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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

作者: わかんむり

俺、高堂寛たかどうひろしは昔から人の体に興味があった。

何で人は動く事が出来るのか。

何で人は考える事が出来るのか。

何で見ること、聞くこと、味わうこと、嗅ぐこと、感じることが出来るのか。

人には脳や関節、鼓膜等、色んな部分があるが、僕は特に臓器に興味があった。

体の中でリズムよく動いたり、膨らんだり縮んだり、その働きによって人間の体が動いているのが不思議だと思った。

小学生の頃は興味はそれぐらいしか無かった。


しかし、高校生になり、興味は別の方向へと変わっていった。



高校一年生 当時十五歳

高校に入って初めて出来た友達と放課後、校庭でサッカーをしていた時。


「よし!寛!あっおい!」


自分の元へ来る浮いたボールを取ろうと走る。

しかし、追い付けないと感じた俺はヘディングしようと頭を突き出す。


「ぐえっ!」


ボールは見事に顔面直撃。俺はその場に倒れてしまった。


「悪い寛…大丈夫か?」

「ん…あ、ああ大丈夫だ」


俺は友達に手を差し伸べらると、手を取る。


「あ、鼻血出てるぞ」

「え?」


そう言われると鼻の下に手をやる。手には血が付いていた。


「あ…」


その瞬間、何かに押し潰される感覚が体中に走った。


「どうした?」

「いや、何でもない」


何かと思ったが俺は気にせずそのまま保健室へ行った。



それから数日が経ち、今は理科の実験授業が終了し、理科室を出ようとした。

すると、俺はふと教室の隅に目をやる。そこには人体模型が置いてあった。

俺は友達に先に戻ってと伝え、人体模型の近くに行く。

脳、鼓膜、関節等をくまなく見ていくと中心部に目がいく。


「心臓…」


俺は臓器を見た瞬間、数日前のあの押し潰される感覚が起きた。

手足が震え、身体中が痺れ、口の中には唾液が増え、それを飲み込む。

俺は自分を落ち着かせる為、一旦下を見る。

そして、もう一度人体模型を見る。


「は…?」


見るとそこには人体模型ではなく、人間の姿だった。ごく普通の知らない人。幻覚だ。

俺はそれを見た瞬間、何かがプツンと切れた感じがした。


「知りたい…。臓器…見てみたい…」


俺はその日学校を早退した。







「すみません、お姉さん」

「え?うっ…が!」


早退した後、一人暮しのマンションから手袋と替えの服、ハサミ等を持ち出し、部屋を出て、人気の無い場所で女の人を殺した。腹の部分を何回も何回も死ぬまで抜いては刺してを繰り返す。


気を失ったことを確認すると、俺は手袋とナイフを取り出す。

そして、女の胸から腹にかけて執刀する。

切ると血が滝のように溢れ出してくる。


「……」


俺は周りを気にしながら、無言で続ける。


「よし…」


切り終わり、手で少し開けると、肺や心臓、横隔膜が見える。

その下には胃、膵臓、腸がパズルのように並べられている。


俺は背筋が凍りながらも、間近で本物の臓器を見ている為、興奮していた。

夢の一時を体験したとこで、俺は臓器を一つ一つ取り出し、写真を撮る。カメラには臓器の写真でいっぱいになった。

満足すると、死体をこのままという訳にはいかないので、近くに流れていた川に落とした。勿論、証拠になりそうな臓器やナイフ等も流れが早いのか直ぐに流れていく。服は血痕とにおいが残るため、ビリビリに破り後で処理をする。


「何してんだろ…俺」


死体を見送ると、俺は我にかえり、走ってマンションに戻った。





それから十五年が過ぎた。俺は大学医学部を卒業し、医者になった。手術の執刀も任されている。

十五年前のあれが役にたったのか、血を見ても何も思わない。

なので執刀はスムーズだった。

しかし、手術中、俺は笑ってしまう事がある。

ほとんどが臓の手術で自然と顔がニヤケてしまうようだ。

それを見た同僚からは。


「よく笑えるよな…」


上司からは。


「腕はいいのに不謹慎だぞ!」


院長に関しては。


「クビだ」


俺がいると評判が悪くなると言われ、六年勤めた病院からクビを告げられた。

そう言われた俺は思わず院長を殴ってしまった。それにより医師免許を剥奪された。


俺はその後、働き先を見つける為、ハローワークに通っていた。


そして、事件は帰宅中に起きた。





(中々見つからないな…)


