勇者】、【霊魂払い】スキルを持ってから悪魔系モンスターによってレベルを二〇〇上げた時にこのスキルは進化する、という効果がある。






 《スキルランクアップ!》


 《【悪魔殺し(ヴァプティズム)】→【悪殺し(ライニゴング)】》


悪殺し(ライニゴング)】………

 相手に相手のカルマ値×〇.一の追加ダメージを自身がダメージを与えた時に加算する。(【悪魔殺し(ヴァプティズム)】の効果も得る。)



 …なんとでも言え。魔物に、慈悲なんていらない。


「スキルアビリティ発動!【殿の心得】!」




 …さらに、【片手剣】、【剣術】、【片手半剣】のスキル効果がレベルの上昇と共に、今最高に上昇している。


 ---スラァンッ!





 俺は超重量と長刀身が売りの剣を軽々と抜き、普段使いの剣との二刀流で襲いかかる。



 ---カッ!ビュオンッ!!



 超重量と長刀身を使って、棒高跳びの要領で空を飛ぶ事により、地面に貼ってあるワイヤーを避けて進む為だ。


 剣で跳躍を行い、片手剣で奴に斬りかかる。



「【攻性防壁(カウンターシールド):ハリネズミ】。」



 表情を変えずに、淡々と動作を行う彼に、俺は恐怖を抱いた。



 …そんなことは良い。何故か、嫌な予感がする。俺は剣を前に構え、空中で防御の構えをとった。






     「ここで倒れるがいい。」






 無数の魔力針が【攻性防壁(カウンターシールド)】から伸びる…っ!?






 ---ズンッ…!…ドスッドスドスドスドスドスドスッ!!!



 魔力は、浸透して、武器を折らずに、体を殺す。



 --構えている剣も御構い無しに俺の体を食い破った。




 ---…バシュッ…ブシュッ、ドボォ…ッ。


 

 ………今もなお空中で串刺しにされながら、身体からドボドボと勢いよく血が噴き出す。



「……どうだったかな、驚いたかね?」



(あぁ…俺、死ぬのか。)




「はは、ちょっとした曲芸だよ。」


「アーサー君?」



「……ッ。」


 ザスターは得意顔だ。パチパチと拍手をしながら俺の健闘を称えるフレーズを発している。





「…まぁ、それは置いといて、君は、良くやった。」


「良く、此処まで私を追い詰める事ができたものだね。」




 …そんなことも関係なしに、この、冷たさが死を実感させようとする、俺の身体から、熱が消えてゆく。



「一重に、賞賛に、値する。」



 はは、こいつ、舐め腐ってやがる。


(なら、せめて、一泡、吹かせて…!)


 最後に、そう思った。そう、思ってしまった。



     「おい、これなーんだ…!」




 ザスターは、それをよく覗き込む。


      「【魔神王の魂】…!」





 顔はぼやけていてよくわからなかったが、声は少しの喜びを秘めていた。




【魔神王の魂】は調べてみると消費アイテムらしかった。





 奴についての情報を調べるうちにこの【魔神王の魂】を欲していると聞いていたので、




 ------俺はそいつを噛み砕く、


 ザスターは、どんな表情をしているかは分からないが、これで、【魔神王の魂】は無くなった。




   「これで、お前の望みも終わりだ…。」


 そう呟き、最後に、嗤う。



 ---ドサァ…ッ。


 ずるりと、抜け落ちる。


 ………俺の意識は、血とともに、闇へと、落ちた。

































『クエスト発生』


 パーソナルクエスト

『【不滅の魔神王(ディ・イモータル)】アーサーの復活』


 〈アーサー さん が 【魔神王】へと ジョブチェンジしました!〉


 〈【魔神王】パッシブスキル 【屍魂吸収(啜るもの)】が発動します〉


 〈おめでとうございます。アーサー さん は レベル七六二 に レベルアップ しました。〉


 〈称号獲得!

【ワールドボス】【不滅の魔神王(ディ・イモータル)】〉


 〈スキル【闇魔術】を習得!

 スキル【光魔法強化】を習得!

 スキル【第二段階(セカンド)】を習得しました!)

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