あれから一週間。履歴書で一次落ちるわ、通常の面接でも上手くいかず不合格。

そして、今はその面接を終え暗い夜道を歩いていた。

すると、俺はその道に見覚えがあることに気付く。そう十五年前に殺人を犯したところだ。

当時は死体がかなりの距離まで流れ着き、一時期ニュースで報道されたが、俺が一緒に流した道具からは証拠は発見出来ず。迷宮入りだ。

いつの間にかそこに来ていた俺は少し気持ち悪くなった。


(早く帰ろ…)


早くこの場を去ろうと家に帰ろうとしたその時。



ペタ…コン… ペタ…コン…



後ろの方から何かが近付いてくるような音がした。


(何だ?)



ペタ…コン… ペタ…コン…



そのような音が繰り返し聞き入った。俺はその音から裸足と杖で歩いて来ているのかと思っていたが、その何かが街灯の下で照らされた瞬間、俺は目を見開き固まった。


「臓……どこ…?」

「え…!!」


俺は夢でも見ているのだろうか。そこにはえげつない物が見えていた。

顔は血だらけで目は片方なく、口は歯茎まで見え何本か折れている。頭部には髪の毛は一本もなく毛穴がよく見える。

手足は骨がほとんどで皮膚は一部一部張り付いているようにある。

そして、体の中心部を見るとお腹の皮膚がなく、中には臓器がない。


「ぞ、臓器が…」


俺はそれを見て、呼吸が荒くなり、身体中から汗がぶわっと出てきた。


「臓…は?」

「え…」

「臓…心臓…腎臓…十二指腸…肺…頂戴…」

「何言ってんだ…」


どうやらこいつは臓器を探しているようで、ずっとその事しか言わない。

すると、そいつは俺の方を見て、こっちに近付いてくる。


「臓…頂戴?」

「!!来るな!」

「心臓…腎臓…貴方の…頂戴?」


そいつはどんどんゾンビのように近付いてくる。


「臓…」

「あ…ああ…あ」

「くれーー!!」

「わああああーーーー!!!」


突然叫びだし、俺はその場去ろうと思いっきり走り出す。

すると、そいつも俺の後を追ってくるように早歩きで追ってきた。


「くそっ!何とか家までは!」


しかし、そう走る体力は続かない。とにかく俺は近くの公園の公衆便所の個室に入る。


「はぁ…はぁ…。とりあえず体力温存だな…」


俺はトイレで休憩をする。ここなら場所も確定されずにすむだろうと思っていた。


しかし。


ペタ…コン… ペタ…コン…


「臓…どこ?…頂戴…」

「え…」


耳を澄ますと、外から微かに声が聞こえる。

俺は手で口を押さえ、声を出さないよう身を潜める。


「心臓…」

「……」

「……」

「……?」

(行ったか?)


俺はドアを開き、安全を確認する為、辺りを見渡す。いないことを確認すると、とりあえず外に出る。


「はぁ…よし帰ろう」


そう言って俺は帰る方向へと振り向く。


「臓…いた…」

「え…」


さっき見渡しても誰も居なかった筈。なのにいつの間にか後ろに立っていた。


「臓ー!がぁー!」

「ひっ!」


そいつは俺に襲いかかろうと飛び込んでくる。

しかし、動きが遅い。これなら簡単に避けることが出来る。

俺はギリギリのところで避ける。


「ぐっ!うあああー!」


しかし、俺が避けようとした瞬間、右手を掴まれてしまった。

そして、そのままそいつは俺の右腕を噛みだした。


「がっ!がっ!」

「くそ…、離せよ!うらぁー!」


俺は思いっきり腕を振り、振りほどく。

そして、離れるため一目散に家まで逃げた。



俺は何とかマンションまでたどり着き、ロックを掛け、カーテンを閉め、電気を消す。

とりあえずベッドに腰掛けると、自然と手が震え、足も貧乏揺すりしていた。


「何なんだよあいつは……は!」


俺は今頃思い出してしまった。

確か俺が人を殺した場所はまさしくさっきの場所だ。

そして、しつこく追いかけ回されたあいつの正体。


「ということは…あれは…」


ペタ…コン… ペタ…コン…


その音が聞こえた瞬間、俺は布団を被る。

そして、布団の中で自分で頭を叩いたり、頬をつねったりする。


「覚めろ覚めろ覚めろ!夢だ夢だ夢だ!」


ペタ…コン…ペタ…… ガンガン!ガチャガチャ!ガチャガチャ!


「ひっ!」


前まで来たのか、ドアを叩いたり、ドアノブを激しく回している。


ガチャガチャガチャガチャ!ガチャガチャガチャガチャ!


「止めてくれ…頼むから止めてくれ…」


ガンガンガンガン!バンバンバン!


「ふっ…く!悪かった!俺が悪かったから!もう…止めてくれ…」


恐怖に耐えきれなくなったのか、俺はそう言いながら布団を剥ぎ、ドアの前まで行き、話を続ける。


「俺が悪かったから…」


ガンガンガチャガチャ!ガチャガチャ……


音が突然鳴り止む。


「殺したことも謝って済む問題じゃないけど…。本当にごめんなさい。明日の朝、警察に行って出頭する。君の人生を奪ってしまって…本当に申し訳ない!」


俺はドアの向こうに向かって土下座して謝罪をする。

しかし、先程から音がしない。もう帰ったのかとドアスコープを覗くと誰も居なかった。


「帰ったか…」


俺はほっと息を吐き整え、部屋に戻るため振り向く。


「臓…」

「うわああああーーーー!!!」


振り向いた瞬間、ドアの前にいた筈のそいつがいた。


「何で…いつ入ってきたんだよ!」

「……けんな」

「え…」

「ふざけるな!」


突然大声で叫びだし、俺はその場に倒れこんだ。

そんな俺を前に怒りを現にしながら近付いてくる。


「そんなんで済むとでも思ってんのか!」

「ひっ!」

「あんたに殺される一週間後…私は彼と教会で式を挙げる予定だった…。でもウェディングドレス着れることも、彼と一緒に暮らすことも、子供を産むことも、年をとることも…もう何も出来なくなった…あんたのせいで…あんたのせいで!」

「分かった!ごめん!何でも言うこと聞くから許してくれ!頼む!」


すると、そいつはピタッと止まり、その場に佇む。


「何でも?」

「ああ!さっきも言ったとおり出頭もする。君の彼や家族のことでもいい!その他に何か出来ることがあれば何でも言ってくれ!」


俺は再び土下座をし、条件を突き出し頼み込む。


「分かった…じゃあ立って…」

「あ、ああ」


俺は言うとおりその場に立つ。


「何でもって言ったよね…」

「ああ、勿論だ!」























「じゃあ…臓…頂戴」

「え?」





ズボッ!






十五年後


とあるマンションで新入生や新入社員等が荷ほどきを終え、充実な生活をしていた。


「おっす」

「おはよう」


そんな中、二部屋から今年大学生になる男女の学生が出てくる。


「ねえ、聞いた?」

「何が?」

「大家さんから聞いたんだけどね。十五年前にここで人が殺されたんだって」

「うえ!マジかよ。止めろよこれから一人暮らしするってのに…」

「ごめんごめん。でね、その部屋が三階の奥の部屋らしいの」

「え!近くじゃん!てかそこ誰か住んでるんじゃなかったっけ?」

「そう。この前挨拶に行ったら綺麗な女の人だったよ!」

「へえ~」


すると、丁度噂をしていた部屋から一人の女性が本の束を持って出てくる。


「あら、おはよう。挨拶の時、お菓子ありがとうね」

「あっ!おはようございます!いえいえこれからも宜しくお願いします」


そう言うと女性は部屋に入っていった。


「綺麗な人でしょ?」

「ああ、目の保養だ」


















「これから宜しくですって。可愛いね大学生って。ね…寛くん?」


女性は押し入れを開けると、そこには萎んだ臓器と遺骨が見えた。

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